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THE SIXELEMENTS STORY No41







THE SIX ELEMEMTS STORY




No41



                                      著 水望月 飛翔




 そんな彼らの後姿を見送ると、王妃とリティシア姫は静かに城の中に戻っていったのだった。
その場に取り残されたカサレス王子は一人、先ほどローラインに囁かれた言葉を、何度も心の中で 
繰り返しながら、その場に立ち尽くしていたのだった。

(キュリアスは無事でいる・・・。)

王子は、長年ずっと心配していたキュリアスが、何処かで無事でいる事をローラインから知らされて、
一人友の無事に喜びを巡らせていたのだった。

 そして一方、アーキレイ達はローラインを無事に第二の島のローラインの家に送り届けたのだった。

「ありがとうございます。アーキレイ様。皆様。」自身の車輪の付いた椅子に腰を降ろすと、
そうお礼を言うローラインに無言で会釈を返したアーキレイは、じっとローラインの顔を見つめたのだった。

 そんなアーキレイにローラインは不思議に思い、「どうかされました?アーキレイ様?」と聞いた。
そう聞かれたアーキレイは、静かな微笑みをローラインに向けると「いいえ、なんでもありませぬ。
ローライン様。今宵はお疲れでしょう。どうぞごゆっくりと、お休みください。」と言うと、
王の城へ戻っていったのだった。

 しかしアーキレイは、王の城へと飛んで帰るさなかに一人、ある事に思いを馳せていたのだった。

(大丈夫だろうか?ミラディア殿は。)
そう、アーキレイは遠くからいつもカサレス王子の姿を見つめている、ミラディアの姿に気づいて
いたのだった。

 ある日、そんな必死なミラディアの姿を目にしてからは、それから王子が東の壁の抜け穴を通る、
あの一瞬の時間をこの少女にあげたいと、アーキレイは王子の脱走に知らぬふりを決めたのだった。

 その一方で、カサレス王子の心のよりどころであるローラインを見て、王子の楽しそうな笑顔と、
あのタリオス王までも心なごます少女の不思議な魅力に触れ、これからの王子の幸せを心から願う自分と、
ミラディアの悲しみとの両方を、自分はどの様に受け止めねばならないのかと、自身の心に問う
アーキレイなのであった。

(カサレス王子は、私に心を赦してくれていない。)
アーキレイがカサレス王子の第一の従者になってから、アーキレイはなんとか王子の心を和らげたいと
いつも思っていたのであったが、カサレス王子は、キュリアスの件がずっと心に響いていたのであろう。
あれからどの様な者が王子に着いても、それからの王子は常に一つ距離を置き、自身の胸の内を誰にも
明かさなくなっていたのであった。

 そうした心の溝を寂しく思う一方でアーキレイは、自身にはきっと王子の心の支えになることは
無理なのだろうと自分に言い聞かせてからは、それからは自身から王子との距離を引いて、
陰ながら王子の心に思いを馳せていたのであった。

(誰でもいい。誰にも見せぬ本当のカサレス王子のお心を、理解してくださる方が現れれば。)
そう常に願うアーキレイなのであった。

 一方その頃、ローラインが部屋から退出した後、王は先に一人王の部屋に戻って考え事をしていたのだった。
(ローラインと申す者。この空の領土の女神、「碧き飛翔の女神」に会うたと言っていたな。女神よ・・・。
そなたがわたしの呼びかけに答えなくなってどれ程の時が経ったであろう?それをあの少女は・・。
しかも、我らの力を集めて、天上界に行ったとは・・。この私でさえ、天上界には行けずに、天のやすらぎを
我が石に授けて貰っただけだというに。)

 自尊心の強いタリオス王は、自身が出来ずに他の者が出来たなどという事にあるいは、
憤慨したやも知れなかったが、しかしローラインの、人をたちまち魅了する不思議な魅力に、
その様な気持ちも起こらずにいる自分の気持ちを、また不思議にも思っていたのであった。

(あの者の不思議な力・・・。それをどう活かすべきであろうか?)
そう一人思案する、タリオス王なのであった。

 その頃、ローラインは今日の出来事のめまぐるしさに、まだ心を落ち着けることができずに、
自身の部屋の窓からずっと、祝福にきらめく星たちに満ちた夜空を飽きずに、ずっと眺めていたのだった。

(天上のお父様。この地の守り神、碧き飛翔のお母様。今日のこの日の喜びを、いったいなんと
言えばいいのでしょう。私はずいぶん長い時を、お二人の所から離れていたというのに。ありがとう。
私は今、とっても幸せです。)

 ローラインは心の中でそうつぶやくと、優しくローラインのほほをなでる風の詩に、そっと耳を
澄ませていたのだった。
                               
 一方カサレス王子は部屋に戻ると、(ローライン・・・。父上も母上も本当に君のことが気に入った
みたいだね。もちろん、リティシアもね。ローライン、僕はそんな君が誇らしいよ。)と、カサレス王子は
そう心に思ったのだった。

 しかし次の瞬間、王子は2年後に控えている、自身の成人の儀式に願う、自身の石の力を
一体どのようなものにするのかを、考えたのだった。

 こうして楽しい時を、王の城でローラインと共に、一緒に過ごしたカサレス王子であったが、
しかし、それから王子はすぐに、ローラインとの密会を王に禁ぜられたのだった。

 そして、2年後に迎えるカサレス王子の成人となる為の心得として、王子はこの空の領土での様々な
儀式や決まり事、またはこの領土を司る為の政策の場に、王と共に列席するよう命じられ、
後継者としての教えを学ばされていくのであった。

 そんな忙しい日々を過ごす様になったカサレス王子であったが、ローラインに全く会えなくなった
わけではなく、ローラインがアーキレイに伴われて、この空の王の城に3か月に一度、王一家と過ごすために
来るよう、タリオス王に言われたのだった。

 もちろんローラインは、喜んでこの申し出を受けると、それからはこの間の3か月を、首を長くして
待っていたのであった。

 そして、そんなローラインのうれしい訪問を、リティシア姫も喜び、カサレスオ王子とローラインと、
リティシア姫だけで過ごす短く楽しい時間を、いつも心待ちにする様になったのだった。

 そんな幼いリティシア姫は、明るく笑うローラインの笑顔に答えるように、やさしく微笑むカサレス王子の
笑顔を見ては、自身も愛らしい笑顔を二人に振りまくのだった。

 しかし、このローラインの訪問に最初、ランダス執政官は難色を示していた。
「お待ちください、我らがタリオス王。第二の島の者をそのように頻繁にこの城にお呼びになるのは、
いかがでありましょうや。第三、第四の者達の手前、そのような個人の贔屓をこの空の領土でなさるとは・・・、
ここまでの崇高なる秩序をお造りいたしました王に、似つかわしいとは思えませぬが?」
そう進言をしたのであった。

 しかし、タリオス王の心中は、また違うところを見ていたのであった。
いつになく、語気を強めて言うこの執政官に王は、静かにこう言ったのだった。

「ランダス執政官よ。そなたの進言、真に意を得ておる事であろう・・・。しかしの、あの者は自身の成人の
儀式で、この空の領土の者の力を味方につけ天上界まで上りし者。それに、我らが領土の守り神、
「碧き飛翔の女神」をも母と呼びし者なれば、そのような者を傍に置くことは、カサレス王子の成人の
儀式に大いに役立つと思うのだが。いかがかな?ランダス執政官。」と言うと、ランダス執政官の顔を
じっと見たのだった。

 王子が第二の島に頻繁に姿を現すことは、あまり良い事ではないが、天上の力を得たローラインを
この城に呼び、彼女の石と接することで、カサレス王子が自身の成人の儀式で、ローラインよりも
もっと上の力を目指し、あるいは王子が宿してくれるのでは、と思うタリオス王なのであった。 

「タリオス王。」
カサレス王子の成人の儀式の事までを考えていたタリオス王の考えに、ランダス執政官は、それ以上、
反論の言葉を口にする事は出来なかったのだった。

 それは、次を担いし王子の石宿しは、この領土の今後を左右する大事な事なれば、たとえ我が
愛する娘の気持ちに応えられずとも、軽々しく優先させることは、この空の領土を司る執政官には
出来ない事なのであった。

 ランダス執政官は、娘の悲しそうな顔を思い浮かべたのだったが、王の顔をまっすぐに見ると、
「分かりました、タリオス王。そのような事にまでお考えがありますれば、これ以上反対する事はございません。
わたくしは、カサレス王子の成人の儀式が立派に果たされれば、何も言う事などございません。」
そう言うと、ランダス執政官は、深々とタリオス王に頭を下げたのだった。

 それからしばらくして、王子の城からの脱走がなくなると、ミラディアは王子の姿を見ることが
出来なくなり最初の頃は気落ちして、深く悲しんだのだった。

 しかし、カサレス王子の教育が始まると同時に、執政官や学者達を筆頭にその子息や優秀な者を
広く集め、王子の側近になる者たちを育てる事が提唱されたのだった。
 そして彼らは時として、カサレス王子と同じ席にいることを許され、王子と共に教育を受け、
王子と共に成長していったのであった。

 それを提唱したのはランダス執政官であった。
ランダス執政官は、他の者にあまり感情を見せないカサレス王子に、同じ位の若い者と
一緒に過ごさせる事で、新たに信頼の置ける者を見い出してもらえれば、王子の王としての成長を
助けることが出来るのでは?という思いと、もう一つ。

 我が娘ミラディアにも、王子に対するチャンスを与えてやれるのでは・・?という親心もあったのだった。
 そう、ミラディアは心優しいだけではなく、学ぶ事に深く傾倒しており、知識の探求に熱意を持っていたので
あった。故に、王子への思いだけではなく、カサレス王子の補佐をしていく人材として、ミラディアは
誰もが認めうるものを備えていたのであった。

 父からのこの計画を聞いたミラディアはたいそう喜び、父にこう宣言をしたのであった。

「ありがとうお父様。私お父様のご期待に添える様、がんばるわ。そして、お父様のように、王となった
カサレス王を誰よりもお側でお支えするわ。」と、父に言ったのだった。

 そうミラディアは、カサレス王子の目が自分に注がれる時を夢見て、王妃になりたいという願望を
一人心の中に隠し、今はただ執政を目指すという姿を、父に見せたのだった。

 もちろん娘の心情を当に気付いていたランダスであったが、ともあれ娘のこの宣誓に、微笑みを
持って聞いていたのであった。




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by maarenca | 2014-11-01 08:07 | ファンタジー小説