Blog|maarenca - マーレンカ

THE SIX ELEMENTS STORY No45






THE SIX ELEMENTS STORY





No45




                                    著 水望月 飛翔



 しかし、そんな若者たちの交錯する思いを知らず、大人達はここに集まった若者たちを、
ただ頼もしく見ていたのであった。
 この日、いつものように自身の居住区に戻ったランダス執政官は、しかし自身の思いとは
裏腹な気配を感じると、寂しそうに窓辺に佇むミラディアの後姿を見とめ、どうしたのかと心配そうに
声をかけたのだった。

そんな父の問いかけにミラディアは、無理に笑顔を作ると、「いいえ、お父様。なんでもありませんわ。
ただ、このところの毎日の講義に少し疲れただけですわ。」と、明るく答えたのだった。

 こうして、カサレス王子との距離が一向に縮まらない関係に、それぞれが思い悩んでいたある日のこと。
フリュースはその日、王子に対する苛立ちを自身の槍に乗せ、カサレス王子と槍の手合わせを
していたのだった。

いつもは、王子の目線をこちらに向かせようとするかの様な、フリュースの少し強引な力強い槍先を、
静かにギリギリでかわすカサレス王子。

しかしその日はローラインの来る日であり、カサレス王子は早く槍の手合わせを終えて、ローラインの
元に行こうと、ふと気をそらせたその時であった。

次ぎの瞬間、カサレス王子の左腕をフリュースの槍先が捉えた。
「うっ。」フリュースの槍はカサレス王子の衣服を破き、そのまま王子の腕をするどく、傷つけて
しまったのだった。

 フリュースの槍の勢いに押され、勢いよく後ろに倒れ込むカサレス王子。
「きゃ~。」ミラディアが叫ぶと、二人の槍を少し離れた所で見ていたアーキレイが、誰よりもすぐに
王子の元に駆けつけた。

フリュースをはじめ、その場にいたみんなに緊張が走った。
「大丈夫ですか?カサレス王子。」すぐにカサレス王子の左腕を取って、その傷口を心配そうに見た
アーキレイ。

「王子・・・。」フリュースは自分の槍が王子を傷つけた事に動揺した。
そして皆も心配して駆け寄り、王子を覗き込んだのだったが、カサレス王子は、何でもないという様に
周りの者に声をかけたのだった。

「フリュース、皆さん。心配はいりません。私が少し不注意でした。」
そう言うとカサレス王子は、アーキレイにテレパシーで、(さあ、アーキレイ。今日はもうこの位でいいでしょう。
私はそろそろ部屋に戻りたいのです。)

そうして、心配そうに王子の傷口を見るアーキレイの手を、静かに振りほどいたのだった。
そして血が出ている腕を押えながら王子は、ゆっくりと立ち上がると皆の顔を見渡しながら、
「それでは皆さん、今日のところはこれで失礼いたします。」と言うと、王子を心配する一同にすぐに
背中を向けたのだった。

そうして他の者が一切立ち入る事の出来ない、王家の領域に一人帰っていったのだった。

 カサレス王子が自身の部屋に戻ると、アーキレイも王子の部屋に続けて入り、破れた衣服を脱がせて、
王子の腕の治療をしたのだった。

 細い何本もの金属で、流麗な装飾が施されている椅子に腰を掛けた王子は、アーキレイが傷の手当を
している時も、視線を合わそうともせず、ずっと遠くを見て、何も言葉を発しないでいた。

そんな王子に向かって、テレパシーで、(カサレス王子、どうかされましたか?)と静かに聞いたアーキレイ。

 しかし、そんなアーキレイの質問にも、カサレス王子は返事を返さずに、ただそこには、重い沈黙だけが
横たわっていたのであった。

そうして、カサレス王子の傷の手当てが終わると、アーキレイは静かに、「カサレス王子、傷の手当てが
終わりました。」と言って立ち上がり、一礼してそのまま王子の部屋を出ようとしたのであった。

 そんなアーキレイの背中にむかってカサレス王子は、「すまない・・・、アーキレイ。」とようやく一言だけ、
小さく口にしたのだった。

そんな、何か悲しみを含むカサレス王子の言葉に、「いいえ。」と、静かに答えると、アーキレイは
うつむきながら、王子の部屋を寂しく後にしたのであった。

 そうして、廊下に出たアーキレイは、一人思案にくれたのだった。
(カサレス王子・・・。夕べから少し、今までとは違う気配を王子から感じるのだが、もうすぐ王子の成人の
儀式が近づいている。その事に関係しているのだろうか?それに、王子はずっと以前から、誰にも
打ち明け様とはしない何か秘めた思いを一人で抱えておられる。そんな思いをあるいは、私に打ち明けては
くれないだろうかと思った事もあったが・・・。どうしても私では王子に近づくことができない。)そう思うと、
自分のふがいなさを悔しく思うアーキレイなのであった。(しかし、ローライン様なら、王子のお心をお察し
できるかもしれない・・・。今はローライン様を早くお迎えに上がらなければ。私にできる事と言えば、ただそれ
くらいだろう。)そう思いながら、急ぎ足で城の中庭に出たアーキレイなのであった。

しかし、アーキレイが中庭に姿を現すと、そこにはまだ、暗い顔をして心配そうに立っている、フリュースの
姿があったのだった。

「フリュース殿・・・。まだいらっしゃったのですか?」アーキレイがそう聞きながらフリュースに近づくと、
青白い顔をしながらフリュースはこう聞いたのだった。

「アーキレイ殿。カサレス王子の傷の具合はいかがですか?王子のご様子は・・・?」
重たい口調で、ようやく聞いたフリュース。

 すらっと伸びたしなやかで大きな身体。いつも堂々と自信にみなぎっている姿が、今は小さく心細く見える。
そんなフリュースの姿にアーキレイは、心配をかけない様にと明るく、こう答えたのだった。
「大丈夫ですよ。フリュース殿。大した傷ではありませんでしたので、ご心配はいりません。
さあ、フリュース殿ももう、ご自身の部屋に戻ってください。」そう明るくフリュースに告げると、アーキレイは
ローラインを迎えに行く為、急いでその場を離れようとしたのだった。

 しかし、そんなアーキレイの様子にフリュースは、この、王子に信頼を置かれている第一の従者にさえ、
自分が距離を置かれているように思い、先程より一層青白い顔でこう言ったのだった。

「あなたは、いつも一番カサレス王子の傍にいる方なので、王子のご様子がよくお分かりだと思います。
しかし・・・、カサレス王子を守る様集まった我々は、今も王子のお考えが解らず、未だに王子のお心に
近づくことができません。なんでもいいのです。王子の事をもっとお聞きする事はできないでしょうか・・・?」
そう思い詰めた様に、アーキレイに言うのだった。

 アーキレイは、そんなフリュースの言葉に驚いて、じっとフリュースの瞳を見つめたのだった。

 アーキレイの思いは、全く逆だった。
アーキレイは、自分はただの王子の従者に過ぎず、ましてや自身に何も語ろうとしない王子との距離に、
いま目の前で、王子との縮まらない距離を告白しているフリュースよりも、自分こそがもっと遠くにいると
思っていた自分とフリュースの姿を、この時初めて、重ね合わせて見たのだった。

(フリュース殿は、私よりもご自分の方が王子の遠くにいると思っていたのか?)

カサレス王子の、新しき近衛を集めるという話を聞いた時、アーキレイは自分も試験を受けて、
カサレス王子の近衛として、もっと傍につきたいと思っていたのだった。

が・・・しかし、自身の何か人より優れたものを持っていない事に、自分は王子にとって、ただの従者の
位置で留まる事しかない、という思いでいたのであった。

そして何事かに秀で、カサレス王子の近衛となるべくして新しく集まった者達を、一人離れて、寂しく、
眩しくその姿を見ていたのだった。

そんな風に見ていたアーキレイに、眩しく、輝く様な力強さをもったフリュースの、しかし、そんな思いとは
裏腹な、自分と似た思いを持っている姿にアーキレイは、どう言っていいのか戸惑ったのであった。

「フリュース殿・・・。」
そう言ったきり戸惑い、何も言えずに立っているアーキレイの姿に、フリュースは小さく苦笑すると、
「そうですね・・・。失礼いたしました。ずっと王子のお側にいたあなたから見たら、私ごときは外部の者。」
と言うとうつむいて、「王子がご無事なら、それでいいのです。お引き止めして申し訳ありませんでした。」
と言うと、アーキレイの言葉を待たずに、すぐに背を向け王の中庭を後にしたのだった。

 王の城の中庭に、一人取り残されたアーキレイ。 
しかし、そうして立ち尽くす今のアーキレイには、どうする事も出来ずにいたのだった。

(今は、ローライン様を早くお迎えに上がる事だけが、唯一私にできる事。)そう心にそう思うと、
エグランティーヌの色に染まっていく雲の間をすり抜けて、第二の島にあるローラインの家に急ぎ
向かったのだった。

 そうしてそんな気持ちのまま、ローラインの家の前に立ったアーキレイが、ドアをノックしようとした時。
ドアが突然開いて、ローラインが椅子を押しながら出てきたのだった。  

そして、驚くアーキレイに向かって、ローラインは、「あら、アーキレイ様。今日はどうされたのですか?
こんなに気持ちのいい晴れやかな風が吹いているというのに、アーキレイ様の周りだけ、まるで湿った
くもり空のようだわ。」と言うと、春の日差しの様に明るくほほ笑んだのだった。

 そんな、暖かな春風の様なローラインの声とほほ笑みを向けられて、アーキレイは、ようやく笑顔を
思い出すと、先程まで固くなっていた肩の力を抜いたのだった。

そして、「ローライン様、ごきげんよう。すみませぬ、つい暗い空気を身に纏ったまま、こちらに来て
しまいました。」少しはにかむようにして、そう告げるアーキレイの気配に、何かを感じとったローラインは、
彼女の耳元で囁く風の言葉を受け取ると、「まあ、カサレス王子はダメね。あなた様にそのような顔を
させるなんて。」と、笑いながらそう言ったのだった。

 そして、そんなローラインの言葉に、少し戸惑っているアーキレイに向かって、ローラインは気づかない
ふりをしながら、「さあ、そんな王子のところに、今日も連れて行ってくださいませね、アーキレイ様?」
と言うと、アーキレイの腕を待つように、ローラインは腕を伸ばしたのだった。

 それからアーキレイがローラインを抱えて、王の城に向かって飛び立とうとした時、ローラインは
アーキレイの胸に自身の右手をそっと置くと、自身の石にこう言ったのだった。

「私の天上のよろこびよ。どうぞ、この方の胸の中にある悲しみに、喜びの心を思いださせてくださいな。」
と言ったのだった。

 その言葉を受けて、ローラインの右手に宿る石が輝きだすと、アーキレイは自身の心の中から、
優しく温かな思いが広がってくる感覚を、ゆっくりと感じたのだった。

「ローライン様。ありがとうございます。」短くそう言うアーキレイに、ローラインは、アーキレイの顔を
下から見上げながら、こう言ったのだった。

「ごめんなさい、アーキレイ様。カサレス王子は・・・、なにか私達には思いもよらない程の固い決意を、
持っているようなのです。でもそこへは、私にもどうしても近づけさせてはくれないのです。」そう言うと
し寂しげに「そう、どなたか王子のお心を、お支えできる方が現れれば、いいのでしょうけど。」と言う
ローラインは、遠くの雲を少し切ない思いで、見つめたのだった。

 ローラインの最後の言葉にアーキレイは驚いて、「そんな、ローライン様がお側にいらっしゃるでは
ありませんか?」と、ローラインに言ったのだった。

そんな意外そうに言うアーキレイの言葉に、今度はローラインが驚いて、アーキレイをじっと
見つめたのだった。

それから、ゆっくりと首を横に振りながら短く笑うと、少し間を置いてから寂しそうに、こう言ったのだった。

「いやだわ、アーキレイ様。私は、カサレス王子のお心をほんの少しだけ、軽くすることは出来ても、
カサレス王子に寄り添う事は、私のこの身では、出来ないでしょう・・・?」

いつもの屈託のない、少し幼い様な表情とは明らかに違う、そこには確かに、一人の少女の姿が
あったのだった。




a0073000_19445349.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-11-15 19:57 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No44










THE SIX ELEMENTS STORY




No44



                                 著  水望月 飛翔




 それから、アーキレイはローラインの家へ送り届ける為に飛び立ったのだったが、
小さな気配を感じ、ふと下を見たのだった。
そして、王の庭を走り去る小さな悲しみを一つ、そこに見つけたのだった。

(ミラディア殿・・・?)

 そう、今宵の少女の悲しみを、ただ王子の従者アーキレイだけが、一人目撃したのであった。
(ミラディア殿・・・。大丈夫だろうか?)アーキレイは、可憐な胸を痛めているであろうミラディアを
心配しながら、ローラインを送り届けるため、第二の島まで飛んでいったのだった。

 そんなアーキレイのさびしげな鼓動を感じ取ったローラインは、「私の右手に宿る愛しい石よ。
天井の喜びをこの方の悲しみに届けておくれ。」と言うとローラインは、アーキレイの胸にそっと手を置き、
自身の石に言ったのだった。

「ローライン様?」アーキレイは驚いてローラインを覗き込んだのだったが、最初は困ったように
覗き込んでいた表情が、少しずつ暖かな頬笑みへと変わっていくのを、ローラインはうれしく
見つめたのだった。

「ローライン様、ありがとうございます。あなた様には、隠し事はできないですね。」と言うと、
アーキレイは(石の力を使わずとも、きっとこのローライン様の人を思う気持ちが、カサレス王子の心に、
より響くのだろう。どうか、お二人が幸せな道を歩まれますように。)と、そっとアーキレイは願ったのだった。

 「カサレス王子。」ちょうどその頃、自身の部屋に戻り、ベッドに身を沈めたミラディアは、彼女の純白の
心が悲しみの色に染まるのを感じたのだった。

 そしてその夜一晩中、いつまでも声を潜めて、悲しく泣いていたミラディアなのであった。

 こうして、それぞれの思いを胸に秘めながら、それでも日々つつがなく時は過ぎ、そうして王子は
もうすぐ成人の儀式を迎えようとしていたのであった。

 その日もカサレス王子は、フリュース・リュードと槍を交えてから、ミランディア・カランダムや
ストー・リマック等と共に、会議室で空の領土の執政に関わる講義を受けていたのであった。

 その頃フリュース・リュードは、王の城の中庭に寝転びながら、傍らに座るラフェール・イシレーと、高い所に
漂う雲をじっと見つめていたのだった。

「なあ、ラフェール。そなたはカサレス王子の事をどう思う?」
フリュースの突然の問いかけに、ラフェールはゆっくりとフリュースの顔を見つめたのだった。

 それからしばらく間を置いてから、静かにこう答えたのだった。
「そうですね。僕は、カサレス王子の事がとても好きなのですが。どうも王子は僕たちの事を、
あまり気には留めていないようですね。」心地よい風にその身をあずけながら、淡々と答えるラフェール。

 
  ラフェール・イシレー。
彼は髪の毛から、彼の滑らかな肌からすべてが、白一色で統一されており、その一片の翳りの無い姿と同様、
彼の意識は常に天上界に向かっていたのだった。

 そして生まれたばかりの彼は、第四の島の「慈しみの礼拝堂」に置き去りに
されていた事もあり、その彼の出生と相まって、まるで「天上界の落とし児」と、人々に思われて
いたのだった。

 そう彼は、いつも風と会話をしており、また天上の父との交信をたびたびできる存在でもあった為、
そんな彼を、タリオス王も一目置いていたのであった。

 そんなラフェールが言った言葉にフリュースは、自身がずっと感じていた、しかし、そんな断片を
表に出す事を恐れていた言葉を示されて、愕然としたのだった。先ほどから押し黙ったまま返事のない
フリュースに、ラフェールはどうしたのか、と聞いたのだった。

 フリュース・リュードは、痛いところを冷静に聞いてくる、自身よりも年下で、ずっと小柄な身体の
ラフェールに対し、彼自身もどう答えていいのかわからなかったのであった。

 そんな言葉に詰まるフリュースにラフェールは、静かにこう続けたのだった。
「フリュース殿。人の心は皆そう単純にはいきませぬ・・・。王子の悲しみ、王子のよろこびが
いったい何なのか、僕たちには簡単には解らないでしょう。本当に王子が心から僕たちを信頼してくれて、
本当に心に思う事を打ち明けてくれない限りは。」そこまで言うと、小さくほほ笑んだのだった。
 そして、「そう、あなたの苛立ちの様にね。あなたの苛立ちも、かなり複雑なようですね。」と言うと、
フリュースを真っ直ぐに見つめたのだった。

 フリュースは自身の内面を見透かすこの少年に、何も言い返せずただ見つめ返した。
そして、驚きながら静かに(ラフェール・イシレー。さすがこの者、天上の落とし児と言われるだけの
事はあるな・・・。)と、フリュースが心の中でそう呟くと、ラフェールは「いいえ、僕は天上の者ではありません。
皆さんと同じ、ただこの空の領土に住む者ですよ。」と言うと、にっこりとフリュースにほほ笑んだのだった。

 そう言うラフェールの髪を、優しい一陣の風が吹き抜けていった。
そんな風のささやきに静かに身を預けると、ラフェールはそれからしばらくして、ゆっくりと立ち上がり、
フリュースを見つめながら、こう言ったのだった。

「さあ、僕はそろそろ退出いたしましょう。あなたには少し、ご自分のお気持ちを見つめる必要が
あるようですね。大好きな気持ちと、歯がゆい気持ち・・・。それが混ざって、苛立ちとなる・・・。」

 そう言うと目を閉じて風を全身で受けながら、またフリュースの目を見つめると、
「そう、風たちが言っております。」とにっこりとほほ笑んだのだった。

 そうして一人残されたフリュースは、寝転んでいた身体を起こすと、静かに自身の考えに耽ったのだった。

(カサレス王子・・・。私は、王子が私の存在を知るずっと以前より、王子の事をずっと見詰めておりました。
まだ幼き王子のお姿は、しかし、もう既に王たる品格を備えており、私はそのお姿が眩しく、いつかは
王子のお側で、お仕えしたいと思うようになったのです。だからこそ、この度の招集は、天にも昇る
うれしさでした。しかし、王子と席を同じくする様になってからも、その距離は一向に縮まってはおりませぬ。
王子・・・。私の熱き槍も、目を合わせる事なくいつも冷静にかわされて。貴方様の思いは一体何処に
向かわれているのでしょうか?われらの思いはあなた様に届く事はないのでしょうか?カサレス王子・・・。)

 フリュースは、あれほど自身が焦がれた位置に、今こうして立っているにも関わらず、自身の思いとは
裏腹に、一向にカサレス王子の視線が自分に合わないことに、苛立ちを覚えていたのだった。

 優しい風が先ほどから頬をなでていくのであったが、しかし、今のフリュースには風の優しさは
届かないのであった。

 一方その頃、カサレス王子と、ミラディア、それからストーの三人は、ようやく空の領土の秩序についての
講義を終えると、それらについて少し話をしたのだった。そして儀礼的に一通りの議論も終わり、
自室に戻ろうと席を立とうとしていた王子の後ろ姿にミラディアは、遠慮がちに声をかけてきたのだった。

「あの・・、カサレス王子。やはりこの空の領土の秩序は素晴らしいものですね。ここまで整然と整われた
タリオス王やこれまでの王の偉大さを、わたくしは改めて、今日感じましたわ・・・。」そう王子に声を
かけたのだった。

 しかし、そんな言葉にカサレス王子は、ミラディアの方に振り向くと、静かにこう言ったのだった。
「なるほど・・・。あなたはその様に感じているのですね。整った均衡・・。その方角から捉えれば、
この空の領土程、整然とされている領土は他にはないでしょう。」そう言うと王子は、少し間を置いてから、
こう続けたのだった。

「しかし・・ミラディア殿、私の目からは少しあなたとは違う面が見受けられるのです。自由にこの城のある
第五の島に、空の人々が足を踏み入れられない事に、私は少し違和感を持っております。
それに・・、成人の儀式に失敗した者達のその後を、今まで誰も議論してこなかった。その事にも私はずっと、
腑に落ちない気持ちでいるのです。あなたはそれらをどう感じておられますか?」
そんな思いもよらない質問を、真っ直ぐにミラディアを見つめながら投げかけてくるカサレス王子の問いに、
ミラディアは困ってうつむいたのだった。

「カサレス王子・・。申し訳ありません。わたくしには、その様な事、今まで考えもおよびませんでしたわ・・・。」
ようやくその言葉だけを口に出来た、ミラディアは、そう言うと身を固くして下を向いたのだった。

 そんなミラディアの姿に、カサレス王子は寂しく微笑むと、申し訳なさそうにこうミラディアに言ったのだった。

「申し訳ありません、ミラディア。あなたはまだこの城への出入りを許される様になってから、何年も
経っていないというのに。それに、石宿しに失敗した者の事など、この空の領土でも誰も口にしない事。
そんな事をまだ幼いあなたに聞くなんて・・・。すみませんでした、ミラディア。」

 そう謝る王子にミラディアは、カサレス王子にとって自分は、未だこれからの未来を共にする者として
ではなく、ただ幼い少女としてしか見られていない事に、ひとり傷ついたのだった。

 そんな寂しげなミラディアの心を読み取ったストー・リマックは、二人の間の冷たい空気を断ち切るかのように、
カサレス王子にこう言ったのだった。

「王子・・・。ミラディアは幼い者ではありませぬ。恐れながら、これらの講義に席を同じくしている者は、
カサレス王子をお助けするために集まった者。もちろん、その意志は私も皆も同じ思いにございます。
そんな我らの同志に対して、ただ幼き者としか見られないのでは・・・。ミラディアにおけるご信頼の無さを
口にされるは、同時に我ら皆への信頼のなさでもございます。」

 カサレス王子を真っ直ぐに見つめ、そう言うストーに、ミラディアは慌てて入り、「ストー様。その様な事を
王子に言うのはおやめ下さい。わたくしが、ただ幼い考えしか持たないだけなのですから・・。」
そうストーに向かって言うと、すぐカサレス王子の方に向き直り、ミラディアはこう言ったのだった。

「申し訳ありません、カサレス王子。わたくしが不甲斐ないばかりに。わたくし・・、もっと広くを見る様、
努力いたしますわ。」そう懸命に王子に告げ、細く白い指を懸命に固く結ぶと、また下を向いたのだった。

 カサレス王子は、口を固く結んだストーと、震える体を懸命に抑えようとたたずむミラディアの、
そんな二人に対して目を伏せ、静かにこう言ったのだった。「二人とも、申し訳ありません。
どうやら私が一番もっと多くを学ばなければならないようですね・・・。」そう遠くを見ながら言うと、
儀礼的な会釈をしながら「それではお二人とも、私はこれで。」と短く言ってカサレス王子は、二人を
残して部屋を出ていったのだった。

 そんな王子の背中を寂しく見送りながら、ストーは申し訳なさそうにミラディアに振り向くと、
こう言ったのだった。「すみません、ミラディア。私が余計な事を言ったばかりに、もっと気まずい思いを
させてしまいました。」そう謝るストーに首を横に振ると、ミラディアはただただ、今までの自身の
狭い考えを恥じたのであった。

「いいえ、ストー様。本当にわたくしが幼い考えしか持たないばかりに、王子のご信頼を得る事が
できないのですわ。わたくしがこれでは、他の皆様にもご迷惑になってしまいますわね。」そう悲しそうに
気落ちした面持ちで、ストーに言うのであった。

 王の城に集まった者達の、カサレス王子への熱い視線を感じてはいるものの、王子は、城の出入りを
許されている事に喜んで、本当の核心にまで思いがいかない若き者達に対し、王子が見ている
その目線の先の違いにどうしても、カサレス王子はその距離を感じて、自身の立つその場所に未だ、
誰も近づけることができないでいたのであった。

 カサレス王子は、こうして集った新しい仲間達に、未だ王子の心の内を打ち明けることができずに、
彼らのいろいろな思いは、まだ交わる先を見いだせないでいたのだった・・・。




a0073000_18385872.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-11-12 18:54 | ファンタジー小説

NPO法人ラリグラス・ジャパン&フフオボー掲載





a0073000_11421326.jpg




福祉施設・被災地・途上国の様々な団体とタッグを組み、
それぞれが得意とする素材を集めたり、仕事を依頼し、上下の支援関係ではない新しい動きをスタートさせてきたTUNAGU&TUMUGU

以前から、素材の仕入れをしてはいたのですが、もっと商品開発や提案を深めることで互いの活動が広がればと思い、今回新たにホームページやパンフレットで下記の2団体をご紹介する事になりました。

どうぞ、それぞれの活動を知ってください。
そして、私たちが普段している「消費行動」が全ての社会の流れを創っていることを一緒に考えていけたら、幸いです。

また、TUNAGU&TUMMUGUでは新作チェーン付きクラッチバッグが登場しました!
自由が丘の「アリヴェデパール」新店舗オープンに初お披露目いたします。

もちろん、ネット販売もしておりますので、どうぞ下記URLの販売ページからご覧ください。



ラリグラス・ジャパン
ネパールとインドの少女売買春・人身売買の廃絶を提唱し、
HIV感染者/AIDS発症者の支援や、障害をもつ女性や子どもを
サポートする国際協力NGOです。


「 хөх овоо  フフオボー」
モンゴルで遊牧生活をする人々が経済的に自立できるよう、
フェルト作りとその販売を支援しているNGOです。


ラリグラス・ジャパン&フフオボーのホームページは
TUNAGU&TUMUGUのホームページ協力団体から
ご覧下さい。



http://www.tunagu-tumugu.jp/





a0073000_1112816.jpg




a0073000_11123298.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-11-11 11:44 | TUNAGU&TUMUGU

THE SIX ELEMENTS STORY No43







THE SIX ELEMENTS STORY




No43




                                       著 水望月 飛翔


そして王の部屋の前に着くと、カサレス王子は一呼吸すると、「父上、入ります。」と言いながら、
神妙な面持ちで王の部屋に入ったのだった。

するとそこには、先程からカサレス王子を、タリオス王とランダス執政官が二人で待ち構えていたのであった。
 カサレス王子は何事かと思い、少し身を固くしたのであったが、タリオス王はいつもより少し微笑みを持って、
王子を出迎えたのだった。

「カサレス王子よ。先ほどの皆との対面、誠に素晴らしかったぞ。そなたは、強い意志の面持ちでは無いが、
そなたの持つ品格は何か、天をも味方に着けそうなものを備えておるようじゃ。」と王子に声をかけたのだった。

 そんな王の言葉を引き取って、ランダス執政官も嬉しそうに、「そうですね、
カサレス王子。あなた様の王子としてのお振舞、誠にご立派にございます。そして、我が娘のミラディアを
お認めいただき、わたくしも本当に心よりうれしく存じます。」と言うと、カサレス王子に深々と頭を下げたの
だった。
 カサレス王子は、そんな二人の言葉を半分うわの空に聞き、抑揚のない声でこう答えたのだった。
「いいえ父上、ランダス執政官。わたくしは、未だ何も持たぬ者。この様に何もこの空の領土の力になれず、
ただ小さき存在の者にございます。わたくしはただ、この領土の全ての人々の幸せを願うだけにございます。」
そう答えるとカサレス王子は、ローラインの姿とキュリアスの姿を思い浮かべて、遠い目をしたのだった。

 しかし、そんな王子の心の内を知らず、タリオス王とランダス執政官は、王子の謙虚なる言葉に、
大いに感心したのであった。

 それからタリオス王は王子にこう告げたのだった。
「カサレス王子よ。このランダス執政官の娘ミラディアは、そなたより年が下なれど、かの者の
聡明なる知識はすばらしきもの。どうかミラディアに目をかけてやってくれ。いずれそなたの力になるで
あろうからのう。」と王子に言ったのだった。

 ちょうどその時、王子は王子を待つローラインの事に考えを向けており、王
の言葉の半分の「そなたの力になるであろうから。」と言う言葉だけを耳にしたのだった。そして、王子の
返事を待つ王とランダス執政官に向かって、王子は「はい父上。共に精進いたしまする。」と答えたのだった。

 そんな王子の言葉に二人は、また安心したように頷いたのだった。
それからカサレス王子が王の部屋を退出すると、王の部屋に残った王とランダス執政官は、また話を
続けたのだった。

「ランダス執政官よ。カサレス王子はどうやらそなたの娘ミラディアを、悪く思うてはおらぬようだの。」
と言うと、ランダス執政官は嬉しそうに王にこう答えたのだった。

「はい、タリオス王。先ほどのお言葉と言い、対面の場でのミラディアに向けてのお言葉と言い、
わたくしは本当にうれしく思います。ミラディアも、心からこの空の領土の為に尽くしたい、と申して
居りますれば、カサレス王子をお支えできます事は、わたくしにとっても、この上ない喜びにございまする。」
と、王に言ったのだった。

 王は「そうじゃの。」と言うと、心にこう呟いたのだった。
(ランダス執政官の娘ミラディアの聡明なる事は、間違いなくこの空の領土を助けていく事であろう。
そして、あの者の美しさなれば、カサレス王子の妃候補としても、申し分ない。あの二人がこれからの
空の領土を担っていければ、我が意としては何も申すことは無い。その様になればよいのじゃが。)

 そう思うタリオス王の隣で、ランダス執政官もまた、(我が娘ミラディアが、カサレス王子と共に、こ
の空の領土を継ぐ事にでもなれば、私にとってこんなにうれしいことは無い。タリオス王も、
ミラディアを認めて下さっているようだし、これでカサレス王子のお心が、ミラディアに向かわれれば
良いのだが。)と、心に思うのであった。

 さて、そんな事を思う父親達を後に残してカサレス王子は、急いでリティシア姫の部屋に向かったのだった。
「リティシア姫。ローライン?」そう言いながら姫の部屋のドアを勢いよく開けたカサレス王子であったのだが、
部屋の明かりは消えて、窓が大きく開け放たれており、部屋に掛かっている飾りの細工と、色とりどりの
薄布たちが、この部屋の主の不在に、ただ退屈そうに風に揺らめいているだけなのであった。

 カサレス王子はその暗い、人の気配の全くしない部屋を見渡すと、ゆっくりと開け放たれた窓の方に
進んだのだった。

 もうすでに、夕暮れの衣の色に変わってきた空の色を眺めて、カサレス王子は一つため息を
着いたのだった。「ローライン。もう君は帰ってしまったのだろうか?」そう小さく呟くと、残念そうに夕刻から
ゆっくりと蒼の色へと変化を見せる空を遠く眺めたのだった。
と、その時であった。そんな寂しげな王子の背中に、小さな笑い声が思いもかけずに、
聞こえてきたのであった。

 カサレス王子はゆっくりと振り向き、不思議そうに部屋のなかを見回したのだった。
ると、しばらくしてから「もう、リティシア姫ったら、ダメじゃない。王子に気づかれてしまうわ。」
と残念そうに言うローラインの声が、先程まで気落ちしていた、カサレス王子の耳に小さく届いたのだった。

 そして今度は、頬に少しの笑みを湛えてカサレス王子は、もう一度、薄暗い部屋をゆっくりと
見渡したのだった。

 すると、「お帰りなさい、王子。」と、はじけるような明るいローラインの声が、彼女を抱いている
アーキレイと共に、王子の前に現れたのだった。

王子が驚いてローラインとアーキレイを見つめていると、「お帰りなさい、にいちゃま。」とリティシア姫が、
自分の方にカサレス王子の視線を向けさせようと、一生懸命に王子の服を引っ張ったのだった。

 カサレス王子は、目線を素早く落としてリティシア姫を見つめると、まだ腑に落ちない面持ちで、
小さな妹姫を抱き上げたのだった。

 それからもう一度、ローラインとアーキレイの顔を見て、二人にこう言ったのだった。
「この部屋には、まったく人の気配が感じられなかったのだが。」と言うと、途中で気が付いた様に
アーキレイを見ながら、「アーキレイ?」と問いかけたのだった。

 そんなカサレス王子に、申し訳なさそうにアーキレイはこう言ったのだった。
「申し訳ありませぬ、カサレス王子。お察しのとおり、私の石の力を少し使いました。」と言うアーキレイ。

 そう、アーキレイの石は「均衡を守りし力」という。
その名のとおり、周りの空気や時間を収める力を持っており、彼の右肩に収まっていたのだった。

 そして、そんなアーキレイの石の力を使い、このリティシア姫の部屋から、彼らの気配を消して
いたのであった。

 カサレス王子を前にして、困った顔をしているアーキレイの姿をみて、ローラインはあわてて
「ごめんなさい、カサレス王子。私が、アーキレイ様に頼んだの。王子がどういう顔をするのかなっ?
て思って。」と、王子の顔を覗き込みながら、少し神妙な顔で王子に言ったのだった。

 しかし、カサレス王子に抱かれて、楽しそうに微笑んでいるリティシア姫と目が合うと、ローラインは
先程までの神妙な面持ちとはうって変わって、「ふふっ。でも楽しかったわね。リティシア姫。」
と笑いをこらえながら、楽しそうにこう言ったのだった。

 そんなローラインに、リティシア姫も、「うん、たのしい。にいちゃま。こまってた。」と言って、
愛らしい笑い声をあげたのだった。

 そうして顔を見合せながらほほ笑む、ローラインとリティシア姫の姿見つめるカサレス王子は、
そんな二人に少し困った様な顔をすると、「二人にはかなわないな。」と笑ったのだった。

 それから四人は顔を見合わせると、穏やかに笑いあったのだった。

アーキレイは、そんなカサレス王子の、心を許している笑顔をみて、(ローライン様がいるだけで、
王子の心はこんなにも和らぐのか。)と、うれしくも、また自分に向ける時の表情の違いを、
少し寂しくも思うアーキレイなのであった。

 しかしアーキレイはすぐに寂しさを打ち払うと、(それでもいい。カサレス王が穏やかな時間を
過ごす表情を見られるだけで、私はこんなにも幸せな気持ちになれるのだから。)そんな事を一人、
胸に思うアーキレイなのであった。

 それからまた、ひとしきりリティシア姫の部屋で遊んだあと、カサレス王子はローラインを抱いて、
王子の部屋に向かったのだった。

「疲れたかい?ローライン。」カサレス王子が腕の中のローラインを気遣ってこう聞くと、
ローラインは首を横に振り、王子にこう言ったのだった。

「いいえ、カサレス王子。私、王子とリティシア姫にお会いする時だけは、咳も出ないで、
本当に元気になれるの。自分でも不思議なくらいにね。」と言うと、菫のような可憐なほほ笑みを
王子に向けたのだった。

 王子はそんなローラインの笑顔を見て、ホッとしたように「よかったよ、ローライン。
君が笑ってくれるだけで、僕は何故か気持ちが安らぐんだ。」と言うと、王子もまた風になびく若草のような
ほほ笑みを、優しくローラインに向けたのだった。

 しかし王子は、ふとなにかを思い出したように、少し疲れた様なため息を、一つ小さくついたのだった。

そんな王子にローラインは、「どうしたの?カサレス王子。」と心配そうに王子の顔を覗き込んだのだった。
 カサレス王子は、じっと自身をのぞき込むようにして見つめているローラインの瞳を見つめると、
気が乗らない様な声で、こう答えたのだった。

「ローライン。実は最近、僕の空の王になるべく教育が始まって、毎日いろいろ勉強させられているんだ。
それと、僕の補佐となるべき者達を、父王が広く呼び掛けて、今日初めてその者達と対面したんだよ
。皆、それぞれ素晴らしい能力を持った者達なんだけど。」と言うと、気乗りのしない、小さなため息を
ついたのだった。

 そんな王子にローラインは、「まあ、素晴らしいじゃない、カサレス王子。王子を助けてくれる仲間が
出来たってことでしょ?」と、無邪気に言うのだった。 しかしカサレス王子は、首を横に振ると、
「だけど、ローライン。僕はそんな事よりも、キュリアスに関する事を何でもいいから、調べたいんだ。
そして、少しでも早く彼の居所を見つけて、キュリアスに会いに行きたいんだよ。」

(それに、君と会う時間を今日みたいに割かれたくはないんだ。)そう最後の言葉を、胸に閉まった
カサレス王子なのであった。

「王子・・・。」自身の兄、キュリアスの事を案じる王子にローラインは、心の中で(ありがとう、カサレス王子。)
と呟いたのだった。
 
 それからローラインは、その日も王一家と共にテーブルを囲み、アーキレイに抱かれて、自身の家に
戻ろうとした時であった。

 いつもの様にローラインとの別れを惜しむカサレス王子。
そして、その姿を草陰から見つめる美しい瞳。そう、一人の少女の姿が人知れずひっそりと、
そこにあったのだった。

 それは、ランダス執政官の娘、ミラディアの姿。
ミラディアは、昼間の王子との対面の席で、カサレス王子に自分の名を呼んでもらえたことが本当にうれしく、
王の広間を後にしてから、急いで自分の居住区に戻ると、ミラディアが生まれた時に両親から贈られた、
クラスカス山の高い頂に咲いている、ミレンディラの花の花粉を入れた小瓶を王子に届けようとして、
王の城の庭まで来ていたのであった。

 ミレンディラの花の花粉。
それは、その花粉を吸った者を夢の中で、「天上の庭」に連れていく事ができると言われている、
大変貴重なものなのであった。

「よほどの時に使う様に。」
そう両親から言われていたそんな貴重なものを、それでも王子に差し上げたい、と心に思い、
夜の暗い庭を一人走ってきたミラディアなのであった。

 しかし、そんなミラディアの目の前で起きている光景は、カサレス王子を愛しく思う少女の胸には、
冷たく突き刺さる光景なのであった。

「カサレス王子。その方は・・・?」
タリオス王に王妃、そして妹リティシア姫までもが穏やかに、ローラインと談笑している姿に、ミラディアは、
自分の隠れているその場所のその距離よりも、もっと遠く小さく、自分の存在を感じていたのであった。

「じゃあローライン、また。」と言う王子の頬に、ローラインは自身の右手を添えると、
「天上のよろこび」を呼び出して、王一家の頭上に降り注いだのだった。

 そして、リティシア姫のよろこぶ姿と、アーキレイに抱かれたローラインの傍らを歩いて名残を惜しむ
カサレス王子の優しい横顔を見て、ミラディアは胸が締め付けられ、一人静かにその場を離れたのだった。



a0073000_12583141.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-11-08 13:05 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No42








THE SIX ELEMENTS STORY



No42



                                    著 水望月 飛翔
 

そうして、この新たなる空の領土を守りし者たちが、カサレス王子の元に集ったのだった。
彼らは総勢10名ほど、この中から本当に王子の元につけるのは、半分にも満たないであろう。
しかし、様々な試験を受け、それぞれ他の者よりも秀でたる力を現した者達であり、その中でも
ランダス執政官の娘のミラディア・カランダムは一番最年少の12歳にも関わらず、この空の領土の
執政に対する試験の一番の優秀さを持って、この一団に加わったのだった。

 そして、一番の武勇を誇りし者。それは19歳のフリュース・リュード。
彼はすでに成人の儀式を無事にすませた者で、左肩にサファイアを宿し、その石の力は、
「何ものをも越えし者」であり、彼は相当なる槍の使い手でもあったのだった。

 第三の島に住む彼は、いつも眩しそうに王のいる第五の島を眺めては、いつか自分も、
第五の島に行くあの橋を渡っていくんだと、心に思っていたのであった。

 彼もまた以前、カサレス王子の誕生日の謁見式に招かれ、自分よりも年下のカサレス王子が
王族として、もうすでに立派な振る舞いを見せている事に、驚きを持って見ていたのであった。

(カサレス王子。なんて美しく、立派な佇まいをしているんだろう。いつか王子の一番傍に立ち、
私が王子をお守りする事できたら。)
と、フリュース・リュードは自身の心に、カサレス王子が常に一番に自分の事を頼りとしている姿を、
また自分が一番近くで王子をお守りしている姿を、何度も思い描いていったのだった。

 それゆえこの度の、カサレス王子の近衛団となる、王からの呼びかけを、人一倍心から喜んだ、
フリュースなのであった。

 そしてこの惑星の運航に関する試験を一番の成績で突破したのは、15歳のストー・リマックであった。
彼は来年、成人の儀式を控えており、もう自身の石の力を心に決めた者なのであった。
彼は、随分古くからの星の流れに興味を持っており、この惑星の創世の謎を突き止めたいと、
幼きころより心に思っていた者なのであった。

(何故、この惑星に住む我々人類は、この様にそれぞれの領土で姿形を変えて、分断しながら生きて
いるのだろう?星達はこんなにも僕達に話しかけているというのに、僕にはほんの少ししか、
彼らの言葉を理解できていない。

もしもっと、理解する事ができれば、僕ら人類の未来はもっと違う形になるのではないだろうか?)
 常にそんな事を考えていたストー・リマックは、彼の住む第四の島よりももっと上に住み、毎晩星達の
囁きを聞いて、星の解明をしたいと思っていたのであった。それゆえ彼もまた、今回の呼びかけを喜び、
この試験で自身の知識を最大に発揮したのであった。

 そんな彼らを軸にここに集いし者達が、これからカサレス王子と共に空の領土を守る為、一緒に
勉学の時を同じくしていくのであった。

 ランダス執政官は、我が娘のミラディアが抜きんでた知識で、カサレス王子の近衛となる若き一団に
入ったことを、心から誇りに思ったのだった。

「ミラディアよ。そなたはまだ14歳という若き年にして、よくこの試験を一番で突破したのう。
私は本当にうれしいよ。」と言うと、ミラディアの肩に手を置いて、娘の顔に笑顔を送ったのだった。

 ミラディアも、そんな父のよろこぶ姿がうれしく、「ありがとう、お父様。私、お父様がずっと私の事を誇りに
思えるよう、頑張るわ。」と、純白の心をそのままに、父に笑顔を向けたのだった。

 さて、そんな面々とカサレス王子との初めての対面の日がやってきたのだった。王の広間に集められた
彼らは、それぞれ緊張した面持ちで、王一家の到着を待っていたのだった。

 そして王一家の到着のその前に、まずはランダス執政官より、王家に対する礼儀の説明を受けると、
彼らの緊張は頂点まで高まっていったのだった。

 王の広間の頭上には、高く伸びやかな流線の飾りが、天上まで届けと言わんばかりの崇高さと威厳を表し、
この若き者たちの鼓動など素知らぬように、静けさと均衡を降り注いでいたのであった。

こうして、静かな緊張感が支配する王の広間に、今までより一層の静けさが姿を現すと、それまでにはない
圧倒的な均衡を纏って空の王のタリオス王が、その姿を皆の前に見せたのだった。

その空気の重厚さに一同は、それぞれ、さらに身を引き締めて身動ぎもせず立っていたのだった。
それからまもなく、タリオス王に続いて、空の王妃が光のきらめきを身に纏い、その身を揺らすことなく、
悠然と音もなく進んできたのだった。

 威厳ある王と、優美な王妃の姿を見つめる一同の中、そしてようやくカサレス王子が、王の広間に
入ってきた。

王子の姿は、まるで天空の使者を従えているような、悠然とした神々しさを携えており、その場にいる
若き一団はそんな王子の姿に目を見張ると、自然とその場に跪いたのだった。

 そんな彼らの自然な現象に、王子の持つたおやかな美しさをタリオス王も大いに感じ、カサレス王子と
若き彼らのこれからを、楽しみに思ったのだった。

 そうして一同を一通り見渡すと、この沈黙の空気をまず空の王、タリオス王が突き破ったのだった。

「これからを担いし若き者達よ。いずれもそれぞれ他の者にはない輝きたる力を持って、よう我が息子
カサレス王子の元に集いしたもうた。これより先は、次を担いしカサレス王子の良き補佐として、
また良き友として、その身をこの空の領土の為に尽くしてもらいたい。」そう、この若き一団に
声をかけたのだった。

彼らはいずれも、この空の王から直接言葉を掛けられたことなどは初めてであり、その堂々とした王の
物言いに、深く一礼をして聞いたのだった。

 それから王妃が、そんな彼らの緊張をほぐす様に、優しい調べで声をかけたのだった。
「今日集まりし、若き皆様。ほんによう、カサレス王子の元に集まって下さいました。皆様が王子と共に
この空の領土をまた、新たに美しくしていく事を切に願います。」と王妃は聖なる調べを皆に届けたのだった。

 王家の前に集まった若き一同は、その清涼なる中にも温かな王妃の声に聞き入り、次に静かに王子の
言葉を待ったのだった。

 皆の熱い視線を一心に受けて、カサレス王子はゆっくりと自身の椅子から立ち上がると、一同を見渡し
、静かに口を開いたのだった。

「今日集まってくださった皆様。はじめてお会いする方も、そうでない方もいらっしゃいますね。
わたくしはカサレス・クレドール。どうかこの私と共に、空の領土の未来を良きものとする様、皆様のお力を
お貸しください。」と一同に言うと、一同の緊張をほぐす様に、柔らかくほほ笑んだのだった。

それから、ゆっくりと皆の顔を一人ずつ見つめると、そこに小さく身を震わせている、ミラディアの姿を
見つけたのだった。
すると王子はミラディアの緊張をほぐそうと、一層の優しい微笑みを持って、こう声をかけたのだった。
「やあ、ミラディア。君はこの中で最年少ながら、一番の執政の知識の持ち主のようですね。
どうか君の純白なる心で、この領土の未来を見守ってほしい。」と声をかけたのだった。

 ミラディアは皆の前で、自身の名前とその由来を王子に呼ばれた事がうれしく、小さな声で、
「はい、カサレス王子。」とようやく答えたのだった。
その答えに、一層優しくほほ笑むと、王子は次に目に留まったフリュースにも声をかけたのだった。
「その姿は槍の達人、フリュース・リュード殿。貴殿の美しき槍の流れをどうか、このわたくしにも
お教えください。そしてこの空の領土の安定に一層のお力添えを。」と声をかけたのだった。

 フリュースは、遠くから王子を見ているしかなかった自分の存在を、こうして皆の面前で、
カサレス王子に認めてもらったことがうれしく、「カサレス王子、何なりとわたくしにお申し付けください。
わたくしは、自身の力をこの空の領土の為に一切を使いたいのです。」と、大きな声で言ったのだった。

 そして、まだ年若いのにすでに賢人のような佇まいのストー・リマックに目を置くと、カサレス王子は
「未知なる星の声を聞きし者、ストー・リマック殿。どうか星たちの声をわたくしにも聞かせてください。
この空の領土を築きし創世の王からの声を、思いを、私は知りたいのです。」そうストーに声をかけると、
ストーは顔を上げ、カサレス王子の顔をじっと見つめたのだった。

そして、「何と恐れ多いお言葉でしょう。カサレス王子。私ごときには、まだまだ星達の小さなため息しか
解明できておりません。しかし、王子のお傍に着けるのであらば、少しでも早く王子のお役に立てるよう、
努力してまいります。」というと、深々と頭を下げたのだった。

 そんなストーの返事に王子はゆっくりと頷くと、それからまた一同を見渡して、「それでは皆様。
以後、どうかよろしく。」と静かに言うとカサレス王子は、ゆっくりと自身の椅子に戻ったのだった。

 こうしたカサレス王子と若き一同の対面を、頼もしく見つめるタリオス王。
最後に、タリオス王自らの「やすらぎの詩」を贈られて一同は、それぞれ誇りを胸に、王家の3人を静かに
見送ったのだった。

 王の広間を後にしたカサレス王子は、一息つくと、広間の外で待っていたアーキレイに急ぎ声を
かけたのだった。

「アーキレイ、今日はローラインが来る日になっていましたが、ローラインはもうこの城に着いているのでか?」
少し落ち着かない様子でアーキレイに聞いてきたカサレス王子。
カサレス王子は、先ほどの対面で会った彼らの事など気にかける様子はなく、ただローラインの事だけが
気になって仕方がないという風に、アーキレイには感じられたのだった。

(彼らはどんなに、カサレス王子との対面を待ち望んでいたことだろう?カサレス王子、しかし、
あなたの心の中に踏み込めるのは、ローライン様だけなのですね・・・?)アーキレイは少しの寂しさを
覚えた。

それは、自分には向けられない王子からの真の視線を、今日の対面の彼らには向けて欲しいという
アーキレイの願望が、儚くも一瞬で消え去った時でもあったのだった。アーキレイはずっと、うすうす感じ
取っていたのだ。

成人の儀式を境に、カサレス王子は誰も人を寄せ付けず、一人の道を選ぼうとしている事を。

だからこそ、自分では役不足であっても、いつか王子を支える仲間が現れてくれたらと、ずっと心に
思っていたのだった。

しかしそんな思いを微塵も見せず、すぐにアーキレイは、いつも通りにほほ笑むと「カサレス王子、
ローライン様はもうリティシア姫の部屋にお着きになっておいでです。」と伝えたのだった。
カサレス王子はそんなアーキレイの言葉もそこそこに頷くと、急いでリティシア姫の部屋へと向かおうと、
すぐに背を向けたのだった。

とその時、カサレス王子の後姿に、タリオス王が思いもかけず、声をかけたのだった。
「カサレス王子よ。今すぐ私の部屋に参られよ。」カサレス王子に静かにそう言うと、タリオス王は
そのまま先に、王の部屋へと歩き出したのだった。

 カサレス王子は、少し気落ちしながら天井を仰ぎ見ると静かに、「はい父上。今すぐ参ります。」
と王の背中に向かって言ったのだった。

 それからアーキレイの方に向き直ると、テレパシーで、(アーキレイ。ローラインには、もう少ししたら
そちらに行くという事を伝えて下さい。)と言ったのだった。

アーキレイもテレパシーで、(はい分かりました、王子。)と答えると、カサレス王子に短い礼をして、
すぐにリティシア姫の部屋に向かったのだった。
そんなアーキレイの背中を恨めしそうに、カサレス王子は見送ると>、そっと踵を返して、
タリオス王の待つ部屋へと向かったのだった。




a0073000_1951079.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-11-05 19:15 | ファンタジー小説

THE SIXELEMENTS STORY No41







THE SIX ELEMEMTS STORY




No41



                                      著 水望月 飛翔




 そんな彼らの後姿を見送ると、王妃とリティシア姫は静かに城の中に戻っていったのだった。
その場に取り残されたカサレス王子は一人、先ほどローラインに囁かれた言葉を、何度も心の中で 
繰り返しながら、その場に立ち尽くしていたのだった。

(キュリアスは無事でいる・・・。)

王子は、長年ずっと心配していたキュリアスが、何処かで無事でいる事をローラインから知らされて、
一人友の無事に喜びを巡らせていたのだった。

 そして一方、アーキレイ達はローラインを無事に第二の島のローラインの家に送り届けたのだった。

「ありがとうございます。アーキレイ様。皆様。」自身の車輪の付いた椅子に腰を降ろすと、
そうお礼を言うローラインに無言で会釈を返したアーキレイは、じっとローラインの顔を見つめたのだった。

 そんなアーキレイにローラインは不思議に思い、「どうかされました?アーキレイ様?」と聞いた。
そう聞かれたアーキレイは、静かな微笑みをローラインに向けると「いいえ、なんでもありませぬ。
ローライン様。今宵はお疲れでしょう。どうぞごゆっくりと、お休みください。」と言うと、
王の城へ戻っていったのだった。

 しかしアーキレイは、王の城へと飛んで帰るさなかに一人、ある事に思いを馳せていたのだった。

(大丈夫だろうか?ミラディア殿は。)
そう、アーキレイは遠くからいつもカサレス王子の姿を見つめている、ミラディアの姿に気づいて
いたのだった。

 ある日、そんな必死なミラディアの姿を目にしてからは、それから王子が東の壁の抜け穴を通る、
あの一瞬の時間をこの少女にあげたいと、アーキレイは王子の脱走に知らぬふりを決めたのだった。

 その一方で、カサレス王子の心のよりどころであるローラインを見て、王子の楽しそうな笑顔と、
あのタリオス王までも心なごます少女の不思議な魅力に触れ、これからの王子の幸せを心から願う自分と、
ミラディアの悲しみとの両方を、自分はどの様に受け止めねばならないのかと、自身の心に問う
アーキレイなのであった。

(カサレス王子は、私に心を赦してくれていない。)
アーキレイがカサレス王子の第一の従者になってから、アーキレイはなんとか王子の心を和らげたいと
いつも思っていたのであったが、カサレス王子は、キュリアスの件がずっと心に響いていたのであろう。
あれからどの様な者が王子に着いても、それからの王子は常に一つ距離を置き、自身の胸の内を誰にも
明かさなくなっていたのであった。

 そうした心の溝を寂しく思う一方でアーキレイは、自身にはきっと王子の心の支えになることは
無理なのだろうと自分に言い聞かせてからは、それからは自身から王子との距離を引いて、
陰ながら王子の心に思いを馳せていたのであった。

(誰でもいい。誰にも見せぬ本当のカサレス王子のお心を、理解してくださる方が現れれば。)
そう常に願うアーキレイなのであった。

 一方その頃、ローラインが部屋から退出した後、王は先に一人王の部屋に戻って考え事をしていたのだった。
(ローラインと申す者。この空の領土の女神、「碧き飛翔の女神」に会うたと言っていたな。女神よ・・・。
そなたがわたしの呼びかけに答えなくなってどれ程の時が経ったであろう?それをあの少女は・・。
しかも、我らの力を集めて、天上界に行ったとは・・。この私でさえ、天上界には行けずに、天のやすらぎを
我が石に授けて貰っただけだというに。)

 自尊心の強いタリオス王は、自身が出来ずに他の者が出来たなどという事にあるいは、
憤慨したやも知れなかったが、しかしローラインの、人をたちまち魅了する不思議な魅力に、
その様な気持ちも起こらずにいる自分の気持ちを、また不思議にも思っていたのであった。

(あの者の不思議な力・・・。それをどう活かすべきであろうか?)
そう一人思案する、タリオス王なのであった。

 その頃、ローラインは今日の出来事のめまぐるしさに、まだ心を落ち着けることができずに、
自身の部屋の窓からずっと、祝福にきらめく星たちに満ちた夜空を飽きずに、ずっと眺めていたのだった。

(天上のお父様。この地の守り神、碧き飛翔のお母様。今日のこの日の喜びを、いったいなんと
言えばいいのでしょう。私はずいぶん長い時を、お二人の所から離れていたというのに。ありがとう。
私は今、とっても幸せです。)

 ローラインは心の中でそうつぶやくと、優しくローラインのほほをなでる風の詩に、そっと耳を
澄ませていたのだった。
                               
 一方カサレス王子は部屋に戻ると、(ローライン・・・。父上も母上も本当に君のことが気に入った
みたいだね。もちろん、リティシアもね。ローライン、僕はそんな君が誇らしいよ。)と、カサレス王子は
そう心に思ったのだった。

 しかし次の瞬間、王子は2年後に控えている、自身の成人の儀式に願う、自身の石の力を
一体どのようなものにするのかを、考えたのだった。

 こうして楽しい時を、王の城でローラインと共に、一緒に過ごしたカサレス王子であったが、
しかし、それから王子はすぐに、ローラインとの密会を王に禁ぜられたのだった。

 そして、2年後に迎えるカサレス王子の成人となる為の心得として、王子はこの空の領土での様々な
儀式や決まり事、またはこの領土を司る為の政策の場に、王と共に列席するよう命じられ、
後継者としての教えを学ばされていくのであった。

 そんな忙しい日々を過ごす様になったカサレス王子であったが、ローラインに全く会えなくなった
わけではなく、ローラインがアーキレイに伴われて、この空の王の城に3か月に一度、王一家と過ごすために
来るよう、タリオス王に言われたのだった。

 もちろんローラインは、喜んでこの申し出を受けると、それからはこの間の3か月を、首を長くして
待っていたのであった。

 そして、そんなローラインのうれしい訪問を、リティシア姫も喜び、カサレスオ王子とローラインと、
リティシア姫だけで過ごす短く楽しい時間を、いつも心待ちにする様になったのだった。

 そんな幼いリティシア姫は、明るく笑うローラインの笑顔に答えるように、やさしく微笑むカサレス王子の
笑顔を見ては、自身も愛らしい笑顔を二人に振りまくのだった。

 しかし、このローラインの訪問に最初、ランダス執政官は難色を示していた。
「お待ちください、我らがタリオス王。第二の島の者をそのように頻繁にこの城にお呼びになるのは、
いかがでありましょうや。第三、第四の者達の手前、そのような個人の贔屓をこの空の領土でなさるとは・・・、
ここまでの崇高なる秩序をお造りいたしました王に、似つかわしいとは思えませぬが?」
そう進言をしたのであった。

 しかし、タリオス王の心中は、また違うところを見ていたのであった。
いつになく、語気を強めて言うこの執政官に王は、静かにこう言ったのだった。

「ランダス執政官よ。そなたの進言、真に意を得ておる事であろう・・・。しかしの、あの者は自身の成人の
儀式で、この空の領土の者の力を味方につけ天上界まで上りし者。それに、我らが領土の守り神、
「碧き飛翔の女神」をも母と呼びし者なれば、そのような者を傍に置くことは、カサレス王子の成人の
儀式に大いに役立つと思うのだが。いかがかな?ランダス執政官。」と言うと、ランダス執政官の顔を
じっと見たのだった。

 王子が第二の島に頻繁に姿を現すことは、あまり良い事ではないが、天上の力を得たローラインを
この城に呼び、彼女の石と接することで、カサレス王子が自身の成人の儀式で、ローラインよりも
もっと上の力を目指し、あるいは王子が宿してくれるのでは、と思うタリオス王なのであった。 

「タリオス王。」
カサレス王子の成人の儀式の事までを考えていたタリオス王の考えに、ランダス執政官は、それ以上、
反論の言葉を口にする事は出来なかったのだった。

 それは、次を担いし王子の石宿しは、この領土の今後を左右する大事な事なれば、たとえ我が
愛する娘の気持ちに応えられずとも、軽々しく優先させることは、この空の領土を司る執政官には
出来ない事なのであった。

 ランダス執政官は、娘の悲しそうな顔を思い浮かべたのだったが、王の顔をまっすぐに見ると、
「分かりました、タリオス王。そのような事にまでお考えがありますれば、これ以上反対する事はございません。
わたくしは、カサレス王子の成人の儀式が立派に果たされれば、何も言う事などございません。」
そう言うと、ランダス執政官は、深々とタリオス王に頭を下げたのだった。

 それからしばらくして、王子の城からの脱走がなくなると、ミラディアは王子の姿を見ることが
出来なくなり最初の頃は気落ちして、深く悲しんだのだった。

 しかし、カサレス王子の教育が始まると同時に、執政官や学者達を筆頭にその子息や優秀な者を
広く集め、王子の側近になる者たちを育てる事が提唱されたのだった。
 そして彼らは時として、カサレス王子と同じ席にいることを許され、王子と共に教育を受け、
王子と共に成長していったのであった。

 それを提唱したのはランダス執政官であった。
ランダス執政官は、他の者にあまり感情を見せないカサレス王子に、同じ位の若い者と
一緒に過ごさせる事で、新たに信頼の置ける者を見い出してもらえれば、王子の王としての成長を
助けることが出来るのでは?という思いと、もう一つ。

 我が娘ミラディアにも、王子に対するチャンスを与えてやれるのでは・・?という親心もあったのだった。
 そう、ミラディアは心優しいだけではなく、学ぶ事に深く傾倒しており、知識の探求に熱意を持っていたので
あった。故に、王子への思いだけではなく、カサレス王子の補佐をしていく人材として、ミラディアは
誰もが認めうるものを備えていたのであった。

 父からのこの計画を聞いたミラディアはたいそう喜び、父にこう宣言をしたのであった。

「ありがとうお父様。私お父様のご期待に添える様、がんばるわ。そして、お父様のように、王となった
カサレス王を誰よりもお側でお支えするわ。」と、父に言ったのだった。

 そうミラディアは、カサレス王子の目が自分に注がれる時を夢見て、王妃になりたいという願望を
一人心の中に隠し、今はただ執政を目指すという姿を、父に見せたのだった。

 もちろん娘の心情を当に気付いていたランダスであったが、ともあれ娘のこの宣誓に、微笑みを
持って聞いていたのであった。




a0073000_872738.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-11-01 08:07 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No40







THE SIX ELEMENTS STORY





No40




                               著 水望月 飛翔

 しかし、そんな和やかな部屋を、静かに後にした一人の人物がいた。
彼だけは、少し違った気持ちを持っていたのだった。

「これは、少し事を考えねばならぬな。」ランダス執政官は、王一家のやり取りを見ていたのだったが、 
急いでこの城の彼の居住区域に戻ると、勢いよく部屋のドアを開けたのだった。 

「お父様。どうされたのです?」
普段はいつ何時でも、この城の空気を静かに撫でるように、音も立てずに動くランダス執政官なので
あったが、いつになく急いだ音を響かせて部屋に入ってきた父に、娘のミラディアは、驚いて
振り向いたのだった。

 その娘の驚きに、ようやく我に返るとランダスは、「ああ、すまないミラディア。驚かせてしまったようだね。」と、
いつもと違う父を心配そうに覗き込む、娘のミラディアに優しく言うと、少し思案顔を見せたのだった。

(私の愛しい、ミラディア。そなたはずっと幼い頃より、カサレス王子にあこがれを持って見ていたな。
そなたは一言もこの父には言わないが、しかし、今も変わらずカサレス王子の事を思っているのであろう。
私は、そなたの思いがいつの日か、王子に通じればいいと思っていたのだが。)

 ランダス執政官の娘、ミラディア・カランダム。
彼女は初めて、カサレス王子と対面したその日から、ずっとこの心優しい王子の後姿を懸命に追っていた
のだった。

 城に仕える者達はたいがい、この王の城の中に住んでおり、中央の城は王の広間と、王族の住まいと
なっており、左翼の居住区には護衛をする者達が住み、右翼に広がる居住区には、執政や学者達が
彼らの家族と共に住んでいたのだった。

 その日、カサレス王子は7歳の誕生日を迎え、他の王族の子供達や城に仕える者の子供達も
王の広間に招待され、この日はカサレス王子との正式な対面の場を与えられたのだった。

 王子は広間の中央の椅子に腰を掛けて、堂々と座っていた。
その頃すでに、カサレス王子の気品と美しさは、この空の領土でも光輝いていたのだった。
ゆったりとした佇まいで、目の前に集まった多くの人々の祝福を受けるカサレス王子。
王子が一言二言なにか話し笑みをたたえると、彼の黄金の巻き毛が揺れ、何か目に見えない煌めきが
王子を祝福しているようであった。

 そして、集まった物の中から王家に近しい物たちの子息令嬢が、一人一人順番に名を呼ばれ、
王子の元に祝辞と挨拶に出向いたのだったが、当時まだ5歳のミラディアは、父の期待と初めて
足を踏み入れた王の広間の立派な空間に圧倒されて、不安と緊張で、その場に立っているのが
やっとの状態だったのだった。

 そして、とうとう自身の名が呼ばれると、ミラディアはあまりの緊張に、ただわけも解らぬまま
カサレス王子の前に立ったのだった。

 それからミラディアは、懸命にお辞儀をしたのだったが、しかし、一生懸命覚えてきた祝いの言葉が
一言も出てこず、ただ唇をかんで、今にも泣きだしそうになったのだった。

 そんなミラディアにカサレス王子は、にっこりとほほ笑むと、「ランダス執政官の娘さんのミラディアだね。
君のお父様にいつも僕は助けられているんだよ。君の髪の髪飾りは素敵だね。その花は、クラスカス山に
咲く「純白の心」を宿す、ミレンディラだね。君の名はそこからとったのかな。」と言って、
(大丈夫だよ、落ち着いてミラディア。君は立派に立っているからね。)とテレパシーを送ったのだった。

 それから、一言も発せずにいたミラディアに向かって王子は、先ほどよりも
大きな声で、「ああ、祝いの言葉ありがとうミラディア。本当にうれしいよ。そうだね。
また今度ゆっくり会いましょう。」と言うと、ランダス執政官の方を向いて、「ランダス執政官殿。
ミラディア嬢からの祝いの言葉ありがとうございます。しかし、彼女は少し具合が良くないようです。
どうぞ、そのまま休ませてあげてください。」と言って、ランダス執政官をミラディアに向かわせたのだった。

 ランダス執政は、カサレス王子の言葉に驚いて娘に急いで近づくと、心配そうにミラディアの顔を
のぞきこみ、「大丈夫かい。ミラディア?」と声をかけたのだった。

 しかし、そんな父にミラディアは、自分が祝いの言葉一つ言えなかった不甲斐なさに泣きそうになり、
「ごめんなさい。お父様。」とようやく小さな声で呟いたのだった。そして、父に肩を抱かれながら、
退出していくミラディアの後姿にカサレス王子は、「ありがとう、ミラディア。また会いましょう。」と言って、
笑顔を向けたのだった。

 そんな王子の元を後にしてミラディアは、その夜、熱を出して寝込んだのだった。
心配する両親の看護を受けながら、たびたび脳裏に思い出すカサレス王子の優しい笑顔が、
こうしてその後もずっとミラディアの心に住み着いていったのだった。
 
 それからのミラディアは、幼いながらに何をするにも一生懸命に、物事をこなしていったのだった。

それは、いつかまたカサレス王子に会う時の為に。

 それから、いつの事だっただろう。
カサレス王子が、そっと城から抜け出して、第二の島の礼拝堂へ行こうとした時の事だった。

 その頃カサレス王子の元に着いたばかりの、第一の従者アーキレイの目を逃れて、カサレス王子は
そっと王族の住む中央の塔から抜け出し、ミラディアの住む居住区に入り込んだのだった。

「王子。カサレス王子。どちらにおられるのですか?」
アーキレイは成人の儀式を終えたばかりでまだ若く、初めて着く王族の、まして後を継ぐカサレス王子に
対しても、まだどのように接していいのかわからず、遠慮をしていたのだったが、そんなアーキレイを
翻弄するように、王子はたびたび城を抜け出していたのだった。

 その日も執政官対たちの居住区まではうまく、アーキレイから逃げおおせた王子だったが、
そこから一番右端の城壁を飛び越えようとした時であった。

 勢いをつけて飛ぼうとした時に、その前に突然現れたミラディアとぶつかりそうになったのだった。
「あぶない。」カサレス王子は、とっさにミラディアを避けたのだったが、そのせいで勢いよく、
翼を壁に打ち付けて地面に倒れ込んだのだった。

 声を出さずに、痛みをこらえるカサレス王子に、ミラディアは心配して王子の元に駆け寄ったのだった。
「だいじょうぶですか?カサレス王子。」ミラディアは久しぶりに会う王子との出会いがこんな形で来ようとは、
胸の鼓動をドキドキさせながら、王子に声をかけたのだった。

 王子は、自身の名前を呼ぶ少女に、最初は誰だか思い出せないでいたのだったが、心配そうに
覗き込むミラディアの顔に、青ざめて立ち尽くす幼い少女の面影を思い出したのだった。

 それからカサレス王子はゆっくりと身体を起こすと、「やあ、ミラディア。元気そうだね。」
と声をかけたのだった。

 最初の対面の日からその後、王子の誕生日の日には挨拶をしていたのだったが、その他では
王子と話をすることは、なかなかできないでいたミラディア。

 ミラディアはドキドキしながら、王子の傍に座ると、恐る恐る王子の翼に目をやったのだったが、
そんなミラディアをまた、王子は優しく見つめたのだった。「大丈夫、心配しないで、ミラディア。」
そうカサレス王子が声をかけると、ミラディアは、うつむきながら王子にこう言ったのだった。

「カサレス王子。ごめんなさい、私、急に飛び出して。あの、本当にお怪我はありませんか?」
と、心配そうに聞いたのだった。

 そんな、申し訳なさそうに言うミラディアに王子は、ほほ笑みながら、「本当に大丈夫だよ、ミラディア。
僕の方こそ、君を驚かせてしまってすまない。」

 そう謝ると、先程まで遠くに聞こえていたアーキレイの声が急に近くで聞こえて、カサレス王子は
とっさにミラディアを自分の方に引き寄せると、二人で草陰に身を隠したのだった。

 そんな、王子の近くに引き寄せられたミラディアは、波打つ鼓動を必死で抑えようとしたのだった。
そうして、しばらく静かに身を隠していると、アーキレイはもっと奥の方を探そうと、王子たちの近くから
場所を変えて移動したのだった。

 アーキレイが二人から離れていった気配を確認すると、王子はミラディアに小さな声でこう言ったのだった。

「ミラディア。僕はこれからいかなければいけない所があるんだ。それじゃ、またね。」と言って立ち上がると、
カサレス王子はその場を離れ様としたのだったが、そんな王子の後ろ姿に、ミラディアは素早く
こう言ったのだった。

「カサレス王子。あの。もし、この城から出られるのでしたら、この壁のもっと東側に、小さな抜け穴が
あります。そちらを通って行かれてはどうですか?」遠慮がちではあるが、そう進言するミラディアに、
カサレス王子は振り向いて、「それは素晴らしいね。ミラディア、ありがとう。」と嬉しそうに言ったのだった。

 それからミラディアは、その抜け穴までカサレス王子を案内したのだった。

やがてその場所に着くと、確かに小さな穴が開いており、ここなら他の者に気づかれなく、
通れそうなのであった。

 カサレス王子はミラディアの方に振りかえると、「ありがとう、ミラディア。それじゃ。」と短く
声をかけて穴をくぐると、急いで飛んでいったのだった。

そうこの時のカサレス王子の頭には、ローラインと会う事だけが大きく支配しており、この時も、
その約束の時間に遅れてしまう事だけに、気を取られていたのであった。

 しかし、そんなカサレス王子の後姿を、ただ今日会えたこの小さな偶然がうれしく、心に残った
ミラディアなのであった。

 そしてそれからは、いつ王子がここを通るのか気にしていたミラディアであったが、満月の次の日に
カサレス王子が必ずこの抜け穴を通る事に気がつくと、その姿を一目見ようと遠くから見つめる
ミラディアなのだった。

 そんな娘の、王子への思いに気づいていたランダス執政官は、我が娘の気持ちがいつしか
カサレス王子に届くことを、父として願っていったのだった。

 しかし今日の王子の告白で、今までずっと、ローラインに会いに行っていた事と、先ほどまで、
ローラインと一緒にテーブルに着いた王をはじめ、王妃、リティシア姫までもが、楽しそうにしている
姿を目の当たりにして、父としてのランダス執政官は、娘の悲しみを思うと、その場に居続ける事が
できなかったのだった。

 そんな父の心を知らずミラディアは、心配そうに父の顔を見つめると、「お父様、どうされたのです?
お加減でもお悪いのですか?」と聞いたのだった。

 そうミラディアは、本当に「純白の心」の名にふさわしい、心優しい少女なのであった。

 さて一方、楽しいひとときを送った王一家は、いつまでも帰ってこないローラインの事を、
心配しているだろう母の元にローラインを見送ったのだった。

「それでは、また会いましょうね。かわいい勇者さん。」とローラインに王妃が言うと、カサレス王子に
抱かれているリティシア姫は寂しそうな顔をして、アーキレイに抱きかかえられているローラインの
衣の裾を、いつまでもつかんでいたのだった。

 そんなリティシア姫にローラインは、「リティシア姫。またお会いできるかしら?今度会う時まで、
私を忘れないでくださいね。」と言うと、自身の右手を優しく撫でて、「私の「天上のよろこび」よ。
私の大切なお友達にその光を。」と唱えたのだった。

 すると、キラキラと明るくきらめく無数の星達が、リティシア姫の前に集まり、くるくるとその頭上を
回ったのだった。

 そうして、無数の星の粉がリティシア姫に降り注がれると、光の粒の中で、姫は嬉しそうに体を揺らすと、
屈託のない明るい声をあげたのだった。

 そんな妹姫の姿を優しく見つめてカサレス王子は、「ありがとう、ローライン。」とローラインにささやくと
、ローラインは嬉しそうに王子に顔を向けて、こう言ったのだった。

「カサレス王子。私の方こそ、ありがとう。あなたが助けに来てくれなかったら、私、どうなっていたか。」
そう言うと、二人はしばし無言で見つめ合ったのだった。

 しかし、そんな二人にアーキレイが、遠慮がちに「そろそろ行きましょうか。」と間に入って言ったのだった。

カサレス王子はまだ名残惜しかったのだったが、アーキレイと後ろに控えている二人の従者の方を見ると、
「ああ、ローラインを母君の元に送ってください。」と声をかけたのだった。

 そして、王子たちに一礼をして、城を後にしようと歩き出したアーキレイに、ローラインが何やら囁くと、
カサレス王子の元にまた引き返してきたのだった。

「どうしたんだい?ローライン。」
そう不思議そうに聞くカサレス王子の耳元で、ローラインがなにやら小さく囁くと、アーキレイに向かって、
「アーキレイ様、それではお願いします。」と言って、ローラインは自身の家路に向かったのだった。

 背の高いアーキレイの後姿に、すっぽり隠れて見えないローラインであったが(またね、カサレス王子。)と、
王子にテレパシーを送ったのだった。






a0073000_1053504.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-10-29 10:55 | ファンタジー小説

まるこ安子永久不出馬宣言




平和を願い、戦争、原発、環境汚染、社会的搾取を食い止めようと活動なさっている皆様へ
また、そうでない方へ

 今日ここに、まるこ安子がどのような選挙にも出馬をしない、
永久不出馬宣言を発表いたします。

 普通にファッションや支援活動から、maarencaやTUNAGU&TUMUGUのブログとして読んでくださっている方には、突然の政治的発言で、驚かせたことと思います。
大変申し訳ありません。

 デザイナーでもある丸子安子は、「脱原発」を実現したく、2012年の衆議院選、2013年参議院選挙に出馬をしており、
一方では「みなし政治家」として見られている立場がありました。

 ですので、このブログで最後の政治的発言をさせていただきたいと思います。


3.11の東日本大震災で起こった多くの被害、悲劇に何かの役に立ちたいと、わたくし丸子安子は、
多くの「脱原発」活動に参加し、一般人ながら国政選挙に出馬するという、大変貴重な経験をいたしました。

来年は、全国で統一地方選挙が4月にあります。

私も今年の夏には、来年の地方選挙に向けて、地元活動を開始しておりました。
(以前、このブログでも公表しております。)

しかし、たとえ地方選挙といえども、本人だけでは勝てない。
本当に社会を変えるには、組織としての確立が必要!
との想いにいたりました。

二回の「出馬」という経験をしたからこそ言います。
選挙は、選挙前のたかだか2~3カ月選挙運動をすれば勝てるというものではありません。

選挙を何日か手伝ったくらいの人は、ある意味の高揚感があり、楽しい経験でとどまっていると思います。
しかし、選対本部やずっと支える立場にいる方は、選挙というものがどれだけ経済的、精神的に大変かはご存じでしょう。

出馬する立場の人間にとっては更に多くの責任を持つことになります。

私はこれ以上、家族に迷惑をかけたくない。
一番、幸せにしたいのは家族。
そこをないがしろにして、社会など変えられるのか? そんな思いに至りました。


すでに多くの犠牲を払ったからこそ、これ以上の犠牲を家庭に強いる事をしたくありません。

よく簡単に言われます。「頑張って。応援しているから!」
これは善意で、言って下さる言葉。

しかし、自分は安全な場所にいて、言葉だけの応援をいくらもらっても、実際なんの役にもたちません。




本当に大変なのは、選挙になるまでの長い道筋です。
立候補者を支え、同等の責任を負う覚悟が一人一人にあるか?



多分そこがそろったときに、
社会は大きく変わるのでしょう。


参議院選挙後にずっと意識をして一般社会を見てきました。
国会や官邸周辺ではなく、銀座や大手町など一般生活に重きを置く方の意識を間近で見て、本音を聞いてきました。

地球や子供たちの未来を守りたいと思い始めた「脱原発活動」

しかし、多くの方の方向からみる景色とはだいぶ違って見えました。

「脱原発活動」の固さやヒステリックな部分を多くとられ、そこには
「絶対無理!」という拒否感すらありました。
とても残念な事です。

(私はデモや活動を批判しているのではあません。常に明るく行動されている方には感謝と敬意を今も持っております。また、同じ場所にはいなくても、心が繋がっている方には理解していただけていると思っています。)

私はずっと、思考や言葉が持つもろ刃の刃を考えてきました。
否定や拒否は相手だけでなく自分も傷つける。
だからこそ、「平和」「希望」「夢」など、肯定的な言葉を使い、具体的にできる事を考え、行動する事を大事にしたいと。

多くのやり方があっていい。

 そして、自分の持っている特質を伸ばしたい。
自分が接点の違う、多くの人の間を取り持てるようになりたい。

自分の立ち位置に根を張り、他の誰でもない、自分の役目を全うする事が、自分の人生をまっとうでき、そうして、まっとうできた人が増えるほど社会が成長するのだと思ったのです。

 そう考えたとき、「政治」は私の行きたい位置、役割ではないと気がつきました。

「政治的」「社会的」な責任を放棄する、あきらめるというのではありません。

違うやり方でもできる。

いいえ私の場合、違うやり方の方が力を発揮できると、答えを見つけたのです。



あんなにガンバっている山本太郎さんですら、大勢の方にはその声がなかなか届きにくい。

しかし、私が太郎さんの応援をしても大した力にはなりません。


違う立ち位置で、世界に発信している人間になっていたい。

私自身が世界に認められた時こそ、力になれる!そう思ったのです。


また、まるこ安子の大口たたきが始まった。
大多数の方は、そう思われるでしょう。
それが普通だと私も思います。
しかし、
私には、はっきりと大きなビジョンがあります。


それはブログでもアップしているSFファンタジー小説 THE SIX ELEMENTS STORYの
書籍・まんが・アニメ・ゲーム・映画でワールドツアーに出る!というビジョンです。

いまだ、出版先も決まっていないのが現状ですが。

そして、福祉施設・被災地・途上国と消費者をつなぐファッションプロジェクト
TUNAGU&TUMUGUの世界巡回展を開く。という夢です。

もし、本当にこの二つを成功させたいのであれば、私のすべてをここに集中し、捧げなければ成功などあり得ないでしょう。

私は自分の持って生まれた才能を開花させるために、自分の人生と全身全霊をかけて生き抜いていきたいのです。

政治もそう、片手間ではできない仕事です。

最近、フェイスブックでやたらにメッセージもなく友達リクエストを送ってくる他党の方が増えてきました。

意味もなく、ただ繋がってもお互いに虚しいだけです。

だからこそ、今ここで決意を発表しようと思いました。

今までは、メッセージがなかろうとゆるく承認をしてきました。

でもそのように友達になっても、結局は何にもならない状態の人が大多数です。

私はフェイスブックが大好きです。

実際に会う会わないは関係ない、心の交流ができる方が多くいるからです。



本当に私を応援、または期待をしてくださった方には、申し訳ありません。

ご期待に添える立場を目指しはしませんが、もっと大きくなって、必ず帰ってきます。

別れるのではありません。

それぞれの歩む道をしっかりと歩み、また笑顔で再会する事を楽しみにしています。


PS なお、ツイッターは現在活用できていませんので、年内には閉じようと思っています。
ご意見のある方は、返信はなくても必ず目を通していますので、12月半ばまでにお書きいただけると幸いです。

大変長くなりましたが、最後まで読んで下さりありがとうございました。


丸子安子 出馬名 まるこ安子







[PR]
# by maarenca | 2014-10-26 13:46

THE SIX ELEMENTS STORY No39








THE SIX ELEMENTS STORY




No39


 
                                     著 水望月 飛翔



リティシア姫が去って、王子の部屋に取り残された二人は、先程までの無邪気な空気から一転、
静かになった部屋の気配に、急に気まずい思いにおそわれたのだった。

 窓の外の気配は、もう碧く落ち着いたメディテラネブルーの空へと姿を変え、プラチナに輝く星達が、
今日のローラインの儀式の成功を祝うかのように、優しく華やかな文様を形作り、美しい音を奏でて
いたのだった。

 王子はその美しい星達を見つけると、ローラインを抱きかかえて窓に連れて行った。
窓の外には、ローラインが今まで見た事もない、ずっと大きく近くで瞬いている星達が、ローラインに
祝福の音を惜しみなく降り注いだのだった。

ローラインはそんな星たちの祝福を全身で受けると、「ありがとう、みんな。」と言って、カサレス王子の
方を向いたのだった。

そして王子に向かって、「素敵ね。こんなにきれいな星達をいつもこんなに近くで見られるなんて・・。
うらやましいわ。」と言うと、また今宵の星々を愛でるように、見つめたのだった。

 そんなローラインにカサレス王子は、ゆっくり首を横に振ると優しく、「今宵の星達の輝きは特別なものだよ、
ローライン。きっと君を祝福する為、いつもより装ったのだろう。」と言って王子も星達を見つめたのだった。

 こうして、星たちの祝福と天からの荘厳な響きを、楽しんでいた二人であったのだったが、そこへ、
二人を呼びにアーキレイがやってきたのだった。

「失礼いたします。王子。ローライン様。王がお二人をお待ちでございます。」アーキレイが神妙な面持ちで
二人にそう言うと、カサレス王子は少し心配そうに、ローラインの顔をのぞき込み、
「父王が君に会いたがっているんだが・・。ローライン、君は大丈夫かい?」と聞いたのだった。

しかしそれを聞いてローラインは、少しおどけたように肩をあげると、「大丈夫よ、カサレス王子。
空の王をお待たせしてはいけないわ。早く行きましょう。」と言って、王子を見上げたのだった。

カサレス王子はそんなローラインに向かって、軽く頭を下げると「空の王の呼び出しに、全く怖れを
見せないとはね・・・。大した者だよ、君は。」と言って笑いながら、王の待つ部屋へと向かったのだった。

 そうして、ローラインを抱えながら、王子が部屋に入って行くと、そこには父王と、王妃、そしてリティシア姫が
もうすでに、二人の到着を待っていたのだった。

 王と王妃はローラインを抱きかかえながら、部屋に入ってきた王子の姿に驚き、顔を見合わせた。
そして、王子の後から入ってきたアーキレイを見ると王は、「何故王子がこの者を抱いて連れて来るのだ?
そなたはいったい何をしておる?アーキレイ。」と厳しい声で聞いたのだった。

アーキレイは静かに、「申し訳ありませぬ、タリオス王。」と、頭を下げそう一言だけ言うと、そのまま
おし黙ったのだった。

 カサレス王子は、ローラインをリティシア姫の隣の椅子に座らせると、すぐに父に向かって
こう言ったのだった。

「父上、申し訳ありませぬ。ローラインは足が不自由な身なれば、わたくしが自身の腕で、彼女を連れて
きたかったのです。」

そう言うと王子は、(すまない、アーキレイ。)とテレパシーで言ったのだった。
そんな王子にアーキレイもテレパシーで、(いいえ、王子。)と答えたのだった。

 一方、王妃はローラインを見つめながら、そんな重い空気を払いのけるように、「まあ、なんて可憐な
勇者様でしょう。あなたが今日、天上界に上った方ね・・・?そして、キュリアスの妹さん。」と、そう言うと、
懐かしそうに優しくローラインを見つめたのだった。

 そんな王妃の優しい心づかいに、ローラインもほほ笑みを返し、「はい、王妃様。そして、この空の誇り
タリオス王。兄が大変お世話になっておりました。私は、キュリアス・グリュスターの妹。
ローライン・グリュスターと申します。皆様にこうしてお目に掛かれるなんて、本当に光栄です。」と言うと、
隣でうずうずしながら、ローラインを覗き込んでいるリティシア姫に向かってテレパシーで、
(また会えましたね、リティシア姫。)とそっと言ったのだった。

 しかし、リティシア姫はうれしくなって、「はい、ねえちゃま。」と大きくローラインに返事をしたのだった。
そんなリティシア姫に、ローラインとカサレス王子は驚いて、顔を見合わせたのだったが、次の瞬間、
ローラインは楽しそうに明るい笑い声をあげたのだった。

 そんなローラインの姿を静かに見つめるタリオス王。

それから王はローラインにこう言ったのだった。「ローライン・グリュスターよ。そなたの母は元気であろうか?
そなた達母子は、日々つつがなく暮らしておろうか?」王は、そうローラインに聞いたのだった。

 ローラインは王が、自分と母を案じている事をうれしく思い、皆の前でこう言ったのだった。
「はい、タリオス王。あの時は本当にありがとうございました。キュリアス兄様のあの時、かあさまとわたくしに
本当に良くしてくださって。母は元気にしております。」そう言って、少し考えるように間を置いてから
、ローラインは続けてこう言ったのだった。

「タリオス王。いつも私とかあさまに、クラスカス山に咲く花を届けて下さっているのは、あなた様ですよね?」

 そう言うローラインの言葉に、カサレス王子は、(父が、花を?)と驚きを持って聞いたのだった。
タリオス王は、キュリアスの成人の儀式の失敗を聞くと、すぐにこの母子の元に使いを出し、いろいろ慰めを
していたのであった。

そしてときどきは、クラスカス山に咲く「癒しの花々」をこの母子の元にそっと、届けさせたのだった。
この様にタリオス王は、この空の領土内で悲しい思いをしている者の元に、静かに慰めを贈っていたので
あった。

 しかしそんな問いかけに王が何も答えずにいると、王妃が優しい目で王を見つめながら、
こう言ったのだった。

「王は、いつもこの空の人々の事を常に第一に考えているのですよ。」と言うと、皆にほほ笑みを
向けたのだった。

 それから少ししてタリオス王が、ローラインにこう聞いたのだった。
「ローライン・グリュスターよ。そなたはこの度の自身の石宿しで、天上界に行ったと聞いたが、
それはほんに誠の事であるのか?」
タリオス王のこの問いに、ローラインは少し神妙な面持ちをしながら、一言一言、言葉を紡ぎだす様に答えたのだった。

「はい、タリオス王。私は天上界に行って、「天上のよろこび」を私の石にいただいて参りました。
でも、天上界へは私の力で行ったのでありません。天の父がただ私を引き上げてくれたのです。
そして、天上にあるものを好きなだけ、私に授けて下さっただけなのです。」

そう言うとローラインは、めまぐるしく起こった天上界での出来事を、一生懸命に思い出していたのだった。

 そして何を思ったのか突然、王の前であることも忘れて、今までとは違う大きな声をあげたのだった。
「ああ、違う、違うわ。その前に、王様。私の石の光は、天上に届くどころか、全くその光を伸ばす事など
できなかったのです。でも、私が「希望の詩」を歌ったら・・・、そう、皆さんも歌ってくれていたでしょう?
そうよ、皆さんの詩の力があったからこそ、私の石の光が天上に届いたのよ。思い出したわ。リティシア姫。
あなたも歌ってくれていたわね。ちゃんと聞いていたわ。ありがとう。」ローラインはそう言うと、
そのローラインの言葉に嬉しそうに笑うリティシア姫を、強く抱きしめたのだった。

 ローラインは王も王妃も加わった、空の領土中の歌声が、自身の石に力を与えてくれていた気配の断片を、
その記憶の片隅から少しずつ甦らせたのだった。
 そして、その時の事を思い出し、嬉しさにうち震えているローラインの姿を見て王は、今までにない空気を、
この少女から感じていたのだった。

「ローライン。届いていたんだね、君に。」カサレス王子もまた、ローラインの言葉を聞いて嬉しそうに、
そう言うと、ローラインは王子に顔を向けて、「ええ、届いていたわ。あなたの声もね。」
そう王子に笑顔を向け、嬉しそうに頷きながら答えたのだった。

しかし、それからまたすぐに違う事を思い出した様に、ローラインは王に向かってこう聞いたのだった。
「そう言えば、王様。「碧き飛翔の女神」がご自身の名前を忘れてしまっていたのですが、最近女神に
会われていないのですか?」と、無邪気に聞いたのだった。

そんなローラインの言葉を聞いた一同は、驚き顔を見合わせたのだった。
「えっ?君。「碧き飛翔の女神」に会ったの?」
カサレス王子は驚いて、ローラインに聞いたのだった。

 しかし、そんな一同の驚きを別に気にすることなくローラインは、「ええ、私ちょっと落ち込んでて、で
も「癒しの浴室」で女神様を思い出して、母様がわたしの心を落ち着けてくれたの。だから私は、
今日の儀式を無事に終える事ができたのよ。」と言うと、嬉しそうにほほ笑んだのだった。

 そんなローラインの言葉に王は、「母様、とは?そなたの母の事ではなさそうじゃな。」
そう王が聞くとローラインは、「ああ、ごめんなさい。さっき言った母様は、私の本当のかあさまじゃなくて、
この地を司る女神様の事です。」と言いながら、フッと噴き出したのだった。

 カサレス王子が不思議そうに、ローラインを見つめて「どうしたんだい、ローライン?」と小声で聞くと、
ローラインは笑いをこらえながら、こう言ったのだった。
「だって、私。この空のお城で出てくる食べ物は、もっとすごく素敵な物が沢山出てくるとずっと思っていたよ。
だけど、お皿だけは素晴らしいけれど、私達が食べている物と、全然変わらないんだもの。なんだか、
可笑しくなってきちゃったわ。」
と言うと、ローラインの前にあるお皿の中のものを楽しそうにつついたのだった。

 そう、この空の人々は長い時を経て、食べ物に重きを置かなくなり、自身を動かすエネルギー源を今の
我々の様に、絶対的に食べ物に頼らなくなって久しいのだった。

 簡単に言うと、まるで霞を食べているような。
見えない空気の粒子の中に含まれている、散りに等しい物質を、少々実体化させて、それを口に運んで
いたのだった。 

 まあ実際のところ、空の領土の人々は、何も口にしなくとも自身の循環エネルギーと空の領土の空気で、
事足りるのであったのだったが、同じテーブルにつき、共に食事をするという行為の継承に、重きを
置いていたのであった。

いつもは礼節に重きを置く、厳格なタリオス王であったのだったが、しかし、天上の光を父と呼び、
この地の守り神を我が母と呼ぶこの少女の、屈託のない振る舞いに何故か咎める気持ちも起こらず、
不思議に穏やかに見ていたのだった。

そして、そんな穏やかな姿の王と、ローラインを愛おしそうに見つめる王妃と、楽しそうに笑い声をあげる
妹姫の姿を見て、カサレス王子もまた、久しぶりに寛いだ表情を見せたのだった。

そして、そんなカサレス王子と、王一家の姿を見てアーキレイもまた、うれしく見つめていたのだった。




a0073000_1582539.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-10-25 15:21 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No38







THE SIX ELEMENTS STORY





No38




                                     著 水望月 飛翔


 一方その頃、第二の島でローラインの事を心配していた母と人々は、カサレス王子の
従者アーキレイから、ローラインの無事を聞くと、ホッと安堵の色を浮かべたのだった。

 そして王の城では、先ほどからの異変を何事かと感じていた城の者たちが、中庭に舞い降りてきた二人を、
興味深そうに待ち受けていたのだった。

「カサレス王子、いったいこれは何が起こったというのでしょうか?」
先程まで、第二の島から天に昇っていった光の出現と、今目の前でカサレス王子に抱きかかえられている、
みすぼらしい脚と翼を持つ小さな身体の少女の姿に、王の執政官は皆目見当がつかないという面持ちで、
王子の返事を待ったのだった。

 カサレス王子は、ほほ笑みながら城の者達を見回すと、「やあ、皆様。彼女がこの空の領土始まって
以来の勇者ですよ。ほら、先程まで続いていた天への光。あれは、彼女が天上界に上っていった証し。
私はその勇者を今、この城にお連れしたのです。」  

 そう言いながら一同を見回した後、ローラインの方を覗き込んだカサレス王子。
しかしそんなカサレス王子に対して、ローラインは身を固くして、無言で王子にしがみついたのだった。

 城の者たちの前で委縮するローラインに、カサレス王子はどうしたのかとテレパシーで聞くと、ローラインは、
少し怒ったように王子にこう答えたのだった。

(カサレス王子・・。こんな大勢の人の前で、そんな風に言わないで。私・・・、王の城に来たのも初めてだし、
こんな大勢のお城の人達に、こんな風に見られるのも初めてだから。どうしていいかわからないわ。)
テレパシーでそう言うと、また王子の腕の中に身を隠す様に、小さな身体をもっと小さくしたのだった。

 そんな、今まで王子が見た事が無い、緊張しているローラインの姿にカサレス王子は、すまなそうに
こう答えたのだった。

(ローライン、ごめんね。僕は君が誇らしくて・・、ついみんなに君を見せびらかす様な事をしてしまったね。)
そうローラインにテレパシーで言うと、先ほど王子に質問した城の執政官に向かって、こう言ったのだった。

「申し訳ありません。ランダス執政官殿。彼女は先程天界から落ちたショックで、まだ皆様と話せる状態では
ありませぬ。すぐに私の部屋で休ませたいのですが・・・。」と言いながら一同を見回すと、周りに詰めかけて
いた者達は無言で一斉に頭を下げると、一歩ずつ下がり王子に道を開けたのだった。

 そんな一同に対し、カサレス王子はゆっくりと会釈をすると、そのままローラインを抱いて、王子の部屋へと
向かったのだった。

 繊細な装飾に彩られ、金蓮花色の美しい夕日に照らされている王の城。
しかし、今朝からのめまぐるしく現れた状況に疲れたのか、ローラインは先ほどからずっと、周りの景色も目に
入らずに、ただ王子の胸にしがみついていたのであった。

 またカサレス王子は、そんな心細そうな、雛鳥みたいにしがみついているローラインを愛おしく思い、
これからずっと、自分が彼女を守っていけたらと、心の中で思うのだった。

 それからしばらくして、カサレス王子の部屋に着くと、そのまま王子のベッドへローラインを降ろそうと思い、
カサレス王子はローラインの方に顔を向けたのだった。

「ローライン、着いたよ。」声をかけるカサレス王子。しかし、ローラインの返事はなく、王子は不思議に思い
彼女の顔をのぞいたのだったが、ローラインは今日の疲れが出たのであろう、王子の腕の中でいつの間か、
静かな眠りについていたのだった。

 カサレス王子は一人そっとほほ笑むと、そのまま静かにローラインをベッドに降ろし、薄布をかけると
ベッドの端に腰を降ろして、ローラインの静かな寝息を聞いていたのだった。

(ローライン。どう見ても君の姿はまるでまだ、10歳にも満たない子供にしか見えないというのに・・・。
そんな小さな身体でどうしたら、天界を味方につける様な事ができたのだろう?)

 カサレス王子は、ぼんやりとローラインの小さな身体を見つめながら、そう一人思ったのだった。
そうしてしばし、静かな時が流れ、ゆっくりと静寂の蒼が空の城を包み、夜の訪れを促す祈りの音が、
天空の星々が静かに奏でられていったのだった。

 しばらくすると、カサレス王子の元に、王からの使いの者が来た。
その従者は、すぐ王の部屋に来るようにとの、王の伝言を王子に伝えに来たのだった。カサレス王子は、
一度ローラインの方を振り向くと、まだ深い眠りについているローラインの姿を見届けて、また従者の方に
向き直り、すぐ王の元に行くと伝える様に言ったのだった。

 それから、カサレス王子は静かにローラインの元に近づき、少し乱れた前髪をかき分けるように撫でると、
そっと小さな声で、「少し行ってくるね。」と、眠りについているローラインに囁いたのだった。

 カサレス王子が王の部屋に入ると、先ほど中庭にいた王の第一執政官である、ランダス・カランダム執政官
も王と共に、王子の到着をじっと待っていたのだった。

「お待たせいたしました。」そう二人に王子が言うと、王は王子の顔を見て、ゆっくりとこう聞いたのだった。

「カサレス王子よ。先ほどそなたが抱いていた少女の事だが、あの者はそなたの知っておる者なのか?」
そう王が聞くとカサレス王子は、姿勢をただし王にこう言ったのだった。「はい父上。あの少女は・・・。」
と一瞬口ごもると、王を真っ直ぐに見ながら、続けてこう言ったのだった。

「父上。覚えておいででしょうか?私が幼少のみぎり、いつも私の傍についてくれていた
キュリアス・グリュスターを・・・。彼女は、ローラインはキュリアスの妹なのです。
そして今日、彼女は自身の成人の儀式で、天上界に上り、「天上のよろこび」を右手に宿したのです。」
そう言うとカサレス王子は、王の返事を静かに待ったのだった。

 王とランダス執政官は、カサレス王子の口からキュリアスの名を聞いて、少し驚いたのだった。
そして、なぜキュリアスの妹を王子が知っているのかを、王子に聞いたのだった。

 カサレス王子はその問いになんと答えていいのか、少し困ったのだったが、少しずつ今までのいきさつを、
王とランダス執政官に話したのだった。

 一通り王子の話を聞き終えると王は、ゆっくりとカサレス王子に近づくとこう言ったのだった。

「つまり・・・、カサレス王子よ。そなたはたびたびこの城をぬけ出して、第二の島まで降りていき、その少女と
会っていた。という事であろうか・・・?そして、先ほどその第二の島に住む者を、勝手にこの城に運んできたと
いう事なのだな?」そう言うとタリオス王は、少し険しい顔でランダス執政官と顔を見合わせたのだった。

 カサレス王子は、ローラインの事をあまり歓迎していないような二人の気配を感じ、居心地悪そうに
その場に立っていたのだった。

 しかし、王子はそんな二人にこう言ったのだった。
「はい父上。勝手な振る舞い申し訳ありませぬ。しかし、ローラインは、自身の成人の儀式で、天上界に
上った者。その様な事は未だかつて、どの領土でも成しえた者などはおりませぬ。その様な者が天上から
落ちてきたところを助けたのですから、この城に連れてくることは、至極当たり前の事だと思いますが。」
そう言うと、王子は押し黙ったのだった。

 普段は大人しいカサレス王子が、王に対して意見を言う姿を初めて見たランダス執政官は内心驚いて、
王に代わって王子にこう言ったのだった。

「カサレス王子。そのような・・・。王は王子を責めておられるのではありませぬ。しかし、この空の領土の
王子としてのお立場をお考えいただければ、その様に頻繁に勝手に城を抜け出されたり、ごく一部の者と
だけ個人的に親しくされては、この空の領土の秩序にかかわる事。次を担いし王子の振舞としては、
もう少しご配慮いただきませぬと。」と、王子に苦言を呈したのだった。

 ランダス執政官の苦言を隣で聞いていた王は、短いため息をついたのだった。
そしてカサレス王子は、このランダス執政官の的を得ている言葉に、なすすべもなくただ押し黙ったのだった。

 そんな硬い空気が漂う中、王はカサレス王子にこう聞いたのだった。
「さて、王子よ。かの者は今どうしておる?」重い沈黙を破り、王が王子にこう聞く、カサレス王子は
王の問に対し、「はい父上。ローラインは、疲れと緊張のため、今は私の部屋で休んでおりまする。」と、
そう答えたのだった。

 そんな王子の答えに、タリオス王は少し考えた後、王子に向かってこう告げたのだった。
「カサレス王子よ。今宵のテーブルにその者も連れて来るがよい。少し、聞きたいこともあるのでな。」
そう短く告げると、そのままカサレス王子を部屋に下げさせたのだった。
                            
 そうしてカサレス王子は、王の部屋を出ると、今宵の父王とローラインの面会の事を思い、少し案じたのだった。

 しかし、王子の部屋に置き去りにしてきたローラインの事が気になり、急いで王子の部屋に戻ったのだった。

「ローライン・・・?」部屋のドアを開けて王子はそっと、ローラインの名前を呼んだのだったが、それと同時に
「きゃあ~、待って~。」という大きな声が王子の小さな呼びかけの声をかき消したのだった。

 カサレス王子は一瞬、部屋を間違えたのかと思ったのだったが、もう一度ゆっくりと部屋の中を見渡すと、
そこは間違いなく王子の部屋だったのだった。

 それから王子は、何やら楽しそうな声のする王子のベッドの方にゆっくりと近づいて行くと、ベッドの上では、
目を覚ましたロ-ラインとリティシア姫が楽しそうに二人で、じゃれ合う姿がそこにあったのだった。

 そして、ローラインとリティシア姫は、カサレス王子に気がつくと、「お帰りなさい。王子。」「お帰りなさい。
にいちゃま。」と同時に声をかけたのだった。

 それから二人は顔を見合わせると、先ほどからのおもちゃの掴み合いにまた興じたのだった。

 カサレス王子はそんな二人の楽しそうな姿を見て、少しあきれる様に(やれやれ・・・。
ローライン、これではまるでリティシアと同じくらいの小さな子供ではないか。)と、心の中で思っていると、
ローラインはカサレス王子の心を読み取って、すかさず王子に向かって、「あら、カサレス王子。
わたし子供じゃなくてよ。天上界までいった勇者なんですからね。」と言うと、肩を軽く上げて、
明るく王子に笑顔をむけたのだった。

 また、そんなローラインの言葉にリティシア姫は「ゆーしゃ。ゆーしゃ。」と意味も解らず楽しそうに声を
あげたのだった。

 そんな楽しそうな二人にカサレス王子は、穏やかな寛いだ表情を見せると、「楽しそうだね。
僕も混ぜてくれないかい?」と言って、二人の間に入っていったのだった。

 「きゃあ~。」そんなカサレス王子に、ローラインとリティシア姫は声をあげると、今度は三人で
大騒ぎをしたのだった。

 そうして楽しくひとしきり遊んだあと、三人が少し休んで居ると、リティシア姫を迎えに従者が来たのだった。

リティシア姫は、まだ遊び足りなさそうに、少し物足りない様な顔をしたのだったが、従者の顔を見ると
大人しく戻ろうと、従者に手を伸ばしたのだった。

それから従者に抱かれ、姫の部屋に戻ろうとしたリティシア姫は、最後にくるっとローラインの方を振り返り、
「またあとでね。ねえちゃま。」と言うと手を振りながら、王子の部屋を後にしたのだった。




a0073000_13134948.jpg

[PR]
# by maarenca | 2014-10-22 13:22 | ファンタジー小説