Blog|maarenca - マーレンカ

<   2014年 10月 ( 11 )   > この月の画像一覧

THE SIX ELEMENTS STORY No40







THE SIX ELEMENTS STORY





No40




                               著 水望月 飛翔

 しかし、そんな和やかな部屋を、静かに後にした一人の人物がいた。
彼だけは、少し違った気持ちを持っていたのだった。

「これは、少し事を考えねばならぬな。」ランダス執政官は、王一家のやり取りを見ていたのだったが、 
急いでこの城の彼の居住区域に戻ると、勢いよく部屋のドアを開けたのだった。 

「お父様。どうされたのです?」
普段はいつ何時でも、この城の空気を静かに撫でるように、音も立てずに動くランダス執政官なので
あったが、いつになく急いだ音を響かせて部屋に入ってきた父に、娘のミラディアは、驚いて
振り向いたのだった。

 その娘の驚きに、ようやく我に返るとランダスは、「ああ、すまないミラディア。驚かせてしまったようだね。」と、
いつもと違う父を心配そうに覗き込む、娘のミラディアに優しく言うと、少し思案顔を見せたのだった。

(私の愛しい、ミラディア。そなたはずっと幼い頃より、カサレス王子にあこがれを持って見ていたな。
そなたは一言もこの父には言わないが、しかし、今も変わらずカサレス王子の事を思っているのであろう。
私は、そなたの思いがいつの日か、王子に通じればいいと思っていたのだが。)

 ランダス執政官の娘、ミラディア・カランダム。
彼女は初めて、カサレス王子と対面したその日から、ずっとこの心優しい王子の後姿を懸命に追っていた
のだった。

 城に仕える者達はたいがい、この王の城の中に住んでおり、中央の城は王の広間と、王族の住まいと
なっており、左翼の居住区には護衛をする者達が住み、右翼に広がる居住区には、執政や学者達が
彼らの家族と共に住んでいたのだった。

 その日、カサレス王子は7歳の誕生日を迎え、他の王族の子供達や城に仕える者の子供達も
王の広間に招待され、この日はカサレス王子との正式な対面の場を与えられたのだった。

 王子は広間の中央の椅子に腰を掛けて、堂々と座っていた。
その頃すでに、カサレス王子の気品と美しさは、この空の領土でも光輝いていたのだった。
ゆったりとした佇まいで、目の前に集まった多くの人々の祝福を受けるカサレス王子。
王子が一言二言なにか話し笑みをたたえると、彼の黄金の巻き毛が揺れ、何か目に見えない煌めきが
王子を祝福しているようであった。

 そして、集まった物の中から王家に近しい物たちの子息令嬢が、一人一人順番に名を呼ばれ、
王子の元に祝辞と挨拶に出向いたのだったが、当時まだ5歳のミラディアは、父の期待と初めて
足を踏み入れた王の広間の立派な空間に圧倒されて、不安と緊張で、その場に立っているのが
やっとの状態だったのだった。

 そして、とうとう自身の名が呼ばれると、ミラディアはあまりの緊張に、ただわけも解らぬまま
カサレス王子の前に立ったのだった。

 それからミラディアは、懸命にお辞儀をしたのだったが、しかし、一生懸命覚えてきた祝いの言葉が
一言も出てこず、ただ唇をかんで、今にも泣きだしそうになったのだった。

 そんなミラディアにカサレス王子は、にっこりとほほ笑むと、「ランダス執政官の娘さんのミラディアだね。
君のお父様にいつも僕は助けられているんだよ。君の髪の髪飾りは素敵だね。その花は、クラスカス山に
咲く「純白の心」を宿す、ミレンディラだね。君の名はそこからとったのかな。」と言って、
(大丈夫だよ、落ち着いてミラディア。君は立派に立っているからね。)とテレパシーを送ったのだった。

 それから、一言も発せずにいたミラディアに向かって王子は、先ほどよりも
大きな声で、「ああ、祝いの言葉ありがとうミラディア。本当にうれしいよ。そうだね。
また今度ゆっくり会いましょう。」と言うと、ランダス執政官の方を向いて、「ランダス執政官殿。
ミラディア嬢からの祝いの言葉ありがとうございます。しかし、彼女は少し具合が良くないようです。
どうぞ、そのまま休ませてあげてください。」と言って、ランダス執政官をミラディアに向かわせたのだった。

 ランダス執政は、カサレス王子の言葉に驚いて娘に急いで近づくと、心配そうにミラディアの顔を
のぞきこみ、「大丈夫かい。ミラディア?」と声をかけたのだった。

 しかし、そんな父にミラディアは、自分が祝いの言葉一つ言えなかった不甲斐なさに泣きそうになり、
「ごめんなさい。お父様。」とようやく小さな声で呟いたのだった。そして、父に肩を抱かれながら、
退出していくミラディアの後姿にカサレス王子は、「ありがとう、ミラディア。また会いましょう。」と言って、
笑顔を向けたのだった。

 そんな王子の元を後にしてミラディアは、その夜、熱を出して寝込んだのだった。
心配する両親の看護を受けながら、たびたび脳裏に思い出すカサレス王子の優しい笑顔が、
こうしてその後もずっとミラディアの心に住み着いていったのだった。
 
 それからのミラディアは、幼いながらに何をするにも一生懸命に、物事をこなしていったのだった。

それは、いつかまたカサレス王子に会う時の為に。

 それから、いつの事だっただろう。
カサレス王子が、そっと城から抜け出して、第二の島の礼拝堂へ行こうとした時の事だった。

 その頃カサレス王子の元に着いたばかりの、第一の従者アーキレイの目を逃れて、カサレス王子は
そっと王族の住む中央の塔から抜け出し、ミラディアの住む居住区に入り込んだのだった。

「王子。カサレス王子。どちらにおられるのですか?」
アーキレイは成人の儀式を終えたばかりでまだ若く、初めて着く王族の、まして後を継ぐカサレス王子に
対しても、まだどのように接していいのかわからず、遠慮をしていたのだったが、そんなアーキレイを
翻弄するように、王子はたびたび城を抜け出していたのだった。

 その日も執政官対たちの居住区まではうまく、アーキレイから逃げおおせた王子だったが、
そこから一番右端の城壁を飛び越えようとした時であった。

 勢いをつけて飛ぼうとした時に、その前に突然現れたミラディアとぶつかりそうになったのだった。
「あぶない。」カサレス王子は、とっさにミラディアを避けたのだったが、そのせいで勢いよく、
翼を壁に打ち付けて地面に倒れ込んだのだった。

 声を出さずに、痛みをこらえるカサレス王子に、ミラディアは心配して王子の元に駆け寄ったのだった。
「だいじょうぶですか?カサレス王子。」ミラディアは久しぶりに会う王子との出会いがこんな形で来ようとは、
胸の鼓動をドキドキさせながら、王子に声をかけたのだった。

 王子は、自身の名前を呼ぶ少女に、最初は誰だか思い出せないでいたのだったが、心配そうに
覗き込むミラディアの顔に、青ざめて立ち尽くす幼い少女の面影を思い出したのだった。

 それからカサレス王子はゆっくりと身体を起こすと、「やあ、ミラディア。元気そうだね。」
と声をかけたのだった。

 最初の対面の日からその後、王子の誕生日の日には挨拶をしていたのだったが、その他では
王子と話をすることは、なかなかできないでいたミラディア。

 ミラディアはドキドキしながら、王子の傍に座ると、恐る恐る王子の翼に目をやったのだったが、
そんなミラディアをまた、王子は優しく見つめたのだった。「大丈夫、心配しないで、ミラディア。」
そうカサレス王子が声をかけると、ミラディアは、うつむきながら王子にこう言ったのだった。

「カサレス王子。ごめんなさい、私、急に飛び出して。あの、本当にお怪我はありませんか?」
と、心配そうに聞いたのだった。

 そんな、申し訳なさそうに言うミラディアに王子は、ほほ笑みながら、「本当に大丈夫だよ、ミラディア。
僕の方こそ、君を驚かせてしまってすまない。」

 そう謝ると、先程まで遠くに聞こえていたアーキレイの声が急に近くで聞こえて、カサレス王子は
とっさにミラディアを自分の方に引き寄せると、二人で草陰に身を隠したのだった。

 そんな、王子の近くに引き寄せられたミラディアは、波打つ鼓動を必死で抑えようとしたのだった。
そうして、しばらく静かに身を隠していると、アーキレイはもっと奥の方を探そうと、王子たちの近くから
場所を変えて移動したのだった。

 アーキレイが二人から離れていった気配を確認すると、王子はミラディアに小さな声でこう言ったのだった。

「ミラディア。僕はこれからいかなければいけない所があるんだ。それじゃ、またね。」と言って立ち上がると、
カサレス王子はその場を離れ様としたのだったが、そんな王子の後ろ姿に、ミラディアは素早く
こう言ったのだった。

「カサレス王子。あの。もし、この城から出られるのでしたら、この壁のもっと東側に、小さな抜け穴が
あります。そちらを通って行かれてはどうですか?」遠慮がちではあるが、そう進言するミラディアに、
カサレス王子は振り向いて、「それは素晴らしいね。ミラディア、ありがとう。」と嬉しそうに言ったのだった。

 それからミラディアは、その抜け穴までカサレス王子を案内したのだった。

やがてその場所に着くと、確かに小さな穴が開いており、ここなら他の者に気づかれなく、
通れそうなのであった。

 カサレス王子はミラディアの方に振りかえると、「ありがとう、ミラディア。それじゃ。」と短く
声をかけて穴をくぐると、急いで飛んでいったのだった。

そうこの時のカサレス王子の頭には、ローラインと会う事だけが大きく支配しており、この時も、
その約束の時間に遅れてしまう事だけに、気を取られていたのであった。

 しかし、そんなカサレス王子の後姿を、ただ今日会えたこの小さな偶然がうれしく、心に残った
ミラディアなのであった。

 そしてそれからは、いつ王子がここを通るのか気にしていたミラディアであったが、満月の次の日に
カサレス王子が必ずこの抜け穴を通る事に気がつくと、その姿を一目見ようと遠くから見つめる
ミラディアなのだった。

 そんな娘の、王子への思いに気づいていたランダス執政官は、我が娘の気持ちがいつしか
カサレス王子に届くことを、父として願っていったのだった。

 しかし今日の王子の告白で、今までずっと、ローラインに会いに行っていた事と、先ほどまで、
ローラインと一緒にテーブルに着いた王をはじめ、王妃、リティシア姫までもが、楽しそうにしている
姿を目の当たりにして、父としてのランダス執政官は、娘の悲しみを思うと、その場に居続ける事が
できなかったのだった。

 そんな父の心を知らずミラディアは、心配そうに父の顔を見つめると、「お父様、どうされたのです?
お加減でもお悪いのですか?」と聞いたのだった。

 そうミラディアは、本当に「純白の心」の名にふさわしい、心優しい少女なのであった。

 さて一方、楽しいひとときを送った王一家は、いつまでも帰ってこないローラインの事を、
心配しているだろう母の元にローラインを見送ったのだった。

「それでは、また会いましょうね。かわいい勇者さん。」とローラインに王妃が言うと、カサレス王子に
抱かれているリティシア姫は寂しそうな顔をして、アーキレイに抱きかかえられているローラインの
衣の裾を、いつまでもつかんでいたのだった。

 そんなリティシア姫にローラインは、「リティシア姫。またお会いできるかしら?今度会う時まで、
私を忘れないでくださいね。」と言うと、自身の右手を優しく撫でて、「私の「天上のよろこび」よ。
私の大切なお友達にその光を。」と唱えたのだった。

 すると、キラキラと明るくきらめく無数の星達が、リティシア姫の前に集まり、くるくるとその頭上を
回ったのだった。

 そうして、無数の星の粉がリティシア姫に降り注がれると、光の粒の中で、姫は嬉しそうに体を揺らすと、
屈託のない明るい声をあげたのだった。

 そんな妹姫の姿を優しく見つめてカサレス王子は、「ありがとう、ローライン。」とローラインにささやくと
、ローラインは嬉しそうに王子に顔を向けて、こう言ったのだった。

「カサレス王子。私の方こそ、ありがとう。あなたが助けに来てくれなかったら、私、どうなっていたか。」
そう言うと、二人はしばし無言で見つめ合ったのだった。

 しかし、そんな二人にアーキレイが、遠慮がちに「そろそろ行きましょうか。」と間に入って言ったのだった。

カサレス王子はまだ名残惜しかったのだったが、アーキレイと後ろに控えている二人の従者の方を見ると、
「ああ、ローラインを母君の元に送ってください。」と声をかけたのだった。

 そして、王子たちに一礼をして、城を後にしようと歩き出したアーキレイに、ローラインが何やら囁くと、
カサレス王子の元にまた引き返してきたのだった。

「どうしたんだい?ローライン。」
そう不思議そうに聞くカサレス王子の耳元で、ローラインがなにやら小さく囁くと、アーキレイに向かって、
「アーキレイ様、それではお願いします。」と言って、ローラインは自身の家路に向かったのだった。

 背の高いアーキレイの後姿に、すっぽり隠れて見えないローラインであったが(またね、カサレス王子。)と、
王子にテレパシーを送ったのだった。






a0073000_1053504.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-29 10:55 | ファンタジー小説

まるこ安子永久不出馬宣言




平和を願い、戦争、原発、環境汚染、社会的搾取を食い止めようと活動なさっている皆様へ
また、そうでない方へ

 今日ここに、まるこ安子がどのような選挙にも出馬をしない、
永久不出馬宣言を発表いたします。

 普通にファッションや支援活動から、maarencaやTUNAGU&TUMUGUのブログとして読んでくださっている方には、突然の政治的発言で、驚かせたことと思います。
大変申し訳ありません。

 デザイナーでもある丸子安子は、「脱原発」を実現したく、2012年の衆議院選、2013年参議院選挙に出馬をしており、
一方では「みなし政治家」として見られている立場がありました。

 ですので、このブログで最後の政治的発言をさせていただきたいと思います。


3.11の東日本大震災で起こった多くの被害、悲劇に何かの役に立ちたいと、わたくし丸子安子は、
多くの「脱原発」活動に参加し、一般人ながら国政選挙に出馬するという、大変貴重な経験をいたしました。

来年は、全国で統一地方選挙が4月にあります。

私も今年の夏には、来年の地方選挙に向けて、地元活動を開始しておりました。
(以前、このブログでも公表しております。)

しかし、たとえ地方選挙といえども、本人だけでは勝てない。
本当に社会を変えるには、組織としての確立が必要!
との想いにいたりました。

二回の「出馬」という経験をしたからこそ言います。
選挙は、選挙前のたかだか2~3カ月選挙運動をすれば勝てるというものではありません。

選挙を何日か手伝ったくらいの人は、ある意味の高揚感があり、楽しい経験でとどまっていると思います。
しかし、選対本部やずっと支える立場にいる方は、選挙というものがどれだけ経済的、精神的に大変かはご存じでしょう。

出馬する立場の人間にとっては更に多くの責任を持つことになります。

私はこれ以上、家族に迷惑をかけたくない。
一番、幸せにしたいのは家族。
そこをないがしろにして、社会など変えられるのか? そんな思いに至りました。


すでに多くの犠牲を払ったからこそ、これ以上の犠牲を家庭に強いる事をしたくありません。

よく簡単に言われます。「頑張って。応援しているから!」
これは善意で、言って下さる言葉。

しかし、自分は安全な場所にいて、言葉だけの応援をいくらもらっても、実際なんの役にもたちません。




本当に大変なのは、選挙になるまでの長い道筋です。
立候補者を支え、同等の責任を負う覚悟が一人一人にあるか?



多分そこがそろったときに、
社会は大きく変わるのでしょう。


参議院選挙後にずっと意識をして一般社会を見てきました。
国会や官邸周辺ではなく、銀座や大手町など一般生活に重きを置く方の意識を間近で見て、本音を聞いてきました。

地球や子供たちの未来を守りたいと思い始めた「脱原発活動」

しかし、多くの方の方向からみる景色とはだいぶ違って見えました。

「脱原発活動」の固さやヒステリックな部分を多くとられ、そこには
「絶対無理!」という拒否感すらありました。
とても残念な事です。

(私はデモや活動を批判しているのではあません。常に明るく行動されている方には感謝と敬意を今も持っております。また、同じ場所にはいなくても、心が繋がっている方には理解していただけていると思っています。)

私はずっと、思考や言葉が持つもろ刃の刃を考えてきました。
否定や拒否は相手だけでなく自分も傷つける。
だからこそ、「平和」「希望」「夢」など、肯定的な言葉を使い、具体的にできる事を考え、行動する事を大事にしたいと。

多くのやり方があっていい。

 そして、自分の持っている特質を伸ばしたい。
自分が接点の違う、多くの人の間を取り持てるようになりたい。

自分の立ち位置に根を張り、他の誰でもない、自分の役目を全うする事が、自分の人生をまっとうでき、そうして、まっとうできた人が増えるほど社会が成長するのだと思ったのです。

 そう考えたとき、「政治」は私の行きたい位置、役割ではないと気がつきました。

「政治的」「社会的」な責任を放棄する、あきらめるというのではありません。

違うやり方でもできる。

いいえ私の場合、違うやり方の方が力を発揮できると、答えを見つけたのです。



あんなにガンバっている山本太郎さんですら、大勢の方にはその声がなかなか届きにくい。

しかし、私が太郎さんの応援をしても大した力にはなりません。


違う立ち位置で、世界に発信している人間になっていたい。

私自身が世界に認められた時こそ、力になれる!そう思ったのです。


また、まるこ安子の大口たたきが始まった。
大多数の方は、そう思われるでしょう。
それが普通だと私も思います。
しかし、
私には、はっきりと大きなビジョンがあります。


それはブログでもアップしているSFファンタジー小説 THE SIX ELEMENTS STORYの
書籍・まんが・アニメ・ゲーム・映画でワールドツアーに出る!というビジョンです。

いまだ、出版先も決まっていないのが現状ですが。

そして、福祉施設・被災地・途上国と消費者をつなぐファッションプロジェクト
TUNAGU&TUMUGUの世界巡回展を開く。という夢です。

もし、本当にこの二つを成功させたいのであれば、私のすべてをここに集中し、捧げなければ成功などあり得ないでしょう。

私は自分の持って生まれた才能を開花させるために、自分の人生と全身全霊をかけて生き抜いていきたいのです。

政治もそう、片手間ではできない仕事です。

最近、フェイスブックでやたらにメッセージもなく友達リクエストを送ってくる他党の方が増えてきました。

意味もなく、ただ繋がってもお互いに虚しいだけです。

だからこそ、今ここで決意を発表しようと思いました。

今までは、メッセージがなかろうとゆるく承認をしてきました。

でもそのように友達になっても、結局は何にもならない状態の人が大多数です。

私はフェイスブックが大好きです。

実際に会う会わないは関係ない、心の交流ができる方が多くいるからです。



本当に私を応援、または期待をしてくださった方には、申し訳ありません。

ご期待に添える立場を目指しはしませんが、もっと大きくなって、必ず帰ってきます。

別れるのではありません。

それぞれの歩む道をしっかりと歩み、また笑顔で再会する事を楽しみにしています。


PS なお、ツイッターは現在活用できていませんので、年内には閉じようと思っています。
ご意見のある方は、返信はなくても必ず目を通していますので、12月半ばまでにお書きいただけると幸いです。

大変長くなりましたが、最後まで読んで下さりありがとうございました。


丸子安子 出馬名 まるこ安子







[PR]
by maarenca | 2014-10-26 13:46

THE SIX ELEMENTS STORY No39








THE SIX ELEMENTS STORY




No39


 
                                     著 水望月 飛翔



リティシア姫が去って、王子の部屋に取り残された二人は、先程までの無邪気な空気から一転、
静かになった部屋の気配に、急に気まずい思いにおそわれたのだった。

 窓の外の気配は、もう碧く落ち着いたメディテラネブルーの空へと姿を変え、プラチナに輝く星達が、
今日のローラインの儀式の成功を祝うかのように、優しく華やかな文様を形作り、美しい音を奏でて
いたのだった。

 王子はその美しい星達を見つけると、ローラインを抱きかかえて窓に連れて行った。
窓の外には、ローラインが今まで見た事もない、ずっと大きく近くで瞬いている星達が、ローラインに
祝福の音を惜しみなく降り注いだのだった。

ローラインはそんな星たちの祝福を全身で受けると、「ありがとう、みんな。」と言って、カサレス王子の
方を向いたのだった。

そして王子に向かって、「素敵ね。こんなにきれいな星達をいつもこんなに近くで見られるなんて・・。
うらやましいわ。」と言うと、また今宵の星々を愛でるように、見つめたのだった。

 そんなローラインにカサレス王子は、ゆっくり首を横に振ると優しく、「今宵の星達の輝きは特別なものだよ、
ローライン。きっと君を祝福する為、いつもより装ったのだろう。」と言って王子も星達を見つめたのだった。

 こうして、星たちの祝福と天からの荘厳な響きを、楽しんでいた二人であったのだったが、そこへ、
二人を呼びにアーキレイがやってきたのだった。

「失礼いたします。王子。ローライン様。王がお二人をお待ちでございます。」アーキレイが神妙な面持ちで
二人にそう言うと、カサレス王子は少し心配そうに、ローラインの顔をのぞき込み、
「父王が君に会いたがっているんだが・・。ローライン、君は大丈夫かい?」と聞いたのだった。

しかしそれを聞いてローラインは、少しおどけたように肩をあげると、「大丈夫よ、カサレス王子。
空の王をお待たせしてはいけないわ。早く行きましょう。」と言って、王子を見上げたのだった。

カサレス王子はそんなローラインに向かって、軽く頭を下げると「空の王の呼び出しに、全く怖れを
見せないとはね・・・。大した者だよ、君は。」と言って笑いながら、王の待つ部屋へと向かったのだった。

 そうして、ローラインを抱えながら、王子が部屋に入って行くと、そこには父王と、王妃、そしてリティシア姫が
もうすでに、二人の到着を待っていたのだった。

 王と王妃はローラインを抱きかかえながら、部屋に入ってきた王子の姿に驚き、顔を見合わせた。
そして、王子の後から入ってきたアーキレイを見ると王は、「何故王子がこの者を抱いて連れて来るのだ?
そなたはいったい何をしておる?アーキレイ。」と厳しい声で聞いたのだった。

アーキレイは静かに、「申し訳ありませぬ、タリオス王。」と、頭を下げそう一言だけ言うと、そのまま
おし黙ったのだった。

 カサレス王子は、ローラインをリティシア姫の隣の椅子に座らせると、すぐに父に向かって
こう言ったのだった。

「父上、申し訳ありませぬ。ローラインは足が不自由な身なれば、わたくしが自身の腕で、彼女を連れて
きたかったのです。」

そう言うと王子は、(すまない、アーキレイ。)とテレパシーで言ったのだった。
そんな王子にアーキレイもテレパシーで、(いいえ、王子。)と答えたのだった。

 一方、王妃はローラインを見つめながら、そんな重い空気を払いのけるように、「まあ、なんて可憐な
勇者様でしょう。あなたが今日、天上界に上った方ね・・・?そして、キュリアスの妹さん。」と、そう言うと、
懐かしそうに優しくローラインを見つめたのだった。

 そんな王妃の優しい心づかいに、ローラインもほほ笑みを返し、「はい、王妃様。そして、この空の誇り
タリオス王。兄が大変お世話になっておりました。私は、キュリアス・グリュスターの妹。
ローライン・グリュスターと申します。皆様にこうしてお目に掛かれるなんて、本当に光栄です。」と言うと、
隣でうずうずしながら、ローラインを覗き込んでいるリティシア姫に向かってテレパシーで、
(また会えましたね、リティシア姫。)とそっと言ったのだった。

 しかし、リティシア姫はうれしくなって、「はい、ねえちゃま。」と大きくローラインに返事をしたのだった。
そんなリティシア姫に、ローラインとカサレス王子は驚いて、顔を見合わせたのだったが、次の瞬間、
ローラインは楽しそうに明るい笑い声をあげたのだった。

 そんなローラインの姿を静かに見つめるタリオス王。

それから王はローラインにこう言ったのだった。「ローライン・グリュスターよ。そなたの母は元気であろうか?
そなた達母子は、日々つつがなく暮らしておろうか?」王は、そうローラインに聞いたのだった。

 ローラインは王が、自分と母を案じている事をうれしく思い、皆の前でこう言ったのだった。
「はい、タリオス王。あの時は本当にありがとうございました。キュリアス兄様のあの時、かあさまとわたくしに
本当に良くしてくださって。母は元気にしております。」そう言って、少し考えるように間を置いてから
、ローラインは続けてこう言ったのだった。

「タリオス王。いつも私とかあさまに、クラスカス山に咲く花を届けて下さっているのは、あなた様ですよね?」

 そう言うローラインの言葉に、カサレス王子は、(父が、花を?)と驚きを持って聞いたのだった。
タリオス王は、キュリアスの成人の儀式の失敗を聞くと、すぐにこの母子の元に使いを出し、いろいろ慰めを
していたのであった。

そしてときどきは、クラスカス山に咲く「癒しの花々」をこの母子の元にそっと、届けさせたのだった。
この様にタリオス王は、この空の領土内で悲しい思いをしている者の元に、静かに慰めを贈っていたので
あった。

 しかしそんな問いかけに王が何も答えずにいると、王妃が優しい目で王を見つめながら、
こう言ったのだった。

「王は、いつもこの空の人々の事を常に第一に考えているのですよ。」と言うと、皆にほほ笑みを
向けたのだった。

 それから少ししてタリオス王が、ローラインにこう聞いたのだった。
「ローライン・グリュスターよ。そなたはこの度の自身の石宿しで、天上界に行ったと聞いたが、
それはほんに誠の事であるのか?」
タリオス王のこの問いに、ローラインは少し神妙な面持ちをしながら、一言一言、言葉を紡ぎだす様に答えたのだった。

「はい、タリオス王。私は天上界に行って、「天上のよろこび」を私の石にいただいて参りました。
でも、天上界へは私の力で行ったのでありません。天の父がただ私を引き上げてくれたのです。
そして、天上にあるものを好きなだけ、私に授けて下さっただけなのです。」

そう言うとローラインは、めまぐるしく起こった天上界での出来事を、一生懸命に思い出していたのだった。

 そして何を思ったのか突然、王の前であることも忘れて、今までとは違う大きな声をあげたのだった。
「ああ、違う、違うわ。その前に、王様。私の石の光は、天上に届くどころか、全くその光を伸ばす事など
できなかったのです。でも、私が「希望の詩」を歌ったら・・・、そう、皆さんも歌ってくれていたでしょう?
そうよ、皆さんの詩の力があったからこそ、私の石の光が天上に届いたのよ。思い出したわ。リティシア姫。
あなたも歌ってくれていたわね。ちゃんと聞いていたわ。ありがとう。」ローラインはそう言うと、
そのローラインの言葉に嬉しそうに笑うリティシア姫を、強く抱きしめたのだった。

 ローラインは王も王妃も加わった、空の領土中の歌声が、自身の石に力を与えてくれていた気配の断片を、
その記憶の片隅から少しずつ甦らせたのだった。
 そして、その時の事を思い出し、嬉しさにうち震えているローラインの姿を見て王は、今までにない空気を、
この少女から感じていたのだった。

「ローライン。届いていたんだね、君に。」カサレス王子もまた、ローラインの言葉を聞いて嬉しそうに、
そう言うと、ローラインは王子に顔を向けて、「ええ、届いていたわ。あなたの声もね。」
そう王子に笑顔を向け、嬉しそうに頷きながら答えたのだった。

しかし、それからまたすぐに違う事を思い出した様に、ローラインは王に向かってこう聞いたのだった。
「そう言えば、王様。「碧き飛翔の女神」がご自身の名前を忘れてしまっていたのですが、最近女神に
会われていないのですか?」と、無邪気に聞いたのだった。

そんなローラインの言葉を聞いた一同は、驚き顔を見合わせたのだった。
「えっ?君。「碧き飛翔の女神」に会ったの?」
カサレス王子は驚いて、ローラインに聞いたのだった。

 しかし、そんな一同の驚きを別に気にすることなくローラインは、「ええ、私ちょっと落ち込んでて、で
も「癒しの浴室」で女神様を思い出して、母様がわたしの心を落ち着けてくれたの。だから私は、
今日の儀式を無事に終える事ができたのよ。」と言うと、嬉しそうにほほ笑んだのだった。

 そんなローラインの言葉に王は、「母様、とは?そなたの母の事ではなさそうじゃな。」
そう王が聞くとローラインは、「ああ、ごめんなさい。さっき言った母様は、私の本当のかあさまじゃなくて、
この地を司る女神様の事です。」と言いながら、フッと噴き出したのだった。

 カサレス王子が不思議そうに、ローラインを見つめて「どうしたんだい、ローライン?」と小声で聞くと、
ローラインは笑いをこらえながら、こう言ったのだった。
「だって、私。この空のお城で出てくる食べ物は、もっとすごく素敵な物が沢山出てくるとずっと思っていたよ。
だけど、お皿だけは素晴らしいけれど、私達が食べている物と、全然変わらないんだもの。なんだか、
可笑しくなってきちゃったわ。」
と言うと、ローラインの前にあるお皿の中のものを楽しそうにつついたのだった。

 そう、この空の人々は長い時を経て、食べ物に重きを置かなくなり、自身を動かすエネルギー源を今の
我々の様に、絶対的に食べ物に頼らなくなって久しいのだった。

 簡単に言うと、まるで霞を食べているような。
見えない空気の粒子の中に含まれている、散りに等しい物質を、少々実体化させて、それを口に運んで
いたのだった。 

 まあ実際のところ、空の領土の人々は、何も口にしなくとも自身の循環エネルギーと空の領土の空気で、
事足りるのであったのだったが、同じテーブルにつき、共に食事をするという行為の継承に、重きを
置いていたのであった。

いつもは礼節に重きを置く、厳格なタリオス王であったのだったが、しかし、天上の光を父と呼び、
この地の守り神を我が母と呼ぶこの少女の、屈託のない振る舞いに何故か咎める気持ちも起こらず、
不思議に穏やかに見ていたのだった。

そして、そんな穏やかな姿の王と、ローラインを愛おしそうに見つめる王妃と、楽しそうに笑い声をあげる
妹姫の姿を見て、カサレス王子もまた、久しぶりに寛いだ表情を見せたのだった。

そして、そんなカサレス王子と、王一家の姿を見てアーキレイもまた、うれしく見つめていたのだった。




a0073000_1582539.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-25 15:21 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No38







THE SIX ELEMENTS STORY





No38




                                     著 水望月 飛翔


 一方その頃、第二の島でローラインの事を心配していた母と人々は、カサレス王子の
従者アーキレイから、ローラインの無事を聞くと、ホッと安堵の色を浮かべたのだった。

 そして王の城では、先ほどからの異変を何事かと感じていた城の者たちが、中庭に舞い降りてきた二人を、
興味深そうに待ち受けていたのだった。

「カサレス王子、いったいこれは何が起こったというのでしょうか?」
先程まで、第二の島から天に昇っていった光の出現と、今目の前でカサレス王子に抱きかかえられている、
みすぼらしい脚と翼を持つ小さな身体の少女の姿に、王の執政官は皆目見当がつかないという面持ちで、
王子の返事を待ったのだった。

 カサレス王子は、ほほ笑みながら城の者達を見回すと、「やあ、皆様。彼女がこの空の領土始まって
以来の勇者ですよ。ほら、先程まで続いていた天への光。あれは、彼女が天上界に上っていった証し。
私はその勇者を今、この城にお連れしたのです。」  

 そう言いながら一同を見回した後、ローラインの方を覗き込んだカサレス王子。
しかしそんなカサレス王子に対して、ローラインは身を固くして、無言で王子にしがみついたのだった。

 城の者たちの前で委縮するローラインに、カサレス王子はどうしたのかとテレパシーで聞くと、ローラインは、
少し怒ったように王子にこう答えたのだった。

(カサレス王子・・。こんな大勢の人の前で、そんな風に言わないで。私・・・、王の城に来たのも初めてだし、
こんな大勢のお城の人達に、こんな風に見られるのも初めてだから。どうしていいかわからないわ。)
テレパシーでそう言うと、また王子の腕の中に身を隠す様に、小さな身体をもっと小さくしたのだった。

 そんな、今まで王子が見た事が無い、緊張しているローラインの姿にカサレス王子は、すまなそうに
こう答えたのだった。

(ローライン、ごめんね。僕は君が誇らしくて・・、ついみんなに君を見せびらかす様な事をしてしまったね。)
そうローラインにテレパシーで言うと、先ほど王子に質問した城の執政官に向かって、こう言ったのだった。

「申し訳ありません。ランダス執政官殿。彼女は先程天界から落ちたショックで、まだ皆様と話せる状態では
ありませぬ。すぐに私の部屋で休ませたいのですが・・・。」と言いながら一同を見回すと、周りに詰めかけて
いた者達は無言で一斉に頭を下げると、一歩ずつ下がり王子に道を開けたのだった。

 そんな一同に対し、カサレス王子はゆっくりと会釈をすると、そのままローラインを抱いて、王子の部屋へと
向かったのだった。

 繊細な装飾に彩られ、金蓮花色の美しい夕日に照らされている王の城。
しかし、今朝からのめまぐるしく現れた状況に疲れたのか、ローラインは先ほどからずっと、周りの景色も目に
入らずに、ただ王子の胸にしがみついていたのであった。

 またカサレス王子は、そんな心細そうな、雛鳥みたいにしがみついているローラインを愛おしく思い、
これからずっと、自分が彼女を守っていけたらと、心の中で思うのだった。

 それからしばらくして、カサレス王子の部屋に着くと、そのまま王子のベッドへローラインを降ろそうと思い、
カサレス王子はローラインの方に顔を向けたのだった。

「ローライン、着いたよ。」声をかけるカサレス王子。しかし、ローラインの返事はなく、王子は不思議に思い
彼女の顔をのぞいたのだったが、ローラインは今日の疲れが出たのであろう、王子の腕の中でいつの間か、
静かな眠りについていたのだった。

 カサレス王子は一人そっとほほ笑むと、そのまま静かにローラインをベッドに降ろし、薄布をかけると
ベッドの端に腰を降ろして、ローラインの静かな寝息を聞いていたのだった。

(ローライン。どう見ても君の姿はまるでまだ、10歳にも満たない子供にしか見えないというのに・・・。
そんな小さな身体でどうしたら、天界を味方につける様な事ができたのだろう?)

 カサレス王子は、ぼんやりとローラインの小さな身体を見つめながら、そう一人思ったのだった。
そうしてしばし、静かな時が流れ、ゆっくりと静寂の蒼が空の城を包み、夜の訪れを促す祈りの音が、
天空の星々が静かに奏でられていったのだった。

 しばらくすると、カサレス王子の元に、王からの使いの者が来た。
その従者は、すぐ王の部屋に来るようにとの、王の伝言を王子に伝えに来たのだった。カサレス王子は、
一度ローラインの方を振り向くと、まだ深い眠りについているローラインの姿を見届けて、また従者の方に
向き直り、すぐ王の元に行くと伝える様に言ったのだった。

 それから、カサレス王子は静かにローラインの元に近づき、少し乱れた前髪をかき分けるように撫でると、
そっと小さな声で、「少し行ってくるね。」と、眠りについているローラインに囁いたのだった。

 カサレス王子が王の部屋に入ると、先ほど中庭にいた王の第一執政官である、ランダス・カランダム執政官
も王と共に、王子の到着をじっと待っていたのだった。

「お待たせいたしました。」そう二人に王子が言うと、王は王子の顔を見て、ゆっくりとこう聞いたのだった。

「カサレス王子よ。先ほどそなたが抱いていた少女の事だが、あの者はそなたの知っておる者なのか?」
そう王が聞くとカサレス王子は、姿勢をただし王にこう言ったのだった。「はい父上。あの少女は・・・。」
と一瞬口ごもると、王を真っ直ぐに見ながら、続けてこう言ったのだった。

「父上。覚えておいででしょうか?私が幼少のみぎり、いつも私の傍についてくれていた
キュリアス・グリュスターを・・・。彼女は、ローラインはキュリアスの妹なのです。
そして今日、彼女は自身の成人の儀式で、天上界に上り、「天上のよろこび」を右手に宿したのです。」
そう言うとカサレス王子は、王の返事を静かに待ったのだった。

 王とランダス執政官は、カサレス王子の口からキュリアスの名を聞いて、少し驚いたのだった。
そして、なぜキュリアスの妹を王子が知っているのかを、王子に聞いたのだった。

 カサレス王子はその問いになんと答えていいのか、少し困ったのだったが、少しずつ今までのいきさつを、
王とランダス執政官に話したのだった。

 一通り王子の話を聞き終えると王は、ゆっくりとカサレス王子に近づくとこう言ったのだった。

「つまり・・・、カサレス王子よ。そなたはたびたびこの城をぬけ出して、第二の島まで降りていき、その少女と
会っていた。という事であろうか・・・?そして、先ほどその第二の島に住む者を、勝手にこの城に運んできたと
いう事なのだな?」そう言うとタリオス王は、少し険しい顔でランダス執政官と顔を見合わせたのだった。

 カサレス王子は、ローラインの事をあまり歓迎していないような二人の気配を感じ、居心地悪そうに
その場に立っていたのだった。

 しかし、王子はそんな二人にこう言ったのだった。
「はい父上。勝手な振る舞い申し訳ありませぬ。しかし、ローラインは、自身の成人の儀式で、天上界に
上った者。その様な事は未だかつて、どの領土でも成しえた者などはおりませぬ。その様な者が天上から
落ちてきたところを助けたのですから、この城に連れてくることは、至極当たり前の事だと思いますが。」
そう言うと、王子は押し黙ったのだった。

 普段は大人しいカサレス王子が、王に対して意見を言う姿を初めて見たランダス執政官は内心驚いて、
王に代わって王子にこう言ったのだった。

「カサレス王子。そのような・・・。王は王子を責めておられるのではありませぬ。しかし、この空の領土の
王子としてのお立場をお考えいただければ、その様に頻繁に勝手に城を抜け出されたり、ごく一部の者と
だけ個人的に親しくされては、この空の領土の秩序にかかわる事。次を担いし王子の振舞としては、
もう少しご配慮いただきませぬと。」と、王子に苦言を呈したのだった。

 ランダス執政官の苦言を隣で聞いていた王は、短いため息をついたのだった。
そしてカサレス王子は、このランダス執政官の的を得ている言葉に、なすすべもなくただ押し黙ったのだった。

 そんな硬い空気が漂う中、王はカサレス王子にこう聞いたのだった。
「さて、王子よ。かの者は今どうしておる?」重い沈黙を破り、王が王子にこう聞く、カサレス王子は
王の問に対し、「はい父上。ローラインは、疲れと緊張のため、今は私の部屋で休んでおりまする。」と、
そう答えたのだった。

 そんな王子の答えに、タリオス王は少し考えた後、王子に向かってこう告げたのだった。
「カサレス王子よ。今宵のテーブルにその者も連れて来るがよい。少し、聞きたいこともあるのでな。」
そう短く告げると、そのままカサレス王子を部屋に下げさせたのだった。
                            
 そうしてカサレス王子は、王の部屋を出ると、今宵の父王とローラインの面会の事を思い、少し案じたのだった。

 しかし、王子の部屋に置き去りにしてきたローラインの事が気になり、急いで王子の部屋に戻ったのだった。

「ローライン・・・?」部屋のドアを開けて王子はそっと、ローラインの名前を呼んだのだったが、それと同時に
「きゃあ~、待って~。」という大きな声が王子の小さな呼びかけの声をかき消したのだった。

 カサレス王子は一瞬、部屋を間違えたのかと思ったのだったが、もう一度ゆっくりと部屋の中を見渡すと、
そこは間違いなく王子の部屋だったのだった。

 それから王子は、何やら楽しそうな声のする王子のベッドの方にゆっくりと近づいて行くと、ベッドの上では、
目を覚ましたロ-ラインとリティシア姫が楽しそうに二人で、じゃれ合う姿がそこにあったのだった。

 そして、ローラインとリティシア姫は、カサレス王子に気がつくと、「お帰りなさい。王子。」「お帰りなさい。
にいちゃま。」と同時に声をかけたのだった。

 それから二人は顔を見合わせると、先ほどからのおもちゃの掴み合いにまた興じたのだった。

 カサレス王子はそんな二人の楽しそうな姿を見て、少しあきれる様に(やれやれ・・・。
ローライン、これではまるでリティシアと同じくらいの小さな子供ではないか。)と、心の中で思っていると、
ローラインはカサレス王子の心を読み取って、すかさず王子に向かって、「あら、カサレス王子。
わたし子供じゃなくてよ。天上界までいった勇者なんですからね。」と言うと、肩を軽く上げて、
明るく王子に笑顔をむけたのだった。

 また、そんなローラインの言葉にリティシア姫は「ゆーしゃ。ゆーしゃ。」と意味も解らず楽しそうに声を
あげたのだった。

 そんな楽しそうな二人にカサレス王子は、穏やかな寛いだ表情を見せると、「楽しそうだね。
僕も混ぜてくれないかい?」と言って、二人の間に入っていったのだった。

 「きゃあ~。」そんなカサレス王子に、ローラインとリティシア姫は声をあげると、今度は三人で
大騒ぎをしたのだった。

 そうして楽しくひとしきり遊んだあと、三人が少し休んで居ると、リティシア姫を迎えに従者が来たのだった。

リティシア姫は、まだ遊び足りなさそうに、少し物足りない様な顔をしたのだったが、従者の顔を見ると
大人しく戻ろうと、従者に手を伸ばしたのだった。

それから従者に抱かれ、姫の部屋に戻ろうとしたリティシア姫は、最後にくるっとローラインの方を振り返り、
「またあとでね。ねえちゃま。」と言うと手を振りながら、王子の部屋を後にしたのだった。




a0073000_13134948.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-22 13:22 | ファンタジー小説

TUNAGU&TUMUGUワークショップ in Makers' Base





TUNAGU&TUMUGUワークショップを初めて開催します。



場所は目黒雅叙園のすぐそば。 「Makers'Base」


開催日時は11月1日、2日、3日の三日間。(ご予約は下記URLに飛んでご予約をお願いします。)

今回はフランスストールかスモールトートバッグにコラージュをしていただくワークショップです。
縫製は私の方で仕上げますので、自由にモチーフを乗せ、ピンで留めていただければOK! 
工作気分で楽しんでください。


また、ぜひ想い出の布やボタン、レースリボンなどもお持ちください。

お母様、おばあちゃまの、お父様、おじいちゃまの、またはお子様が誕生した時の大切な想い出を
一緒にコラージュして本当に世界に一つだけのバッグorストールを一緒に創っていきましょう。


ストールは何柄か用意します。

たとえば、車いすの方のひざ掛けや、病室にパッと華を咲かせませんか?

トートバッグは、黒、生成、ピンク、オレンジ、グリーンを用意しております。

福祉施設・被災地・途上国の素材を手に、どうぞ新しい物語を完成させてください。



ワークショップのほか、スモールトート、ミドルトート、ビッグトートや
ストールなどの販売もしております。


どうぞ、お気軽にお越しください。

皆様とお会いできることを、楽しみにしています!!                   

 by 丸子安子

https://makers-base.com/event/?type=100mob




a0073000_1050837.jpg



a0073000_10512184.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-20 10:54 | TUNAGU&TUMUGU

THE SIX ELEMENTS STORY No37








THE SIX ELEMENTS STORY




No37




                                    著 水望月 飛翔



 天上に向かって、祈りを込めて歌うその清らかな歌声。
そんなローラインの歌う歌声は、二人を包む光の外にまで伝わり、やがて風たちが運び、
遠く人々にまで届けていったのだった。

 その清らかな歌声を耳にした人々は、次第に少しずつその歌を口ずさみはじめ、そうしてその詩は、
空の領土中に広がっていったのだった。

 そんな歌声が、とうとう第五の島にある、空の王の城まで届くと、城の者達までもが、おのずと
「希望の詩」を口ずさみ始めたのだった。

 そんな多くの者の歌声を聞いたカサレス王子は、嬉しそうに聞くと、王子もまたその歌に加わったのだった。
すると、小さなリティシア姫が王子の部屋に入ってきて、「にいちゃま、私も歌う。」と、一緒にあどけない歌声を
響かせた。
 そしてとうとう、城の者たち全ての者までもが歌い始めると、王と王妃もこの詩に加わり、ローラインに
後押しをしたのだった。

 すると、先程まで途中で止まっていた、ローラインの石の光にむかって、空の領土中から光が集まり、
そのまま天上へ押し上げる様に加勢したのだった。

「ああ、我が主。これはいったいどういう事でありましょうか?私の小さい光に無数の光が集まり、
私の光を押し上げてくれております。」そう言うと今度は、「ああー。」と声をあげると、ローラインの目の前で、
周りを覆っていた岩石が剥がれ落ち、中に埋まっていた淡いブルーのサファイアが、その美しい姿を見せた
のだった。

 すると、天上に向かっていた光が急にその勢いを加速させ、生き生きとした意志を持って、まるで天に
向かって飛ぶ龍が如く、そのまま高く天上の雲をローラインの石は突き破っていったのだった。
 
 何という光景だろうか・・・。

 一人の者の成人の儀式に、この様に人々の力が結集し、また加勢し得た事など、この惑星が誕生してから
あった事などはない。

 この輝かしい光景は、きっとこれから、この惑星に新たなる希望を与えていく事になるであろう。

さて、皆の加勢に勢いよく天界の雲を貫いたローラインの石であったが、その天上界ではいったい何が
起こったのであろう?

 ローラインの石の光が天界の雲の上まで突き抜けて、その石が現れると、そこはなんとも美しく淡い
エマイユ色のグラデーションが、雲や霞を穏やかに包み込み、ゆっくりと漂い、天上の音を静かに
奏でていたのであった。

 そうして、一際淡い光がすっと奥から差してきて、そのままローラインの石を柔らかく捉えたのだった。

その光は、まるで手の上でローラインの光を転がす様に、ゆっくりと揺らぎを与えると、女性とも男性とも
つかぬ幾重にも重なった声で、ローラインの石に声をかけたのだった。

「なんじ、どこから来たのか・・・?淡き光の石よ。そなたの様な淡き光でようこの天界まで登ってこられの?」

 その声の震えは穏やかで優しく、その余韻でこの世界を形作っている気配のたおやかさに、ローラインの
石はゆったりと、心地よい感覚を味わったのだった。

 それからしばらくしてローラインの石は、静かにこう答えた。
「はい、わたくしは、空の領土から参りました者。我が主の願い、「天上のよろこび」を少し私に分けて
いただきたく、ここまで登ってまいりました。」

 そう言うと石は、自身の光の中に主ローラインの姿を映し出したのだった。
その光の中でローラインが、目を瞑り一心に「希望の詩」を歌っている姿が写し出されると、天上の光は、
ゆっくりとこう言ったのだった。

「ほお、かの小さき者がそなたの主か。ローライン。希望の光・・・。わたしもよう覚えておる。そうか。
あの小さき者が、かの地の人々の支援を受けてここまで来たか・・・。」そう慈愛に満ちた声で言ったのだった。
 
 そんな言葉を聞いて、ローラインの石は、こう聞いたのだった。
「おそれながら・・・、天上の光よ。わたくしの主の願いを聞き届けていただく事はできないでしょうか・・?」
そう恐る恐る聞いたのだった。

 そんな問いに、天上の光は柔らかく笑いながら、こう言ったのだった。
「希望の光の石よ。私を恐れなくともよい。しかし、久方ぶりに我の希望の光に会うてみようかのう。」
と言うと、すーっと雲の下へ光を降ろし、すぐさまローラインを、この天上界へと連れてきたのであった。

 天上界から光が素早くローラインの元に現れたかと思うと、次の瞬間そのままローラインの身体を
包み込み、天へと一気に連れてこられたローラインは、あまりの一瞬の出来事に驚いて、自分が
今いったいどこに居るのかと、理解できずに周りを見回したのだった。

 そして、ローラインは自身の小さな翼が瞬いて、浮いている事に気づくと、嬉しそうにまた周りを見回した後、
ようやくローラインは少し離れた高い所から、やんわりと温かく自身を見下ろす優しい光の存在に気づき、
じっと見つめたのだった。

 ローラインは懐かしそうにその光を見つめると、「天なる父。わたしのお父様・・・。」と言って、静かに
涙を流したのだった。
そしてローラインはゆっくりと、その光に近づいていったのだった。
そんなローラインに天上の光は「わが娘・・・、希望の光・・・。人々の祈りをよう味方につけたの・・・。」と声を
かけると、続けてこう言ったのだった。

「わが娘ローライン。そなたの望みを申すがよい。」
天上の光が、優しくローラインにこう言うと、ローラインはいたずらっ子の様にほほ笑んで、その光に向かって
こう答えたのだった。
「天なるお父様・・・。わたしの願いは「天上のよろこび」です。どうかこの天上にある喜びを、少し私に分けて
下さいませんか・・・?」

 人々と喜びを分かち合いたい。
ただそれだけを思い、はやる気持ちにうれしさが込みあがり、ローラインは楽しそうにそう言ったのだった。

 そんな楽しそうな姿に天上の光は、慈しむように一層優しい光をローラインに向けると、
「よい、わかった。好きなだけ持っていくがよい。ここのものはそなたのもの・・・。ただ望めばよい。」
そうローラインに告げたのだった。

 そして、ローラインの石に向かって、「さあ、そなたの身に思う存分宿すがよい。」と言ったのだった。 
 
そうして、天上の光は大きく一回りすると、そうして集めた淡い光をローラインの石の上に振り注ぎ、
「天上のよろこび」を宿させたのだった。

 すると、ローラインの石は先程よりももっと美しい、アシード・ブルーの輝きを得て光り輝いたのであった。

「まあ、きれい。」嬉しそうにほほ笑むローラインと、ローラインの石に向かって、天上の光は、
「さあ、「天上のよろこび」を宿いし石よ。われの「希望の光」と一体となるがよい。」

 そう告げると、ローラインの石はスーッとローラインの元に近づいて、そのまま右手の甲に、
静かに納まったのだった。
                               
 ローラインは、石と一体となるには痛みを覚悟しなければという思いと共に、一瞬身体を固くしたのだった。
が・・・、何のことは無い全く痛みなどなく、スーッと静かに石は、ローラインの右手の中に納まったのだった。

 ローラインは不思議そうな顔をすると、天上の光にこう聞いたのだった。
「天なるお父様・・・。どうして私の石は痛みがなく収まったの?」

ローラインは、痛みがなくてホッとしたのと同時に、多くの人々が大層な犠牲を払っている中で、
自分だけ何事もなく石が自身に宿った事に、少し憮然として聞いたのだった。

 そんなローラインに天上の光は、笑いながらこう言ったのだった。
「希望の光、ローライン・・・。わたしは皆に、一度たりとも苦痛を強いた事などは無い。」
こう言うと、続けて「しかしなぜだろう・・・?苦痛を乗り越えなければならないという考えが、
いつしか出来上がってしまったのは・・・。」と言うと、少し光を震わせたのだった。

 それから天上の光は雲の下からの気配を感じ、優しくローラインにこう告げたのだった。
「わが娘、ローライン。そなたの迎えがそなたの事を心配しておるようだのう。そろそろそなたの居るべき
場所に戻るがよい。またいつか、会おうぞ。」

 そう言うと同時に、ローラインが居るあたりの雲がスッと消え、ローラインは急に重力を感じ、
そのまま下へ落ちていったのだった。

「きゃ~。」先程までと違って、なんの加勢にもならない自身の翼にローラインは驚きながら、
どちらが天と地とも解らないまま、どんどん下へと落ちていったのだった。

 そしてローラインは、真っ逆さまに落ちていく恐怖に慄いたのだった。
しかし次ぎの瞬間、何者かがローラインの小さな身体を捉えた。

「大丈夫かい・・・?ローライン。」ローラインの小さな体を抱き止めたその人物は、心配そうに声を
かけたのだった。
 ローラインは、恐怖で瞑っていた目を恐々開けると、自分の顔を心配そうに覗き込む、カサレス王子の
顔を見つけたのだった。

「カサレス王子・・・。」そう言うとローラインは、まだ恐怖に落ち着かない気持ちのまま、きつく王子の胸に
しがみついたのだった。

 震えるその小さな身体を、しっかりと抱きしめながら王子は、「もう大丈夫だよ、ローライン。」と言うと、
ローラインをもう一度優しく抱きしめたのだった。

 その間もずっと、カサレス王子にきつくしがみついているローラインの腕を優しく解くと、ゆっくりと
ローラインの顔を、自分の顔に向けさせたのだった。

 ローラインは、優しくほほ笑むカサレス王子の顔を見ると、まだ少し震える手を王子の胸の上に置いて、
うつむいたのだった。

「カサレス王子、大丈夫ですか?」そこへ王子の後を追って急いで飛んできた、
王子の第一の従者アーキレイが、心配そうにカサレス王子に聞いたのだった。

 その声に振り向くと王子は、「ああ、僕は大丈夫だよ。アーキレイ。だけど、こちらの勇者のショックが
まだすこし溶けないようだ。君は急いで第二の島へ行き、彼女の母上に彼女の儀式の成功と無事を
伝えてきてくれないだろうか?きっと心配しているだろうから。僕はこのまま、彼女を城に連れていって、
少し落ち着かせる事としよう。」そう言ってからカサレス王子は、王子の指示に従い、第二の島へ向かう
アーキレイの後姿を見送ると、ローラインを抱いたまま、ぐるぐるとその場を飛んだのだった。

「すごいじゃないか、ローライン。まさか君が天上まで登るとは・・・。そんな事、かつて今まで聞いた事が
ないよ。」そう言うと、我がことの様に喜びを見せたカサレス王子なのであった。

 そんな王子の言葉にローラインはまだ震える声で、「いいえカサレス王子。私は自分の力で天上まで
行ったのではないわ。ただ突然、天の父に連れて行かれただけなの・・・。私は・・、私の力なんて
使っていないわ。ただ、天の父がわたしに授けて下さっただけなのよ。」そう言うと思いだした様に、
自身の右手に宿るアシード・ブルーに輝くサファイアを見せたのだった。

「美しいね・・・。ローライン。君の石の輝きは。」
そう言う王子にローラインは、満面の笑みを浮かべ、嬉しそうにこう言ったのだった。

「うれしい。私の石の輝きをカサレス王子に、一番最初に見せる事ができるなんて。」そう言うとローラインは、
慈しむ様に右手の石を撫でると、その宿った右手で王子の頬に優しく触れたのだった。

 そして、驚く王子を見つめながら、「私に宿った「天上のよろこび」よ。どうかこの方にその輝きを注いで
くださいな。」と言ったのだった。

 すると右手の石から、温かく柔らかな光が溢れだし、カサレス王子とローラインの身を、優しく包み込んだの
だった。

 そんな温かな光を受けて二人は、この喜びを共にしたのだった。
「温かいね・・・。ローライン。この上なく、温かな光だ。」
そう言うと、カサレス王子はローラインを抱いたまま、エマイユ色に輝く温かな雲の間をしばし、二人だけの
時間を楽しむように、ゆっくりと空の城へと飛んで行ったのだった。

 二人が飛ぶその周りの雲達は、天からの光に輝いて、まるで二人を祝福しているかの様に、幸せな色の
光を降り注いだのだった。




a0073000_1239619.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-18 12:42 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No36








THE SIX ELEMENTS STORY





No36



                                     著 水望月 飛翔





 こうして「癒しの浴室」からローラインが出てくると、そこには、心配そうに待っている母と、
空の人々の姿があったのだった。
 ローラインは皆の顔をひとしきり見つめると、泣きそうになるのをこらえて、明るい笑顔で
こう言ったのだった。

「まあみんな。そんな心配そうな顔をして、いったいどうしたの?」
今朝、家を出ていった時とは明らかに違う、優しい表情で笑うローラインの顔を見ると、
皆は一様にほっとした表情を浮かべたのだった。

 そして、母はローラインに近づくと、気遣う様にこう言ったのだった。
「ローライン。大丈夫かい・・・?なにか、手伝うことは無いかい?」

 そう心配そうに覗き込む母に、ローラインはにっこり笑うと、まるでいたずらっ子の様に、
こう言ったのだった。
「じゃあ母様。私の事を抱きしめてくれない・・・?私、少し怖いから。」

 そう言うローラインであったが、しかしそんな言葉とは裏腹に、ローラインの表情は
寛いだ明るい笑顔そのものであった。

 母も集まった人々も、ローラインのうわべではない、本当に明るい笑顔を見ると、
嬉しそうに入れ替わり立ち代わり、ローラインを励まそうと抱きしめたのだった。

 しかし、それはいったいどちらが励まされた事であろう・・・。
明るく笑いあう人々の一団は、こうしてローラインを「成人の儀式」へと、見送っていったのだった。

 そうして、ローラインは自身の儀式に選んだ場所に皆と向かったのだった。
それは第二の島にあり、かつて兄のキュリアスが成人の儀式を行い、その時の閃光で廃墟と
化した「真実の礼拝堂」であった。

 しかし、キュリアスの失敗以来、人々は誰もこの半分崩れ落ちた礼拝堂で、儀式をあげようと
する者など、もちろん現れる事などなく、今日の儀式を司る司祭も、驚きを持って
この礼拝堂に来たのだった。

 司祭はこれから始まろうとする儀式を前に、最後にもう一度、ローラインに優しく聞いた。
「それでは最後に聞く。なんじローライン。そなたはこの「真実の礼拝堂」で、これから自身の
成人の儀式を執り行うが、それでほんによろしいか?もし少しでも、思いが変わったのであらば、
もちろん、他の礼拝堂に場所を移してもなんらかまわぬが。」と聞いたのだった。

 しかしローラインははっきりと美しい声で、「ありがとうございます、司祭様。でも私はこの
「真実の礼拝堂」で儀式をしたいのです。だって、この場所ならいい具合に壁が落ちているから、
この丘に吹く風たちを感じる事ができるんですもの。」そう言うと、風たちの祝福を受けて、
楽しそうににっこりほほ笑んだのだった。

 そんなローラインに、司祭も優しい笑みを浮かべると、「それでは、なんじローライン。
そなたの儀式を始めるとしよう。」と、周りの人々にも宣言する様に言ったのだった。

 そして司祭が儀式の呪文を唱え、聖典に光を出現させると、ローラインはその上に
自身の石を置き、こう言ったのだった。

「わたくしの名は、ローライン・グリュスター。この空の領土で生きる者。わたくしは自身の石に
宣言します。わたくしの愛しい石よ。私の右手に宿いしたまえ、「天上のよろこび」を持って。」
 そう宣言すると、ローラインの石から光が放たれ、ローラインを包み込んでいったのだった。
 
 そうして、明るい閃光の光の中でローラインが目を覚ますと、先程まで座っていた車輪付きの
椅子に居る自分ではなく、ふわふわと空中に漂う自身をみとめたのだった。
そして、その姿に驚きを持って周りを見回しすローライン。

「まあ、私飛んでいるのね。うれしい・・・。」
そう、ローラインの小さなみすぼらしい翼では、いままで一人で飛べたことなどなく、
この時生まれて初めて、一人で飛んでいる感覚を味わったのだった。

そうして、喜びながら周りを見回していると、ローラインの石が初めて、彼女に話しかけてきたのだった。

 ローラインの石は、ごつごつした岩石がその大部分を覆っており、小さな割れ目のその奥に、
ようやく淡いブルーの存在を確認する事ができたのであったが、そのブルーのサファイアの部分の
大きさが涙の様なかすかな粒なのか、それとも外を覆い尽くしている岩石がほんの一部で、
ほとんどをその淡いブルーの輝きが占めているものなのか、外からは全く解らなかったのであった。

 そんな姿の石が、ローラインにこう聞いたのだった。
「そなたが、私の主であるか?私は、そなたのその声をよく覚えている。私が生まれてから
眠っていたこの数年間、いつも私に歌を聞かせてくれていた。私はそなたの歌声に、いつも安らかな
眠りと共にこの時を過ごしていた。して、我が主の名はなんと言う・・?」

 そうローラインの石が聞くと、ローラインはにっこり微笑み、愛おしそうに「私の石さん。
私の名前は、ローライン。ローライン・グリュスターよ。」とヒバリのさえずりの様な声で、
自身の石にこう答えたのだった。

 そんなローラインの答えに石は、「ローライン。空のいにしえの言葉で「希望の光」。
そうか、そなたは「希望の光」か。その光がわたしにのぞむは、「天上のよろこび」であったろうか・・・?
さて、はたして天上界のよろこびが、この様な姿の私に、収まってくれるであろうか?」

 そう答える石に向かって、ローラインは明るくほほ笑むと「大丈夫よ、私の石さん。あなたなら
絶対うまくいくわ。だって、周りのみんなが応援してくれているんだもの。」と言うと、少し意味ありげに
笑ったのだった。

 そして、そっと自身の石を促すように、こう語りかけたのだった。
「ねえ、あなたにはわからない?皆が祈ってくれているこの波動を?」
そう言うとローラインは、静かに目を閉じながら、二人を包む光の外で漂っている風たちが
伝えてきた、人々の祈りの気配を感じ取っていたのであった。

 もちろん、いかなる時も、いかなる人も、他の人々の手助けを受ける事は、一切出来ぬ事・・・。

しかしローラインは、何ものをも通さぬ、成人の儀式の光の外の気配を、人々の祈りを、
いま確かに感じ取っていたのであった。

 そんな主に石は、驚いたのだった。「我が主。あなたには外の気配もわかるのですか?
しかし、私にあなたの願いを宿すほどの力があるかどうか・・・。」と口ごもり、少し間を置いてから
ローラインにこう尋ねたのだった。

「希望の光、我が主よ。あなたは自身の願いをどのように思われておいでか・・・?」
石にそう聞かれると、ローラインはにっこりほほ笑み、楽しそうにこう言ったのだった。

「ねえ、あなたも見てわかるでしょ?私の身体って、とても小さいし、それに脚だって、翼だって、
あまりきれいじゃないわ。」そう言うとくるっと一回りして、ローラインは何やら思い出したように笑い、
続けてこう言ったのだった。

「でもね、私、この身体が好きなの。自分ではあまり動けないけど、周りの皆がいつも助けてくれるの。
だからね、もし私の手の中に「天上のよろこび」が宿っていたら、その度にいつもギュッとして
皆に届ける事ができるのよ。ふふっ。それが、私の恩返し。ねえ、そう考えたら、とっても楽しくない?」 
 
 ローラインはそう考えると、もうじっといていられないという風に、楽しそうにはしゃいだのだった。

そんな主の姿を見て石は、フッと短く笑うと「我が主。あなたは本当に楽しそうですね。
私も、そんなあなたの姿を見られてうれしいです・・・。」そう言うと、少し時間を置いてから、
意を決したようにこう告げたのだった。

「わかりました、我が主。やってみましょう。私のこの小さな光が、天上からのよろこびを
受け取れますよう、どうか私にお力をお貸しください。」

 そう言うと石は、渾身の力を込めて、天上に呼びかけたのだった。

「天上に届け、我が祈りよ。そして我が主の望みを叶えたまえ。」
そう言うと、固く閉ざされた原石の割れ目から、一心に天上へと真っ直ぐに、自身の光を
伸ばしたのだった。
 二人を包む光の中から、まっすぐに天を目指すローラインの石の光。 

こうして、石はローラインの願いを受け、一心に天へと光を伸ばした。
天界を目指して真っ直ぐに進む光。

 しかし、その光は天界の高き所まで到達せず、空の途中まで来ると、ピタリと留まったまま、
それ以上進む事ができないでいたのだった。

人々は、固く閉ざした儀式の光の中から、天へと延びる光を見て、驚き見たのだった。
「ローライン・・・。」そんな中、母は心配そうにその光を見つめながら、胸がはちきれそうになるほど
、ローラインの無事を祈ったのだった。

 一方その頃、第二の島から何やら光が伸びているのを、空の城の者達も見つけると、
少しずつそのざわめきが広がっていったのだった。

 そんな気配にカサレス王子も気が着くと、その光がローラインの石の光であることを感じ取ったのだった。

「ローライン?いったい、君はどんな願いを望んだんだ・・・?」
 この空の領土での成人の儀式は、第二の島から第三、第四、空の城がある第五の島まで、
それぞれに礼拝堂があり、各々が自身の力に合わせて礼拝堂を選び、自身の「成人の儀式」を
おこなっていたのだった。

 しかしそれと同時に、礼拝堂は高さが増すごとに、儀式を行う者の力量もまた必要としていたのであった。

ましてや、天上に石の力を願い出る事は、そう容易いものではない。
それは今の空の王の「やすらぎの力」を願い出て以来、誰も天に向かって願い出た者はおらず、
もちろんかつて今まで、低い地の第二の島の礼拝堂から、天上に向けて願う者など、いなかったのであった。

 カサレス王子は鼓動の早まりを抑えて、ローラインの無事を祈った。
そしてその頃、こちらも気づいていたタリオス王も、この光がよもやか弱い少女の願いであろうとは、
この時思いもよらなかったのであった。

 遠くその光を見下ろすと王は、「ほう、第二の島の礼拝堂から、天に向かって願い出る者がおろうとは、
物好きな・・・。しかしかように豪胆な者がおろうとは、また頼もしい。ほんにその者の願いが届けばよいの。」
そう言うと、後押しをする様に見ていたのであった。

 しかし、なかなか天上を登る事ができない己の力に、やがてローラインの石は、気落ちして
こう告げたのだった。

「すみませぬ、我が主。私の力が弱いため、これ以上天を昇っては行けぬようです・・・。」
そう自身の力の弱さを口惜しがり、ようやく言葉を振りしぼる様に告げるローラインの石。

 しかし、そんな石に向かってローラインは、こう言ったのだった。

「大丈夫よ。あなたは一人じゃない、わたしもいるわ。そう、私は希望の光、ローライン。
この名のもとにあなたの為に歌うわ。」そう言うと、目を閉じて静かに「希望の詩」を歌い始めたのだった。



a0073000_942544.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-15 09:45 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No35










THE SIX ELEMENTS STORY




No35



                                        著 水望月 飛翔



 ローラインは温かい湯につかると、静かに自身の心に呼びかけたのだった。
(母様、みんな。いつも私の事を大事に思ってくれてありがとう。みんなが私に沢山の気持ちを
くれたおかげで、とうとう私にもこの日が来たわ。)そう言うと静かに目を閉じたのだった。

 そして、(でもね、私・・。これからの私は、もっと皆の役に立てる人になりたいの。
でも私の身体は全然成長しないし、すぐに咳もでて、とてもこの身体では、みんなの役に
立てられるとは思えないわ。だから私が皆にできる事。私が皆の手を借りずに、誰の迷惑にもならずに、
自分ひとりの力で立っていきたい。そうこれからは、私自身で立って生きたいの。)

 ローラインは、いつも彼女の事を心配そうに覗き込み、助けてくれる周りの人々を気遣って、
常に笑顔を浮かべ、楽しそうにしている事をいつの間にか自分に課していたのだった。

 兄のキュリアスがいた頃までは、まだ幼かった彼女は本当に自分の身体や翼が皆と同じように
成長する事を、少しの疑いも持たずに信じ、いつの日か豊かな羽根がうち揃う美しい翼をもった
自分を想像しながら、ずっと夢見てきたのだった。

 しかし、自分の大好きな兄の成人の儀式が失敗に終わり、母のあまりの嘆きの姿にいつしか、
自分が幸せになる事なんてできないのでは?と、そして、不自由な身体の私の存在が、
大好きな兄様を追い詰めていったのでは?と、少しずつその清らかな胸に、悲しみの翳りが姿を
現し始めていったのであった。

 そして、そんな彼女を心配するように、彼女に向ける人々の目の中に心配の色を見つけると、
ローラインは人々のいたわりの心の中にある憐みを見たくないがために、いつしか暗くなっていく
心とは裏腹に、幼い頃と同じように無邪気を装い、明るく振る舞うようになったのだった。

 しかし、そんな振る舞いにも時には疲れを感じる様になり、まだ無邪気に笑えた幼い頃の自分と、
もうその頃には戻れない、しかし、常に笑顔を絶やさないようにと、いつしか笑顔を演じる様になって
いったローライン。

 温かな湯と霧に包まれながら、一人きりになったローラインは「フーッ。」と、ため息をついたのだった。
しかしそこへ、そんなローラインに遥か高い天井から、誰やら話しかける声が聞こえてきたのであった。

「なにやら小さなため息が聞こえた様じゃが・・・。そこにいるのは誰じゃ?」

ローラインはすぐに、その声のする高い天井を仰ぎ見て、じっと目を凝らしたのだった。
が、最初は何の存在もその瞳では見つけられなかったのだった。

 しかし、じっとその気配のするあたりに視線を送っていると、次第にゆっくりとうごめく、
何やら半透明な物体が天井の高い所から、ローラインの方に降りてくるのを、かすかに
感じ取れたのであった。

「あなたは、誰・・・?」
ローラインはゆっくりと、少し怖れを持ってこの声の主に聞いたのだった。
この静かな問いかけにその物体は、何かを思い出そうとするかのように、こう言ったのだった。

「わたしか・・・。私は一体何者だろう?・・な。長い時間を・・、わたしは自身の名前も忘れて久しい・・・。」

 そう言うと、半透明なその物体は、相変わらずゆっくりと、そのあいまいな輪郭を動かし続けたのだった。

それから続けて、「しかし・・・、そなたの声には何か聞き覚えがあるぞ・・・。
だが・・・、何かが少し違うようだ。以前は・・、そう、もっと希望に満ちていたようだが。今はなにか、
愁いを秘めているようじゃ・・・。」

 そう言うと、何かを思い出そうと、またその身をくねらせたのだったが、その半透明な物体の身に、
黒いインクが一滴落とされたように、先程よりも少し暗い色が、ゆっくりと漂い始めたのだった。

 ローラインは、今まで見た事もないこの謎の物体に、自身の心の内を言い当てられて、
鼓動が一つ鳴ったのだった。

「あなたは、私の事を知っているの・・・?私、あなたに会ったことがあって?」ローラインは
こう聞いたのだったが、何か自身もこの物体を知っていたような、しかし、どうしても思い出せない、
なにか霧の向こうのおぼろげな記憶を、必死で探ろうとしたのであった。

 しかし、思いつこうとするとそのしっぽの名残りが、どうしても自身の手からするりと逃げてしまうような、
どうにもならないもどかしさを、強く感じていたのだった。

(知ってる・・・。私、知っているわ。あなたを。)
そう、今はたどり着けないが、記憶のもっと奥底にある確かな感触を、ローラインは少しずつ、
手繰り寄せていたのだった。

 そんなローラインの心の変化を感じたその物体は、「おお~、そうじゃ。わたしを思い出しておくれ。
わたしが何者なのかを。」と、そう言うと、またローラインの心の中を感じ取り、不思議そうに
こう言ったのだった。

「そなたは・・、なぜ希望を捨てたのだ・・・?ローライン。」思いもかけず、見知らぬその物体から
自身の名前を呼ばれたローラインは、驚いてこう聞いたのだった。

「なぜ、私の名前を知っているの?」そうローラインが聞くと、
「ローライン・・・。そなたの名前はローラインというのか。」と言うと、先程よりも少し嬉しそうな気配を持って、
またその身をくねらせたのだった。   

それからゆっくりとローラインにこう言ったのだった。
「そなたは知っておるか・・・?ローラインと言う言葉の意味を・・・。」
そう言うと、また一つ大きくその半透明な身体を、ゆったりと大きく回転させたのだった。

 ローラインが不思議そうに見ていると、また、ゆらゆらと漂いながらこう告げたのだった。
「ローライン・・。それは古い空の民の言葉で、「希望の光」と言う意味なのだよ・・・。」

「希望の光?」ローラインが小さく繰り返すと、なおもその物体は続けてこう言ったのだった。

「そう、そなたが持つ「希望の光」を私は覚えている・・・。私は本当にそなたの「希望の光」が
好きだったのだ・・・。だがどうしてだろう?その光が少しずつ小さくなってしまったのは。
そうして、わたしはだんだんと眠りについていったようだ・・・。それからわたしは、自分の名前さえ
忘れてしまった。風が・・・、そうだ。風たちがわたしの周りを吹かなくなったからだ。」そう言うと、
少し考え込んだ後、何かを思いついたように、ローラインにこう告げたのだった。

「おおそうじゃ。風たちはそなたが彼らの歌に耳を貸さなくなったと、嘆いておったな・・・。」
 この物体の言葉にローラインは、何を自分に言おうとしているのか、少しも理解できない事に、
いら立ちを覚えたのだった。

「待って、わたし・・、あなたの言っている事が全然わからないわ。風たちって、いったいなんなの?
私は、もう何も考えないただの子供じゃないわ。」ローラインは、ただ無邪気に夢見ていた幼い頃の
自分を、断ち切るかのように、そう強く言ったのだった。

 しかしその物体は、そんなローラインを、少し悲しそうに見つめ身体を震わすと、愁いを含めた声で
ローラインにこう言ったのだった。

「希望の光、ローライン。そなたには今、何が見えておる・・・?」
 そんな悲しみを含んだ言葉に、ローラインはこれまでの抑えていた感情をみせるように、怒って
その物体に自身の感情をぶつけたのだった。

「何が見えているかですって?私の目から見えているものは・・、母様や周りの皆の、
わたしを心配している目よ・・・。そう、そんな悲しそうな目しか見えないわ。わたしは・・・、
もうみんなの心配そうな目を見たくないのに・・・。だから・・、だから私はいつも笑っていたの。
 そう、たとえ笑いたくない時でも・・・。でも、もう嫌なの。私はもう、誰の手も借りずに一人で
なんでもできる様にしたいの。もう、みんなの迷惑になんかなりたくない・・。風の歌なんか知らない・・。
そんな歌、わたしは聞いた事なんかないわ。」   

 最後は語気を強めてそう言うと、ローラインは悲しそうに真っ直ぐにその物体を見つめたのだった。

「ローライン・・・。希望の光よ・・。本当に周りの者の目の中に、心配の色しか見つけられなかった
というのか・・・?本当にそなたは皆の目の中に、そなたへの憐みを見つけたとでも言うのか・・・?」
そう言うと、寂しそうに悲しい音を立てながら大きく天上を一回りしたのだった。
それから、またゆっくりと元の位置に戻って漂うと、そっとこう言ったのだった。

「希望の光。私はそなたの「希望の光」が本当にすきだった・・・。そなたはいつも明るく、楽しそうで、
そんなそなたの歌声が大好きだった・・・。人々がそなたの周りに集まるのは、ただそなたの温かな
「希望の光」に触れたいが為。ただそれだけで集まってきたのではないだろうか・・・?ローライン。
そなたを迷惑に思う者など、本当にいたのだろうか・・?そなたは人々の手を受け入れる事が
本当にもう嫌なのか?人々がそなたに近づくことはもうできないのか・・・?」

 最後は、自身がローラインに拒絶されたかの様に、悲しみを含めてこう言ったのだった。
ローラインはその悲しそうな言葉を、そっと胸の中で反復したのだった。

(みんなは私を心配して、いろいろ助けてくれていたんじゃなかったの・・・?
母様はこんな身体の私を哀れに見ていたんじゃなかったの・・・?)
そう思うと、ローラインは皆の顔をゆっくりと、思い出そうとしたのだった。

(みんな、いつも嬉しそうに笑ってた・・・。私が「ありがとう。」って言うだけで、いつも喜んでくれた・・・。
私が笑うだけで・・・。わたしが歌うだけで。みんな本当にうれしそうに、喜んでくれていたわ・・・。)

 こうして、人々の笑顔をゆっくりと思い出すとローラインは、静かに涙を流したのだった。
そんなローラインにその物体は静かに、温かくこう言ったのだった。

「ローライン・・・。希望の光。そなたが希望に満ちていた時の事を思い出してくれたかい?」
そう優しく聞かれると、ローラインは先程までとはうって変わった以前の優しい表情に戻り、
にこやかにこう答えたのだった。

「はい、思い出しました。私が人々の「希望の光」であることを。そして・・・、あなた様がこの空の守り神。
「碧き飛翔の女神」であるという事も。」

 ローラインが目の前の物体に向かってそう言うと、どこからともなく現れた風たちが、
その物体の周りを一斉に吹きぬけて、先程までの薄暗い半透明の色を拭い去り、心細そうな揺らぎを
追い払ったのだった。

 そしてその姿を、見る見るうちに美しいプラチナに輝く翼を凛と湛えた、光り輝く飛翔の女神の姿に
仕立てたのだった。

 こうして女神は、本来の姿であるその美しい顔を、ローラインに向け見下ろすと、懐かしそうに
ほほ笑み、こう言ったのだった。

「ローライン。わが希望の光よ。よう我の名を思い出してくれた。そなたの風たちも、
よく舞い戻ってきてくれたの・・・。」そう言いながら、周りを吹く風たちを嬉しそうに見つめたのだった。
風も自身の女神の覚醒を喜び、ローラインに温かく吹くと、その額に優しい歌を注いだのだった。
 ローラインは、彼らの優しい歌声を久しぶりに全身に浴びると、風たちに向かって、こう言ったのだった。

「私ったらいつの間にか、自分からあなた達の歌に耳をふさいでしまっていたのね・・・。
ごめんなさい。いつも私に歌ってくれていたのに・・・。」

 そうして周りに漂う風たちを、懐かしそうに慈しむ様にほほ笑んだのだった。
ローラインの優しい頬笑みを受けて、軽やかに晴れやかに舞う風たち。

すると、風たちの中の一番小さな風がローラインの元に近づいて、そっと小さく彼女に
耳打ちをしたのだった。

その風の言葉を聞いて、ローラインは嬉しそうに声をあげた。
「そう、兄様はご無事なのね・・・。」そう言うと、ローラインの頬に暖かな涙が流れたのだった。

「わかったわ・・・。私も人々の温かい気持ちを、これからも喜んで受け取っていくわ。
そうする事が、周りの人達に本当に喜んでもらえる事なのよね?私が、本当に心から喜んで
受け取る事が・・・。この身体に生まれたからこそ、唯一私にできる事。もう私は自分を憐れまないわ。
そして伸びやかな心ですべてを受けいれる。そうする事がまた、真の平和と美しさを備えた
「碧き飛翔の女神」であるあなたを讃えられる事なのですね?」

うれしそうに高らかに、ローラインはこの美しい女神にそう告げたのだった。
 
 女神はローラインの言葉を受け取ると、無言で頷き、真っ直ぐにローラインを見つめた。

それからしばらくして、女神は風たちから何かを囁かれると、ローラインに視線を戻して、
こう告げたのだった。
「我が娘、ローライン。そろそろそなたは成人の儀式に行かねばならぬようじゃ。しかし、案じる事は無い。
そなたならきっと、自身の信じる心を持って、そなたの石と一体となる事ができよう。さあ、お行きなさい。
皆の元に・・・。」

 そう言うと女神は両手をさっと広げると、ローラインを祝福する様に、金と銀に輝く美しい羽を
彼女の頭上に降り注いだのだった。

 ローラインはその羽を掌いっぱいに受け取ると、嬉しそうに顔に近づけてから、パーッと大きく
天上に向けて大きく撒いたのだった。

そしてローラインは、ゆっくりと浴室から出ていったのだった。




a0073000_1214174.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-11 12:15 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No34






THE SIX ELEMENTS STORY No34





No34



                                    著 水望月 飛翔



「キュリアス・・。」

王子がふと彼の名前を口にすると、その瞬間、カサレス王子は我に返ったのだった。

 ローラインは少し楽になった呼吸にホッとしながら、ゆっくりと王子の方に顔を向けると、
カサレス王子は少しバツが悪そうにうつむいたのだった。

 しかし、ローラインの真っ直ぐに王子を見つめる力強い視線を感じとると、カサレス王子もまた、
ローラインの顔を見つめたのだった。

 しばしの間二人の間に言葉はなく、ただ優しい風だけが二人を暖かく包んだ。

「ローライン・・。」
王子はようやく口を開き彼女の名前を呼ぶと、ゆっくりと彼女の小さな白い手を取ったのだった。

 ローラインは王子のなすがまま、ただ静かに王子の顔を見つめていたのだったが、
やがて王子の美しいサファイアブルーの瞳から、一筋の涙がつたってきたのを見たのだった。

「カサレス王子。」ローラインは小さく王子の名前を口にすると、王子の手を両手で優しく包み、
ギュッと力を入れてカサレス王子に、にっこりと明るくほほ笑んだのだった。

 王子はそんなローラインの、自分を励まそうとする気丈な姿に、流れる涙をそのままに
王子も頷きながら、ローラインに笑顔を返したのだった。

 軽やかなアクアブルーの空の上を漂う真っ白な雲が、風に吹かれながら少しずつ歩を
進めていると、やがて柔らかなコーラルピンクの色が雲に変化の色を着せ、次第に
友情のオレンジ色の光が二人の上に温かに降り注いだのだった。

 カサレス王子とローラインは、キュリアスとの思い出を時の経つのを忘れて、語り合った。
いつまでも尽きない会話。大好きな人の記憶を話し合える喜びに満ちた笑顔。
しかしその時間は永遠ではなく、王子が城に戻らなければいけない時が来たのだった。

 しかし、王子は城に戻る前に、ローラインとある約束をした。
それはこれから、満月の夜の次の日に、またこの場所で二人で会おうというものであった。
 ローラインはこの王子の申し出に、喜んでうなずくと、城に戻っていくカサレス王子の後姿に
、大きく手を振りながら、いつまでも見送っていたのだった。

 そうして二人は、次の満月の夜をずっと待ち遠しく思う様になっていったのだった。

 最初の頃の二人は、大好きだったキュリアスの、しかし遠くはっきりとしない幼い記憶の断片を、
まるでパズルを一つ一つ繋ぎ合わせていくかの様に、埋め合わせていったのだったが、
いつしか二人の大切な人、キュリアスの話から、それぞれお互いが、満月と満月の間の会えない
時間を埋め合わせるかの様に、相手の様子や話に耳を傾ける事が多くなっていったのだった。

 そして、二人が出会ってから2年が過ぎたころ。

 その日のローラインは、いつもカサレス王子に見せる屈託のない笑顔の表情とは明らかに違う、
なにか思いつめた様にときどきため息をついては、少し怖い顔をしている事にカサレス王子は、
気づいたのだった。

 王子は、そんなローラインに、どうしたのかと尋ねたのだった。
カサレス王子の横で、足を伸ばして草の上に腰を降ろして座っていたローラインは
、ゆっくり一つ息を吐くと、意を決した様に王子を真剣に見つめて、こう言ったのだった。

「カサレス王子、あのね。実は私・・・。明日が私の16歳の誕生日なの。」そう言うとローラインは、
王子から視線をそらし、口をきゅっと固く結んで、高く空を見つめたのだった。

 カサレス王子は、このローラインの告白に驚き、「えっ?君って僕より2歳年上だったの?」
と聞いたのだった。

 しかし、明日の成人の儀式を、緊張して迎えようとしているローラインの耳に、全く考えても
みなかった事を聞くカサレス王子の言葉が届くと、ローラインは怒ったようにゆっくりと、
王子の方に向き直ったのだった。

 ローラインは最初、怒ったような顔を王子に向けたのだったが、この間の抜けたカサレス王子の質問と、
ローラインの怒っている表情に、戸惑を見せている王子の姿を見て可笑しくなり、ローラインは
いつもの様な明るい表情を見せると、つぎには明るい笑い声をあげたのだった。

 そして肩を震わせてひとしきり笑った後、目を丸くしてこちらを見ている王子に向かって、
「ええそうよ。私の方がカサレス王子より2歳お姉さんなんですからね。」と、いつもの屈託のない
笑顔でこう言ったのだった。

 カサレス王子は初めて会った時から、小さく華奢な身体で、あれから成長せず、いまだ幼い子供の様な
姿のローラインが、もうその様な年齢に達したのかと、驚きを持って見つめたのだった。

 しかしふと我に返ると、王子はローラインが明日、成人の儀式を迎えるという事の重大さに気づき、
少し心配そうにこう聞いたのだった。

「ローライン。明日が君の成人の儀式の日なんだね。何か僕に手伝えるような事は無いだろうか。
君は、その、大丈夫かい・・・?」と、先程までの表情とはうって変わって、今度は慎重に気遣う様に
一つ一つ言葉を選びながら、ゆっくりとローラインに聞くカサレス王子。

 そんなカサレス王子の問いに、ローラインはしばらく沈黙した後、王子の顔を見つめると、
今まで見せたことのないような思いつめた眼差しで、恐る恐るこう言ったのだった。

「カサレス王子。本当はわたし、少しだけ怖いの・・・。」

 そう言うとローラインは、唇を固く噛み、小さな身体をもっと小さくしたのだった。
そして、そのまま前を真っ直ぐに見つめながら、こう続けたのだった。

「でもね。わたしが元気のない顔をすると、すぐ母様が悲しそうな顔になるの
。ううん、母様だけじゃない。いつも私を気遣ってくれている周りの皆もすぐ心配そうな顔になるの。
だからわたし、頑張らないと。」  

 まるで、自身に言い聞かせるように、そう言うローラインだったが、しかしいつもの屈託のない
明るい笑顔は消え、小さく頼りなさそうに身体が小刻みに震えているのを、カサレス王子は
気づいたのだった。

「ローライン・・?」
ローラインの名を呼んで、カサレス王子がじっとローラインの事を見つめると、ローラインは
それまでずっと、一人で秘めていた悲しい感情を抑えきれず、その汚れのない美しい瞳からは
、大きな涙の粒が押し溢れてきたのだった。

「カサレス王子・・。どうしよう?もし、わたしまで失敗したら・・、母様、死んじゃうかもしれない・・。
そんなことになったら、わたし・・・。」

 ローラインはきっと、キュリアスの成人の儀式の失敗の後、ずっと悲しい思いに耐えてきた
母の姿を見て、幼いながらもこの母の事を思い、常に明るく振る舞ってきたのであろう。

 そして、周りの人々の優しい気遣いに、きっと自身の悲しみを少しでも、見せる事が出来なくなって
いったのだろう。

 明日の成人の儀式を前に、ようやくローラインは、自身の胸にずっと押し隠していた悲しみと、
対面したのだった。
 そしてカサレス王子の前で、ずっと心の奥底に眠っていた、自身の不安な思いを、打ち明ける事が
出来たのだった。

 そんな、初めて見せるローラインの不安げな姿に、カサレス王子は遠い日の自身の心細さを
なだめるかのように、ローラインを無意識のうちにゆっくりと抱きしめると、彼女の濡れた頬に
柔らかくキスをしたのだった。

 ローラインは、空の王子の身分のカサレス王子に、自分がキスをされた事に驚いて、
顔をあげたのだった。
 そんな動きを止めたローラインの頬を、そのまま王子は両手で包み込むと、ローラインに
ゆっくりとこう言ったのだった。

「泣かないで、ローライン。僕が、この僕がずっと君の傍に居るから。大丈夫、
君ならできるよ。ローライン。」真っ直ぐに見つめるカサレス王子の瞳の中に、ローラインを
勇気づける確かな思いを受け取ると、ローラインは先程までとは違う、新しい温かな涙を流したのだった。

「カサレス王子・・・。ありがとう。」
ローラインはようやくそう言うと、カサレス王子に笑顔を見せながら、溢れる涙をぬぐったのだった。

 その日の夜、カサレス王子はローラインの事が気になり、いつまでも眠りにつけないでいたのだった。
そして、そんな落ち着かない王子の波動にまだ幼いリティシア姫は、何を思ったのか、
「にいちゃまの所にいくの・・。」と言うと、無理やり従者にせがんで、王子の部屋に連れて行って
もらったのだった。

 そうしてカサレス王子は、真夜中に自身の部屋のドアをノックするこの予期せぬ、小さな来訪者に
驚いたのだったが、困ったような顔をしている従者から姫を受け取ると、そのまま王子のベッドに
連れて行ったのだった。

 そして小さなリティシア姫をそっと優しくベッドに置いて、その隣で横になり肘をつきながら
姫の顔を覗き込むと、「どうしたんだい?リティシア姫。」と優しく聞いたのだった。

 そんな兄の問いかけに、幼いリティシア姫は立ち上がると
、「にいちゃま、しんぱいしないで。いい子いい子。」と言いながら、兄の頭を優しく撫でたのだった。
まだ本当に小さなリティシア姫に、慰められるように頭を撫でられて、カサレス王子は、
最初は驚いのだったが、それから静かにほほ笑んだのだった。

 リティシア姫の優しい小さな手の感触に、カサレス王子はスーッと気持ちが穏やかになると、
それまではただただ心配に思っていたローラインの事を、強く信じる気持ちに変化させていったのだった。

 こうして、いつもの落ち着きを取り戻した兄の優しい気配にホッとしたのか、リティシア姫は
それからすぐに、兄の隣に寝転ぶと、王子の隣で幼い寝息を立て始めたリティシア姫なのであった。

 そんなあどけない姫を穏やかに見つめながら、カサレス王子は翼で姫を優しく抱くと、
自身の胸にこう言い聞かせたのだった。
「ありがとう、リティシア姫。そして、君を信じるよ。ローライン。」

 ローラインはその日、朝からずっと、緊張していたのであった。
そして、心配そうに覗き込む母と周りの人々の手伝いをすべて断り、一人第一の島の「癒しの浴室」へと
車輪を回しながら向かったのだった。

 ローラインが「癒しの浴室」の前に着くと、そこに今まで見た事の無い、真っ黒な衣を身にまとった男が、
ローラインを静かに出迎えていたのだった。

「ようこそいらっしゃいました。さあ、どうぞ中へ。」
男はそう言うと、ローラインを浴室内に招いた。
「こんな人、今までこの浴室にいたかしら?」ローラインは不思議に思ったのだったが、
すぐに自身の成人の儀式の事に気を向けると、緊張した面持ちで湯船に浸かったのだった。






a0073000_1330381.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-08 13:31 | ファンタジー小説

THE SIX ELEMENTS STORY No33








THE SIX ELEMENTS STORY





No33




                                         著 水望月 飛翔



 キュリアスには、年の離れた妹が一人。
彼女の名前は、ローライン・グリュスター。

 彼女は幼いながらも、とても美しい歌声とホワイトゴールドの絹糸の様な美しい髪を持ち、
また彼女のほほ笑みは周りの人々や、いやそれどころか天空の冷たく輝く星達でさえ、
その冷たい色を温かい色へと変えるほどの、愛らしさを持つ少女なのであった。

 キュリアスは、この幼い妹をそれはそれは大事に思っていた。
そして、ローラインの歌声を聴くことが、キュリアスにとっては何よりも幸せな時なのであった。

 キュリアスはいつも、目を瞑ってローラインの愛らしい歌声に耳を傾けていたのだったが、
キュリアスにとってはこの時が、いつまでも溶けない魔法であって欲しいと、何度願った事であろう・・・。

 しかしそんな思いとは裏腹に、歌の終わりとともに再び目を開けたキュリアスの視線の先には、
愛らしいローラインの笑顔と、彼女にはとても似つかわしくない、まるで干からびた枯れ枝の様な
二本の脚が、菫色の衣服の端から寂しくのぞいて見えたのだった。

 歌が終り目を開けた時、キュリアスはその脚に意識がいかないよう、すぐ視線をそらすのだったが、
横を向く時の悲しそうな瞳の色をローラインのきれいな瞳は見過ごさなかったのだった。

 そんな、悲しそうな目をする兄にローラインは、わざと少し怒ったように頬を膨らませると、
兄に向かって「兄さま、またそんな泣きそうな顔をして。私はちっとも悲しくなんかないのに。
兄さまはそんなに私の脚がおキライ?」と、無邪気に聞いたのだった。

 そんな時キュリアスは、自分よりずっと幼い妹にそう言われて、いつも慌てて
「ごめんローライン。僕もけっして君の脚が嫌いじゃないよ。ただ、ちょっとだけ、悲しくなっちゃったんだ。
ごめんよ、ローライン。」と、急いで幼い妹に謝るのだった。

 しかし、そんな済まなそうに謝る兄に向かって、ローラインは少しおどけながら、
「兄様、私は大丈夫よ。今はまだあまり外にでられないけど、でももう少し大きくなったら
私の翼だって、もっと大きくなるでしょ?そうしたら私、自由に飛んでどこへでも行っちゃうわ。
私の方が兄様よりずっと軽いから、きっと私に追いつかないわよ。」と、楽しそうに屈託なく笑うのだった。

 ローラインのそんな無邪気な姿を見て、キュリアスは必死で笑顔を作りながらも、しかし心の中では
また、新たな悲しみが湧き起ってくるのであった。

(ローライン。君の翼は君のその華奢で小さな身体と同じ様に、同い年の子供達と比べ物に
ならないくらい小さい。羽の一本一本も生気がなくみすぼらしくて。きっと君の翼も君の脚と同様に、
君の身体を自由に何処かに連れて行ってくれることは無いだろう。)と、心の中で一人さびしく
思ったのだった。

 そう、ローラインの羽はみすぼらしく、弱々しく、力のない羽は、同じ年の頃の子供たちと違って、
未だにぎこちない羽ばたきしかできないのであった。

 しかし、自身の兄がこの様な悲しい思いを持っていようとも、ローラインはいつも明るく、
「私はきっと、いつか自由に何処へでも飛んで行けるし、きっとたくさん幸せになるんだわ。」
と、一人夢を見る様に疑いなどみじんもなく、常にそう思っていたのであった。

 そしてまた、そんな前向きな気持ちをいつも胸に抱いているローラインの事を、周りの空の人々は
本当に大事に、慈しんでくれていたのだった。

 いつも咳き込むローラインは、あまり外に出られない為、ローラインの事を気遣って、いろいろな物を
持ってきてくれたり、大切にしてくれる人々の優しさと、ローラインの嬉しそうに笑う姿を見て、
キュリアスはいつしかもっと、人々の役に立ちたいと思う様になっていった。

 そしてキュリアスが14歳のとき、カサレス王子の世話係として、新しい従者を向かい入れる
御触れが領土中に出されると、キュリアスは第二の島から無謀にも、その試験に挑んだのだ。

 王の前に集まった者たちは、第三、第四の島だけでなく、城に仕える執政や学者の子息が居並ぶ中、
キュリアスは見事、空の王のお眼鏡にとまり、カサレス王子に仕えたのだった。

 厳格なる空の王がなぜ?キュリアスを選んだのだろうか・・・?

家柄や形式を大事に考えていた空の王ではあったが、人々の本質を見抜く力は誰よりもあり、
様々な試験を通してキュリアスの心の強さ、美しさを見抜くと、前例のない大抜擢をしたのであった。

 そうしてカサレス王子の元で、城に詰めるようになっていったキュリアスは、各領土から集まった
「聖なる騎士団」の長老たちの話を身近に聞く事により、彼らに憧れ、16歳の成人の儀式に
「どんな病をも治す力」を自身の石に願い、その力と共に、ローラインの病を治すだけでなく、
全領土の人々をも治す為、「聖なる騎士団」に入るという夢を、いつしか強く持っていったのだった。
 
 そんなキュリアスの石宿しが失敗してから、どれ程の時が経っただろう?
カサレス王子は、その日もこっそりと空の城を抜け出すと、キュリアスの釦を見つけたあの礼拝堂へと、
一人向かったのだった。

 カサレス王子はずっと、長年ある疑問を抱えていた。
それは、「どんな病をも治す力」を願ったキュリアスが何故失敗したのか?
何故、その様な崇高な願いを石が受け入れなかったのか?
 正しき心が挫かれる。はたしてそんな事があっていいのであろうか?
この美しい空の領土で、こんな悲しい事が、はたして起こっていいのだろうか・・?と、カサレス王子は
何度も自分の胸に問い続けたのだった。

 そう、残念ながらごく稀に、石宿しを失敗してしまう者は、この空の領土にもほかの領土でも
存在したのであった。そうして失敗した者は皆一様に、人知れぬまま、まるで霧が消え入るように、
そっと領内から消えていってしまったのだった。

 いったい彼らは何処にいってしまったのだろう?
その問いの答えは、まだ誰も、一向に得られないままなのであった。

 第二の島のひっそりとした丘に着くとカサレス王子は、今はもう、その姿を見せない友に
こう呟いたのだった。
「キュリアス・・。今年もここに来たよ。」

 王子はそう言うと、ゆっくりと目を閉じて腕を広げると、自身の周りを流れる風に、そのまま静かに
身を任せたのだった。

 そうしてしばらくの間、風の流れに耳を済ませて静かに佇む王子の頬に、いつしか一粒の涙が
伝って来た時、どこからか遠く、聞きなれぬ美しい歌声が王子の耳に届いたのだった。 

 カサレス王子の耳元に、小さく、しかし澄んだ歌声が届くと、王子は目を瞑ったまま、その歌声が
近づいてくるのを聞いたのだった。

 しかし、その美しい歌声が徐々に近づくにつれ、「ギシッ、ギシッ。」という耳障りな、何かが
こすれる様な音も一緒に近づいてきたのだった。

 カサレス王子は、(この音はいったいなんだろう・・・?)と思って聞いていたのだったが
、しばらくして涙をぬぐいながら、その歌声の方に振り向くと、まだ少し先の方から、何やら見慣れぬ
車輪の付いた動く椅子に座った少女が、王子の方に近づいてくる姿を目にしたのだった。

 その少女は、自分の方に振り返って、動きを止めてこちらを見ている王子の姿を見つけると、
王子の翼の隙間からこぼれる陽の光の眩しさと、神々しさに一瞬、「天使?」と小さくつぶやいたのだった。

 そして、車輪を動かしている両の手の動きを止めたのだったが、にっこりとほほ笑むと、
また歌いながら王子の方に近づいてきたのだった。

 王子の傍まで来たローラインは、明るく微笑みながら、「こんにちは。初めてお会いする方ですね。
お年は、私と同じ位かしら・・・?」と、まるで暖かい春の日差しにひばりが喜んで鳴くような、
美しい軽やかな声でカサレス王子に声をかけたのだった。

 王子は、穏やかな気配を持ちながらも、物怖じしない心地よい少女の問いかけに、先程まで
身を預けていた優しい風と、同じような心地よい温かさを感じ、王子もまたほほ笑みながら、
少女に向かってこう答えたのだった。

「こんにちは、初めまして。私はカサレスと言います。今年で12歳になります。
美しい声のひばりさん、あなたのお名前は?」カサレス王子の優しく優雅に滑るような物言いに、
すぐに何かを思い出した様に、少女の顔がパッと明るくなると、すかさず王子にこう聞いたのだった。

「まあ、あなたがカサレス王子ね?私はローライン。ローライン・グリュスター。ずっと前に
キュリアス兄様からあなたの事を聞いていたわ。そう、まだ私がずっと小さかった頃。覚えているわ。
兄様があなたの事をいつも話して聞かせてくれて。いつも本当に楽しそうに教えてくれたのよ。
私、ずっとお会いしたいって思っていたの。」

 そう言うと少女は、少し遠い目をしたのだったが、急に勢いよく話し出したせいか、少女の頬は
最初の頃よりも赤みを増して、瞳もキラキラと輝きだしたのだった。

 しかし次の瞬間、「ゴホッ、ゴホッ。」と激しくせき込むと、苦しそうに背中を丸めたのだった。
するとその拍子に、少女の膝の上に置かれていた布が崩れ落ち、少女の衣服の下から、
枯れ枝の様な脚があらわになったのだった。

 カサレス王子はその脚を見ると驚いて、思わず視線をそらそうと少女の翼の方に目をやったのだった。

 しかし、愛くるしい少女の笑顔に気を取られて、先程まで気づかなかったのだが、とてもこの少女の
笑顔には似つかわしくない、みすぼらしい小さな翼が寂しそうに、今度はしっかりと王子の目に
確認されたのだった。

 空の領土の民達は、あまり健康を害している者はおらず、皆それぞれ一様に美しさを保っていた。
そして、島を一つずつ登るごとにまた、美しさと思慮深さも増していったのだった。

 故に、空の王の城に仕える者達は皆美しく、ましてや身体に何か不便を生じている者を見る事など、
カサレス王子は今まで一度も無かったのであった。

 王子は少女の姿をみとめると、一瞬おどろいたのであったが、しかし、すぐ落ちた布を拾い上げると、
ゆっくりと少女の膝の上に乗せて、咳き込み苦しそうにしている少女の背中を、優しくさすったのだった。

 少女は苦しそうにしながらも、優しく背中をさすってくれている王子の方を見ると短く、「ありがとう。」
と言ったのだった。
 そんな少女に王子はほほ笑むと、「大丈夫。ゆっくり息を吸って。」と言いながら、そのまま少女の
背中をさすり続けたのだった。

(そうか・・・。彼女がキュリアスの妹のローラインか。少しだけ聞いた事があったな。歌が上手で、
髪がとても美しいんだって、キュリアスが嬉しそうに話してくれたな。そうか、彼女だったのか。)

 カサレス王子は、キュリアスが妹のローラインの事を、嬉しそうに話していた時の事を
思い出したのだった。

 そしてローラインも、ずっと自分の背中をさすってくれているカサレス王子の優しさに触れながら、
今は何処に居るやも知れぬ優しい兄の面影を、思い出していたのだった。

(キュリアス兄様。わたし、カサレス王子に会っていますよ。兄様がいつも話してくれていた様に
本当に心優しい、美しい方ね。)
 ローラインは、自身の心の中に描き出した、優しくほほ笑む兄の姿に向かって、そんな事を
話しかけていたのだった。

 そしてカサレス王子もまた、自身が描き出したキュリアスにこう話しかけていたのだった。
(キュリアス・・・。今、僕は君の大切な妹に会っているよ。彼女の美しい歌声と愛らしさは、
本当に君の言う通りだね。)

 こうしたカサレス王子の言葉に、うれしそうににっこりと頷くキュリアスの姿だったのだが、
やがて、悲しい雨に打たれたかの様に、愁いを秘めた悲しげな表情を見せると、ゆっくりと王子に
背を向けて、静かに離れていったのだった。





a0073000_9493097.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-04 09:51 | ファンタジー小説