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THE SIX ELEMENTS STORY No52



今年の夏から一週間に2作ずつ発表して参りました
THE SIX ELEMENTS STORY
第一巻分がこの章で最終回となります。

今まで読んで下さり、ありがとうございました。

第二巻はどのような形で皆様とお会いできるか解りませんが、
またお会いできる事を楽しみにしています。

水望月 飛翔  (丸子安子) 




THE SIX ELEMENTS STORY





No52



                                    著 水望月 飛翔




 そうして、遠き古の彼らの姿が、静かに消え去ると、ストーは星達との交信に疲れたのか、意識を失って
その場に崩れたのだった。
 そんな彼を心配してミラディアは急いで近づくと、ストーの身体を支えながら、カサレス王子を真っ直ぐに
見つめたのだった。

 そんなミラディアの、真っ直ぐな瞳を受け止めた王子の顔には、今までの悲しみと戸惑いの色はもうすでに
なく、カサレス王子はミラディアに優しく頷くと、その瞳は目の前の仲間を真っ直ぐに見つめたのだった。

「みんな。どうか聞いてほしい。僕は今日、自身の成人の儀式でこの左手に我が石を宿した。その石の力は
「あらゆるものを変える力」というもの。この力の中には、これから僕が目指そうとする新たな世界を創る鍵が
入っている。でもこの力に込められている意味を、今は他の者に知られたくはないんだ。父王は僕が手の
位置に石を宿したことに、落胆している。いや父王だけではない。この空の城に仕える者達の多くは、
この力の意味を知らず、少なからずも僕に失望しているようだ。その批判の矛先は僕だけに止まらず、
君たちにも向けられるかも知れない。それでも皆は、僕に着いてきてくれるだろうか?」

 王子は、今までの皆との距離を置く様な言葉を使わず、カサレス王子自身の言葉で皆に語り掛けたの
だった。
 そんな王子にフリュースは、身体を震わせながら王子にこう言ったのだった。
「カサレス王子。そんな王子ご自身のお言葉を、私はずっと待っておりました。あなた様は私の光。
私のこの槍で、あなた様の悲しみを払い、あなた様の喜びをきっと捉えてごらんにいれましょう。」
そう言うと、カサレス王子の元に跪いたのだった。

 そんなフリュースに続いて、意識が戻ったストーがミラディアの助けを借りながら王子の前まで進むと、
こう言ったのだった。
「星が選びし主、カサレス王子。どうかあなた様はご自身の思いのままにお進みください。私は、星達の
言葉のとおり、あなた様をお守りいたしましょう。」 

 そう言うストーに続いて、ミラディアも「カサレス王子。わたくしは未だ、あなた様のお力には何も
なれませんが、わたくしは、この空の執政に尽くし、あなた様がご自分の道を進まれる様、心を尽くしますわ。」
そう言って、カサレス王子の目を見つめたのだった。

 こうして次々に王子の足元に進むと、それぞれ自身の決意を誓い、跪いたのだった。そんな彼らを信頼の
瞳で見つめるカサレス王子。

 それを後ろから見ていたラフェールは、ゆっくりとカサレス王子とローラインの元に行くと、天を見上げながら
こう言ったのだった。
「どうでしょう、カサレス王子。そろそろ例のものをローライン様にお渡ししては?」と言うと、にっこりと王子に
ほほ笑んだのだった。

 そんなラフェールをローラインは見つめると、はにかんだ笑みを見せたのだった。
そんな二人にカサレス王子と他の者達は、なんのことかサッパリ解らずに、顔を見合わせたのだった。

「どうしたんだい?ローライン。」
カサレス王子が不思議そうに聞くと、ローラインは少し困って、またラフェールの顔を見たのだった。

 そんなローラインを後押しするように、ラフェールはゆっくり頷くと、ローラインはカサレス王子の顔を
見つめて、こう言ったのだった。

「カサレス王子、あのね。なにか、私に渡そうとしている物が、あるのではなくて?」
ローラインは、先程とは違う少し神妙な面持ちで、カサレス王子にこう聞いたのだった。

 思いもよらないローラインのそんな言葉に、カサレス王子は驚いたのだったが、先程から目で話している、
ローラインとラフェールの顔を見て、カサレス王子は観念したようにこう言ったのだった。

「ローライン、ラフェール。天の父と話せる君達二人には、残念ながらとうに僕の思いはお見通しのようだね。」
そう言うとカサレス王子は、改めてローラインの瞳を見つめてこう言ったのだった。

「ローライン。僕は君に受け取ってもらいたい物があるんだ。」
そう言いながらカサレス王子はローブの内側から、一本のピンクホワイトの羽を出したのだった。
それからまた続けて、ローラインにこう言ったのだった。

「ローライン。これは、ある方からいただいた大事なもの。今日、僕が宿した石の力「あらゆるものを変える力」
を使って、この羽と同じ色の翼を君にあげたいんだ。」と、カサレス王子はローラインに言ったのだった。

 ローラインは王子が手に持つ羽を見つめると、「まあ、きれい。とっても好きな色の羽だわ。うれしい。」
と言うと、また王子の顔を見て、「ありがとう、カサレス王子。私、喜んで受け取るわ。」と瞳をキラキラさせて
答えたのだった。

 そんなローラインの返事を、カサレス王子はうれしく聞いたのだった。
それから、ローラインと皆を見渡して、王子はこう言ったのだった。

「ローライン、皆。どうか聞いてほしい。しかし僕は、今すぐローラインの羽をすべて変える事は避けたいと
思う。もしローラインの翼をすぐに全て変えてしまったら、この自然界にそぐわぬ変化をきっと周りの者が
いぶかるだろう。そして、その様な変化をした者を疑う事であろう。だから、僕はローラインの羽を時間を
かけて、少しずつ変化するようにしたいと思っている。」

 それから、ローラインの方をもう一度見つめるとカサレス王子は、「ローライン。君の羽がすべてこの
ピンクホワイトの羽に変わるには、10年の時を掛けようと思う。君はそれまで、待ってくれるかい?
そして、他の人に決してこの事を話さないでほしい。ローライン、そうしてくれるかい?」王子はローラインの
瞳を覗き込むように、こう聞いたのだった。 

 そんな王子の問いに、ローラインは微笑みを持って答えたのだった。
「ええ、カサレス王子。私、待つわ。そして私は、決してこの事を誰にも言わないわ。それは、これから
あなたがやろうとしている事の、足掛かりになる事なのですものね?」
そう言って王子にほほ笑んだのだった。
 
 カサレス王子は、ローラインのその言葉に驚いたのだった。
「ローライン。君は知っていたの?」と聞くと、ローラインはまたしてもラフェールの方を見て、
ほほ笑んだのだった。

 王子もラフェールの顔を見ると、ラフェールはカサレス王子の瞳を見つめ、静かに頭を下げたのだった。

 そんな二人に、カサレス王子は少し苦笑をしたのだったが、また真剣な眼差しに戻ると、皆に
こう言ったのだった。

「みんな、これからの長きに渡る秘密を、どうかこの僕と一緒に共有してほしい。それと・・・。」
少し言葉に詰まったカサレス王子だったが、意を決したようにローラインを見つめると、こう言ったのだった。

「ローライン。10年後の今日、君の羽がすべてこのピンクホワイトの色に変わったら、どうか僕の妻に
なってほしい。」

 ローラインは、王子の言葉に驚いた。
まさか、カサレス王子がその様に、自分を見てくれたなんて、ローラインはこの時まで、本当に思いも
よらなかったのだった。
いや、そんな希望を持つことは恐れ多い事だと、自分に言い聞かせていたのだった。
「カサレス王子・・・。」

 カサレス王子は、王子の言葉に驚いて、動けないでいるローラインの返事を待たずに、この仲間たちの
方を向いてこう言ったのだった。
「そして、僕は君達にこの約束の証言者にもなってほしいんだ。」そう言ったのだった。

 そして、「どうかな?」とローラインと皆に聞くカサレス王子の問いに、この仲間たちは、心底喜びを
かみしめたのだった。

「もちろんですとも、カサレス王子。」フリュースは、王子からの大きな秘密の共有と、王子の大事な証人と
なれた自分に、本当に喜んだのだった。

 ミラディアも、この王子の申し出を、悲しみよりも喜びを大きくさせて頷いたのだった。 

そして、そんな喜びに満ちている者達を少し離れた所から、控えて見ていたアーキレイに、カサレス王子は
顔を向けるとこう言ったのだった。

「もちろん、君もだよ、アーキレイ。」
と、カサレス王子がアーキレイに言うと、アーキレイをじっと見つめたのだった。

「君はただの従者じゃない、アーキレイ。僕にとって君はとても大事な存在なんだ。今までも、そして、
これからも。」アーキレイを真っ直ぐに見つめるカサレス王子。
 続けて王子は「アーキレイ、フリュース。二人には右のアーキレイ、左のフリュースとして、これから二人で
僕の両翼となってほしい。そして、僕の進むべき道を二人で切り開いてほしい。」
そう言うと、カサレス王子はアーキレイとフリュースに信頼の瞳を注いだのだった。

 アーキレイはカサレス王子の心を思い、自身の思いとは裏腹に、ずっと遠慮がちにしてきた自身を、
王子が認めてくれていた事がうれしく、静かに熱い涙を流しながら、フリュースの隣に進み、跪いたのだった。

 そんなアーキレイにフリュースは、自身と共に両翼となって王子を守る同志の肩に手を置くと、力強く頷いて
見せたのだった。

 それから、ゆっくりと一人一人の顔を見つめるとカサレス王子は、「ストーには、古からの星の言葉を常に
聞き届けてほしい。そして、その言葉と共に僕の道しるべとなってくれ。」とストーに言うと、今度はゆっくりと
ミラディアを見つめたのだった。

「それからミラディア。君には常に僕の王としての振舞と、王としての進むべき道を君の清らかな瞳で
見極めてほしい。」

 そんなカサレス王子の言葉に、ストーもミラディアも喜びで身体を震わせながら、この時を噛みしめたの
だった。それから王子はラフェールとローラインの顔を交互に見て、こう言ったのだった。

「それから、ラフェール、ローライン。二人には・・・。」と言う王子の言葉を遮るようにラフェールは、
「ご心配なく、カサレス王子。天の光は常にあなたに降り注いでおります。天上の祝福も、女神からの
贈り物も、すぐにあなた様にお届けいたしましょう。そうでしょ?ローライン様。」

そう言って、ローラインににっこりほほ笑んだのだった。
 ラフェールからの言葉を受けて、ローラインはラフェールを見つめて頷くと、カサレス王子の方に向きなおり、
「ええ、カサレス王子。全ての祝福をあなたに届けましょう。私の持つすべての愛とともに。」
と言って、王子にほほ笑んだのだった。

 それから王子を見つめると、ローラインは、「カサレス王子。私・・・、ずっとあなたのお傍に居ていいのね?」
と聞いたのだった。

 ローラインの瞳から一筋の涙がこぼれた。その涙を優しくぬぐう王子。
ローラインの問いにカサレス王子は、しっかりと頷くと、それからローラインと王子は心の中で、同時に
同じ言葉を同じ人に伝えたのだった。

(キュリアス・・・。兄様・・。私達はずっと、これからも共に生きていきます・・・。)と。
 すると、優しい風が二人の頬をなで、星達が煌めいたのだった。

 それから王子は、一つ息を整えると、皆にこう宣言をしたのだった。
「それでは、これからローラインに新たなる羽を授ける。ローライン、準備はいいかい?」と聞く王子に
ローラインは、「ええ、カサレス王子。」と短く言うと、フリュースとアーキレイの二人はローラインを
抱きかかえ、王子の前に跪いたのだった。

 他の者は、静かに少しずつ後ろに控えると、ローラインは目を瞑り、カサレス王子にゆっくりと頭を下げた
のだった。

 カサレス王子は、左手に宿る自身の石を見つめると、大きく言葉を放ったのだった。
「我に宿りしサファイアよ。今そなたに命ずる。己の「あらゆるものを変える力」を持って、我の願いに応えよ。
この者、ローライン・グリュスターの羽を我の手に持つ羽と同じにならしめよ。これから10年の時を持って。」
と言って、左手の石に呼びかけたのだった。

 そしてゆっくりと右手に持つ羽を引き合せる様に、そのまま合掌したのだった。それから静かに両手を広げると、
「フーッ。」と静かに息を吹きかけ、ローラインの翼にピンクホワイトの羽を飛ばしたのだった。

 そうして、ローラインの翼の上にその羽が落ちると、スーッと消えていき、やがて、一枚ローラインの灰色の
羽が落ちると、そこからピンクホワイトの羽が一枚生えてきたのだった

 そんな奇跡の光景を、ただ今宵の星々のみが、静かに、優しく見守っていたのだった。




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by maarenca | 2014-12-10 17:32 | ファンタジー小説