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THE SIX ELEMENTS STORY No37








THE SIX ELEMENTS STORY




No37




                                    著 水望月 飛翔



 天上に向かって、祈りを込めて歌うその清らかな歌声。
そんなローラインの歌う歌声は、二人を包む光の外にまで伝わり、やがて風たちが運び、
遠く人々にまで届けていったのだった。

 その清らかな歌声を耳にした人々は、次第に少しずつその歌を口ずさみはじめ、そうしてその詩は、
空の領土中に広がっていったのだった。

 そんな歌声が、とうとう第五の島にある、空の王の城まで届くと、城の者達までもが、おのずと
「希望の詩」を口ずさみ始めたのだった。

 そんな多くの者の歌声を聞いたカサレス王子は、嬉しそうに聞くと、王子もまたその歌に加わったのだった。
すると、小さなリティシア姫が王子の部屋に入ってきて、「にいちゃま、私も歌う。」と、一緒にあどけない歌声を
響かせた。
 そしてとうとう、城の者たち全ての者までもが歌い始めると、王と王妃もこの詩に加わり、ローラインに
後押しをしたのだった。

 すると、先程まで途中で止まっていた、ローラインの石の光にむかって、空の領土中から光が集まり、
そのまま天上へ押し上げる様に加勢したのだった。

「ああ、我が主。これはいったいどういう事でありましょうか?私の小さい光に無数の光が集まり、
私の光を押し上げてくれております。」そう言うと今度は、「ああー。」と声をあげると、ローラインの目の前で、
周りを覆っていた岩石が剥がれ落ち、中に埋まっていた淡いブルーのサファイアが、その美しい姿を見せた
のだった。

 すると、天上に向かっていた光が急にその勢いを加速させ、生き生きとした意志を持って、まるで天に
向かって飛ぶ龍が如く、そのまま高く天上の雲をローラインの石は突き破っていったのだった。
 
 何という光景だろうか・・・。

 一人の者の成人の儀式に、この様に人々の力が結集し、また加勢し得た事など、この惑星が誕生してから
あった事などはない。

 この輝かしい光景は、きっとこれから、この惑星に新たなる希望を与えていく事になるであろう。

さて、皆の加勢に勢いよく天界の雲を貫いたローラインの石であったが、その天上界ではいったい何が
起こったのであろう?

 ローラインの石の光が天界の雲の上まで突き抜けて、その石が現れると、そこはなんとも美しく淡い
エマイユ色のグラデーションが、雲や霞を穏やかに包み込み、ゆっくりと漂い、天上の音を静かに
奏でていたのであった。

 そうして、一際淡い光がすっと奥から差してきて、そのままローラインの石を柔らかく捉えたのだった。

その光は、まるで手の上でローラインの光を転がす様に、ゆっくりと揺らぎを与えると、女性とも男性とも
つかぬ幾重にも重なった声で、ローラインの石に声をかけたのだった。

「なんじ、どこから来たのか・・・?淡き光の石よ。そなたの様な淡き光でようこの天界まで登ってこられの?」

 その声の震えは穏やかで優しく、その余韻でこの世界を形作っている気配のたおやかさに、ローラインの
石はゆったりと、心地よい感覚を味わったのだった。

 それからしばらくしてローラインの石は、静かにこう答えた。
「はい、わたくしは、空の領土から参りました者。我が主の願い、「天上のよろこび」を少し私に分けて
いただきたく、ここまで登ってまいりました。」

 そう言うと石は、自身の光の中に主ローラインの姿を映し出したのだった。
その光の中でローラインが、目を瞑り一心に「希望の詩」を歌っている姿が写し出されると、天上の光は、
ゆっくりとこう言ったのだった。

「ほお、かの小さき者がそなたの主か。ローライン。希望の光・・・。わたしもよう覚えておる。そうか。
あの小さき者が、かの地の人々の支援を受けてここまで来たか・・・。」そう慈愛に満ちた声で言ったのだった。
 
 そんな言葉を聞いて、ローラインの石は、こう聞いたのだった。
「おそれながら・・・、天上の光よ。わたくしの主の願いを聞き届けていただく事はできないでしょうか・・?」
そう恐る恐る聞いたのだった。

 そんな問いに、天上の光は柔らかく笑いながら、こう言ったのだった。
「希望の光の石よ。私を恐れなくともよい。しかし、久方ぶりに我の希望の光に会うてみようかのう。」
と言うと、すーっと雲の下へ光を降ろし、すぐさまローラインを、この天上界へと連れてきたのであった。

 天上界から光が素早くローラインの元に現れたかと思うと、次の瞬間そのままローラインの身体を
包み込み、天へと一気に連れてこられたローラインは、あまりの一瞬の出来事に驚いて、自分が
今いったいどこに居るのかと、理解できずに周りを見回したのだった。

 そして、ローラインは自身の小さな翼が瞬いて、浮いている事に気づくと、嬉しそうにまた周りを見回した後、
ようやくローラインは少し離れた高い所から、やんわりと温かく自身を見下ろす優しい光の存在に気づき、
じっと見つめたのだった。

 ローラインは懐かしそうにその光を見つめると、「天なる父。わたしのお父様・・・。」と言って、静かに
涙を流したのだった。
そしてローラインはゆっくりと、その光に近づいていったのだった。
そんなローラインに天上の光は「わが娘・・・、希望の光・・・。人々の祈りをよう味方につけたの・・・。」と声を
かけると、続けてこう言ったのだった。

「わが娘ローライン。そなたの望みを申すがよい。」
天上の光が、優しくローラインにこう言うと、ローラインはいたずらっ子の様にほほ笑んで、その光に向かって
こう答えたのだった。
「天なるお父様・・・。わたしの願いは「天上のよろこび」です。どうかこの天上にある喜びを、少し私に分けて
下さいませんか・・・?」

 人々と喜びを分かち合いたい。
ただそれだけを思い、はやる気持ちにうれしさが込みあがり、ローラインは楽しそうにそう言ったのだった。

 そんな楽しそうな姿に天上の光は、慈しむように一層優しい光をローラインに向けると、
「よい、わかった。好きなだけ持っていくがよい。ここのものはそなたのもの・・・。ただ望めばよい。」
そうローラインに告げたのだった。

 そして、ローラインの石に向かって、「さあ、そなたの身に思う存分宿すがよい。」と言ったのだった。 
 
そうして、天上の光は大きく一回りすると、そうして集めた淡い光をローラインの石の上に振り注ぎ、
「天上のよろこび」を宿させたのだった。

 すると、ローラインの石は先程よりももっと美しい、アシード・ブルーの輝きを得て光り輝いたのであった。

「まあ、きれい。」嬉しそうにほほ笑むローラインと、ローラインの石に向かって、天上の光は、
「さあ、「天上のよろこび」を宿いし石よ。われの「希望の光」と一体となるがよい。」

 そう告げると、ローラインの石はスーッとローラインの元に近づいて、そのまま右手の甲に、
静かに納まったのだった。
                               
 ローラインは、石と一体となるには痛みを覚悟しなければという思いと共に、一瞬身体を固くしたのだった。
が・・・、何のことは無い全く痛みなどなく、スーッと静かに石は、ローラインの右手の中に納まったのだった。

 ローラインは不思議そうな顔をすると、天上の光にこう聞いたのだった。
「天なるお父様・・・。どうして私の石は痛みがなく収まったの?」

ローラインは、痛みがなくてホッとしたのと同時に、多くの人々が大層な犠牲を払っている中で、
自分だけ何事もなく石が自身に宿った事に、少し憮然として聞いたのだった。

 そんなローラインに天上の光は、笑いながらこう言ったのだった。
「希望の光、ローライン・・・。わたしは皆に、一度たりとも苦痛を強いた事などは無い。」
こう言うと、続けて「しかしなぜだろう・・・?苦痛を乗り越えなければならないという考えが、
いつしか出来上がってしまったのは・・・。」と言うと、少し光を震わせたのだった。

 それから天上の光は雲の下からの気配を感じ、優しくローラインにこう告げたのだった。
「わが娘、ローライン。そなたの迎えがそなたの事を心配しておるようだのう。そろそろそなたの居るべき
場所に戻るがよい。またいつか、会おうぞ。」

 そう言うと同時に、ローラインが居るあたりの雲がスッと消え、ローラインは急に重力を感じ、
そのまま下へ落ちていったのだった。

「きゃ~。」先程までと違って、なんの加勢にもならない自身の翼にローラインは驚きながら、
どちらが天と地とも解らないまま、どんどん下へと落ちていったのだった。

 そしてローラインは、真っ逆さまに落ちていく恐怖に慄いたのだった。
しかし次ぎの瞬間、何者かがローラインの小さな身体を捉えた。

「大丈夫かい・・・?ローライン。」ローラインの小さな体を抱き止めたその人物は、心配そうに声を
かけたのだった。
 ローラインは、恐怖で瞑っていた目を恐々開けると、自分の顔を心配そうに覗き込む、カサレス王子の
顔を見つけたのだった。

「カサレス王子・・・。」そう言うとローラインは、まだ恐怖に落ち着かない気持ちのまま、きつく王子の胸に
しがみついたのだった。

 震えるその小さな身体を、しっかりと抱きしめながら王子は、「もう大丈夫だよ、ローライン。」と言うと、
ローラインをもう一度優しく抱きしめたのだった。

 その間もずっと、カサレス王子にきつくしがみついているローラインの腕を優しく解くと、ゆっくりと
ローラインの顔を、自分の顔に向けさせたのだった。

 ローラインは、優しくほほ笑むカサレス王子の顔を見ると、まだ少し震える手を王子の胸の上に置いて、
うつむいたのだった。

「カサレス王子、大丈夫ですか?」そこへ王子の後を追って急いで飛んできた、
王子の第一の従者アーキレイが、心配そうにカサレス王子に聞いたのだった。

 その声に振り向くと王子は、「ああ、僕は大丈夫だよ。アーキレイ。だけど、こちらの勇者のショックが
まだすこし溶けないようだ。君は急いで第二の島へ行き、彼女の母上に彼女の儀式の成功と無事を
伝えてきてくれないだろうか?きっと心配しているだろうから。僕はこのまま、彼女を城に連れていって、
少し落ち着かせる事としよう。」そう言ってからカサレス王子は、王子の指示に従い、第二の島へ向かう
アーキレイの後姿を見送ると、ローラインを抱いたまま、ぐるぐるとその場を飛んだのだった。

「すごいじゃないか、ローライン。まさか君が天上まで登るとは・・・。そんな事、かつて今まで聞いた事が
ないよ。」そう言うと、我がことの様に喜びを見せたカサレス王子なのであった。

 そんな王子の言葉にローラインはまだ震える声で、「いいえカサレス王子。私は自分の力で天上まで
行ったのではないわ。ただ突然、天の父に連れて行かれただけなの・・・。私は・・、私の力なんて
使っていないわ。ただ、天の父がわたしに授けて下さっただけなのよ。」そう言うと思いだした様に、
自身の右手に宿るアシード・ブルーに輝くサファイアを見せたのだった。

「美しいね・・・。ローライン。君の石の輝きは。」
そう言う王子にローラインは、満面の笑みを浮かべ、嬉しそうにこう言ったのだった。

「うれしい。私の石の輝きをカサレス王子に、一番最初に見せる事ができるなんて。」そう言うとローラインは、
慈しむ様に右手の石を撫でると、その宿った右手で王子の頬に優しく触れたのだった。

 そして、驚く王子を見つめながら、「私に宿った「天上のよろこび」よ。どうかこの方にその輝きを注いで
くださいな。」と言ったのだった。

 すると右手の石から、温かく柔らかな光が溢れだし、カサレス王子とローラインの身を、優しく包み込んだの
だった。

 そんな温かな光を受けて二人は、この喜びを共にしたのだった。
「温かいね・・・。ローライン。この上なく、温かな光だ。」
そう言うと、カサレス王子はローラインを抱いたまま、エマイユ色に輝く温かな雲の間をしばし、二人だけの
時間を楽しむように、ゆっくりと空の城へと飛んで行ったのだった。

 二人が飛ぶその周りの雲達は、天からの光に輝いて、まるで二人を祝福しているかの様に、幸せな色の
光を降り注いだのだった。




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by maarenca | 2014-10-18 12:42 | ファンタジー小説