Blog|maarenca - マーレンカ

THE SIX ELEMENTS STORY No39








THE SIX ELEMENTS STORY




No39


 
                                     著 水望月 飛翔



リティシア姫が去って、王子の部屋に取り残された二人は、先程までの無邪気な空気から一転、
静かになった部屋の気配に、急に気まずい思いにおそわれたのだった。

 窓の外の気配は、もう碧く落ち着いたメディテラネブルーの空へと姿を変え、プラチナに輝く星達が、
今日のローラインの儀式の成功を祝うかのように、優しく華やかな文様を形作り、美しい音を奏でて
いたのだった。

 王子はその美しい星達を見つけると、ローラインを抱きかかえて窓に連れて行った。
窓の外には、ローラインが今まで見た事もない、ずっと大きく近くで瞬いている星達が、ローラインに
祝福の音を惜しみなく降り注いだのだった。

ローラインはそんな星たちの祝福を全身で受けると、「ありがとう、みんな。」と言って、カサレス王子の
方を向いたのだった。

そして王子に向かって、「素敵ね。こんなにきれいな星達をいつもこんなに近くで見られるなんて・・。
うらやましいわ。」と言うと、また今宵の星々を愛でるように、見つめたのだった。

 そんなローラインにカサレス王子は、ゆっくり首を横に振ると優しく、「今宵の星達の輝きは特別なものだよ、
ローライン。きっと君を祝福する為、いつもより装ったのだろう。」と言って王子も星達を見つめたのだった。

 こうして、星たちの祝福と天からの荘厳な響きを、楽しんでいた二人であったのだったが、そこへ、
二人を呼びにアーキレイがやってきたのだった。

「失礼いたします。王子。ローライン様。王がお二人をお待ちでございます。」アーキレイが神妙な面持ちで
二人にそう言うと、カサレス王子は少し心配そうに、ローラインの顔をのぞき込み、
「父王が君に会いたがっているんだが・・。ローライン、君は大丈夫かい?」と聞いたのだった。

しかしそれを聞いてローラインは、少しおどけたように肩をあげると、「大丈夫よ、カサレス王子。
空の王をお待たせしてはいけないわ。早く行きましょう。」と言って、王子を見上げたのだった。

カサレス王子はそんなローラインに向かって、軽く頭を下げると「空の王の呼び出しに、全く怖れを
見せないとはね・・・。大した者だよ、君は。」と言って笑いながら、王の待つ部屋へと向かったのだった。

 そうして、ローラインを抱えながら、王子が部屋に入って行くと、そこには父王と、王妃、そしてリティシア姫が
もうすでに、二人の到着を待っていたのだった。

 王と王妃はローラインを抱きかかえながら、部屋に入ってきた王子の姿に驚き、顔を見合わせた。
そして、王子の後から入ってきたアーキレイを見ると王は、「何故王子がこの者を抱いて連れて来るのだ?
そなたはいったい何をしておる?アーキレイ。」と厳しい声で聞いたのだった。

アーキレイは静かに、「申し訳ありませぬ、タリオス王。」と、頭を下げそう一言だけ言うと、そのまま
おし黙ったのだった。

 カサレス王子は、ローラインをリティシア姫の隣の椅子に座らせると、すぐに父に向かって
こう言ったのだった。

「父上、申し訳ありませぬ。ローラインは足が不自由な身なれば、わたくしが自身の腕で、彼女を連れて
きたかったのです。」

そう言うと王子は、(すまない、アーキレイ。)とテレパシーで言ったのだった。
そんな王子にアーキレイもテレパシーで、(いいえ、王子。)と答えたのだった。

 一方、王妃はローラインを見つめながら、そんな重い空気を払いのけるように、「まあ、なんて可憐な
勇者様でしょう。あなたが今日、天上界に上った方ね・・・?そして、キュリアスの妹さん。」と、そう言うと、
懐かしそうに優しくローラインを見つめたのだった。

 そんな王妃の優しい心づかいに、ローラインもほほ笑みを返し、「はい、王妃様。そして、この空の誇り
タリオス王。兄が大変お世話になっておりました。私は、キュリアス・グリュスターの妹。
ローライン・グリュスターと申します。皆様にこうしてお目に掛かれるなんて、本当に光栄です。」と言うと、
隣でうずうずしながら、ローラインを覗き込んでいるリティシア姫に向かってテレパシーで、
(また会えましたね、リティシア姫。)とそっと言ったのだった。

 しかし、リティシア姫はうれしくなって、「はい、ねえちゃま。」と大きくローラインに返事をしたのだった。
そんなリティシア姫に、ローラインとカサレス王子は驚いて、顔を見合わせたのだったが、次の瞬間、
ローラインは楽しそうに明るい笑い声をあげたのだった。

 そんなローラインの姿を静かに見つめるタリオス王。

それから王はローラインにこう言ったのだった。「ローライン・グリュスターよ。そなたの母は元気であろうか?
そなた達母子は、日々つつがなく暮らしておろうか?」王は、そうローラインに聞いたのだった。

 ローラインは王が、自分と母を案じている事をうれしく思い、皆の前でこう言ったのだった。
「はい、タリオス王。あの時は本当にありがとうございました。キュリアス兄様のあの時、かあさまとわたくしに
本当に良くしてくださって。母は元気にしております。」そう言って、少し考えるように間を置いてから
、ローラインは続けてこう言ったのだった。

「タリオス王。いつも私とかあさまに、クラスカス山に咲く花を届けて下さっているのは、あなた様ですよね?」

 そう言うローラインの言葉に、カサレス王子は、(父が、花を?)と驚きを持って聞いたのだった。
タリオス王は、キュリアスの成人の儀式の失敗を聞くと、すぐにこの母子の元に使いを出し、いろいろ慰めを
していたのであった。

そしてときどきは、クラスカス山に咲く「癒しの花々」をこの母子の元にそっと、届けさせたのだった。
この様にタリオス王は、この空の領土内で悲しい思いをしている者の元に、静かに慰めを贈っていたので
あった。

 しかしそんな問いかけに王が何も答えずにいると、王妃が優しい目で王を見つめながら、
こう言ったのだった。

「王は、いつもこの空の人々の事を常に第一に考えているのですよ。」と言うと、皆にほほ笑みを
向けたのだった。

 それから少ししてタリオス王が、ローラインにこう聞いたのだった。
「ローライン・グリュスターよ。そなたはこの度の自身の石宿しで、天上界に行ったと聞いたが、
それはほんに誠の事であるのか?」
タリオス王のこの問いに、ローラインは少し神妙な面持ちをしながら、一言一言、言葉を紡ぎだす様に答えたのだった。

「はい、タリオス王。私は天上界に行って、「天上のよろこび」を私の石にいただいて参りました。
でも、天上界へは私の力で行ったのでありません。天の父がただ私を引き上げてくれたのです。
そして、天上にあるものを好きなだけ、私に授けて下さっただけなのです。」

そう言うとローラインは、めまぐるしく起こった天上界での出来事を、一生懸命に思い出していたのだった。

 そして何を思ったのか突然、王の前であることも忘れて、今までとは違う大きな声をあげたのだった。
「ああ、違う、違うわ。その前に、王様。私の石の光は、天上に届くどころか、全くその光を伸ばす事など
できなかったのです。でも、私が「希望の詩」を歌ったら・・・、そう、皆さんも歌ってくれていたでしょう?
そうよ、皆さんの詩の力があったからこそ、私の石の光が天上に届いたのよ。思い出したわ。リティシア姫。
あなたも歌ってくれていたわね。ちゃんと聞いていたわ。ありがとう。」ローラインはそう言うと、
そのローラインの言葉に嬉しそうに笑うリティシア姫を、強く抱きしめたのだった。

 ローラインは王も王妃も加わった、空の領土中の歌声が、自身の石に力を与えてくれていた気配の断片を、
その記憶の片隅から少しずつ甦らせたのだった。
 そして、その時の事を思い出し、嬉しさにうち震えているローラインの姿を見て王は、今までにない空気を、
この少女から感じていたのだった。

「ローライン。届いていたんだね、君に。」カサレス王子もまた、ローラインの言葉を聞いて嬉しそうに、
そう言うと、ローラインは王子に顔を向けて、「ええ、届いていたわ。あなたの声もね。」
そう王子に笑顔を向け、嬉しそうに頷きながら答えたのだった。

しかし、それからまたすぐに違う事を思い出した様に、ローラインは王に向かってこう聞いたのだった。
「そう言えば、王様。「碧き飛翔の女神」がご自身の名前を忘れてしまっていたのですが、最近女神に
会われていないのですか?」と、無邪気に聞いたのだった。

そんなローラインの言葉を聞いた一同は、驚き顔を見合わせたのだった。
「えっ?君。「碧き飛翔の女神」に会ったの?」
カサレス王子は驚いて、ローラインに聞いたのだった。

 しかし、そんな一同の驚きを別に気にすることなくローラインは、「ええ、私ちょっと落ち込んでて、で
も「癒しの浴室」で女神様を思い出して、母様がわたしの心を落ち着けてくれたの。だから私は、
今日の儀式を無事に終える事ができたのよ。」と言うと、嬉しそうにほほ笑んだのだった。

 そんなローラインの言葉に王は、「母様、とは?そなたの母の事ではなさそうじゃな。」
そう王が聞くとローラインは、「ああ、ごめんなさい。さっき言った母様は、私の本当のかあさまじゃなくて、
この地を司る女神様の事です。」と言いながら、フッと噴き出したのだった。

 カサレス王子が不思議そうに、ローラインを見つめて「どうしたんだい、ローライン?」と小声で聞くと、
ローラインは笑いをこらえながら、こう言ったのだった。
「だって、私。この空のお城で出てくる食べ物は、もっとすごく素敵な物が沢山出てくるとずっと思っていたよ。
だけど、お皿だけは素晴らしいけれど、私達が食べている物と、全然変わらないんだもの。なんだか、
可笑しくなってきちゃったわ。」
と言うと、ローラインの前にあるお皿の中のものを楽しそうにつついたのだった。

 そう、この空の人々は長い時を経て、食べ物に重きを置かなくなり、自身を動かすエネルギー源を今の
我々の様に、絶対的に食べ物に頼らなくなって久しいのだった。

 簡単に言うと、まるで霞を食べているような。
見えない空気の粒子の中に含まれている、散りに等しい物質を、少々実体化させて、それを口に運んで
いたのだった。 

 まあ実際のところ、空の領土の人々は、何も口にしなくとも自身の循環エネルギーと空の領土の空気で、
事足りるのであったのだったが、同じテーブルにつき、共に食事をするという行為の継承に、重きを
置いていたのであった。

いつもは礼節に重きを置く、厳格なタリオス王であったのだったが、しかし、天上の光を父と呼び、
この地の守り神を我が母と呼ぶこの少女の、屈託のない振る舞いに何故か咎める気持ちも起こらず、
不思議に穏やかに見ていたのだった。

そして、そんな穏やかな姿の王と、ローラインを愛おしそうに見つめる王妃と、楽しそうに笑い声をあげる
妹姫の姿を見て、カサレス王子もまた、久しぶりに寛いだ表情を見せたのだった。

そして、そんなカサレス王子と、王一家の姿を見てアーキレイもまた、うれしく見つめていたのだった。




a0073000_1582539.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-10-25 15:21 | ファンタジー小説