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THE SIX ELEMENTS STORY  No31








THS SIX ELEMENTS STORY






No31




                                      著 水望月 飛翔



ジインの心の中の思いを、最初からずっと感じとっていた城の従者達であったのだったが、
そんなジインのあまりの不躾な思いに、さすがの彼らも少し気を悪くしたのであった。

 それまではゆったりとそれぞれに、この空間を楽しんでいたイズールとリューレンだったが、
カサレス王子の両翼の一人、フリュース・リュードがイズールに、テレパシーで話しかけて
きたのであった。

「聖なる騎士団のイズール殿。あまりこう言う事を言いたくはないのだが。この大地の騎士殿の
無遠慮な思いは、いかがなものだろうか?そなたは、かの御仁の思いに気が付いておいでか?」
と、聞いたのだった。

 そんな問いかけにイズールは、ハッとしてジインの気配を感じ取ると、テレパシーで
こう答えたのだった。
「カサレス王子の両翼のお一人、フリュース・リュード殿。これは、申し訳ありませぬ。
大地の騎士ジイン殿は、まだ最近騎士になったばかり。彼はまだまだ心のコントロールが
着いておりませぬ。どうか、今はまだ寛大にお許しいただけないでしょうか?」と、イズールは
従者フリュースに謝ったのだった。

 空のテレパシーを使うことは出来ないリューレンだったが、そんなイズールの異変を隣で
うすうす感じ取ると、イズールに大丈夫ですか?と小さな声で聞いたのだった。

 イズールは、心配そうに聞いてきたリューレンに、何でもないと答えたのだったが、
それでもリューレンは、(きっとジイン殿の退屈そうにしている思いに、この城の従者の方々が
不快に思ったのであろう。まだコントロールが出来ていないとはいえ、ジイン殿は、この静かに
緊張している気配を全く解っていないようだ。罪な事を。)と心に思ったのであった。

 そんなそれぞれの思いが交錯している中、部屋のドアが静かに開いて、カサレス王子と
リティシア姫が、足音もせずに静かに室内に入ってきたのだった。

 しかし、カサレス王子は一足この部屋に入るなり、こうした彼らの思いの残像を瞬時に感じ取ると、
一同にこう言ったのだった。

「これはこれは。大変お待たせをした様ですね。申し訳ありません。「聖なる騎士団」の皆様。」
と言うと、すぐその後にテレパシーで(遅れてすまない、フリュース。アーキレイ。)と従者達に
言ったのだった。
 リティシア姫も部屋の空気を感じ取り(遅くなってごめんなさい。)とテレパシーで謝ると、
カサレス王子の右翼を担うもう一人のアーキレイ・カーライルは(いいえ、そんな。)
と、恐縮したのだった。

 カサレス王子が騎士に声をかけると、すかさず三人は王子と姫を迎えて立ち上がったのだった。
そんな三人にリティシア姫が続けて、「お待せしてごめんなさい。でも、本当に皆様と
お話しできる事を楽しみにしていたんですのよ。」と言うと、優雅にふんわりとお辞儀をしたのだった。

 そんな、気品の中に親しみやすい愛らしさを漂わす姫の立居振舞に、若き三人もそれぞれ
親しみを持って、礼を返したのだった。

「さあ、どうぞお座りください。」カサレス王子の優しい物言いに、ジインはホッとして、
椅子に座りなおしたのだった。

 それからカサレス王子は、ゆっくりと三人を見ると、イズールとリューレンにこう話しかけたのだった。
「イズール殿。リューレン殿。お二人ともまた立派になられた様子。お二人の生気に満ちた
お姿を拝見できて、この惑星に住む者として、大変うれしく思います。」

 そうカサレス王子が穏やかに言うと、イズールが、「我らが空の領土の誇り、慈しみ深き優しさに
満ちたカサレス王子。あなた様にそのようなお言葉をいただき、私は本当に誇りに思います。
カサレス王子あなた様こそ、そのお優しさ、慈しみ深さが増々輝きをもって放たれたる事。
それをまた、間近に受けられたるは誠に幸せにございます。」

 そう言うと今度はリティシア姫に向かって、「そしてリティシア姫には、その名の持つ「天空の花」に
ふさわしく、この領土をそのお優しさ美しさで導かれております事を感じられ、これもまた、
私の喜びでございまする。」と、イズールはいつになく、彼の胸の内を真っ直ぐに二人に伝えたのだった。

 それに続いてリューレンも、「私もまたお二人にこうしてお会いできます事、真にうれしく、
光栄に存じます。他の領土にはない圧倒的な均衡を保つ空の領土にて、カサレス王子、
リティシア姫のお優しさに接する事が出来ます事は、私の最高の喜びでございます。」
と、深々と一礼したのであった。

 それを聞いてリティシア姫は、「まあ、あなた様のような誠意の方にそう言っていただけて、
とてもうれしいですわ。」と嬉しそうに言ったのだった。

 そして、ゆっくりとカサレス王子の方を向くと、リティシア姫は少し意味ありげに王子に
視線を送ったのだった。

 カサレス王子はすかさずテレパシーで、(はい、解っていますよ。リティシア。)と返事をすると、
静かにジインに視線を向けてこう言ったのだった。

「ようこそ、大地の若き騎士、ジイン・クイード殿。よう我らが空の領土に参られました。
いかがですか?この空の領土の感想は?」と、ジインに聞いたのだった。

 先程から四人のやり取りをじっと見入っていたジインであったが、王子の視線が自身に
真っ直ぐ向けられると、ジインの鼓動が一つ高く鳴ったのだった。

 そして、一瞬言葉に詰まったジインであったが、ゆっくりと息を吐くとカサレス王子と
リティシア姫に向かって、こう言ったのだった。

「はい、あの、とてもスゴイです。大地の領土にはこんな高い所なんてないですし。
こんな雲の中の城に自分が居るなんて、まだ信じられない感じです。でも、ちょっと冷たい様な
寒い空気が、俺にはなんだか、ピリピリするようで。」と腕をさすりながら言うと、カサレス王子の
左手のサファイアに目が止まり、王子の左手をじっと見ながらこう言ったのだった。

「それに、カサレス王子は、左手に石を宿しているのですね。空の領土の王子にしては
珍しい様な気がしますが、いったいどんな力を宿しているのですか?ほんとにきれいな
サファイアですね。もっと近くで見てもいいですか?」  
   
 ジインは自分を真っ直ぐに見つめる王子の視線にドキドキすると、視線をそらそうと
ふと向けた先に、王子のサファイアに目が留まったのだったが、その深く澄んだ青い石に魅入られ、
つい王子に軽く聞いたのだった。

 しかし、そんな不躾な事を遠慮なしに聞いてくるジインに、先程から料理などを運んでいた
従者達の手が止まると、従者達は何か言いたそうに、カサレス王子の第一の従者アーキレイと
フリュースに視線を投げかけたのだった。

 フリュースは、そんな皆の思いを受け取ると、皆を制するように右手を挙げると、そのまま静かに
腰の剣に手を置いたのであった。

 そんな動きを見てカサレス王子は静かに、(フリュース。)とテレパシーで言うとフリュースは
(解っております、何もいたしません、王子。ただこのような無礼な振る舞いを、捨て置く訳には・・・。)
とテレパシーで答えたのだった。

 そんな最後の言葉を濁すフリュースに、カサレス王子は少し遠い目をすると、再びテレパシーで、
こう言ったのだった。

(許してやって欲しい。フリュース、皆の者。彼は全く悪意を持って言っているのではない。
王子の身分である者の、手の内の石宿しにただ興味を抱いているだけなのだから。
しかし、もし彼の言葉が屈辱的に聞こえるのだとしたら、それは私の力が弱いからであろう。
むしろ責められるのは、私の方かもしれない。肩身の狭い思いをさせてしまって、済まない。みんな。)  

 そんなカサレス王子の気遣いの言葉に、フリュース、アーキレイと居並ぶ従者達は、あるいは
自分たちの反応が、この優しき王子を傷つけてしまったのではないかと、また心を痛めたのだった。

 そんなやり取りなど知らないであろう発端のジインの不躾な質問に、イズールとリューレンもまた、
内心飛び上るほど驚いて、ジインに何か一言言おうと思っていた時だった。

 しかし、王子のサファイアの美しさに、ただ好奇心が抑えきれずに、ワクワクしながら無邪気に
聞くジインの表情と、彼の不躾な質問に眉をひそめる周りの者の対照的な反応の違いを見て、
カサレス王子とリティシア姫は顔を見合わせると、次の瞬間、大きな声を出して笑い出したのであった。

 そんな王子と姫の姿に驚いた一同を見て、ジインの隣に座っていたリューレンは、
内心穏やかでいられず、困った顔をしながら、ジインを見つめたのだった。しかしカサレス王子は
左手をあげると、やんわりとリューレンを制し、楽しそうにこう言ったのだった。

「これはなんとも素晴らしい。新しいタイプの騎士の誕生ですね。私もリティシアも本当に
久しぶりに笑ったような気がします。」と言うと、憮然としている周りの者達に穏やかな視線を投げると、
カサレス王子はそれから続けてこう言ったのだった。

「ごらんのとおり、整然とした美しさは本当に素晴らしいのですが、やや楽しさに欠ける我が領土。
この冷たい空気に、こんなに楽しく温かな風を運んでくれようとは、ありがとう。ジイン・クイード。」

 一通り笑ってそう言うと、少し間を置いてカサレス王子は、ゆっくりと自身の左手のサファイアを
しみじみと眺めたのだった。

 それからしばらくして、ジインの方に顔を再び向けると、ゆっくりとこう言ったのだった。

「そうですね。大抵王子の地位にいる者にとって、自身の手などという低い位置に石を置く者は
あまりいないでしょう。そう、かの地、炎の領土を別としては。私のサファイアが持つ力とは、
「あらゆるものを変える力」なのですよ。まあ、皆さんの様な、大いなる素晴らしい力ではありませんが、
私はこの力をとっても気に入っているのです。」と言うと、ジインに優しくほほ笑んだのであった。

 カサレス王子が穏やかにこう言うと、リティシア姫はそんな兄に向かって、
「兄様、私も兄様の石の力が本当に好きよ。それに。私は兄様がそんな風に笑ってくれる事が
本当に好きなの。」少しの哀しみもない王子の軽やかな笑顔を見て、リティシア姫はうれしく思い、
ジインの方に向き直ると、「ありがとう。ジイン様。」と、愛らしくほほ笑んだのだった。

 ジインは、昨日の王との謁見の時から、ずっと見とれていた美しい二人にまっすぐに
見つめられながら、そう言われて、思わず顔が赤くなるのを感じたのであった。それと同時に、
自分の軽はずみな言動が、この場にいる皆を混乱させた事をようやく理解したのだった。

「いえ・・、その・・俺は・・・。」
そう言ったきり、口ごもるジイン。

 しかし、久しぶりに見る、晴れ晴れと笑みを湛えたカサレス王子とリティシア姫の表情を見て、
イズールも、そしてカサレス王子の右翼を担うアーキレイと左翼を担うフリュースをはじめ、
その場にいた従者達も、ホッとした表情を見せたのだった。

 そしてイズールは、まだ内心一人心配そうな面持ちでいるリューレンに小声で、
「大丈夫なようですよ。」と嬉しそうに言うと、心配そうな面持ちのジインに、楽しそうに
目配せをしたのだった。
 
 イズールのそんな表情を見て、ようやく安心して笑みを浮かべるジイン。
 こうして、それからの時間を王子と姫と騎士団の三人は、楽しく和やかな空気の中、
いつまでも長い時間を共に過ごしたのだった。

 そして、空の色が少しずつ金蓮花色に変わり、やがてロワイヤルブルーに暮れていく頃に、
ようやく長老達の待つ部屋に、この若き三人は戻っていったのだった。

 今までになく、軽やかな気配を身にまとって戻ってきた三人に、長老達は「おやっ?」
と思いながら、三人を眺めたのだった。

 そして、すこししてから、ゼンスがこの若き三人にこう聞いたのだった。
「今日の王子と姫との昼食会は、ほんにそなた達には良い時間であった様だの。今まで以上に
良い交換ができたようじゃて。」と三人を見つめながらそう声をかけたのだった。

 そんなゼンスの温かい言葉を受けてイズールは、「はい、ゼンス様。今日のこのひとときは、
我らにとっては本当に楽しいものとなりました。正直な所、最初はどうなる事かと、私とリューレンは
とても心落ち着けたものではありませんでしたが・・・。」と言うとリューレンの方に視線を送ると、
リューレンもしきりにうなずいたのだった。

 それから続けてイズールは、「しかし、ジインの、何と言うのでしょう、素直な言動や正直さは、
やはり人々に暖かい気持ちを抱かせるようで、カサレス王子とリティシア姫と共に、本当に
楽しい一時を過ごすことができました。」と、長老達にこう言のだった。

 それを聞いて長老ロードスは、「カサレス王子もリティシア姫も楽しそうだったのだな?」
と念を押す様に聞いたのだった。

 その問いかけに「はい。」と晴れやかに返事をするイズールの顔を見て、
「それは本当に良かった。」と小さく言うと心の中で、(王子が楽しい時を過ごされた。ほんによかった。)
と一人何度も繰り返し、そう呟くロードスなのであった。

 こうしてまた一つ、空の領土の星たちの間に温かなまたたきが、増えた瞬間でもあったのだった。




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by maarenca | 2014-09-27 17:49 | ファンタジー小説