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THE SIX ELEMENTS STORY No26






THE SIX ELEMENTS STORY






No26





                                    著 水望月 飛翔


 それからようやく「迷いの森」を抜け、「聖なる騎士団」の一行は空の領土の一番西の端の
森にたどり着いた。
 しかし今回は、ジインの波動の乱れにより、不本意ながら「聖なる騎士団」の一行は、
闇に対して攻撃の力を使ってしまったのであった。
 その為その日一行は、「迷いの森」からあまり離れないよう、空の領土の西の端で、
一晩休息を取った。
その晩、ジインは「迷いの森」での事に興奮してか、なかなか寝付けずに、何ども寝返りばかりを
うっていたのだった。

 遥か東の空の上空を眺めると、高くそびえ立つ、美しい雪に覆われた断崖が、威厳に満ちた
冷たさを纏いながら、その姿を厳然と現していた。

 そしてその上空には、ジインの耳に初めて聞く、空の領土の美しく冷たく整った旋律が、
蒼く輝く星々から静かに、地上へ届けられていたのだった。

 ジインはその整然とした星々をじっと眺めながら、ただ疲れたその身を預けていたのであった。

「美しい。なんて美しいんだろう。まるで大地の領土の星々とは、全く違った存在を見ているようだ。」
そう小さく呟くと、しかし少し肩を上げて「だけど、この整い過ぎた均衡はなんだろう?なんだか俺には
少し場違いな感じだな。本当にこの空の領土の星達は、まるで一つ一つがロードス様のように整って
いるようだ。でもなんだか、ロードス様に監視されている感じみたいだな・・・。」と、最後は苦笑交じりに
一人ごちたのだった。

 しかし、ふとそんな事を一人思っていると、ジインのいる場所から少し離れた草むらで、何やら
人の動く気配をジインは感じ取ったのだった。

 ジインは身体をゆっくり起こし、目を細めてその気配の方をじっと見つめると、イズールと
おぼしき人物が、静かに「迷いの森」の方角へと走り去っていく姿をとらえたのだった。

 ジインは少し不思議に思い、そっと静かに立ち上がると、森へと続くその人影の後を、
気配を殺して追っていったのであった。

 そうして静かな森の中を抜けていくと、ジインの視線の先に、所々から光の反射が見え、
その光の先の方へと先程の人物が近づいて行ったのだった。

「イズール、どうしたのだ?こんな夜中に。」
光の元から声が発せられると、月明かりの差す光にロードスの顔が、照らし出されたのだった。

「ロードス様、すみませぬ。ロードス様が心配になって来てしまいました。」先程から後を着けてきた
人物は、謝るようにそう答えたのだった。

(ロードス様とイズール?いったい二人はこんな夜中に何をしているんだろう?)ジインは
夜中の時分にこっそり「迷いの森」の傍に居る二人の姿を、草むらに隠れてじっと見つめたのだった。

 先程のロードスの問いに答えたイズールに、やれやれという表情をして、長老ロードスは
イズールにこう説明したのだった。

「イズールよ。わしの事なら心配いらぬ。今日は思いに反して、「迷いの森」に攻撃の力を
使ってしまった所為で、いつまで経ってもざわついているこの闇を、ただわしの鏡の光で
なだめているだけなのだ。目には見えぬが確かに存在するこの森の住人が、ただ静かに
眠れるように、とな。」
 そう言うと、ロードスは今宵の月明かりを自身の鏡に反射して、「迷いの森」の暗闇に向かって
注いだのだった。

 それを聞いたイズールは静かに頷くと、ロードスに向かって、こう答えたのだった。
「ええ、解っております。ただ、ロードス様が夜を徹して、こうしてお一人でやってらっしゃるかと思うと、
私もまた眠れないのです。」と言ってイズールは、申し訳なさそうにほほ笑んだのだった。

 二人の話を草陰から聞いていたジインは、今日の「迷いの森」での自分の失態を思い、
そんな二人の会話に鼓動が早まりだしたのだった。

 そんな大地の若者の気配に、ロードスは半ば苦笑いをしながら、ジインの潜む草むらに向かって、
こう言ったのだった。

「「聖なる騎士団」ともあろう者が、草むらに隠れていったい何をしておるのかのう。」
ロードスのその声に、ジインはバツが悪そうにその場に立ちあがり、ゆっくりと姿を見せたのだった。

「すみません、ロードス様。イズール。盗み聞きをするつもりはなかったのですが。ロードス様、
今日の俺の失態の所為でこんな事をさせてしまって、本当に申し訳ありません。」
最後は奥歯を噛みしめるように、ジインはようやく声を絞り出して、そう言うと大きく頭を下げて、
そのままじっと下を向いたのだった。

 そんな憔悴しきった大地の若者に、ロードスは今宵の月を見上げると、ゆっくりとジインに近づき、
静かにこう言ったのだった。

「若き大地の騎士。ジイン・クイードよ。そなたはこの「聖なる神器」を出現させてから、
まだ大した時間も経っておらぬではないか。ましてや「迷いの森」に足を踏み入れたは今回が初めての事。
その様な者に対して、失態などという事が何処にあろうか。」そう言うと、ロードスは今までよりも、
優しい眼差しをジインに向けて、こう続けたのだった。

「己を責めてはならぬ、大地の若者よ。これからじゃ。これから少しずつ、力をつければよい。
ただ、それだけじゃ。」

(ただそれだけじゃ。)最後のこの言葉を噛みしめる様に、ロードスはこう言ったのだった。

 昼間の「迷いの森」での自分の行動に、あるいは責められるのではないのかと、ロードスに
対して疑念を持っていたジインであったのだったが、ロードスのこの優しい言葉を聞いて、
そんな事を思っていた自分が恥ずかしく、また申し訳なく思ったのだった。

 そんな、言葉なくただ立ち尽くすジインに向かってロードスは、「さあ、大地の若者よ。
明日はいよいよ我らが故郷、空の王の城へ向けて出発いたす。我らが空の者の誇り、
偉大なる空の王と王家の皆様に、立派に挨拶ができるであろうかのう?そなたの振舞如何では、
このわしが叱責されるやも知れぬ。どうかな?初めてなる大地の領土の騎士よ。」と、ロードスに
そう言われると、ジインは思わず固唾をのんで、姿勢を正したのだった。

 そんなジインの姿を見て、イズールは長老ロードスの方を向くと、「我らが領土の誇り、
「聖なる騎士団」を創りし偉大なる、ロードス・クレオリス様。あなた様がその様に申されては、
ジインは心配になって今宵、一睡もできなくなってしまうではありませんか?」と、少し可笑しそうに
言ったのだった。

 イズールの言葉に、ジインは頭をかきながらただ苦笑したのだった。

 そんなジインの姿を見てロードスは、「それでは、若き大地の騎士が少しは休める様に、
我らも戻るとするかのう。」と二人の若き騎士に声をかけると、皆のいる場所へと戻っていったのだった。

 明日はいよいよ空の領土へ。

大地の騎士、ジイン・クイードが初めて会う、空の領土の王の元へと。


「ああ、まだかしら。まだ「聖なる騎士団」の皆様はお着きにならないのかしら?」
そう言って、部屋の窓からそわそわと、何度も覗き込むリティシア姫なのであった。

 そんな落ち着きの無い姫の様子を見て、「これはこれは。崇高なる空の領土の姫ともあろう者が、
その様に落ち着かぬ様子を見せていてはいけませんね。我らが偉大なる父王、タリオス王が
姫のその様な姿を目にされたら、きっとお嘆きになりますよ。」と、妹姫に優しく笑いながらたしなめる、
兄のカサレス王子なのであった。

 「それに、まだ成人の儀式を迎えていない姫の石を今はまだ、あまり安易に使わない方がいいでしょう。
石はただの道具ではありませんよ。リティシア。」と、先程とはうって変わって、真剣な眼差しで
姫にこう言ったのだった。

 そう、リティシア姫は、まだ成人の儀式をしていないにも関わらず、ロードスから移してもらった
石の力を何度か使っては、ロードスの持つ鏡の気配を感じ取っていたのであった。

「ごめんなさい兄様。お父様には内緒にしていてくださいね?」兄の注意の
言葉を聞いて飛ぶように兄の足元に来ると、リティシア姫は優しい兄の顔を覗き込むようにして、
こう言ったのだった。

 そんな姫の愛らしい願いに、カサレス王子は一つため息をつくと、「君の願いを断る事が出来る者など、
いったいどこにいるのだろう?もしいたら、ぜひ一度会ってみたいものだよ。リティシア。」
そう言うと、やれやれといった表情を見せるカサレス王子なのであった。

 そして、胸の内で(あの厳格なロードス殿も、こうしてリティシア姫の願いを聞かざるを
得なかったのだろうか?)と、笑みを堪えながら、こう思ったのだった。

 そんな二人のやり取りの後、それからようやく少しすると、空の王の元に「聖なる騎士団」からの、
謁見の願いが届いたのだった。
 そして、カサレス王子とリティシア姫の元にも、「聖なる騎士団」の謁見の場に、二人とも
立ち会う様にとの知らせが入ったのだった。

「やっと来たわ。」リティシア姫は待ちくたびれたとばかりに、ア―キレイとフリュースからの知らせを、
大喜びしながら聞いたのだった。

 そんな姫の様子を微笑みながら見ていたア―キレイが、最後に一言、二人にこう告げたのだった。
「カサレス王子。リティシア姫。この度は新たに「大地の領土」から「聖なる騎士団」に入った者が
おりまする。何卒、正式なる謁見の正装でおいでくださりますよう、お支度をお願いいたしまする。」と、
深々と頭を下げてこう言ったのだった。

 カサレス王子はその言葉を聞くとすぐに、「あい、解った。すぐに「天上の織り成す光衣」を
用意させてくれ。支度をするとしよう。」と、ア―キレイに告げたのだった。

 そして二人が、うやうやしく姫の部屋から退出するのを見届けると、王子は姫の方にゆっくりと
向き直り、なるほどという顔をして、姫にこう言ったのだった。

「リティシア姫。こういう事でしたか。君はよほど大地の領土にご執心のようだね。」と言うと
姫の顔を覗き込んだのだった。

 そして、それから少し考える様子を見せるとまた、リティシア姫の方に向き直り、こう続けたのだった。

「しかし、今回はその者にとって、初めてなる正式な空の王との謁見の場となる。
そして、私達は空の領土の王族として、その者に敬意ある態度を示さねばならない。わかるね?
リティシア姫。今日の所は静かにして居る様に。」と、浮足立っているリティシア姫に、
優しく忠告をしたのだった。

 そんな兄の言葉を聞いて姫は頷くと、「解ったわ兄様。今日は空の領土の姫として、父様に
誇りに思ってもらえる様に振る舞うわ。」と、兄に返事をしたのだった。

 そんな姫にカサレス王子は、「君はいつでも我らの誇りだよ。」と、優しく言いながら姫の頬に
手を添えると、姫の部屋を出て行ったのであった。

「兄様、ありがとう。」そんな優しい兄の後ろ姿を、うれしく見送るリティシア姫なのであった。



空の領土 リティシア姫                                イラスト 佳嶋        
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 (キャラクター著作権は水望月飛翔が保有している為、無断使用、転載は固くお断りいたします。)

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by maarenca | 2014-09-10 10:59 | ファンタジー小説