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THE SIX ELEMENTS STORY No51






THE SIX ELEMENTS STORY




No51





                                         著 水望月 飛翔





冷たい星空。冷たい風。
今ひっそりと、カサレス王子はまるでこの世に自分一人しか存在していないような、孤独を感じていたの
だった。

 そして、冷たい、本当に冷たい空の色にカサレス王子は、ただローラインに会いたい、そして王子の元に
集まってくれたみんなに会いたいと思ったのだった。「ローライン・・・。」カサレス王子が小さく口の中で、
ローラインの名を呼んだその時であった。

 塔のだいぶ下の方から、王子を呼ぶ声が聞こえたのだった。
「・・・王子。カサレス王子。」
カサレス王子は、その声のする方を見ると、いま会いたいと思っていたローラインが、アーキレイに抱かれ
ながら、王子の元に飛んでくる姿を見つけたのだった。

 カサレス王子は驚いて、二人を見つめた。
「ローライン、アーキレイ。どうしたんですか?二人とも。」二人に向かって驚きながらカサレス王子は
こう言った。
 王子に聞かれてアーキレイは「すみません、王子。」と口ごもったのだった。が、そんなアーキレイを
よそにローラインは、王子に笑顔を向けながら、「あら、だって王子は私達に会いたかったんでしょ?」
と言ってほほ笑んだのだった。
 カサレス王子は、自身の今しがたの思いをローラインに見透かされたかと思い、ローラインをじっと
見つめた。

 するとローラインは、小さく肩を上げながら、王子にこう言ったのだった。
「ううん違うの、ごめんなさい。私がどうしても、王子に会いたかったの。」と言うと、カサレス王子を真っ直ぐに
見つめたのだった。

 カサレス王子はしばらくして、穏やかにローラインにほほ笑むと、ゆっくりとローラインを引き寄せ、王子の
膝の上に抱いたのだった。ローラインはカサレス王子の左手をゆっくりと取ると、「きれいね。王子の輝き。
王の中の王、ロワイヤル・ブルーのサファイアね。どんなものでもその色の中に穏やかに包み込む。
この輝きはあなたそのものだわ。」

 そう言うと、ローラインはカサレス王子の左手に自身の右手を添えたのだった。
すると、二人の石が共鳴して、先程までの冷たい夜空を、温かく喜びに満ちた星の輝きに、着替えさせた
のだった。
 先程まで、あんなに寒々として、冷たく悲しみの音を奏でていた星達が、瞬く間に祝福と歓喜の色を
見せると、王の城の中庭に密かに集まっていたカサレス王子の仲間たちが、驚きながらその夜空を見上げた
のだった。

 彼らは、今日のカサレス王子の成人の祝いの席に呼ばれる事を信じ、じっと待っていたのであった。
しかし城の従者から、今日呼ばれることは無いと冷たく言われ、がっかりしながら、それでも己の部屋に
戻る気にならず、みな中庭に残っていたのだった。

「なあ、カサレス王子の成人の儀式は、うまくいったのだろう?カサレス王子は、本当に我らを呼び戻しては
くれないのだろうか?」
フリュースは明らかに、気落ちしていたのだった。

 その隣で、先程からずっと目を閉じて、風の詩を聞いていたラフェールはゆっくりと目を開けると、フリュース
の方を見てこう言ったのだった。

「そうですね。どうやら今宵は王子に近づくことは難しそうです。風たちが大人たちの気配に悲しんで
おります。」と言ったのだった。

 それを聞いたストーが、「どうしてですか?カサレス王子の石宿しは成功したのでしょう?」と言うと、
答えを求める様に、冷たい星々をじっと見つめたのだった。

 ラフェールはまた新たに風の声を聞くと、神妙な面持ちでこう告げたのだった。
「やはり、カサレス王子には、強く秘めたある思いがあるようです。しかし、それを周りの大人たちは
全く理解をしていない。ふーん、そうですか。カサレス王子は、どうも一人で悲しい道を進むことを選んだ
ようですね。」そう言うと、周りのみんなを見回したのだった。

 そんなラフェールの言葉をきいて、「そんな。カサレス王子。わたくし達では王子の力にはなれないの
ですか?」と、ミラディアは今にも泣きだしそうに、そう言ったのだった。

その時であった・・・。

一番高い塔から、温かな光が溢れだすと、それまで一面に覆いかぶさっていた悲しい色の星々を、
次々と喜びの色に変えていったのであった。

 一同は顔を見合せ頷くと、すぐにその塔の方へ向かい、飛び立ったのだった。

そして、塔の一番高い所まで来ると、一同はそこにカサレス王子と、王子に抱かれたローライン、そして
アーキレイの姿を見つけたのだった。

 こうして、勢い込んで姿を現した一同の姿に驚いて、「これは、いったいどうしましたか?皆さん。」
と、カサレス王子は皆の顔を見つめて、こう言ったのだった。

 一同は、そこにまさかカサレス王子が居ようとは思わずに、この思いもかけない対面に、驚いて言葉を
失ったのだった。

 そして、今まで会った事もない、小さくみすぼらしい翼の少女の存在にも、驚きを隠せないでいたのだった。
 しかしそんな均衡を破って、ローラインは嬉しそうに、「まあ、どうしたのか?はないでしょう、カサレス王子。
皆様が王子を祝福しに来てくれたというのに。」とほほ笑みながら言うと、カサレス王子は戸惑ったような顔を
して、皆にこう言ったのだった。

「すみません、皆様。私は、たぶん皆様の期待には、添えられないと思うのです。」
そう言うと、カサレス王子はそのまま押し黙ったのだった。 

 しかしそんな王子に、フリュースはとうとう号を煮やした様に、強く王子にこう言ったのだった。
「カサレス王子。どうして、我らの事を真っ直ぐに見てくれないのです。我らは、そんなにあなたにとって
信用できない存在なのですか?」フリュースの語気を強めた言葉にカサレス王子は、一瞬目の前の
フリュースにキュリアスの顔が重なって見えたのだった。

 今まで押し黙っていたアーキレイもフリュースに続いてこう言ったのだった。
「カサレス王子、私では何も王子のお役に立つことができないかもしれません。でも私は、王子のお役に
立ちたい。どうか、お傍に置いてください。いいえ、私は一生、王子のお傍を離れたくはありません。」

(フリュース、アーキレイ・・・。)
王子は心の中で呟くと、キュリアスの面影は消えて、王子の目の前にははっきりと、カサレス王子を
真っ直ぐに見つめる、フリュースとアーキレイの顔を見とめたのだった。

 それから王子はゆっくりと、そこに集まっている一人一人の顔を改めて、見つめたのだった。
そんなカサレス王子を、ローラインはただ微笑みを持って、静かに見つめたのだった。
(何故だろう?彼らはきっと、最初からずっと僕の事を、この様に真っ直ぐに見ていてくれていたのだろう。
しかし、今まで僕はちゃんと彼らの目を、見た事などなかった様な気がする。)そう思うと、
(すまない、みんな。)と心の中で皆に謝ったのだった。

 そしてカサレス王子は、今まで一人で描いていた悲しい未来を捨てて、新たな希望の未来を、
王子自ら選んだのだった。

(キュリアス。僕は一人ではないんだね。)
王子は一度目を瞑ると、胸の中でキュリアスにこう話しかけたのだった。
 王子の心の中に現れたキュリアスも、嬉しそうにカサレス王子を見つめると、それからゆっくりと頷いた
のだった。

 そして王子はゆっくりと目を開け、もう一度みんなを優しく見つめると、そんな王子にラフェール・イシレーは
にっこりとほほ笑み、こう言ったのだった。

「おかえりなさいませ、我らが主、カサレス王子。ここに集いし我々は、みなあなた様に付き従いたく集いし者。
今は何も王子の心の内を明かされなくとも、いつまでも王子に付き従いまする。」とカサレス王子の目を
真っ直ぐに見つめ、こう言ったのだった。カサレス王子はこの友人を信頼の目で見つめた。

 しかしラフェールは、風達が運んできた知らせに耳を傾けると、急いで一同にこう言ったのだった。
「下の大人たちが何やら騒いでおりまする。お二方、どうぞお力を。」と言うと、アーキレイとフリュースの方を
見たのだった。

 二人は顔を見合わせ頷くと、アーキレイは自身の右肩に宿る「均衡を守りし力」を持って、この塔に居る
者達の気配を消したのだった。

「我の右肩に宿りし「均衡を守りし力」よ。我の願いに応えよ。今すぐその力をもって、われらの気配を
消し去りたまえ。」アーキレイの石の力が発動するのを見届けると、フリュースは自身の左肩に宿る
「何ものをも越えし者」の力を開放して、下の世界とこの塔の空間を分断したのであった。
「我の左肩に宿りし「何ものをも越えし者」の力よ。今こそ我の願いに応えよ。我らの世界と下の世界を
切り離し、新たなる時空を我らに与えよ。」

 それまで王の城では、塔の上で何かが起こっている気配に気づき、人々が集まりだしていたのだったが、
こうして塔の気配が分断されると、何事もなかったようにまた静まり返ったのだった。 

 アーキレイとフリュースは顔を見合わせると、新たな友情を互いの瞳に注いだのだった。
そして、下の気配の静けさを確認すると、ストーは自身の右眼に宿った「星の意思を読みし力」を使い、
古の星達の言葉を引き出すために、天空の星たちに自身の意識を集中したのだった。

「我の右目に宿りし「星の意思を読みし力」よ。どうか我らが主に、古の星々の言葉を与えたまえ。
そして我が主の道が栄光に輝くために、その道を指し示したまえ。」

 すると、ストーの意識が古き時代の星たちと結びつき、その時代の意識をもらい受け、ストーは遠く
古代の空の言葉を話し始めたのであった。

 そんなストーの姿をみて、ラフェールはカサレス王子に振り返り、こう言ったのであった。
「カサレス王子。我らはすでにあなた様に付き従うと心に決めた者。貴方様のその固いご決意を持って、
古くはこの空の領土の創世の王と同じく、どうぞ我らにその、意志をお示しください。」

 そうして、その比類のない美しい瞳で、カサレス王子を真っ直ぐに見つめたのだった。
それからラフェールは、ストーの話す古代の言葉を訳して、皆に話したのだった。
「我ら創世の王と共に付き従いし者。この殺戮と争いに終止符を打つべく、この厳戒なる領土に我等だけの
領土を新たに創りし給う。天空の星々よ。今宵我らの声を聞き届けよ。我らの誓いを。我らの王の意志と
共に。」
そう言うと、今宵の夜空に創世の王とその前に跪く者達の姿が、ゆっくりと写しだされたのだった。

「王よ。これからどの様な事があっても、我らはあなた様のご決断に付き従いまする。どうぞ、我らをお信じ下さりませ。」
王の前には多くの者が跪いて、王の言葉を待ったのだった。
彼らの熱く見つめるその視線を受けて、創世の王は、その重たい口をようやく開くと、目の前の者達に
こう告げたのだった。

「そなた達・・・。私は、ずっとこの世界の争いを鎮めようと今まで手を尽くしてきたのだが。
しかし、この惑星の荒廃を私はもう見てはおれぬ。それぞれの部族の考えが違うからといって、もうこれ以上
この星の、そして人々の破壊と殺戮を許すことはできぬのじゃ。どうか、私に付き従って着いてきてほしい。
そして、我らだけの理想の世界を創りあげる為に、そなた達の力を貸してほしい。」

 創世の王が皆にそう言うと、その者達は声を同じくして、「誓いまする。この空に。この天に。いかなる時も
王に付き従い、王をお守りする事を。」と言って、この夜空に誓い合ったのであった。




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by maarenca | 2014-12-06 14:15 | ファンタジー小説