Blog|maarenca - マーレンカ

TUNAGU&TUMUGUワークショップ in Makers' Base





TUNAGU&TUMUGUワークショップを初めて開催します。



場所は目黒雅叙園のすぐそば。 「Makers'Base」


開催日時は11月1日、2日、3日の三日間。(ご予約は下記URLに飛んでご予約をお願いします。)

今回はフランスストールかスモールトートバッグにコラージュをしていただくワークショップです。
縫製は私の方で仕上げますので、自由にモチーフを乗せ、ピンで留めていただければOK! 
工作気分で楽しんでください。


また、ぜひ想い出の布やボタン、レースリボンなどもお持ちください。

お母様、おばあちゃまの、お父様、おじいちゃまの、またはお子様が誕生した時の大切な想い出を
一緒にコラージュして本当に世界に一つだけのバッグorストールを一緒に創っていきましょう。


ストールは何柄か用意します。

たとえば、車いすの方のひざ掛けや、病室にパッと華を咲かせませんか?

トートバッグは、黒、生成、ピンク、オレンジ、グリーンを用意しております。

福祉施設・被災地・途上国の素材を手に、どうぞ新しい物語を完成させてください。



ワークショップのほか、スモールトート、ミドルトート、ビッグトートや
ストールなどの販売もしております。


どうぞ、お気軽にお越しください。

皆様とお会いできることを、楽しみにしています!!                   

 by 丸子安子

https://makers-base.com/event/?type=100mob




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# by maarenca | 2014-10-20 10:54 | TUNAGU&TUMUGU

THE SIX ELEMENTS STORY No37








THE SIX ELEMENTS STORY




No37




                                    著 水望月 飛翔



 天上に向かって、祈りを込めて歌うその清らかな歌声。
そんなローラインの歌う歌声は、二人を包む光の外にまで伝わり、やがて風たちが運び、
遠く人々にまで届けていったのだった。

 その清らかな歌声を耳にした人々は、次第に少しずつその歌を口ずさみはじめ、そうしてその詩は、
空の領土中に広がっていったのだった。

 そんな歌声が、とうとう第五の島にある、空の王の城まで届くと、城の者達までもが、おのずと
「希望の詩」を口ずさみ始めたのだった。

 そんな多くの者の歌声を聞いたカサレス王子は、嬉しそうに聞くと、王子もまたその歌に加わったのだった。
すると、小さなリティシア姫が王子の部屋に入ってきて、「にいちゃま、私も歌う。」と、一緒にあどけない歌声を
響かせた。
 そしてとうとう、城の者たち全ての者までもが歌い始めると、王と王妃もこの詩に加わり、ローラインに
後押しをしたのだった。

 すると、先程まで途中で止まっていた、ローラインの石の光にむかって、空の領土中から光が集まり、
そのまま天上へ押し上げる様に加勢したのだった。

「ああ、我が主。これはいったいどういう事でありましょうか?私の小さい光に無数の光が集まり、
私の光を押し上げてくれております。」そう言うと今度は、「ああー。」と声をあげると、ローラインの目の前で、
周りを覆っていた岩石が剥がれ落ち、中に埋まっていた淡いブルーのサファイアが、その美しい姿を見せた
のだった。

 すると、天上に向かっていた光が急にその勢いを加速させ、生き生きとした意志を持って、まるで天に
向かって飛ぶ龍が如く、そのまま高く天上の雲をローラインの石は突き破っていったのだった。
 
 何という光景だろうか・・・。

 一人の者の成人の儀式に、この様に人々の力が結集し、また加勢し得た事など、この惑星が誕生してから
あった事などはない。

 この輝かしい光景は、きっとこれから、この惑星に新たなる希望を与えていく事になるであろう。

さて、皆の加勢に勢いよく天界の雲を貫いたローラインの石であったが、その天上界ではいったい何が
起こったのであろう?

 ローラインの石の光が天界の雲の上まで突き抜けて、その石が現れると、そこはなんとも美しく淡い
エマイユ色のグラデーションが、雲や霞を穏やかに包み込み、ゆっくりと漂い、天上の音を静かに
奏でていたのであった。

 そうして、一際淡い光がすっと奥から差してきて、そのままローラインの石を柔らかく捉えたのだった。

その光は、まるで手の上でローラインの光を転がす様に、ゆっくりと揺らぎを与えると、女性とも男性とも
つかぬ幾重にも重なった声で、ローラインの石に声をかけたのだった。

「なんじ、どこから来たのか・・・?淡き光の石よ。そなたの様な淡き光でようこの天界まで登ってこられの?」

 その声の震えは穏やかで優しく、その余韻でこの世界を形作っている気配のたおやかさに、ローラインの
石はゆったりと、心地よい感覚を味わったのだった。

 それからしばらくしてローラインの石は、静かにこう答えた。
「はい、わたくしは、空の領土から参りました者。我が主の願い、「天上のよろこび」を少し私に分けて
いただきたく、ここまで登ってまいりました。」

 そう言うと石は、自身の光の中に主ローラインの姿を映し出したのだった。
その光の中でローラインが、目を瞑り一心に「希望の詩」を歌っている姿が写し出されると、天上の光は、
ゆっくりとこう言ったのだった。

「ほお、かの小さき者がそなたの主か。ローライン。希望の光・・・。わたしもよう覚えておる。そうか。
あの小さき者が、かの地の人々の支援を受けてここまで来たか・・・。」そう慈愛に満ちた声で言ったのだった。
 
 そんな言葉を聞いて、ローラインの石は、こう聞いたのだった。
「おそれながら・・・、天上の光よ。わたくしの主の願いを聞き届けていただく事はできないでしょうか・・?」
そう恐る恐る聞いたのだった。

 そんな問いに、天上の光は柔らかく笑いながら、こう言ったのだった。
「希望の光の石よ。私を恐れなくともよい。しかし、久方ぶりに我の希望の光に会うてみようかのう。」
と言うと、すーっと雲の下へ光を降ろし、すぐさまローラインを、この天上界へと連れてきたのであった。

 天上界から光が素早くローラインの元に現れたかと思うと、次の瞬間そのままローラインの身体を
包み込み、天へと一気に連れてこられたローラインは、あまりの一瞬の出来事に驚いて、自分が
今いったいどこに居るのかと、理解できずに周りを見回したのだった。

 そして、ローラインは自身の小さな翼が瞬いて、浮いている事に気づくと、嬉しそうにまた周りを見回した後、
ようやくローラインは少し離れた高い所から、やんわりと温かく自身を見下ろす優しい光の存在に気づき、
じっと見つめたのだった。

 ローラインは懐かしそうにその光を見つめると、「天なる父。わたしのお父様・・・。」と言って、静かに
涙を流したのだった。
そしてローラインはゆっくりと、その光に近づいていったのだった。
そんなローラインに天上の光は「わが娘・・・、希望の光・・・。人々の祈りをよう味方につけたの・・・。」と声を
かけると、続けてこう言ったのだった。

「わが娘ローライン。そなたの望みを申すがよい。」
天上の光が、優しくローラインにこう言うと、ローラインはいたずらっ子の様にほほ笑んで、その光に向かって
こう答えたのだった。
「天なるお父様・・・。わたしの願いは「天上のよろこび」です。どうかこの天上にある喜びを、少し私に分けて
下さいませんか・・・?」

 人々と喜びを分かち合いたい。
ただそれだけを思い、はやる気持ちにうれしさが込みあがり、ローラインは楽しそうにそう言ったのだった。

 そんな楽しそうな姿に天上の光は、慈しむように一層優しい光をローラインに向けると、
「よい、わかった。好きなだけ持っていくがよい。ここのものはそなたのもの・・・。ただ望めばよい。」
そうローラインに告げたのだった。

 そして、ローラインの石に向かって、「さあ、そなたの身に思う存分宿すがよい。」と言ったのだった。 
 
そうして、天上の光は大きく一回りすると、そうして集めた淡い光をローラインの石の上に振り注ぎ、
「天上のよろこび」を宿させたのだった。

 すると、ローラインの石は先程よりももっと美しい、アシード・ブルーの輝きを得て光り輝いたのであった。

「まあ、きれい。」嬉しそうにほほ笑むローラインと、ローラインの石に向かって、天上の光は、
「さあ、「天上のよろこび」を宿いし石よ。われの「希望の光」と一体となるがよい。」

 そう告げると、ローラインの石はスーッとローラインの元に近づいて、そのまま右手の甲に、
静かに納まったのだった。
                               
 ローラインは、石と一体となるには痛みを覚悟しなければという思いと共に、一瞬身体を固くしたのだった。
が・・・、何のことは無い全く痛みなどなく、スーッと静かに石は、ローラインの右手の中に納まったのだった。

 ローラインは不思議そうな顔をすると、天上の光にこう聞いたのだった。
「天なるお父様・・・。どうして私の石は痛みがなく収まったの?」

ローラインは、痛みがなくてホッとしたのと同時に、多くの人々が大層な犠牲を払っている中で、
自分だけ何事もなく石が自身に宿った事に、少し憮然として聞いたのだった。

 そんなローラインに天上の光は、笑いながらこう言ったのだった。
「希望の光、ローライン・・・。わたしは皆に、一度たりとも苦痛を強いた事などは無い。」
こう言うと、続けて「しかしなぜだろう・・・?苦痛を乗り越えなければならないという考えが、
いつしか出来上がってしまったのは・・・。」と言うと、少し光を震わせたのだった。

 それから天上の光は雲の下からの気配を感じ、優しくローラインにこう告げたのだった。
「わが娘、ローライン。そなたの迎えがそなたの事を心配しておるようだのう。そろそろそなたの居るべき
場所に戻るがよい。またいつか、会おうぞ。」

 そう言うと同時に、ローラインが居るあたりの雲がスッと消え、ローラインは急に重力を感じ、
そのまま下へ落ちていったのだった。

「きゃ~。」先程までと違って、なんの加勢にもならない自身の翼にローラインは驚きながら、
どちらが天と地とも解らないまま、どんどん下へと落ちていったのだった。

 そしてローラインは、真っ逆さまに落ちていく恐怖に慄いたのだった。
しかし次ぎの瞬間、何者かがローラインの小さな身体を捉えた。

「大丈夫かい・・・?ローライン。」ローラインの小さな体を抱き止めたその人物は、心配そうに声を
かけたのだった。
 ローラインは、恐怖で瞑っていた目を恐々開けると、自分の顔を心配そうに覗き込む、カサレス王子の
顔を見つけたのだった。

「カサレス王子・・・。」そう言うとローラインは、まだ恐怖に落ち着かない気持ちのまま、きつく王子の胸に
しがみついたのだった。

 震えるその小さな身体を、しっかりと抱きしめながら王子は、「もう大丈夫だよ、ローライン。」と言うと、
ローラインをもう一度優しく抱きしめたのだった。

 その間もずっと、カサレス王子にきつくしがみついているローラインの腕を優しく解くと、ゆっくりと
ローラインの顔を、自分の顔に向けさせたのだった。

 ローラインは、優しくほほ笑むカサレス王子の顔を見ると、まだ少し震える手を王子の胸の上に置いて、
うつむいたのだった。

「カサレス王子、大丈夫ですか?」そこへ王子の後を追って急いで飛んできた、
王子の第一の従者アーキレイが、心配そうにカサレス王子に聞いたのだった。

 その声に振り向くと王子は、「ああ、僕は大丈夫だよ。アーキレイ。だけど、こちらの勇者のショックが
まだすこし溶けないようだ。君は急いで第二の島へ行き、彼女の母上に彼女の儀式の成功と無事を
伝えてきてくれないだろうか?きっと心配しているだろうから。僕はこのまま、彼女を城に連れていって、
少し落ち着かせる事としよう。」そう言ってからカサレス王子は、王子の指示に従い、第二の島へ向かう
アーキレイの後姿を見送ると、ローラインを抱いたまま、ぐるぐるとその場を飛んだのだった。

「すごいじゃないか、ローライン。まさか君が天上まで登るとは・・・。そんな事、かつて今まで聞いた事が
ないよ。」そう言うと、我がことの様に喜びを見せたカサレス王子なのであった。

 そんな王子の言葉にローラインはまだ震える声で、「いいえカサレス王子。私は自分の力で天上まで
行ったのではないわ。ただ突然、天の父に連れて行かれただけなの・・・。私は・・、私の力なんて
使っていないわ。ただ、天の父がわたしに授けて下さっただけなのよ。」そう言うと思いだした様に、
自身の右手に宿るアシード・ブルーに輝くサファイアを見せたのだった。

「美しいね・・・。ローライン。君の石の輝きは。」
そう言う王子にローラインは、満面の笑みを浮かべ、嬉しそうにこう言ったのだった。

「うれしい。私の石の輝きをカサレス王子に、一番最初に見せる事ができるなんて。」そう言うとローラインは、
慈しむ様に右手の石を撫でると、その宿った右手で王子の頬に優しく触れたのだった。

 そして、驚く王子を見つめながら、「私に宿った「天上のよろこび」よ。どうかこの方にその輝きを注いで
くださいな。」と言ったのだった。

 すると右手の石から、温かく柔らかな光が溢れだし、カサレス王子とローラインの身を、優しく包み込んだの
だった。

 そんな温かな光を受けて二人は、この喜びを共にしたのだった。
「温かいね・・・。ローライン。この上なく、温かな光だ。」
そう言うと、カサレス王子はローラインを抱いたまま、エマイユ色に輝く温かな雲の間をしばし、二人だけの
時間を楽しむように、ゆっくりと空の城へと飛んで行ったのだった。

 二人が飛ぶその周りの雲達は、天からの光に輝いて、まるで二人を祝福しているかの様に、幸せな色の
光を降り注いだのだった。




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# by maarenca | 2014-10-18 12:42 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No36








THE SIX ELEMENTS STORY





No36



                                     著 水望月 飛翔





 こうして「癒しの浴室」からローラインが出てくると、そこには、心配そうに待っている母と、
空の人々の姿があったのだった。
 ローラインは皆の顔をひとしきり見つめると、泣きそうになるのをこらえて、明るい笑顔で
こう言ったのだった。

「まあみんな。そんな心配そうな顔をして、いったいどうしたの?」
今朝、家を出ていった時とは明らかに違う、優しい表情で笑うローラインの顔を見ると、
皆は一様にほっとした表情を浮かべたのだった。

 そして、母はローラインに近づくと、気遣う様にこう言ったのだった。
「ローライン。大丈夫かい・・・?なにか、手伝うことは無いかい?」

 そう心配そうに覗き込む母に、ローラインはにっこり笑うと、まるでいたずらっ子の様に、
こう言ったのだった。
「じゃあ母様。私の事を抱きしめてくれない・・・?私、少し怖いから。」

 そう言うローラインであったが、しかしそんな言葉とは裏腹に、ローラインの表情は
寛いだ明るい笑顔そのものであった。

 母も集まった人々も、ローラインのうわべではない、本当に明るい笑顔を見ると、
嬉しそうに入れ替わり立ち代わり、ローラインを励まそうと抱きしめたのだった。

 しかし、それはいったいどちらが励まされた事であろう・・・。
明るく笑いあう人々の一団は、こうしてローラインを「成人の儀式」へと、見送っていったのだった。

 そうして、ローラインは自身の儀式に選んだ場所に皆と向かったのだった。
それは第二の島にあり、かつて兄のキュリアスが成人の儀式を行い、その時の閃光で廃墟と
化した「真実の礼拝堂」であった。

 しかし、キュリアスの失敗以来、人々は誰もこの半分崩れ落ちた礼拝堂で、儀式をあげようと
する者など、もちろん現れる事などなく、今日の儀式を司る司祭も、驚きを持って
この礼拝堂に来たのだった。

 司祭はこれから始まろうとする儀式を前に、最後にもう一度、ローラインに優しく聞いた。
「それでは最後に聞く。なんじローライン。そなたはこの「真実の礼拝堂」で、これから自身の
成人の儀式を執り行うが、それでほんによろしいか?もし少しでも、思いが変わったのであらば、
もちろん、他の礼拝堂に場所を移してもなんらかまわぬが。」と聞いたのだった。

 しかしローラインははっきりと美しい声で、「ありがとうございます、司祭様。でも私はこの
「真実の礼拝堂」で儀式をしたいのです。だって、この場所ならいい具合に壁が落ちているから、
この丘に吹く風たちを感じる事ができるんですもの。」そう言うと、風たちの祝福を受けて、
楽しそうににっこりほほ笑んだのだった。

 そんなローラインに、司祭も優しい笑みを浮かべると、「それでは、なんじローライン。
そなたの儀式を始めるとしよう。」と、周りの人々にも宣言する様に言ったのだった。

 そして司祭が儀式の呪文を唱え、聖典に光を出現させると、ローラインはその上に
自身の石を置き、こう言ったのだった。

「わたくしの名は、ローライン・グリュスター。この空の領土で生きる者。わたくしは自身の石に
宣言します。わたくしの愛しい石よ。私の右手に宿いしたまえ、「天上のよろこび」を持って。」
 そう宣言すると、ローラインの石から光が放たれ、ローラインを包み込んでいったのだった。
 
 そうして、明るい閃光の光の中でローラインが目を覚ますと、先程まで座っていた車輪付きの
椅子に居る自分ではなく、ふわふわと空中に漂う自身をみとめたのだった。
そして、その姿に驚きを持って周りを見回しすローライン。

「まあ、私飛んでいるのね。うれしい・・・。」
そう、ローラインの小さなみすぼらしい翼では、いままで一人で飛べたことなどなく、
この時生まれて初めて、一人で飛んでいる感覚を味わったのだった。

そうして、喜びながら周りを見回していると、ローラインの石が初めて、彼女に話しかけてきたのだった。

 ローラインの石は、ごつごつした岩石がその大部分を覆っており、小さな割れ目のその奥に、
ようやく淡いブルーの存在を確認する事ができたのであったが、そのブルーのサファイアの部分の
大きさが涙の様なかすかな粒なのか、それとも外を覆い尽くしている岩石がほんの一部で、
ほとんどをその淡いブルーの輝きが占めているものなのか、外からは全く解らなかったのであった。

 そんな姿の石が、ローラインにこう聞いたのだった。
「そなたが、私の主であるか?私は、そなたのその声をよく覚えている。私が生まれてから
眠っていたこの数年間、いつも私に歌を聞かせてくれていた。私はそなたの歌声に、いつも安らかな
眠りと共にこの時を過ごしていた。して、我が主の名はなんと言う・・?」

 そうローラインの石が聞くと、ローラインはにっこり微笑み、愛おしそうに「私の石さん。
私の名前は、ローライン。ローライン・グリュスターよ。」とヒバリのさえずりの様な声で、
自身の石にこう答えたのだった。

 そんなローラインの答えに石は、「ローライン。空のいにしえの言葉で「希望の光」。
そうか、そなたは「希望の光」か。その光がわたしにのぞむは、「天上のよろこび」であったろうか・・・?
さて、はたして天上界のよろこびが、この様な姿の私に、収まってくれるであろうか?」

 そう答える石に向かって、ローラインは明るくほほ笑むと「大丈夫よ、私の石さん。あなたなら
絶対うまくいくわ。だって、周りのみんなが応援してくれているんだもの。」と言うと、少し意味ありげに
笑ったのだった。

 そして、そっと自身の石を促すように、こう語りかけたのだった。
「ねえ、あなたにはわからない?皆が祈ってくれているこの波動を?」
そう言うとローラインは、静かに目を閉じながら、二人を包む光の外で漂っている風たちが
伝えてきた、人々の祈りの気配を感じ取っていたのであった。

 もちろん、いかなる時も、いかなる人も、他の人々の手助けを受ける事は、一切出来ぬ事・・・。

しかしローラインは、何ものをも通さぬ、成人の儀式の光の外の気配を、人々の祈りを、
いま確かに感じ取っていたのであった。

 そんな主に石は、驚いたのだった。「我が主。あなたには外の気配もわかるのですか?
しかし、私にあなたの願いを宿すほどの力があるかどうか・・・。」と口ごもり、少し間を置いてから
ローラインにこう尋ねたのだった。

「希望の光、我が主よ。あなたは自身の願いをどのように思われておいでか・・・?」
石にそう聞かれると、ローラインはにっこりほほ笑み、楽しそうにこう言ったのだった。

「ねえ、あなたも見てわかるでしょ?私の身体って、とても小さいし、それに脚だって、翼だって、
あまりきれいじゃないわ。」そう言うとくるっと一回りして、ローラインは何やら思い出したように笑い、
続けてこう言ったのだった。

「でもね、私、この身体が好きなの。自分ではあまり動けないけど、周りの皆がいつも助けてくれるの。
だからね、もし私の手の中に「天上のよろこび」が宿っていたら、その度にいつもギュッとして
皆に届ける事ができるのよ。ふふっ。それが、私の恩返し。ねえ、そう考えたら、とっても楽しくない?」 
 
 ローラインはそう考えると、もうじっといていられないという風に、楽しそうにはしゃいだのだった。

そんな主の姿を見て石は、フッと短く笑うと「我が主。あなたは本当に楽しそうですね。
私も、そんなあなたの姿を見られてうれしいです・・・。」そう言うと、少し時間を置いてから、
意を決したようにこう告げたのだった。

「わかりました、我が主。やってみましょう。私のこの小さな光が、天上からのよろこびを
受け取れますよう、どうか私にお力をお貸しください。」

 そう言うと石は、渾身の力を込めて、天上に呼びかけたのだった。

「天上に届け、我が祈りよ。そして我が主の望みを叶えたまえ。」
そう言うと、固く閉ざされた原石の割れ目から、一心に天上へと真っ直ぐに、自身の光を
伸ばしたのだった。
 二人を包む光の中から、まっすぐに天を目指すローラインの石の光。 

こうして、石はローラインの願いを受け、一心に天へと光を伸ばした。
天界を目指して真っ直ぐに進む光。

 しかし、その光は天界の高き所まで到達せず、空の途中まで来ると、ピタリと留まったまま、
それ以上進む事ができないでいたのだった。

人々は、固く閉ざした儀式の光の中から、天へと延びる光を見て、驚き見たのだった。
「ローライン・・・。」そんな中、母は心配そうにその光を見つめながら、胸がはちきれそうになるほど
、ローラインの無事を祈ったのだった。

 一方その頃、第二の島から何やら光が伸びているのを、空の城の者達も見つけると、
少しずつそのざわめきが広がっていったのだった。

 そんな気配にカサレス王子も気が着くと、その光がローラインの石の光であることを感じ取ったのだった。

「ローライン?いったい、君はどんな願いを望んだんだ・・・?」
 この空の領土での成人の儀式は、第二の島から第三、第四、空の城がある第五の島まで、
それぞれに礼拝堂があり、各々が自身の力に合わせて礼拝堂を選び、自身の「成人の儀式」を
おこなっていたのだった。

 しかしそれと同時に、礼拝堂は高さが増すごとに、儀式を行う者の力量もまた必要としていたのであった。

ましてや、天上に石の力を願い出る事は、そう容易いものではない。
それは今の空の王の「やすらぎの力」を願い出て以来、誰も天に向かって願い出た者はおらず、
もちろんかつて今まで、低い地の第二の島の礼拝堂から、天上に向けて願う者など、いなかったのであった。

 カサレス王子は鼓動の早まりを抑えて、ローラインの無事を祈った。
そしてその頃、こちらも気づいていたタリオス王も、この光がよもやか弱い少女の願いであろうとは、
この時思いもよらなかったのであった。

 遠くその光を見下ろすと王は、「ほう、第二の島の礼拝堂から、天に向かって願い出る者がおろうとは、
物好きな・・・。しかしかように豪胆な者がおろうとは、また頼もしい。ほんにその者の願いが届けばよいの。」
そう言うと、後押しをする様に見ていたのであった。

 しかし、なかなか天上を登る事ができない己の力に、やがてローラインの石は、気落ちして
こう告げたのだった。

「すみませぬ、我が主。私の力が弱いため、これ以上天を昇っては行けぬようです・・・。」
そう自身の力の弱さを口惜しがり、ようやく言葉を振りしぼる様に告げるローラインの石。

 しかし、そんな石に向かってローラインは、こう言ったのだった。

「大丈夫よ。あなたは一人じゃない、わたしもいるわ。そう、私は希望の光、ローライン。
この名のもとにあなたの為に歌うわ。」そう言うと、目を閉じて静かに「希望の詩」を歌い始めたのだった。



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# by maarenca | 2014-10-15 09:45 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No35










THE SIX ELEMENTS STORY




No35



                                        著 水望月 飛翔



 ローラインは温かい湯につかると、静かに自身の心に呼びかけたのだった。
(母様、みんな。いつも私の事を大事に思ってくれてありがとう。みんなが私に沢山の気持ちを
くれたおかげで、とうとう私にもこの日が来たわ。)そう言うと静かに目を閉じたのだった。

 そして、(でもね、私・・。これからの私は、もっと皆の役に立てる人になりたいの。
でも私の身体は全然成長しないし、すぐに咳もでて、とてもこの身体では、みんなの役に
立てられるとは思えないわ。だから私が皆にできる事。私が皆の手を借りずに、誰の迷惑にもならずに、
自分ひとりの力で立っていきたい。そうこれからは、私自身で立って生きたいの。)

 ローラインは、いつも彼女の事を心配そうに覗き込み、助けてくれる周りの人々を気遣って、
常に笑顔を浮かべ、楽しそうにしている事をいつの間にか自分に課していたのだった。

 兄のキュリアスがいた頃までは、まだ幼かった彼女は本当に自分の身体や翼が皆と同じように
成長する事を、少しの疑いも持たずに信じ、いつの日か豊かな羽根がうち揃う美しい翼をもった
自分を想像しながら、ずっと夢見てきたのだった。

 しかし、自分の大好きな兄の成人の儀式が失敗に終わり、母のあまりの嘆きの姿にいつしか、
自分が幸せになる事なんてできないのでは?と、そして、不自由な身体の私の存在が、
大好きな兄様を追い詰めていったのでは?と、少しずつその清らかな胸に、悲しみの翳りが姿を
現し始めていったのであった。

 そして、そんな彼女を心配するように、彼女に向ける人々の目の中に心配の色を見つけると、
ローラインは人々のいたわりの心の中にある憐みを見たくないがために、いつしか暗くなっていく
心とは裏腹に、幼い頃と同じように無邪気を装い、明るく振る舞うようになったのだった。

 しかし、そんな振る舞いにも時には疲れを感じる様になり、まだ無邪気に笑えた幼い頃の自分と、
もうその頃には戻れない、しかし、常に笑顔を絶やさないようにと、いつしか笑顔を演じる様になって
いったローライン。

 温かな湯と霧に包まれながら、一人きりになったローラインは「フーッ。」と、ため息をついたのだった。
しかしそこへ、そんなローラインに遥か高い天井から、誰やら話しかける声が聞こえてきたのであった。

「なにやら小さなため息が聞こえた様じゃが・・・。そこにいるのは誰じゃ?」

ローラインはすぐに、その声のする高い天井を仰ぎ見て、じっと目を凝らしたのだった。
が、最初は何の存在もその瞳では見つけられなかったのだった。

 しかし、じっとその気配のするあたりに視線を送っていると、次第にゆっくりとうごめく、
何やら半透明な物体が天井の高い所から、ローラインの方に降りてくるのを、かすかに
感じ取れたのであった。

「あなたは、誰・・・?」
ローラインはゆっくりと、少し怖れを持ってこの声の主に聞いたのだった。
この静かな問いかけにその物体は、何かを思い出そうとするかのように、こう言ったのだった。

「わたしか・・・。私は一体何者だろう?・・な。長い時間を・・、わたしは自身の名前も忘れて久しい・・・。」

 そう言うと、半透明なその物体は、相変わらずゆっくりと、そのあいまいな輪郭を動かし続けたのだった。

それから続けて、「しかし・・・、そなたの声には何か聞き覚えがあるぞ・・・。
だが・・・、何かが少し違うようだ。以前は・・、そう、もっと希望に満ちていたようだが。今はなにか、
愁いを秘めているようじゃ・・・。」

 そう言うと、何かを思い出そうと、またその身をくねらせたのだったが、その半透明な物体の身に、
黒いインクが一滴落とされたように、先程よりも少し暗い色が、ゆっくりと漂い始めたのだった。

 ローラインは、今まで見た事もないこの謎の物体に、自身の心の内を言い当てられて、
鼓動が一つ鳴ったのだった。

「あなたは、私の事を知っているの・・・?私、あなたに会ったことがあって?」ローラインは
こう聞いたのだったが、何か自身もこの物体を知っていたような、しかし、どうしても思い出せない、
なにか霧の向こうのおぼろげな記憶を、必死で探ろうとしたのであった。

 しかし、思いつこうとするとそのしっぽの名残りが、どうしても自身の手からするりと逃げてしまうような、
どうにもならないもどかしさを、強く感じていたのだった。

(知ってる・・・。私、知っているわ。あなたを。)
そう、今はたどり着けないが、記憶のもっと奥底にある確かな感触を、ローラインは少しずつ、
手繰り寄せていたのだった。

 そんなローラインの心の変化を感じたその物体は、「おお~、そうじゃ。わたしを思い出しておくれ。
わたしが何者なのかを。」と、そう言うと、またローラインの心の中を感じ取り、不思議そうに
こう言ったのだった。

「そなたは・・、なぜ希望を捨てたのだ・・・?ローライン。」思いもかけず、見知らぬその物体から
自身の名前を呼ばれたローラインは、驚いてこう聞いたのだった。

「なぜ、私の名前を知っているの?」そうローラインが聞くと、
「ローライン・・・。そなたの名前はローラインというのか。」と言うと、先程よりも少し嬉しそうな気配を持って、
またその身をくねらせたのだった。   

それからゆっくりとローラインにこう言ったのだった。
「そなたは知っておるか・・・?ローラインと言う言葉の意味を・・・。」
そう言うと、また一つ大きくその半透明な身体を、ゆったりと大きく回転させたのだった。

 ローラインが不思議そうに見ていると、また、ゆらゆらと漂いながらこう告げたのだった。
「ローライン・・。それは古い空の民の言葉で、「希望の光」と言う意味なのだよ・・・。」

「希望の光?」ローラインが小さく繰り返すと、なおもその物体は続けてこう言ったのだった。

「そう、そなたが持つ「希望の光」を私は覚えている・・・。私は本当にそなたの「希望の光」が
好きだったのだ・・・。だがどうしてだろう?その光が少しずつ小さくなってしまったのは。
そうして、わたしはだんだんと眠りについていったようだ・・・。それからわたしは、自分の名前さえ
忘れてしまった。風が・・・、そうだ。風たちがわたしの周りを吹かなくなったからだ。」そう言うと、
少し考え込んだ後、何かを思いついたように、ローラインにこう告げたのだった。

「おおそうじゃ。風たちはそなたが彼らの歌に耳を貸さなくなったと、嘆いておったな・・・。」
 この物体の言葉にローラインは、何を自分に言おうとしているのか、少しも理解できない事に、
いら立ちを覚えたのだった。

「待って、わたし・・、あなたの言っている事が全然わからないわ。風たちって、いったいなんなの?
私は、もう何も考えないただの子供じゃないわ。」ローラインは、ただ無邪気に夢見ていた幼い頃の
自分を、断ち切るかのように、そう強く言ったのだった。

 しかしその物体は、そんなローラインを、少し悲しそうに見つめ身体を震わすと、愁いを含めた声で
ローラインにこう言ったのだった。

「希望の光、ローライン。そなたには今、何が見えておる・・・?」
 そんな悲しみを含んだ言葉に、ローラインはこれまでの抑えていた感情をみせるように、怒って
その物体に自身の感情をぶつけたのだった。

「何が見えているかですって?私の目から見えているものは・・、母様や周りの皆の、
わたしを心配している目よ・・・。そう、そんな悲しそうな目しか見えないわ。わたしは・・・、
もうみんなの心配そうな目を見たくないのに・・・。だから・・、だから私はいつも笑っていたの。
 そう、たとえ笑いたくない時でも・・・。でも、もう嫌なの。私はもう、誰の手も借りずに一人で
なんでもできる様にしたいの。もう、みんなの迷惑になんかなりたくない・・。風の歌なんか知らない・・。
そんな歌、わたしは聞いた事なんかないわ。」   

 最後は語気を強めてそう言うと、ローラインは悲しそうに真っ直ぐにその物体を見つめたのだった。

「ローライン・・・。希望の光よ・・。本当に周りの者の目の中に、心配の色しか見つけられなかった
というのか・・・?本当にそなたは皆の目の中に、そなたへの憐みを見つけたとでも言うのか・・・?」
そう言うと、寂しそうに悲しい音を立てながら大きく天上を一回りしたのだった。
それから、またゆっくりと元の位置に戻って漂うと、そっとこう言ったのだった。

「希望の光。私はそなたの「希望の光」が本当にすきだった・・・。そなたはいつも明るく、楽しそうで、
そんなそなたの歌声が大好きだった・・・。人々がそなたの周りに集まるのは、ただそなたの温かな
「希望の光」に触れたいが為。ただそれだけで集まってきたのではないだろうか・・・?ローライン。
そなたを迷惑に思う者など、本当にいたのだろうか・・?そなたは人々の手を受け入れる事が
本当にもう嫌なのか?人々がそなたに近づくことはもうできないのか・・・?」

 最後は、自身がローラインに拒絶されたかの様に、悲しみを含めてこう言ったのだった。
ローラインはその悲しそうな言葉を、そっと胸の中で反復したのだった。

(みんなは私を心配して、いろいろ助けてくれていたんじゃなかったの・・・?
母様はこんな身体の私を哀れに見ていたんじゃなかったの・・・?)
そう思うと、ローラインは皆の顔をゆっくりと、思い出そうとしたのだった。

(みんな、いつも嬉しそうに笑ってた・・・。私が「ありがとう。」って言うだけで、いつも喜んでくれた・・・。
私が笑うだけで・・・。わたしが歌うだけで。みんな本当にうれしそうに、喜んでくれていたわ・・・。)

 こうして、人々の笑顔をゆっくりと思い出すとローラインは、静かに涙を流したのだった。
そんなローラインにその物体は静かに、温かくこう言ったのだった。

「ローライン・・・。希望の光。そなたが希望に満ちていた時の事を思い出してくれたかい?」
そう優しく聞かれると、ローラインは先程までとはうって変わった以前の優しい表情に戻り、
にこやかにこう答えたのだった。

「はい、思い出しました。私が人々の「希望の光」であることを。そして・・・、あなた様がこの空の守り神。
「碧き飛翔の女神」であるという事も。」

 ローラインが目の前の物体に向かってそう言うと、どこからともなく現れた風たちが、
その物体の周りを一斉に吹きぬけて、先程までの薄暗い半透明の色を拭い去り、心細そうな揺らぎを
追い払ったのだった。

 そしてその姿を、見る見るうちに美しいプラチナに輝く翼を凛と湛えた、光り輝く飛翔の女神の姿に
仕立てたのだった。

 こうして女神は、本来の姿であるその美しい顔を、ローラインに向け見下ろすと、懐かしそうに
ほほ笑み、こう言ったのだった。

「ローライン。わが希望の光よ。よう我の名を思い出してくれた。そなたの風たちも、
よく舞い戻ってきてくれたの・・・。」そう言いながら、周りを吹く風たちを嬉しそうに見つめたのだった。
風も自身の女神の覚醒を喜び、ローラインに温かく吹くと、その額に優しい歌を注いだのだった。
 ローラインは、彼らの優しい歌声を久しぶりに全身に浴びると、風たちに向かって、こう言ったのだった。

「私ったらいつの間にか、自分からあなた達の歌に耳をふさいでしまっていたのね・・・。
ごめんなさい。いつも私に歌ってくれていたのに・・・。」

 そうして周りに漂う風たちを、懐かしそうに慈しむ様にほほ笑んだのだった。
ローラインの優しい頬笑みを受けて、軽やかに晴れやかに舞う風たち。

すると、風たちの中の一番小さな風がローラインの元に近づいて、そっと小さく彼女に
耳打ちをしたのだった。

その風の言葉を聞いて、ローラインは嬉しそうに声をあげた。
「そう、兄様はご無事なのね・・・。」そう言うと、ローラインの頬に暖かな涙が流れたのだった。

「わかったわ・・・。私も人々の温かい気持ちを、これからも喜んで受け取っていくわ。
そうする事が、周りの人達に本当に喜んでもらえる事なのよね?私が、本当に心から喜んで
受け取る事が・・・。この身体に生まれたからこそ、唯一私にできる事。もう私は自分を憐れまないわ。
そして伸びやかな心ですべてを受けいれる。そうする事がまた、真の平和と美しさを備えた
「碧き飛翔の女神」であるあなたを讃えられる事なのですね?」

うれしそうに高らかに、ローラインはこの美しい女神にそう告げたのだった。
 
 女神はローラインの言葉を受け取ると、無言で頷き、真っ直ぐにローラインを見つめた。

それからしばらくして、女神は風たちから何かを囁かれると、ローラインに視線を戻して、
こう告げたのだった。
「我が娘、ローライン。そろそろそなたは成人の儀式に行かねばならぬようじゃ。しかし、案じる事は無い。
そなたならきっと、自身の信じる心を持って、そなたの石と一体となる事ができよう。さあ、お行きなさい。
皆の元に・・・。」

 そう言うと女神は両手をさっと広げると、ローラインを祝福する様に、金と銀に輝く美しい羽を
彼女の頭上に降り注いだのだった。

 ローラインはその羽を掌いっぱいに受け取ると、嬉しそうに顔に近づけてから、パーッと大きく
天上に向けて大きく撒いたのだった。

そしてローラインは、ゆっくりと浴室から出ていったのだった。




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# by maarenca | 2014-10-11 12:15 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No34






THE SIX ELEMENTS STORY No34





No34



                                    著 水望月 飛翔



「キュリアス・・。」

王子がふと彼の名前を口にすると、その瞬間、カサレス王子は我に返ったのだった。

 ローラインは少し楽になった呼吸にホッとしながら、ゆっくりと王子の方に顔を向けると、
カサレス王子は少しバツが悪そうにうつむいたのだった。

 しかし、ローラインの真っ直ぐに王子を見つめる力強い視線を感じとると、カサレス王子もまた、
ローラインの顔を見つめたのだった。

 しばしの間二人の間に言葉はなく、ただ優しい風だけが二人を暖かく包んだ。

「ローライン・・。」
王子はようやく口を開き彼女の名前を呼ぶと、ゆっくりと彼女の小さな白い手を取ったのだった。

 ローラインは王子のなすがまま、ただ静かに王子の顔を見つめていたのだったが、
やがて王子の美しいサファイアブルーの瞳から、一筋の涙がつたってきたのを見たのだった。

「カサレス王子。」ローラインは小さく王子の名前を口にすると、王子の手を両手で優しく包み、
ギュッと力を入れてカサレス王子に、にっこりと明るくほほ笑んだのだった。

 王子はそんなローラインの、自分を励まそうとする気丈な姿に、流れる涙をそのままに
王子も頷きながら、ローラインに笑顔を返したのだった。

 軽やかなアクアブルーの空の上を漂う真っ白な雲が、風に吹かれながら少しずつ歩を
進めていると、やがて柔らかなコーラルピンクの色が雲に変化の色を着せ、次第に
友情のオレンジ色の光が二人の上に温かに降り注いだのだった。

 カサレス王子とローラインは、キュリアスとの思い出を時の経つのを忘れて、語り合った。
いつまでも尽きない会話。大好きな人の記憶を話し合える喜びに満ちた笑顔。
しかしその時間は永遠ではなく、王子が城に戻らなければいけない時が来たのだった。

 しかし、王子は城に戻る前に、ローラインとある約束をした。
それはこれから、満月の夜の次の日に、またこの場所で二人で会おうというものであった。
 ローラインはこの王子の申し出に、喜んでうなずくと、城に戻っていくカサレス王子の後姿に
、大きく手を振りながら、いつまでも見送っていたのだった。

 そうして二人は、次の満月の夜をずっと待ち遠しく思う様になっていったのだった。

 最初の頃の二人は、大好きだったキュリアスの、しかし遠くはっきりとしない幼い記憶の断片を、
まるでパズルを一つ一つ繋ぎ合わせていくかの様に、埋め合わせていったのだったが、
いつしか二人の大切な人、キュリアスの話から、それぞれお互いが、満月と満月の間の会えない
時間を埋め合わせるかの様に、相手の様子や話に耳を傾ける事が多くなっていったのだった。

 そして、二人が出会ってから2年が過ぎたころ。

 その日のローラインは、いつもカサレス王子に見せる屈託のない笑顔の表情とは明らかに違う、
なにか思いつめた様にときどきため息をついては、少し怖い顔をしている事にカサレス王子は、
気づいたのだった。

 王子は、そんなローラインに、どうしたのかと尋ねたのだった。
カサレス王子の横で、足を伸ばして草の上に腰を降ろして座っていたローラインは
、ゆっくり一つ息を吐くと、意を決した様に王子を真剣に見つめて、こう言ったのだった。

「カサレス王子、あのね。実は私・・・。明日が私の16歳の誕生日なの。」そう言うとローラインは、
王子から視線をそらし、口をきゅっと固く結んで、高く空を見つめたのだった。

 カサレス王子は、このローラインの告白に驚き、「えっ?君って僕より2歳年上だったの?」
と聞いたのだった。

 しかし、明日の成人の儀式を、緊張して迎えようとしているローラインの耳に、全く考えても
みなかった事を聞くカサレス王子の言葉が届くと、ローラインは怒ったようにゆっくりと、
王子の方に向き直ったのだった。

 ローラインは最初、怒ったような顔を王子に向けたのだったが、この間の抜けたカサレス王子の質問と、
ローラインの怒っている表情に、戸惑を見せている王子の姿を見て可笑しくなり、ローラインは
いつもの様な明るい表情を見せると、つぎには明るい笑い声をあげたのだった。

 そして肩を震わせてひとしきり笑った後、目を丸くしてこちらを見ている王子に向かって、
「ええそうよ。私の方がカサレス王子より2歳お姉さんなんですからね。」と、いつもの屈託のない
笑顔でこう言ったのだった。

 カサレス王子は初めて会った時から、小さく華奢な身体で、あれから成長せず、いまだ幼い子供の様な
姿のローラインが、もうその様な年齢に達したのかと、驚きを持って見つめたのだった。

 しかしふと我に返ると、王子はローラインが明日、成人の儀式を迎えるという事の重大さに気づき、
少し心配そうにこう聞いたのだった。

「ローライン。明日が君の成人の儀式の日なんだね。何か僕に手伝えるような事は無いだろうか。
君は、その、大丈夫かい・・・?」と、先程までの表情とはうって変わって、今度は慎重に気遣う様に
一つ一つ言葉を選びながら、ゆっくりとローラインに聞くカサレス王子。

 そんなカサレス王子の問いに、ローラインはしばらく沈黙した後、王子の顔を見つめると、
今まで見せたことのないような思いつめた眼差しで、恐る恐るこう言ったのだった。

「カサレス王子。本当はわたし、少しだけ怖いの・・・。」

 そう言うとローラインは、唇を固く噛み、小さな身体をもっと小さくしたのだった。
そして、そのまま前を真っ直ぐに見つめながら、こう続けたのだった。

「でもね。わたしが元気のない顔をすると、すぐ母様が悲しそうな顔になるの
。ううん、母様だけじゃない。いつも私を気遣ってくれている周りの皆もすぐ心配そうな顔になるの。
だからわたし、頑張らないと。」  

 まるで、自身に言い聞かせるように、そう言うローラインだったが、しかしいつもの屈託のない
明るい笑顔は消え、小さく頼りなさそうに身体が小刻みに震えているのを、カサレス王子は
気づいたのだった。

「ローライン・・?」
ローラインの名を呼んで、カサレス王子がじっとローラインの事を見つめると、ローラインは
それまでずっと、一人で秘めていた悲しい感情を抑えきれず、その汚れのない美しい瞳からは
、大きな涙の粒が押し溢れてきたのだった。

「カサレス王子・・。どうしよう?もし、わたしまで失敗したら・・、母様、死んじゃうかもしれない・・。
そんなことになったら、わたし・・・。」

 ローラインはきっと、キュリアスの成人の儀式の失敗の後、ずっと悲しい思いに耐えてきた
母の姿を見て、幼いながらもこの母の事を思い、常に明るく振る舞ってきたのであろう。

 そして、周りの人々の優しい気遣いに、きっと自身の悲しみを少しでも、見せる事が出来なくなって
いったのだろう。

 明日の成人の儀式を前に、ようやくローラインは、自身の胸にずっと押し隠していた悲しみと、
対面したのだった。
 そしてカサレス王子の前で、ずっと心の奥底に眠っていた、自身の不安な思いを、打ち明ける事が
出来たのだった。

 そんな、初めて見せるローラインの不安げな姿に、カサレス王子は遠い日の自身の心細さを
なだめるかのように、ローラインを無意識のうちにゆっくりと抱きしめると、彼女の濡れた頬に
柔らかくキスをしたのだった。

 ローラインは、空の王子の身分のカサレス王子に、自分がキスをされた事に驚いて、
顔をあげたのだった。
 そんな動きを止めたローラインの頬を、そのまま王子は両手で包み込むと、ローラインに
ゆっくりとこう言ったのだった。

「泣かないで、ローライン。僕が、この僕がずっと君の傍に居るから。大丈夫、
君ならできるよ。ローライン。」真っ直ぐに見つめるカサレス王子の瞳の中に、ローラインを
勇気づける確かな思いを受け取ると、ローラインは先程までとは違う、新しい温かな涙を流したのだった。

「カサレス王子・・・。ありがとう。」
ローラインはようやくそう言うと、カサレス王子に笑顔を見せながら、溢れる涙をぬぐったのだった。

 その日の夜、カサレス王子はローラインの事が気になり、いつまでも眠りにつけないでいたのだった。
そして、そんな落ち着かない王子の波動にまだ幼いリティシア姫は、何を思ったのか、
「にいちゃまの所にいくの・・。」と言うと、無理やり従者にせがんで、王子の部屋に連れて行って
もらったのだった。

 そうしてカサレス王子は、真夜中に自身の部屋のドアをノックするこの予期せぬ、小さな来訪者に
驚いたのだったが、困ったような顔をしている従者から姫を受け取ると、そのまま王子のベッドに
連れて行ったのだった。

 そして小さなリティシア姫をそっと優しくベッドに置いて、その隣で横になり肘をつきながら
姫の顔を覗き込むと、「どうしたんだい?リティシア姫。」と優しく聞いたのだった。

 そんな兄の問いかけに、幼いリティシア姫は立ち上がると
、「にいちゃま、しんぱいしないで。いい子いい子。」と言いながら、兄の頭を優しく撫でたのだった。
まだ本当に小さなリティシア姫に、慰められるように頭を撫でられて、カサレス王子は、
最初は驚いのだったが、それから静かにほほ笑んだのだった。

 リティシア姫の優しい小さな手の感触に、カサレス王子はスーッと気持ちが穏やかになると、
それまではただただ心配に思っていたローラインの事を、強く信じる気持ちに変化させていったのだった。

 こうして、いつもの落ち着きを取り戻した兄の優しい気配にホッとしたのか、リティシア姫は
それからすぐに、兄の隣に寝転ぶと、王子の隣で幼い寝息を立て始めたリティシア姫なのであった。

 そんなあどけない姫を穏やかに見つめながら、カサレス王子は翼で姫を優しく抱くと、
自身の胸にこう言い聞かせたのだった。
「ありがとう、リティシア姫。そして、君を信じるよ。ローライン。」

 ローラインはその日、朝からずっと、緊張していたのであった。
そして、心配そうに覗き込む母と周りの人々の手伝いをすべて断り、一人第一の島の「癒しの浴室」へと
車輪を回しながら向かったのだった。

 ローラインが「癒しの浴室」の前に着くと、そこに今まで見た事の無い、真っ黒な衣を身にまとった男が、
ローラインを静かに出迎えていたのだった。

「ようこそいらっしゃいました。さあ、どうぞ中へ。」
男はそう言うと、ローラインを浴室内に招いた。
「こんな人、今までこの浴室にいたかしら?」ローラインは不思議に思ったのだったが、
すぐに自身の成人の儀式の事に気を向けると、緊張した面持ちで湯船に浸かったのだった。






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# by maarenca | 2014-10-08 13:31 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No33








THE SIX ELEMENTS STORY





No33




                                         著 水望月 飛翔



 キュリアスには、年の離れた妹が一人。
彼女の名前は、ローライン・グリュスター。

 彼女は幼いながらも、とても美しい歌声とホワイトゴールドの絹糸の様な美しい髪を持ち、
また彼女のほほ笑みは周りの人々や、いやそれどころか天空の冷たく輝く星達でさえ、
その冷たい色を温かい色へと変えるほどの、愛らしさを持つ少女なのであった。

 キュリアスは、この幼い妹をそれはそれは大事に思っていた。
そして、ローラインの歌声を聴くことが、キュリアスにとっては何よりも幸せな時なのであった。

 キュリアスはいつも、目を瞑ってローラインの愛らしい歌声に耳を傾けていたのだったが、
キュリアスにとってはこの時が、いつまでも溶けない魔法であって欲しいと、何度願った事であろう・・・。

 しかしそんな思いとは裏腹に、歌の終わりとともに再び目を開けたキュリアスの視線の先には、
愛らしいローラインの笑顔と、彼女にはとても似つかわしくない、まるで干からびた枯れ枝の様な
二本の脚が、菫色の衣服の端から寂しくのぞいて見えたのだった。

 歌が終り目を開けた時、キュリアスはその脚に意識がいかないよう、すぐ視線をそらすのだったが、
横を向く時の悲しそうな瞳の色をローラインのきれいな瞳は見過ごさなかったのだった。

 そんな、悲しそうな目をする兄にローラインは、わざと少し怒ったように頬を膨らませると、
兄に向かって「兄さま、またそんな泣きそうな顔をして。私はちっとも悲しくなんかないのに。
兄さまはそんなに私の脚がおキライ?」と、無邪気に聞いたのだった。

 そんな時キュリアスは、自分よりずっと幼い妹にそう言われて、いつも慌てて
「ごめんローライン。僕もけっして君の脚が嫌いじゃないよ。ただ、ちょっとだけ、悲しくなっちゃったんだ。
ごめんよ、ローライン。」と、急いで幼い妹に謝るのだった。

 しかし、そんな済まなそうに謝る兄に向かって、ローラインは少しおどけながら、
「兄様、私は大丈夫よ。今はまだあまり外にでられないけど、でももう少し大きくなったら
私の翼だって、もっと大きくなるでしょ?そうしたら私、自由に飛んでどこへでも行っちゃうわ。
私の方が兄様よりずっと軽いから、きっと私に追いつかないわよ。」と、楽しそうに屈託なく笑うのだった。

 ローラインのそんな無邪気な姿を見て、キュリアスは必死で笑顔を作りながらも、しかし心の中では
また、新たな悲しみが湧き起ってくるのであった。

(ローライン。君の翼は君のその華奢で小さな身体と同じ様に、同い年の子供達と比べ物に
ならないくらい小さい。羽の一本一本も生気がなくみすぼらしくて。きっと君の翼も君の脚と同様に、
君の身体を自由に何処かに連れて行ってくれることは無いだろう。)と、心の中で一人さびしく
思ったのだった。

 そう、ローラインの羽はみすぼらしく、弱々しく、力のない羽は、同じ年の頃の子供たちと違って、
未だにぎこちない羽ばたきしかできないのであった。

 しかし、自身の兄がこの様な悲しい思いを持っていようとも、ローラインはいつも明るく、
「私はきっと、いつか自由に何処へでも飛んで行けるし、きっとたくさん幸せになるんだわ。」
と、一人夢を見る様に疑いなどみじんもなく、常にそう思っていたのであった。

 そしてまた、そんな前向きな気持ちをいつも胸に抱いているローラインの事を、周りの空の人々は
本当に大事に、慈しんでくれていたのだった。

 いつも咳き込むローラインは、あまり外に出られない為、ローラインの事を気遣って、いろいろな物を
持ってきてくれたり、大切にしてくれる人々の優しさと、ローラインの嬉しそうに笑う姿を見て、
キュリアスはいつしかもっと、人々の役に立ちたいと思う様になっていった。

 そしてキュリアスが14歳のとき、カサレス王子の世話係として、新しい従者を向かい入れる
御触れが領土中に出されると、キュリアスは第二の島から無謀にも、その試験に挑んだのだ。

 王の前に集まった者たちは、第三、第四の島だけでなく、城に仕える執政や学者の子息が居並ぶ中、
キュリアスは見事、空の王のお眼鏡にとまり、カサレス王子に仕えたのだった。

 厳格なる空の王がなぜ?キュリアスを選んだのだろうか・・・?

家柄や形式を大事に考えていた空の王ではあったが、人々の本質を見抜く力は誰よりもあり、
様々な試験を通してキュリアスの心の強さ、美しさを見抜くと、前例のない大抜擢をしたのであった。

 そうしてカサレス王子の元で、城に詰めるようになっていったキュリアスは、各領土から集まった
「聖なる騎士団」の長老たちの話を身近に聞く事により、彼らに憧れ、16歳の成人の儀式に
「どんな病をも治す力」を自身の石に願い、その力と共に、ローラインの病を治すだけでなく、
全領土の人々をも治す為、「聖なる騎士団」に入るという夢を、いつしか強く持っていったのだった。
 
 そんなキュリアスの石宿しが失敗してから、どれ程の時が経っただろう?
カサレス王子は、その日もこっそりと空の城を抜け出すと、キュリアスの釦を見つけたあの礼拝堂へと、
一人向かったのだった。

 カサレス王子はずっと、長年ある疑問を抱えていた。
それは、「どんな病をも治す力」を願ったキュリアスが何故失敗したのか?
何故、その様な崇高な願いを石が受け入れなかったのか?
 正しき心が挫かれる。はたしてそんな事があっていいのであろうか?
この美しい空の領土で、こんな悲しい事が、はたして起こっていいのだろうか・・?と、カサレス王子は
何度も自分の胸に問い続けたのだった。

 そう、残念ながらごく稀に、石宿しを失敗してしまう者は、この空の領土にもほかの領土でも
存在したのであった。そうして失敗した者は皆一様に、人知れぬまま、まるで霧が消え入るように、
そっと領内から消えていってしまったのだった。

 いったい彼らは何処にいってしまったのだろう?
その問いの答えは、まだ誰も、一向に得られないままなのであった。

 第二の島のひっそりとした丘に着くとカサレス王子は、今はもう、その姿を見せない友に
こう呟いたのだった。
「キュリアス・・。今年もここに来たよ。」

 王子はそう言うと、ゆっくりと目を閉じて腕を広げると、自身の周りを流れる風に、そのまま静かに
身を任せたのだった。

 そうしてしばらくの間、風の流れに耳を済ませて静かに佇む王子の頬に、いつしか一粒の涙が
伝って来た時、どこからか遠く、聞きなれぬ美しい歌声が王子の耳に届いたのだった。 

 カサレス王子の耳元に、小さく、しかし澄んだ歌声が届くと、王子は目を瞑ったまま、その歌声が
近づいてくるのを聞いたのだった。

 しかし、その美しい歌声が徐々に近づくにつれ、「ギシッ、ギシッ。」という耳障りな、何かが
こすれる様な音も一緒に近づいてきたのだった。

 カサレス王子は、(この音はいったいなんだろう・・・?)と思って聞いていたのだったが
、しばらくして涙をぬぐいながら、その歌声の方に振り向くと、まだ少し先の方から、何やら見慣れぬ
車輪の付いた動く椅子に座った少女が、王子の方に近づいてくる姿を目にしたのだった。

 その少女は、自分の方に振り返って、動きを止めてこちらを見ている王子の姿を見つけると、
王子の翼の隙間からこぼれる陽の光の眩しさと、神々しさに一瞬、「天使?」と小さくつぶやいたのだった。

 そして、車輪を動かしている両の手の動きを止めたのだったが、にっこりとほほ笑むと、
また歌いながら王子の方に近づいてきたのだった。

 王子の傍まで来たローラインは、明るく微笑みながら、「こんにちは。初めてお会いする方ですね。
お年は、私と同じ位かしら・・・?」と、まるで暖かい春の日差しにひばりが喜んで鳴くような、
美しい軽やかな声でカサレス王子に声をかけたのだった。

 王子は、穏やかな気配を持ちながらも、物怖じしない心地よい少女の問いかけに、先程まで
身を預けていた優しい風と、同じような心地よい温かさを感じ、王子もまたほほ笑みながら、
少女に向かってこう答えたのだった。

「こんにちは、初めまして。私はカサレスと言います。今年で12歳になります。
美しい声のひばりさん、あなたのお名前は?」カサレス王子の優しく優雅に滑るような物言いに、
すぐに何かを思い出した様に、少女の顔がパッと明るくなると、すかさず王子にこう聞いたのだった。

「まあ、あなたがカサレス王子ね?私はローライン。ローライン・グリュスター。ずっと前に
キュリアス兄様からあなたの事を聞いていたわ。そう、まだ私がずっと小さかった頃。覚えているわ。
兄様があなたの事をいつも話して聞かせてくれて。いつも本当に楽しそうに教えてくれたのよ。
私、ずっとお会いしたいって思っていたの。」

 そう言うと少女は、少し遠い目をしたのだったが、急に勢いよく話し出したせいか、少女の頬は
最初の頃よりも赤みを増して、瞳もキラキラと輝きだしたのだった。

 しかし次の瞬間、「ゴホッ、ゴホッ。」と激しくせき込むと、苦しそうに背中を丸めたのだった。
するとその拍子に、少女の膝の上に置かれていた布が崩れ落ち、少女の衣服の下から、
枯れ枝の様な脚があらわになったのだった。

 カサレス王子はその脚を見ると驚いて、思わず視線をそらそうと少女の翼の方に目をやったのだった。

 しかし、愛くるしい少女の笑顔に気を取られて、先程まで気づかなかったのだが、とてもこの少女の
笑顔には似つかわしくない、みすぼらしい小さな翼が寂しそうに、今度はしっかりと王子の目に
確認されたのだった。

 空の領土の民達は、あまり健康を害している者はおらず、皆それぞれ一様に美しさを保っていた。
そして、島を一つずつ登るごとにまた、美しさと思慮深さも増していったのだった。

 故に、空の王の城に仕える者達は皆美しく、ましてや身体に何か不便を生じている者を見る事など、
カサレス王子は今まで一度も無かったのであった。

 王子は少女の姿をみとめると、一瞬おどろいたのであったが、しかし、すぐ落ちた布を拾い上げると、
ゆっくりと少女の膝の上に乗せて、咳き込み苦しそうにしている少女の背中を、優しくさすったのだった。

 少女は苦しそうにしながらも、優しく背中をさすってくれている王子の方を見ると短く、「ありがとう。」
と言ったのだった。
 そんな少女に王子はほほ笑むと、「大丈夫。ゆっくり息を吸って。」と言いながら、そのまま少女の
背中をさすり続けたのだった。

(そうか・・・。彼女がキュリアスの妹のローラインか。少しだけ聞いた事があったな。歌が上手で、
髪がとても美しいんだって、キュリアスが嬉しそうに話してくれたな。そうか、彼女だったのか。)

 カサレス王子は、キュリアスが妹のローラインの事を、嬉しそうに話していた時の事を
思い出したのだった。

 そしてローラインも、ずっと自分の背中をさすってくれているカサレス王子の優しさに触れながら、
今は何処に居るやも知れぬ優しい兄の面影を、思い出していたのだった。

(キュリアス兄様。わたし、カサレス王子に会っていますよ。兄様がいつも話してくれていた様に
本当に心優しい、美しい方ね。)
 ローラインは、自身の心の中に描き出した、優しくほほ笑む兄の姿に向かって、そんな事を
話しかけていたのだった。

 そしてカサレス王子もまた、自身が描き出したキュリアスにこう話しかけていたのだった。
(キュリアス・・・。今、僕は君の大切な妹に会っているよ。彼女の美しい歌声と愛らしさは、
本当に君の言う通りだね。)

 こうしたカサレス王子の言葉に、うれしそうににっこりと頷くキュリアスの姿だったのだが、
やがて、悲しい雨に打たれたかの様に、愁いを秘めた悲しげな表情を見せると、ゆっくりと王子に
背を向けて、静かに離れていったのだった。





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# by maarenca | 2014-10-04 09:51 | ファンタジー小説

THESIX ELEMENTS STORY No32







THE SIX ELEMENTS STORY




No32





                                    著 水望月 飛翔


左手に美しいサファイアを宿したカサレス・クレドール王子。
この美しき王子の成人の儀式は、大地の王妃に起こった悲劇より、一年前まで遡る。

 カサレス王子は幼い頃より、いつも何か思い耽るような面持ちの厳格なる父、タリオス王に対し、
時にはもっと、寛げる様な安らぎを持ってもらいたい、という思いをずっと、心の隅に持ち続けていた。

 そう、この空の領土を司りし父王タリオス王は、常にこの領土の空気の清浄を心がけ、
少しでも星達の歪みや乱れがないか、また領土の民達の生活は均衡が保たれているか、
自身の精神を集中していたのであった。

 そのためか、まだ幼いカサレス王子に対する視線も、常に王子の肩越しに視線を送るような、
まっすぐに見つめる王子の目線と交わらない寂しさを、カサレス王子は一人味わっていたのだった。

そして、カサレス王子の胸に、ずっとありつづけるもう一つの想い。

それは、カサレス王子が一生忘れる事の出来ない、幼い頃の悲しい別れの記憶。
その悲しい思いをずっと胸に収めた王子は、その事により、ある大いなる決意を
芽生えさせていたのだった。

 しかし、その理由は誰も知らず、また一切誰にも知られてはならぬ事。

この人知れぬ思いによりカサレス王子は、自身の成人の儀式に、歴代の王とは明らかに違う、
低い位置とされるその手の内に、「あらゆるものを変える力」を宿したのであった。

 そうカサレス王子は自身の固い決意の元、成人の儀式を見事成し遂げたのであった。
がしかし、王子を取り巻く周りの反応は、多くの失望と落胆が色濃く上る表情を湛えた、
静かな冷たい反応だけなのであったのだった。

 その時、その場にいた長老ロードスさえもまた、長老ゼンスと長老ユランの手前、
自身の領土の王子の不甲斐なさに、大いなる失望を持ったのだった。

 もちろんゼンスもユランも、カサレス王子のこの石宿しを、ロードスが憶測したような
低い志とも臆病者とも思う事などなく、ただ、この力をどのように使う為に願ったのだろうと、
不思議に思うぐらいであったのだった。

 がしかし、さしたる表情の変化を見せない二人に対し、この時ロードスは、恥ずかしい、
という風に思い、そうして落胆の表情をそのままカサレス王子に向けたのだった。

 しかしそれから後に目にする事となる、ある事によってロードスは、カサレス王子に対して
とった己の行動をひどく恥じ、それから後はずっと陰ながら、王子を支えていたのだが、
しかし、まさかその様に自身を見守る目があろうとは思わず、カサレス王子はこれから長い時を一人、
真に宿す王子の深き優しい心を、誰にも理解される事など無いだろう事を胸に秘め、自身の道を
一人きりで進んでいく事を、選んだのであった。

 普段人前では、いつも優しい微笑みを浮かべているカサレス王子であったが、ふとした瞬間に
見せる瞳の奥の悲しみを、幼い頃からリティシア姫一人だけは、感じ取っていたのだった。

 そして、そんな兄の悲しみを少しでも和らげようと、兄の左手を取ると、「きれいね。」といつまでも
優しくなで続けるリティシア姫。

 そんな幼くあどけないリティシア姫の小さな手の感触に、少しずつカサレス王子は、
柔らかさを取り戻していったのだった。


 カサレス王子は若き騎士団の三人との昼食会の後、自身の部屋に戻り、小さなテーブルの上に
置かれている美しい装飾が施された箱を開けると、鈍く光る銀の釦を一つ取り出して左手の上に乗せ、
自身のサファイアとその釦をじっと、長い事見つめたのだった。

「キュリアス・・・。いったい君はいま何処に居るのだろう?」

小さく口の中でそう呟くと、王子はギュッとその釦を握りしめ、窓に近づき、今宵の青々とした
冷たく輝く月の姿に、遠い日の友の影を探したのであった。


 そうあれは、まだリティシア姫が生まれる前の事。
まだカサレス王子が4、5歳の幼い頃の事であった。

その頃、王子と共にいつも一緒にいた16歳の少年がいたのだった。
彼の名は、キュリアス・グリュスター。
心優しきキュリアスは、まだ幼い王子のお守り役として、いつも正しい方に王子を導いていたのだった。

 カサレス王子は、この頼もしい年の離れた友人を兄として尊敬し、またそんなカサレス王子を、
いつも大事に思っていたキュリアスなのであった。

 この二人は本当に、いついかなる時も一緒であった。
カサレス王子が初めてテレパシーを使って、会話をしたのはキュリアス。
また、カサレス王子がはじめて「聖なる騎士団」の長老達に会い、空の民とは違うその姿に驚いて、
とっさに隠れたのもキュリアス。
 そしてキュリアスは、そんなカサレス王子を優しい微笑みで和ませて、無事に長老達への
挨拶をさせたのだった。

 そんな頼れるキュリアスは、やがて自身の成人の儀式を迎えたのだった。

キュリアスはある強い思いを胸に持っていたのであった。
それは、自身が「聖なる騎士団」に入る事。
そしてキュリアスは大層な願いを胸に、成人の儀式へと向かったのであった。

 しかし、それは残念ながら失敗に終わった。

彼の石は、彼の望みを拒絶して、その目覚めた力はもはや彼の力では、到底抑える事が
出来ないまでに暴走を始め、次第に石は誰が己の主かも忘れると、とうとう大きな閃光を放ち、
一瞬で粉々に砕け散ったのであった。

 そして、その閃光と熱い爆風で大きく身を焼かれたキュリアスは、意識を失いその場に倒れたのだった。

 キュリアスの事を王子が聞いたのは、それからだいぶ経ってからの事。
成人の儀式の日以来、ずっと城に姿を見せないキュリアスを案じ、城の者達に聞いて回った
カサレス王子であったのだったが、何人もの者たちに聞いては歩き、しかし、一向にキュリアスの
事を話さない中で、ようやくその重い口を開いた者から聞いた言葉は、カサレス王子の想像とは
とてもかけ離れた、残酷な現実なのであった。

 そうして、キュリアスの成人の儀式の失敗を聞いたカサレス王子は、激しく動揺すると、
一人自室に籠ったのだった。

 しかし、キュリアスの成人の儀式の失敗を思うたびに、胸の鼓童が今まで経験したことのないほど
激しく脈打ち、カサレス王子はその夜とうとう寝付けずに、一人でそっと城を抜け出して、
キュリアスが成人の儀式を行った、焼けただれた「真実の礼拝堂」その場所に、一人立ったのだった。

 そう、その頃にはすでに、キュリアスの行方は分からず、もう空の領土内でキュリアスの姿を
見た者など、誰もいなかったのだった。

 一人さびしくその場に立つ、まだ幼いカサレス王子の脳裏には、いくつもの表情のキュリアスの
姿が、王子に呼びかけては、また静かに消えていったのであった。

 そんなキュリアスの幻影に、カサレス王子は必死になって話しかけたのであったが、とうとう、
すべての幻影が王子の前から消えていったのだった。

 そうして、一人とり残され涙にぬれた王子の瞳の端に、くずおれた壁の隙間から零れ落ちてきた
月の光に照らされて、なにやら小さく光るものが一つ。

「なんだろう?」そう不思議に思いながらも、カサレス王子はその光の方に近づいていったのだった。
するとそこには、キュリアスがいつも身に着けていたマントの釦が、今は寂しく、ただ転がっていたのだった。

 震えるその手を近づけて、その釦をそっと拾い上げるとカサレス王子は、大事な友、キュリアスの
気配を少しでも感じ取ろうと、顔を近づけて必死に握りしめたのだった。 

 しかし、それはもはやただの薄汚れた釦でしかなく、なんの反応もないままに、カサレス王子は
やがて、悲しみのあまりその場に力なく、泣き崩れたのであった。

「キュリアス、キュリアス・・・。どこに行ってしまったの?お願いだよ、また僕の傍にもどってきて。
キュリアス。石なんかいらない。石なんかなくたって、キュリアスはキュリアスなんだから・・・。」

 そう心の中で叫びながら、まだ幼いカサレス王子は一人、冷たく蒼く輝く月に向かって、
声を押し殺して泣いたのだった。

ただ冷たい風に、吹かれながら・・・。

 こうしてそれから後、カサレス王子はこの時の哀しい思いと、ある少女との出会いによって、
自身の石の力を定めていったのであった。

 あれから大分月日が流れ、カサレス王子は16歳となり、自身の成人の儀式の日を
とうとう迎えたのであった。 

 カサレス王子はこの日、今までの空の領土の王族にはあるまじき、第一の島まで降りて、
「癒しの浴室」で身を清めてから、王の城までゆっくりと歩いていったのであった。

 そんなカサレス王子の姿を見送った空の領土の人々は、王子の美しい純白のマントに似つかわしくない、
くすんだ釦を見つけたのだった。

「あれは、キュリアスの・・・。」

空の人々は声を出さずに押し黙り、静かに王子の姿を見送ったのだった。
 そして、カサレス王子が自身の儀式を無事に終え、左手に石を宿した姿を見せると、
王をはじめ人々は、「王子はきっと、キュリアスの失敗で怖気づき、あのような低い手の位置に、
大した役にも立たない力を願ったのであろう。」と思ったのだった。

 そうこの時はまだ、誰一人として、カサレス王子の真の意志を知ろうとする者はいなかったのだった。



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# by maarenca | 2014-10-01 09:42 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY  No31








THS SIX ELEMENTS STORY






No31




                                      著 水望月 飛翔



ジインの心の中の思いを、最初からずっと感じとっていた城の従者達であったのだったが、
そんなジインのあまりの不躾な思いに、さすがの彼らも少し気を悪くしたのであった。

 それまではゆったりとそれぞれに、この空間を楽しんでいたイズールとリューレンだったが、
カサレス王子の両翼の一人、フリュース・リュードがイズールに、テレパシーで話しかけて
きたのであった。

「聖なる騎士団のイズール殿。あまりこう言う事を言いたくはないのだが。この大地の騎士殿の
無遠慮な思いは、いかがなものだろうか?そなたは、かの御仁の思いに気が付いておいでか?」
と、聞いたのだった。

 そんな問いかけにイズールは、ハッとしてジインの気配を感じ取ると、テレパシーで
こう答えたのだった。
「カサレス王子の両翼のお一人、フリュース・リュード殿。これは、申し訳ありませぬ。
大地の騎士ジイン殿は、まだ最近騎士になったばかり。彼はまだまだ心のコントロールが
着いておりませぬ。どうか、今はまだ寛大にお許しいただけないでしょうか?」と、イズールは
従者フリュースに謝ったのだった。

 空のテレパシーを使うことは出来ないリューレンだったが、そんなイズールの異変を隣で
うすうす感じ取ると、イズールに大丈夫ですか?と小さな声で聞いたのだった。

 イズールは、心配そうに聞いてきたリューレンに、何でもないと答えたのだったが、
それでもリューレンは、(きっとジイン殿の退屈そうにしている思いに、この城の従者の方々が
不快に思ったのであろう。まだコントロールが出来ていないとはいえ、ジイン殿は、この静かに
緊張している気配を全く解っていないようだ。罪な事を。)と心に思ったのであった。

 そんなそれぞれの思いが交錯している中、部屋のドアが静かに開いて、カサレス王子と
リティシア姫が、足音もせずに静かに室内に入ってきたのだった。

 しかし、カサレス王子は一足この部屋に入るなり、こうした彼らの思いの残像を瞬時に感じ取ると、
一同にこう言ったのだった。

「これはこれは。大変お待たせをした様ですね。申し訳ありません。「聖なる騎士団」の皆様。」
と言うと、すぐその後にテレパシーで(遅れてすまない、フリュース。アーキレイ。)と従者達に
言ったのだった。
 リティシア姫も部屋の空気を感じ取り(遅くなってごめんなさい。)とテレパシーで謝ると、
カサレス王子の右翼を担うもう一人のアーキレイ・カーライルは(いいえ、そんな。)
と、恐縮したのだった。

 カサレス王子が騎士に声をかけると、すかさず三人は王子と姫を迎えて立ち上がったのだった。
そんな三人にリティシア姫が続けて、「お待せしてごめんなさい。でも、本当に皆様と
お話しできる事を楽しみにしていたんですのよ。」と言うと、優雅にふんわりとお辞儀をしたのだった。

 そんな、気品の中に親しみやすい愛らしさを漂わす姫の立居振舞に、若き三人もそれぞれ
親しみを持って、礼を返したのだった。

「さあ、どうぞお座りください。」カサレス王子の優しい物言いに、ジインはホッとして、
椅子に座りなおしたのだった。

 それからカサレス王子は、ゆっくりと三人を見ると、イズールとリューレンにこう話しかけたのだった。
「イズール殿。リューレン殿。お二人ともまた立派になられた様子。お二人の生気に満ちた
お姿を拝見できて、この惑星に住む者として、大変うれしく思います。」

 そうカサレス王子が穏やかに言うと、イズールが、「我らが空の領土の誇り、慈しみ深き優しさに
満ちたカサレス王子。あなた様にそのようなお言葉をいただき、私は本当に誇りに思います。
カサレス王子あなた様こそ、そのお優しさ、慈しみ深さが増々輝きをもって放たれたる事。
それをまた、間近に受けられたるは誠に幸せにございます。」

 そう言うと今度はリティシア姫に向かって、「そしてリティシア姫には、その名の持つ「天空の花」に
ふさわしく、この領土をそのお優しさ美しさで導かれております事を感じられ、これもまた、
私の喜びでございまする。」と、イズールはいつになく、彼の胸の内を真っ直ぐに二人に伝えたのだった。

 それに続いてリューレンも、「私もまたお二人にこうしてお会いできます事、真にうれしく、
光栄に存じます。他の領土にはない圧倒的な均衡を保つ空の領土にて、カサレス王子、
リティシア姫のお優しさに接する事が出来ます事は、私の最高の喜びでございます。」
と、深々と一礼したのであった。

 それを聞いてリティシア姫は、「まあ、あなた様のような誠意の方にそう言っていただけて、
とてもうれしいですわ。」と嬉しそうに言ったのだった。

 そして、ゆっくりとカサレス王子の方を向くと、リティシア姫は少し意味ありげに王子に
視線を送ったのだった。

 カサレス王子はすかさずテレパシーで、(はい、解っていますよ。リティシア。)と返事をすると、
静かにジインに視線を向けてこう言ったのだった。

「ようこそ、大地の若き騎士、ジイン・クイード殿。よう我らが空の領土に参られました。
いかがですか?この空の領土の感想は?」と、ジインに聞いたのだった。

 先程から四人のやり取りをじっと見入っていたジインであったが、王子の視線が自身に
真っ直ぐ向けられると、ジインの鼓動が一つ高く鳴ったのだった。

 そして、一瞬言葉に詰まったジインであったが、ゆっくりと息を吐くとカサレス王子と
リティシア姫に向かって、こう言ったのだった。

「はい、あの、とてもスゴイです。大地の領土にはこんな高い所なんてないですし。
こんな雲の中の城に自分が居るなんて、まだ信じられない感じです。でも、ちょっと冷たい様な
寒い空気が、俺にはなんだか、ピリピリするようで。」と腕をさすりながら言うと、カサレス王子の
左手のサファイアに目が止まり、王子の左手をじっと見ながらこう言ったのだった。

「それに、カサレス王子は、左手に石を宿しているのですね。空の領土の王子にしては
珍しい様な気がしますが、いったいどんな力を宿しているのですか?ほんとにきれいな
サファイアですね。もっと近くで見てもいいですか?」  
   
 ジインは自分を真っ直ぐに見つめる王子の視線にドキドキすると、視線をそらそうと
ふと向けた先に、王子のサファイアに目が留まったのだったが、その深く澄んだ青い石に魅入られ、
つい王子に軽く聞いたのだった。

 しかし、そんな不躾な事を遠慮なしに聞いてくるジインに、先程から料理などを運んでいた
従者達の手が止まると、従者達は何か言いたそうに、カサレス王子の第一の従者アーキレイと
フリュースに視線を投げかけたのだった。

 フリュースは、そんな皆の思いを受け取ると、皆を制するように右手を挙げると、そのまま静かに
腰の剣に手を置いたのであった。

 そんな動きを見てカサレス王子は静かに、(フリュース。)とテレパシーで言うとフリュースは
(解っております、何もいたしません、王子。ただこのような無礼な振る舞いを、捨て置く訳には・・・。)
とテレパシーで答えたのだった。

 そんな最後の言葉を濁すフリュースに、カサレス王子は少し遠い目をすると、再びテレパシーで、
こう言ったのだった。

(許してやって欲しい。フリュース、皆の者。彼は全く悪意を持って言っているのではない。
王子の身分である者の、手の内の石宿しにただ興味を抱いているだけなのだから。
しかし、もし彼の言葉が屈辱的に聞こえるのだとしたら、それは私の力が弱いからであろう。
むしろ責められるのは、私の方かもしれない。肩身の狭い思いをさせてしまって、済まない。みんな。)  

 そんなカサレス王子の気遣いの言葉に、フリュース、アーキレイと居並ぶ従者達は、あるいは
自分たちの反応が、この優しき王子を傷つけてしまったのではないかと、また心を痛めたのだった。

 そんなやり取りなど知らないであろう発端のジインの不躾な質問に、イズールとリューレンもまた、
内心飛び上るほど驚いて、ジインに何か一言言おうと思っていた時だった。

 しかし、王子のサファイアの美しさに、ただ好奇心が抑えきれずに、ワクワクしながら無邪気に
聞くジインの表情と、彼の不躾な質問に眉をひそめる周りの者の対照的な反応の違いを見て、
カサレス王子とリティシア姫は顔を見合わせると、次の瞬間、大きな声を出して笑い出したのであった。

 そんな王子と姫の姿に驚いた一同を見て、ジインの隣に座っていたリューレンは、
内心穏やかでいられず、困った顔をしながら、ジインを見つめたのだった。しかしカサレス王子は
左手をあげると、やんわりとリューレンを制し、楽しそうにこう言ったのだった。

「これはなんとも素晴らしい。新しいタイプの騎士の誕生ですね。私もリティシアも本当に
久しぶりに笑ったような気がします。」と言うと、憮然としている周りの者達に穏やかな視線を投げると、
カサレス王子はそれから続けてこう言ったのだった。

「ごらんのとおり、整然とした美しさは本当に素晴らしいのですが、やや楽しさに欠ける我が領土。
この冷たい空気に、こんなに楽しく温かな風を運んでくれようとは、ありがとう。ジイン・クイード。」

 一通り笑ってそう言うと、少し間を置いてカサレス王子は、ゆっくりと自身の左手のサファイアを
しみじみと眺めたのだった。

 それからしばらくして、ジインの方に顔を再び向けると、ゆっくりとこう言ったのだった。

「そうですね。大抵王子の地位にいる者にとって、自身の手などという低い位置に石を置く者は
あまりいないでしょう。そう、かの地、炎の領土を別としては。私のサファイアが持つ力とは、
「あらゆるものを変える力」なのですよ。まあ、皆さんの様な、大いなる素晴らしい力ではありませんが、
私はこの力をとっても気に入っているのです。」と言うと、ジインに優しくほほ笑んだのであった。

 カサレス王子が穏やかにこう言うと、リティシア姫はそんな兄に向かって、
「兄様、私も兄様の石の力が本当に好きよ。それに。私は兄様がそんな風に笑ってくれる事が
本当に好きなの。」少しの哀しみもない王子の軽やかな笑顔を見て、リティシア姫はうれしく思い、
ジインの方に向き直ると、「ありがとう。ジイン様。」と、愛らしくほほ笑んだのだった。

 ジインは、昨日の王との謁見の時から、ずっと見とれていた美しい二人にまっすぐに
見つめられながら、そう言われて、思わず顔が赤くなるのを感じたのであった。それと同時に、
自分の軽はずみな言動が、この場にいる皆を混乱させた事をようやく理解したのだった。

「いえ・・、その・・俺は・・・。」
そう言ったきり、口ごもるジイン。

 しかし、久しぶりに見る、晴れ晴れと笑みを湛えたカサレス王子とリティシア姫の表情を見て、
イズールも、そしてカサレス王子の右翼を担うアーキレイと左翼を担うフリュースをはじめ、
その場にいた従者達も、ホッとした表情を見せたのだった。

 そしてイズールは、まだ内心一人心配そうな面持ちでいるリューレンに小声で、
「大丈夫なようですよ。」と嬉しそうに言うと、心配そうな面持ちのジインに、楽しそうに
目配せをしたのだった。
 
 イズールのそんな表情を見て、ようやく安心して笑みを浮かべるジイン。
 こうして、それからの時間を王子と姫と騎士団の三人は、楽しく和やかな空気の中、
いつまでも長い時間を共に過ごしたのだった。

 そして、空の色が少しずつ金蓮花色に変わり、やがてロワイヤルブルーに暮れていく頃に、
ようやく長老達の待つ部屋に、この若き三人は戻っていったのだった。

 今までになく、軽やかな気配を身にまとって戻ってきた三人に、長老達は「おやっ?」
と思いながら、三人を眺めたのだった。

 そして、すこししてから、ゼンスがこの若き三人にこう聞いたのだった。
「今日の王子と姫との昼食会は、ほんにそなた達には良い時間であった様だの。今まで以上に
良い交換ができたようじゃて。」と三人を見つめながらそう声をかけたのだった。

 そんなゼンスの温かい言葉を受けてイズールは、「はい、ゼンス様。今日のこのひとときは、
我らにとっては本当に楽しいものとなりました。正直な所、最初はどうなる事かと、私とリューレンは
とても心落ち着けたものではありませんでしたが・・・。」と言うとリューレンの方に視線を送ると、
リューレンもしきりにうなずいたのだった。

 それから続けてイズールは、「しかし、ジインの、何と言うのでしょう、素直な言動や正直さは、
やはり人々に暖かい気持ちを抱かせるようで、カサレス王子とリティシア姫と共に、本当に
楽しい一時を過ごすことができました。」と、長老達にこう言のだった。

 それを聞いて長老ロードスは、「カサレス王子もリティシア姫も楽しそうだったのだな?」
と念を押す様に聞いたのだった。

 その問いかけに「はい。」と晴れやかに返事をするイズールの顔を見て、
「それは本当に良かった。」と小さく言うと心の中で、(王子が楽しい時を過ごされた。ほんによかった。)
と一人何度も繰り返し、そう呟くロードスなのであった。

 こうしてまた一つ、空の領土の星たちの間に温かなまたたきが、増えた瞬間でもあったのだった。




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# by maarenca | 2014-09-27 17:49 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No30









THE SIX ELEMENTS STORY





No30



                                  著 水望月 飛翔


 (お二人に何か、話さなければ。)
ようやく少し身体を動かすとジインは、緊張した面持ちで「カ、カサレス王子。リティシア姫。
お目にかかれて、光栄です。俺、いやわたくしこそ、どうぞ空の領土の事をいろいろ教えてください。」
と、短い返事を返すので精いっぱいのジインなのであった。

 そんな、顔を赤くしながら、緊張しているジインの姿を見て空の王は、(ふむ、今日はこれ以上
、この者を緊張させない方がよかろう。)そう思うと、(皆のもの。本日の謁見は、ここまでといたす。)
と、王の広間にいた皆に、テレパシーを送ったのだった。

 そして、ジインに向かって「それでは、大地の騎士ジイン・クイード殿よ。我らが空の領土の
滞在をゆるりと楽しまれるがよい。」と言うと、タリオス王は長老達の方に視線を送り、静かに頷くと、
王妃と共に王の広間を静かに退出していったのだった。

 その姿を見送った空の領土の人々は、今一度「聖なる騎士団」の一向に礼を送ると、
続けて静かに退出していったのだった。そんな静かなる光景を見て、ジインは少し取り残されたような
寂しさを、覚えたのだった。

 ぼんやりと、寂しそうに立ち尽くすジイン。その耳元に突然、(またあとで。)と、小さな声が
頭の中で通り過ぎていったのだった。

 一瞬の事に驚いたジインは、その声の主を探すように周りを見回したのだったが、
しかしそんなジインの目に映ったものは、人々の列の先頭で、腕を組んで退出していく、
カサレス王子とリティシア姫の遠い後姿なのであった。

 人々が去った後、ゼンスは「聖なる騎士団」の一同を見回すと、「さあ、我らも退出するとしようかのう。」
と、声をかけたのだった。

 そんな彼らに、空の城の従者が近づくと、彼らを部屋に案内したのだった。
そして、「聖なる騎士団」の一行は従者の後について、広い王の城の廊下を進んで行ったのであった。
城の中をめぐる廊下の天井には、空の人々の頭上を飾る細工と同じように、細い金属の細工が繊細な
優美さを持ってこの廊下を静かに飾っており、人々がその廊下を通るたびに、「キーン。」と、
小さく高く美しい音色を震わせていたのだった。

 先程の空の王との謁見で、まだ緊張が解けぬジイン。
上の空の面持ちで、一同の一番後についていたジインは、前を歩くイズールにそっと小さな声で、
こう尋ねたのだった。

「なあイズール。カサレス王子とリティシア姫って、いったいどういう人なんだい?」と誰にも
聞かれないように小声で聞くジイン。

 そんなジインの質問に、イズールは少し考えた後そっと「カサレス王子とリティシア姫が、
どうかされましたか?」と小声で聞き返したのだった。

 そんなイズールの問いにジインはドキッとしたのだったが、しばらくして、「いや、あの、
お二人の姿がその、あまりにきれいだったから。」と、顔を赤くしながら、答えるジイン。

 そんなジインの言葉にイズールは、少し驚いた表情を見せたのだった。
そして、ジインの顔を無言でじっと見ると、少し間を置いてからジインにこう言ったのだった。

「ジイン殿。あなたは、本当に心に思ったことを素直に表現される方なんですね。」そう言いながらフッと
優しく笑うと、温かい目でジインを見ながらイズールは、こう続けたのだった。

「ジイン殿。あなたがそのように好意的に思ってくれて、私も本当にうれしいです。この領土では、
心に思ったそのままを素直に言う人は、あまりいませんから。」そう言うとイズールは、
一旦ジインから目をそらし、どこか高い空を見つめたのだった。

 と、ちょうどその時、イズールにカサレス王子から、テレパシーで伝言が届いたのだった。
「空の若き騎士、イズール殿。もしよろしければ、明日の昼食会に若き三人の騎士を招待いたしたい
のだが。いかがだろうか?」そう、イズールに問う声に、イズールはすぐさま、「ありがとうございます。
カサレス王子。もちろん、喜んで伺います。」と返事を返したのだった。

 それからまた、ゆっくりとジインに視線を戻すと、静かに微笑みながらこう告げたのだった。
「それよりジイン殿。明日は王子と姫との昼食会に、私達若き騎士も呼ばれております。
どうかその時にでも、お二方にご自分のお心を正直にお伝えください。お二人もきっと喜ばれる
ことでしょうから。」と言ったのだった。

 イズールの言葉にドキッとするジイン。
「えっ?それは・・・。」イズールの言葉に、明日また会えるといううれしさ反面、何か落ち着かない
ジインなのであった。

 それから程なくしてようやく「聖なる騎士団」の一行は案内された部屋に着くと、それぞれの身体に
あった椅子を見つけては、その身を深く沈めて、ホッと一息ついたのだった。

 その部屋は、天上からつるされた薄い布のドレープで室内が飾られており、
そこから見え隠れする星の形の飾り達が静かな囁きで奏でる音で、一同を落ち着かせていたのだった。

 窓が開いているわけではないのだが、ゆったりとした、清涼な風が部屋をながれ、スーッとする
香りに一同は思い思いにしばし寛いだのだった。

 それからしばらくすると、水の若き騎士、リューリン・クボーが、静かにこう切り出したのだった。
「やはり空の王の前では、他のどの王の前よりも一番身が引き締まる思いがいたします。
まだ私も、ようやくこちらは二度目の滞在ですので、少し緊張いたしました。」とそこまで言うと、
少し間を置いてから、「しかし、ロードス様。以前私が歌っていただいた「祝福の詩」とは、
今日は少し何かが違っていたような気がいたしましたが、これは私の単なる思い違いでしょうか?」
と、ロードスの方を向いて聞いたのだった。

 そんな質問を受けてロードスは、じっとリューレンを見つめると、感心したようにこう言ったのだった。
「さすがだのう。リューレン・クボーよ。以前自身に贈られた「祝福の詩」と、今日の詩の違いに気づくとは。
やはりそなたは、誰にも負けぬ繊細な感覚を持っておるのう。」と言うと、ロードスは押し黙って
何かを考え込んだのだった。

 そんなロードスを見てイズールは、少し可笑しそうに小さく笑ったのだった。
イズールの小さな動きに気づいたリューレンは、「どうしたのですか?イズール殿。」と、不思議そうに
聞いたのだったが、リューレンに問いただされたイズールは、少し困ったような顔をすると、
「いや、これは。私の口から申す事ではないので。」と、ロードスの方を見ながら、言葉を濁したのだった。

 そんな救いを求める様なイズールに対して、ロードスは少し咎めるように、イズールを見てから、
すぐにリューレンの方に向き直り、こう答えたのだった。

「若き水の騎士、リューレン・クボーよ。確かにそなたの為に歌われた「祝福の詩」は、真にそなたに
祝福を込めて歌われたもの。しかしのう、今日歌われた「祝福の詩」はそなたの時とは確かに
少し違っていたのじゃよ。」

 そう言うと一同をゆっくり見回すと、続けてこう言ったのだった。
「今日ジインのために歌われた詩の旋律の中には、少し落ち着きを与える為に「やすらぎの詩」の旋律も、
実は入っておったのじゃよ。」と、一同にその違いを明らかにしたのであった。

 ロードスのそんな言葉にジインは、理解できずに不思議そうにロードスの方に目を向けると、
ロードスは続けてこう言ったのだった。
「大地の騎士、ジイン・クイードよ。そなたはまだまだ自身の心をコントロールする事が、難しいようじゃて。
もちろん、私もそなたの正直さが嫌いではない。だがの、どうもこの空の領土の保たれた均衡に、
少し乱れを起こすほどの波動の強さがあるようなのじゃ。それゆえ王は、そなたの波動を
落ち着かせる為に、「やすらぎの詩」の旋律を入れたのじゃよ。」とロードスはこう言うと、
ジインの顔をじっと見つめたのだった。

 それからまた、「しかしのう、王をはじめ空の方々も、そなたのそんな正直さを嫌いではなさそうじゃ。
どうもそなたは人々に温かな気持ちを持たせるような、そんな不思議な力を持っておる様じゃな。
何はともあれ、我らが空の王もそなたを認めた事に間違いはない。まだまだ精進すべき点は多々あれど、
そなたはそなたの備わっている力をこれからも大事にするがよい。」と、ジインにそう言ったのだった。

 そんなロードスの言葉に、ジインは少し複雑そうな顔をすると、「ロードス様、俺は素直に喜んで
いいのでしょうか?」と、不安そうに聞いたのだった。  

 そんなジインに一同は一斉に笑いだし、「もちろんですよ。ジイン・クイード。」とイズールが言うと、
皆も口々に「おめでとう。よかたったのう。」と、ジインを祝福したのだった。
 こうして「聖なる騎士団」の一同に祝いの言葉をかけられて、ようやくジインは今日一日の緊張から
解放されたのだった。
 
 大地の騎士ジインが、皆とそんな祝いの時を過ごしている頃、リティシア姫は、姫の部屋で
久しぶりに味わう大地の領土の気配を懐かしむように、一人思いにふけっていたのだった。

 そして、城の外では今までにない、まるで雛鳥でも抱くかのような、温かい安らぎに満ちた
星々の輝きが、今宵の空の領土を慈しんでいたのであった。

 次の日、「聖なる騎団」の長老達が、空の王や執政たちとの話し合いの席についている頃、
イズール、リューレン、ジインと、若き騎士たちは、カサレス王子とリティシア姫との昼食会に
招かれていたのであった。

「聖なる騎士団」は、まずそれぞれの領土に着くと、その領土の王との話し合いの席に着き、
領土内で何か変わったことは無いか、困っている事は無いか、互いに意見交換をするのであった。

 そうして、その領土内や他の領土での問題点を、広く共有する事でスムーズに解決できる様に
努めるのが、また「聖なる騎士団」の存在理由の一つであったのだった。

 そして、これからを継ぐ各地の若き王族と若き騎士たちが、交流を持って各地の理解を
深める事が、この惑星の平和を守っていく事の大事の一つでもあったのだった。

 王子と姫より先に、昼食会の席に着いていた「聖なる騎士団」の三人は、それぞれが違う思いで、
この部屋の空気を感じていたのだった。

 空の領土出身のイズールは、子供時代をずっと第三の島で過ごし、この王の城のある第五の島を、
ずっと下から眺めながら育ったのだった。

 空の領土の民達は、王の城があるこの第五の島へは、特別な行事でもない限り、そう足を
踏み入れる事は無かったのであった。

 そして、イズールが「聖なる騎士団」に入り、ようやくこの王の城に足を踏み入れる事になってから数年。

 空の領土の者にとっては、この王の城に居るという事自体が、大いなる名誉なのであった。
「王の城のこの整った均衡が張り詰めた空気は、やはりここ以外、何処を探してもないもの。
こうして、此処の空気を味わえることは、私にとってはまるで、下界の雑多な思いを洗い清められて
いるようだ。」と、イズールは一人、この清浄なる空気を楽しんでいたのだった。

 そして水の領土出身のリューレンもまた同じように、この王の城の空気を楽しんでいたのだった。
「我らが水の王の城がある「聖なる龍の住む湖」の清らかさ神々しさは、格別なれど、この空の王の城の
気高い程の凛とした空気もまた、唯一無二のもの。まるで我が身の歪みや汚れを正してくれているようだ。
これほどの美しい気配を、どうしたら我らが水の王にお伝えする事が出来るであろうか?」と、
こちらも一人思いを馳せていたのであった。



 一方新しき騎士、大地の領土出身のジインはどうであろうか。

「イズールもリューレンも、さっきから何を考えているんだろう?こんな何の音も余分もない静けさで
よく落ち着いていられるな。俺にはなんだか居心地悪くて落ち着かないな。あー、早く王子と姫が
来てくれないかな?この城の従者もさっきからじっとしているままだし、このままじゃ、
息が詰まってしまうよ。あんなに真面目な顔をして、楽しい事がないのかな?」と、
ずっと動かず静かに王子と姫の到着を待っている、城の従者たちの存在にも先程から気になっては、
一人落ち着かないジインなのであった。






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# by maarenca | 2014-09-24 14:20 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No29







THE SIX ELEMENTS STORY





No29





                                  著 水望月 飛翔

 空の王の広間では、衛兵から学者、執政の者や王族の人々がみな打ち揃い、
王と王妃の入室を静かに待っていた。しかし、その静けさたるや、まるでこの世の者では
ない様な、気配と動きを感じさせぬ優美な佇まいで、その広い空間を清めている様でも
あったのだった。

 彼らの翼は白を基調とした淡いグラデーションになっており、ある者はグレーがかった
グラデーション、またある者はブルーがかったグラデーションと、様々な色の羽を持ち、
その羽に合った色の衣装が、深く美しいドレープを創り出していたのだった。

 それらのドレープが表したのは、彼らの思想の深さであろうか。
また、男女問わず美しく伸ばした髪は、銀髪や金髪、または白髪と淡く、なんとも壮麗で
静かな美しさを完成させていたのであった。

 そして彼らの頭上には、それぞれ自身の指針となる言葉が込められた植物で形作られた、
細い金属の細工が美しく人々を飾っていたのだった。

 そんな人々が生み出した静寂に、深淵たる厳格な空気が漂った。
ジインはなんだろう?と城内を見回すと、今までいりも一層深い威厳を漂わせながら、
空の王と王妃が姿を現したのだった。ジインは空の王の姿を見とめると、目に見えぬ
何ものかにはじかれたように、自身の身体を貫いた感覚に襲われたのだった。

 そして王と王妃が玉座に着くと、「聖なる騎士団」の一行は、空の人々があけた空間の中央を通り、
そのまま王と王妃の前まで進んだのだった。

 「聖なる騎士団」の一同が揃って深くお辞儀をして王の前に跪くと、長老ゼンスが代表として、
一人その場に立ち、空の王への口上を述べ始めたのだった。

「燦然たる空の領土を築きし偉大なる空の王。タリオス王。この度は我ら「聖なる騎士団」に、
この様な正式なる謁見の場をお与えくださり、誠にありがとう存じまする。王並びに王族の皆様にも
ご健勝のよし、誠に喜ばしく。」と言って、一度頭を下げると、続けてこう言ったのだった。

「さて、この度は我ら「聖なる騎士団」に大地の領土より、新たに入りましたる若者をご紹介いたしたく、
はせ参じました次第。どうか皆様、以後はこの者をお見知りおきいただきたく、何卒よろしく
お願いいたしまする。」と言うと、深々とお辞儀をして、その場に跪いたのだった。

 こうして、長老ゼンスからの言を受けると、空の王はゆっくりと一同を見回し、
静かにこう述べたのだった。

「永きに渡り、「聖なる騎士団」を司りし、長老ゼンス・ショーインよ。そなた達の尽力のおかげで、
この惑星も一段と秩序を増しておる事、誠に感謝いたす。」そうして高貴なる佇まいで、
「聖なる騎士団」の一同に頭を下げると、続けて「して、いよいよ大地の領土より「聖なる騎士」が
誕生いたした事、誠に喜ばしい。空の領土よりの祝福をその者に授けたいのじゃが。
いかがかな?大地の領土の聖なる騎士よ。」と、最後はジインの方を向いて、こう言ったのだった。

 ジインは下を向きながらも、空の王の目が自身に注がれていると思うと、緊張が走ったのだった。
そしてゆっくりと顔をあげると、ジインは緊張しながらも、空の王への口上を述べ始めたのだった。

「比類なき崇高なる空の王。タリオス王。はじめてお目に掛かりまする。我、大地の領土より参りました、
ジイン・クイードと申す者。自身の成人の儀式により、己の右腕に石を宿し、聖なる神器
「悲しみを断ち切りし剣」を出現させし者にて。この度「聖なる騎士団」へ入りましたる事、
大地の領土の誇りにかけましても、我が身命を賭す所存でございまする。どうか、空の王並びに
空の方々にも、お見知りおきをいただきたく、何卒よろしくお願いいたしまする。」
ジインは、一つ一つ慎重に誠心誠意を込めて、述べたのだった。

 大地の領土の者の初めて聞く空の言葉に、今まで聞いた事もない、熱く強い思いの波動を
感じた空の人々は、穏やかな優しい笑みを浮かべたのだった。

 それは嘲笑などというものではない。なにか久しぶりに感じた温かさに、少し懐かしむような
思いを抱いたのであろう。

そんな穏やかな気配が、この王の広間を包んだのであった。
 いつもは厳格なる空の王も、今までにない波動を持つこの大地の若者に対して、
優しくこう言ったのだった。
「聖なる神器、「悲しみを断ち切りし剣」を持つ大地の騎士、ジイン・クイードよ。
よう我が空の領土へ参られた。そなたが我が領土を讃えてくれている事は、わしにも
よう伝わっておる。同じく我等にもそなたを讃えさせてはくれまいか。」そう言うと空の王は、
ゆっくりと玉座を降りながら、この大地の若者に「祝福の詩」を歌い始めたのだった。

 すると、隣に座っていた王妃も玉座を降り、美しく優しい声で王の詩に加わると、
次々と広間に居る空の人々が一緒に、「祝福の詩」を歌い始めたのだった。

「聖なる騎士団」の一行がこの王の広間に入って来た時は、氷の結晶の様な美しい文様が、
キラキラと静かに王の広間の天井に、輝きを与えていたのだったが、「祝福の詩」が広間中に
響き始めると、「癒しの浴室」で起きた様に、うすく小さな羽が次々と舞い降りてきたのだった。

 この美しい祝福に、ジインはとても感動し、心の震えを抑えるのに必死なのであった。
(ああ、なんて美しいんだ。こんなに美しい城で、こんなに美しい祝福をしてもらっているなんて。
ユーリス、空の人々の美しさを、おまえにも見せてやりたいよ。)

 そんなジインの思いと感動で打ち震える姿に、空の人々もまた優しくほほ笑みながら、
歌い続けたのだった。

 少しすると、ようやく周りに視線を向ける事ができる様になったジインは、王と王妃の近くで
一際輝く様な姿の、カサレス王子とリティシア姫の姿に目が留まると、そのままジインは
この若々しい二人の美しい姿に目が奪われ、じっと見とれたのだった。

 二人は美しい文様が浮かび上がった、純白の絹の様な軽やかなローブを身に纏い、
カサレス王子の頭上には、黄金の美しく伸びた植物たちが形作る装飾が置かれ、
彼の金色の巻き毛と相まって、その誠実な横顔を縁取っていたのだった。

 そして、リティシア姫の頭上には、プラチナに輝く可憐な花々をちりばめた細工が、
彼女の愛らしさを一層讃えていたのであった。

 そんな二人に見とれていたジインの気配を感じ、そちらの方へ目を向け、ジインと
目があった二人は、ほほ笑みながら軽く会釈をすると、ジインもすかさず礼を返したのだった。

 こうして、「祝福の詩」が終わると、王がジインの元に歩み寄り、こう言ったのだった。
「新たなる力を宿いし大地の騎士よ。そなたの力がこの惑星の平安を一層強固なものと
してくれるであろう。しばらくは我が領土にて、ここの美しさをその目に焼き付けていかれるがよい。」
と言葉をかけると、いったん後ろを振り向き、王妃に目で促したのだった。

 王妃は、静かに自身のドレスの袖を振り払うと、一瞬で軽やかにジインの傍に着き、
天上の光のような笑顔をジインに向けたのだった。

「大地の聖なる騎士、ジイン・クイード殿。よう我らが空の領土にいらっしゃいました。
旅の疲れはありませぬか?そなたの故郷とこの空の領土。いろいろ違いがあるやもしれませぬが、
どうかこの滞在にて、我らが空の領土を楽しまれていかれませ。」王妃がジインに向かって
話しかけている間、ジインは王妃の優雅さ、まるで聖母を思わせる美しさに見とれ、ぼーっとしたのだった。

 そんなジインに優しく微笑む王妃。
そして王妃が王のもとに戻ると、王は後ろに控えているカサレス王子とリティシア姫を呼んだのだった。

そして、もう一度ジインに顔を向けると二人を紹介したのだった。
「さて、大地の聖なる騎士、ジイン・クイードよ。これに控えしは、次の空の
領土を収めしカサレス王子と、リティシア姫である。これからを担いし者同士、どうか
仲良くしてやってくれ。」そう言うと王は、カサレス王子の方に顔を向けたのだった。

 王子が静かにローブの裾を一度振り払うと、今度は一瞬で、その場の空気が穏やかな
たたずまいに変わったのだった。

 カサレス王子は優美な頬笑みを向け、ジインの元に軽くひと飛びすると、ゆったりと優雅に
ジインに会釈をしたのだった。

 ジインは目を奪われた。
「新しき力を誕生させし大地の騎士。ジイン・クイード殿。わたくしはカサレス・クレドールと申します。
あなたの訪問により、益々互いの領土の距離が縮まり、理解が深まります事を切に願います。
どうかあなたの知識をわたくしにもお授けいただけないでしょうか?」そう、ほほ笑みジインに聞く王子。

 しかし、その場に固まって言葉が出ないでいるジインを見て、少し間を置いてから王子は最後に
「そして、この空の領土の滞在を良きものにして下さる事を切に望みます。」そう言うと、
ほほ笑みまっすぐにジインを見つめたのだった。

 ジインは息をのんだ。
それは、初めて感じる感覚だった。

 空の領土に入ってからは、空気や人々、全ての存在の美しさを大いに感じていたジインだったが
、威厳あるタリオス王や王妃とはまた違う、カサレス王子の優美さ、神々しさに圧倒されたのだった。

(カサレス王子・・・。この方はなんて優美な人なんだ。この神々しさ。なんというのだろう?
カサレス王子の優しさは、まるで天からの祝福を一斉に受け、王子の内側から光り輝いているようだ。)

 頭の中で一人思うジイン。しかし、ジインのそんな思いは、空の領土の人々にとっては
筒抜けなのであった。
 そうして、動けないでいるジインに、今度はリティシア姫の愛らしい声が届いたのだった。

「穏やかなる大地の領土より、よくこの空の領土へいらっしゃいました。ジイン様。
わたくしは、リティシア・クレドールと申します。どうか、あなた様の故郷、大地の領土の事を
わたくしに教えてくださいませね。」

 カサレス王子と同じように、ふわっとジインの元にひと飛びすると、会釈をしながらリティシア姫は
ジインにそう話しかけたのだった。

リティシアは、色々話したい衝動を抑えながら、にっこりとジインにほほ笑んだ。
その姿はまるで、崇高なる天上に咲きし花。

 先ほどまで張りつめていた思いのジインは、リティシア姫の愛らしい声と頬笑みに、
ようやく我に返ったのだった。



空の領土    カサレス・クレドール王子              イラスト 佳嶋
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キャラクター著作権は水望月飛翔が保有しているため、無断使用、転載は堅くお断りいたします。)


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# by maarenca | 2014-09-21 11:01 | ファンタジー小説