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THE SIX ELEMENTS STORY No28






THE SIX ELEMENTS STORY





No28





                                      著 水望月 飛翔



 それから向かった第二の島では、空の領土の人々が「聖なる騎士団」の一行を出迎える様に、
静かに立ち並んでいたのであった。
そして、「聖なる騎士団」の一行が空の民達に近づくと、空の人々は口々に彼らに声をかけたのだった。

「慈愛の化身、ゼンス様。よういらっしゃいました。」
「我らが誇り、ロードス様。お帰りなさいませ。」
「清廉なるユラン様。またお目に掛かれて光栄です。」
などと一言ずつ言葉を述べ、静かに一行を出迎える空の領土の人々。

 そしてジインが最後に姿を現すと、初めて見る大地の領土の者に何の驚きも見せずに空の人々は、
「大地の領土より参られた新しき騎士殿。ようこそ、我らが空の領土へ。」と、静かに声をかけたのだった。

 この時、空の領土の民達の言葉を初めてジインは耳にしたのだった。
空、水、緑、大地、炎、と五つの領土の言葉は、みなそれぞれ違っていたのだが、
「聖なる騎士団」が領土に入ると、それぞれの領土に住む精霊が現れ、一人一人の頭上にいつも控え、
その領土の言葉を使えるように、手助けをしていたのだった。

 例えば、大地の領土に入れば、「聖なる騎士団」の一行は皆、自然と大地の言葉を話す、と言う具合に。
それでは、「迷いの森」の道中ではどうであろうか。

彼らは、それぞれ直前まで滞在していた領土の精霊から、言葉の波動を移してもらい、次の領土に
着くまでは、その力で前の領土の言葉を使っていたのであった。

(なんてすべらかで美しい響きなんだろう。それに、なんて一つ一つの動作が優雅で美しいんだ。)
ジインは、空の領土の人々のたおやかでありながら、同時に優雅な面持ちを持つ出迎えを受け、
また、彼らの静かで流れるような動作に、ただただ素直にそう心に思ったのだった。

 そんな素直で好意に満ちたジインの反応を感じ、空の民達もまた、敬意と感謝を持って静かに
ほほ笑んだのだった。

 そして、そんなジインの姿を「聖なる騎士団」の長老達も、うれしく見つめたのだった。
それから、第三、第四の島と渡るにつれて、空の人々の一人一人が一層、落ち着きと威厳に満ちた
存在の人々へとなっていったのを、ジインは感じ取ったのだのであった。

(空の人々の静けさが、島を登るごとに増している・・・。この様な違いは大地の領土では見る事がない。
本当に此処は大地の領土とは違う世界なんだな。)
 新たな島を渡るごとに、どんどん空に近づき浮遊しているような感覚と、初めて目にする
空の領土の風景、感覚、人々にジインは自分の心まで、まるで浮遊している様な、不思議な感覚に
襲われたのだった。

 そして第四の島に着くと「聖なる騎士団」の一行は、王の迎えが来るまで、「慈しみの礼拝堂」で
しばらく、休息を取ったのだった。 

 この「慈しみの礼拝堂」の壁は、まるで天使の住処かと思われる様な、一枚一枚が美しい
白い羽根の形をしている、光沢のある細工で覆われており、礼拝堂の内部では、低音から高音まで
幾重にも重なった音がどこからともなく奏でられ、それはまるで、天上への祈りを込めている様な、
荘厳さに満ちていたのだった。

(此処がロードス様とイズールが暮らしていた空の領土か。二人の落ち着き整っている気質を、
そのまま見て取れるようだな。)と、ジインは感心しながら、ずっと飽きずに礼拝堂の内部を
眺めまわしていたのだった。

 そんなジインが、大きく開け放たれた礼拝堂の窓の外をふと見ると、まるで高い空の中を自
分が漂っているように、ゆったりと佇む雲を遠くに近くに見たのだった。

 そして、その雲の切れ端からは、時折眩しい太陽の光がいく筋にもなってこぼれ落ち、
神々しい美しさをジインの目の前に見せたのだった。
 そんな美しい空を眺めていると、程なくして空の王の城から、王の使いの者が彼らを迎えに
来たのであった。

 いよいよ、第五の島。空の王のいる城へと、一行は向かったのだった。

一行が第四の島から第五の島へと続く橋を渡っていると、ゆっくりと南側から近づいてきた雲の一団が、
そのまま一行を包み始めた。

 どんどん雲の厚さが増し、ほんの先が全く見えない状態になったのだったが、しかし一同は
さしたる動揺も見せずに、そのまま橋を進んで行ったのだった。
 しかし、初めて渡る高い場所にある橋に、気後れしていたジインだけが一人取り残される形となり、
もうすでに相当なる高さとなっている橋の上で、自身の心細さと相まって、自身の周りを包む霧に
身を固くして、歩みを止めるジインなのであった。

 やがて人の気配が遠のくなかで、ジインは彼らの背中に声をかけたのであったが、何故か、
その声も周りを漂う霧にまるで遮られる様に、彼らには何一つ届かなかったのだった。

 白い霧と静寂に取り囲まれて、最初は不安に思っていたジインであったが、しかし、次第に
その霧の心地よさがジインの心を落ち着かせていったのだった。

(なんだろう?この感覚は。最初は正直、まるでどこに自分が居るのかさえ分からなくなって
しまった様な心細さがあったのに、だんだんと不安がなくなっていく。いやそれどころか、
むしろ何かに守られているような、安らぎすら感じる。)ジインが、しっとりしたこの霧に、穏やかに
身体を預けていると、その時、かすかな声が耳元で聞こえたのだった。

「ようこそいらっしゃいました。」
まるで春風が一瞬で吹き抜けていく様な、軽やかな少女の声が、ジインの耳をふんわりと
かすめ通ったのだった。
不思議に思い、周りを見回したのだったが、何も見つける事ができずにぼんやりと佇むジイン。

 やがて次第に霧が晴れてくると、ジインの目の前には、白く壮麗に佇む空の王の城が、
その姿を悠然と現したのだった。

 空の城はすべてが白い美しい大理石でできており、天へと真っ直ぐに伸びる三本の塔を中心に、
建っていたのだった。

 そして、左右に連なる建物からは、中央にそびえたつ塔を目がけて伸びる羽の様に、
何本もの流麗な線がうねりながら王の城を形作っていたのであった。

 一番下の一階部分は、堅固な城を支える様に、歴代の空の王の像が立派な柱として
力強く支えており、それらの柱や無数の窓を、プラチナの輝きの金属が、ツタの流れのような
曲線を描きながら、この空の城を美しく飾っていたのであった。

 そんな荘厳な佇まいを、祝福するかのような天から降り注ぐ光に照らされて、空の王の城は、
眩いばかりの威厳と崇高な輝きを放っていたのであった。

「なんて立派で美しい城なんだ。」ジインは初めて見る空の城の美しい姿に圧倒されて、
思わず声をあげたのだった。
 そんなジインの驚きの声に、ずっと前を歩いていた一同は歩みを止めて、ジインの方を
振り返ったのだった。
 そして、城の美しさに茫然と立ち尽くしているジインに向かって、「さあ、ジイン殿。
いつまでもそんな所にいないで、早く私達の所に来てください。王の城に入りますよ。」
と、イズールがジインに声をかけたのだった。

 イズールにそう言われて、ジインはハッと我に返り、足早に一同の元へと駆けて行ったのだった。
そしてジインは皆の所に着くと、長老ロードスとイズールに向かって、息せき切ってこう言ったのだった。

「ロードス様、イズール。空の王の城はなんて素晴らしいんでしょう。お二人の故郷は
本当に美しいですね。」ジインは素直にそう感じた事を、二人に言ったのだった。

 そんな幼い子供の様にはしゃぐジインに、イズールは一瞬目を丸くして、言葉に詰まったのだったが、
程なくして優しい微笑みを湛えながら、ジインにこう言ったのだった。
「ありがとう、ジイン。君が我が故郷をほめてくれて、本当にうれしいよ。」と言うと、
すかさずジインは、「そんな、褒め言葉なんかじゃないよ。ただ本当にそう思っただけなんだ。」
と言うと、ロードスはゆっくりとジインの元に行き、ジインの肩に手を置いて、静かにこう言ったのだった。

「新たなる聖なる騎士。ジイン・クイードよ。そなたの率直さや正直さは、何にも代えがたい
美徳の一つであろう。我らが故郷の美しさを解ってもらえて、私もまた本当にうれしく思う。」
そう言うと、一呼吸置いてから静かに続けたのだった。「されど、今は少し心を落ち着けてはいかがか?
我らが空の王は、特に静寂に満ちた秩序ある美しさを気に入っておられる。今のそなたの高揚した
波動をそのまま纏っての謁見は、少し場違いにも思う。」ロードスはジインをじっと見つめると、
ジインにこう告げたのだった。

「わしには今のそなたの高ぶる波動が、どうもいささかこの場にあわぬ様にも思うのじゃ。
今少し、心を落ちつかせるがよかろうて。この先の、水の領土、緑の領土の美しさもまた比類なく、
今のそなたの落ち着きのなさでは、この先持ちこたえられなくなるやも知れぬ。どうか今少し、
心を落ち着かせるがよいように思うが、ジイン、いかがだろうか?」まるで幼子を落ち着かせる様に、
慈愛を込めた瞳でロードスは、ジインを諭したのだった。

 そんなロードスの言葉を聞いて、ジインは自身が「聖なる騎士団」の一員であることを、
改めて自覚すると、ゆっくりと目を閉じて心を落ち着かせたのだった。そして再び目を開けると、
ロードスにこう言ったのだった。

「ロードス様、お言葉ありがとうございます。ロードス様のご心配、しかと心に受けとめました。
私は、「聖なる騎士団」の一人として、いま一度、心落ち着けて参ります。」と、今までの浮き足だった
表情を引き締めるジイン。

 それから一呼吸置くと、ジインは笑顔で、「さあ、皆様。空の王の城へ参りましょうか。」
と、言って先頭切って進んでいたのだった。

 一同はそんなジインの後ろ姿を見つめると、穏やかに笑みを浮かべながら、王の城へと、
入っていったのだった。





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by maarenca | 2014-09-17 10:21 | ファンタジー小説