Blog|maarenca - マーレンカ

THE SIX ELEMENTS STORY No30









THE SIX ELEMENTS STORY





No30



                                  著 水望月 飛翔


 (お二人に何か、話さなければ。)
ようやく少し身体を動かすとジインは、緊張した面持ちで「カ、カサレス王子。リティシア姫。
お目にかかれて、光栄です。俺、いやわたくしこそ、どうぞ空の領土の事をいろいろ教えてください。」
と、短い返事を返すので精いっぱいのジインなのであった。

 そんな、顔を赤くしながら、緊張しているジインの姿を見て空の王は、(ふむ、今日はこれ以上
、この者を緊張させない方がよかろう。)そう思うと、(皆のもの。本日の謁見は、ここまでといたす。)
と、王の広間にいた皆に、テレパシーを送ったのだった。

 そして、ジインに向かって「それでは、大地の騎士ジイン・クイード殿よ。我らが空の領土の
滞在をゆるりと楽しまれるがよい。」と言うと、タリオス王は長老達の方に視線を送り、静かに頷くと、
王妃と共に王の広間を静かに退出していったのだった。

 その姿を見送った空の領土の人々は、今一度「聖なる騎士団」の一向に礼を送ると、
続けて静かに退出していったのだった。そんな静かなる光景を見て、ジインは少し取り残されたような
寂しさを、覚えたのだった。

 ぼんやりと、寂しそうに立ち尽くすジイン。その耳元に突然、(またあとで。)と、小さな声が
頭の中で通り過ぎていったのだった。

 一瞬の事に驚いたジインは、その声の主を探すように周りを見回したのだったが、
しかしそんなジインの目に映ったものは、人々の列の先頭で、腕を組んで退出していく、
カサレス王子とリティシア姫の遠い後姿なのであった。

 人々が去った後、ゼンスは「聖なる騎士団」の一同を見回すと、「さあ、我らも退出するとしようかのう。」
と、声をかけたのだった。

 そんな彼らに、空の城の従者が近づくと、彼らを部屋に案内したのだった。
そして、「聖なる騎士団」の一行は従者の後について、広い王の城の廊下を進んで行ったのであった。
城の中をめぐる廊下の天井には、空の人々の頭上を飾る細工と同じように、細い金属の細工が繊細な
優美さを持ってこの廊下を静かに飾っており、人々がその廊下を通るたびに、「キーン。」と、
小さく高く美しい音色を震わせていたのだった。

 先程の空の王との謁見で、まだ緊張が解けぬジイン。
上の空の面持ちで、一同の一番後についていたジインは、前を歩くイズールにそっと小さな声で、
こう尋ねたのだった。

「なあイズール。カサレス王子とリティシア姫って、いったいどういう人なんだい?」と誰にも
聞かれないように小声で聞くジイン。

 そんなジインの質問に、イズールは少し考えた後そっと「カサレス王子とリティシア姫が、
どうかされましたか?」と小声で聞き返したのだった。

 そんなイズールの問いにジインはドキッとしたのだったが、しばらくして、「いや、あの、
お二人の姿がその、あまりにきれいだったから。」と、顔を赤くしながら、答えるジイン。

 そんなジインの言葉にイズールは、少し驚いた表情を見せたのだった。
そして、ジインの顔を無言でじっと見ると、少し間を置いてからジインにこう言ったのだった。

「ジイン殿。あなたは、本当に心に思ったことを素直に表現される方なんですね。」そう言いながらフッと
優しく笑うと、温かい目でジインを見ながらイズールは、こう続けたのだった。

「ジイン殿。あなたがそのように好意的に思ってくれて、私も本当にうれしいです。この領土では、
心に思ったそのままを素直に言う人は、あまりいませんから。」そう言うとイズールは、
一旦ジインから目をそらし、どこか高い空を見つめたのだった。

 と、ちょうどその時、イズールにカサレス王子から、テレパシーで伝言が届いたのだった。
「空の若き騎士、イズール殿。もしよろしければ、明日の昼食会に若き三人の騎士を招待いたしたい
のだが。いかがだろうか?」そう、イズールに問う声に、イズールはすぐさま、「ありがとうございます。
カサレス王子。もちろん、喜んで伺います。」と返事を返したのだった。

 それからまた、ゆっくりとジインに視線を戻すと、静かに微笑みながらこう告げたのだった。
「それよりジイン殿。明日は王子と姫との昼食会に、私達若き騎士も呼ばれております。
どうかその時にでも、お二方にご自分のお心を正直にお伝えください。お二人もきっと喜ばれる
ことでしょうから。」と言ったのだった。

 イズールの言葉にドキッとするジイン。
「えっ?それは・・・。」イズールの言葉に、明日また会えるといううれしさ反面、何か落ち着かない
ジインなのであった。

 それから程なくしてようやく「聖なる騎士団」の一行は案内された部屋に着くと、それぞれの身体に
あった椅子を見つけては、その身を深く沈めて、ホッと一息ついたのだった。

 その部屋は、天上からつるされた薄い布のドレープで室内が飾られており、
そこから見え隠れする星の形の飾り達が静かな囁きで奏でる音で、一同を落ち着かせていたのだった。

 窓が開いているわけではないのだが、ゆったりとした、清涼な風が部屋をながれ、スーッとする
香りに一同は思い思いにしばし寛いだのだった。

 それからしばらくすると、水の若き騎士、リューリン・クボーが、静かにこう切り出したのだった。
「やはり空の王の前では、他のどの王の前よりも一番身が引き締まる思いがいたします。
まだ私も、ようやくこちらは二度目の滞在ですので、少し緊張いたしました。」とそこまで言うと、
少し間を置いてから、「しかし、ロードス様。以前私が歌っていただいた「祝福の詩」とは、
今日は少し何かが違っていたような気がいたしましたが、これは私の単なる思い違いでしょうか?」
と、ロードスの方を向いて聞いたのだった。

 そんな質問を受けてロードスは、じっとリューレンを見つめると、感心したようにこう言ったのだった。
「さすがだのう。リューレン・クボーよ。以前自身に贈られた「祝福の詩」と、今日の詩の違いに気づくとは。
やはりそなたは、誰にも負けぬ繊細な感覚を持っておるのう。」と言うと、ロードスは押し黙って
何かを考え込んだのだった。

 そんなロードスを見てイズールは、少し可笑しそうに小さく笑ったのだった。
イズールの小さな動きに気づいたリューレンは、「どうしたのですか?イズール殿。」と、不思議そうに
聞いたのだったが、リューレンに問いただされたイズールは、少し困ったような顔をすると、
「いや、これは。私の口から申す事ではないので。」と、ロードスの方を見ながら、言葉を濁したのだった。

 そんな救いを求める様なイズールに対して、ロードスは少し咎めるように、イズールを見てから、
すぐにリューレンの方に向き直り、こう答えたのだった。

「若き水の騎士、リューレン・クボーよ。確かにそなたの為に歌われた「祝福の詩」は、真にそなたに
祝福を込めて歌われたもの。しかしのう、今日歌われた「祝福の詩」はそなたの時とは確かに
少し違っていたのじゃよ。」

 そう言うと一同をゆっくり見回すと、続けてこう言ったのだった。
「今日ジインのために歌われた詩の旋律の中には、少し落ち着きを与える為に「やすらぎの詩」の旋律も、
実は入っておったのじゃよ。」と、一同にその違いを明らかにしたのであった。

 ロードスのそんな言葉にジインは、理解できずに不思議そうにロードスの方に目を向けると、
ロードスは続けてこう言ったのだった。
「大地の騎士、ジイン・クイードよ。そなたはまだまだ自身の心をコントロールする事が、難しいようじゃて。
もちろん、私もそなたの正直さが嫌いではない。だがの、どうもこの空の領土の保たれた均衡に、
少し乱れを起こすほどの波動の強さがあるようなのじゃ。それゆえ王は、そなたの波動を
落ち着かせる為に、「やすらぎの詩」の旋律を入れたのじゃよ。」とロードスはこう言うと、
ジインの顔をじっと見つめたのだった。

 それからまた、「しかしのう、王をはじめ空の方々も、そなたのそんな正直さを嫌いではなさそうじゃ。
どうもそなたは人々に温かな気持ちを持たせるような、そんな不思議な力を持っておる様じゃな。
何はともあれ、我らが空の王もそなたを認めた事に間違いはない。まだまだ精進すべき点は多々あれど、
そなたはそなたの備わっている力をこれからも大事にするがよい。」と、ジインにそう言ったのだった。

 そんなロードスの言葉に、ジインは少し複雑そうな顔をすると、「ロードス様、俺は素直に喜んで
いいのでしょうか?」と、不安そうに聞いたのだった。  

 そんなジインに一同は一斉に笑いだし、「もちろんですよ。ジイン・クイード。」とイズールが言うと、
皆も口々に「おめでとう。よかたったのう。」と、ジインを祝福したのだった。
 こうして「聖なる騎士団」の一同に祝いの言葉をかけられて、ようやくジインは今日一日の緊張から
解放されたのだった。
 
 大地の騎士ジインが、皆とそんな祝いの時を過ごしている頃、リティシア姫は、姫の部屋で
久しぶりに味わう大地の領土の気配を懐かしむように、一人思いにふけっていたのだった。

 そして、城の外では今までにない、まるで雛鳥でも抱くかのような、温かい安らぎに満ちた
星々の輝きが、今宵の空の領土を慈しんでいたのであった。

 次の日、「聖なる騎団」の長老達が、空の王や執政たちとの話し合いの席についている頃、
イズール、リューレン、ジインと、若き騎士たちは、カサレス王子とリティシア姫との昼食会に
招かれていたのであった。

「聖なる騎士団」は、まずそれぞれの領土に着くと、その領土の王との話し合いの席に着き、
領土内で何か変わったことは無いか、困っている事は無いか、互いに意見交換をするのであった。

 そうして、その領土内や他の領土での問題点を、広く共有する事でスムーズに解決できる様に
努めるのが、また「聖なる騎士団」の存在理由の一つであったのだった。

 そして、これからを継ぐ各地の若き王族と若き騎士たちが、交流を持って各地の理解を
深める事が、この惑星の平和を守っていく事の大事の一つでもあったのだった。

 王子と姫より先に、昼食会の席に着いていた「聖なる騎士団」の三人は、それぞれが違う思いで、
この部屋の空気を感じていたのだった。

 空の領土出身のイズールは、子供時代をずっと第三の島で過ごし、この王の城のある第五の島を、
ずっと下から眺めながら育ったのだった。

 空の領土の民達は、王の城があるこの第五の島へは、特別な行事でもない限り、そう足を
踏み入れる事は無かったのであった。

 そして、イズールが「聖なる騎士団」に入り、ようやくこの王の城に足を踏み入れる事になってから数年。

 空の領土の者にとっては、この王の城に居るという事自体が、大いなる名誉なのであった。
「王の城のこの整った均衡が張り詰めた空気は、やはりここ以外、何処を探してもないもの。
こうして、此処の空気を味わえることは、私にとってはまるで、下界の雑多な思いを洗い清められて
いるようだ。」と、イズールは一人、この清浄なる空気を楽しんでいたのだった。

 そして水の領土出身のリューレンもまた同じように、この王の城の空気を楽しんでいたのだった。
「我らが水の王の城がある「聖なる龍の住む湖」の清らかさ神々しさは、格別なれど、この空の王の城の
気高い程の凛とした空気もまた、唯一無二のもの。まるで我が身の歪みや汚れを正してくれているようだ。
これほどの美しい気配を、どうしたら我らが水の王にお伝えする事が出来るであろうか?」と、
こちらも一人思いを馳せていたのであった。



 一方新しき騎士、大地の領土出身のジインはどうであろうか。

「イズールもリューレンも、さっきから何を考えているんだろう?こんな何の音も余分もない静けさで
よく落ち着いていられるな。俺にはなんだか居心地悪くて落ち着かないな。あー、早く王子と姫が
来てくれないかな?この城の従者もさっきからじっとしているままだし、このままじゃ、
息が詰まってしまうよ。あんなに真面目な顔をして、楽しい事がないのかな?」と、
ずっと動かず静かに王子と姫の到着を待っている、城の従者たちの存在にも先程から気になっては、
一人落ち着かないジインなのであった。






a0073000_14122527.jpg

[PR]
by maarenca | 2014-09-24 14:20 | ファンタジー小説