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THE SIX ELEMENTS STORY No25










THE SIX ELEMENTS STORY




No25





                                      著 水望月 飛翔


 そんな、身じろぎも出来ないでいるジインの肩に手を置くと、長老ゼンスは明るくジインに
こう言ったのだった。
「さあ、大地の若き騎士、ジイン・クイードよ。これから通る「迷いの森」に、少しの迷いや己の弱さを
見つけてはならぬぞ。もし、少しでも恐怖を受け入れれば、たちまち闇の侵入を赦してしまうからのう。」
と言うと、大きく呪文を唱えて自身の杖を高く振ると、地面に勢いよく打ち付けたのだった。

 そんな突然のゼンスの行動に驚いて、目を見張って見ているジインを横目に、ゼンスはそのまま
森の精霊を呼び出すと、その精霊が自ら明るい灯りとなって、この「迷いの森」に小さな希望の灯りを点
したのだった。

 それを見届けると、続いて長老ロードスが呪文を唱え始め、今まで歩いてきた大地の森で集めた光を
大きく放出させて、「聖なる騎士団」の一行をその光で包み込んだのだった。

 そして、「聖なる騎士団」の一行が全て、この光の中に入ったのを確認すると、長老ユランは
竪琴をつま弾きながら彼の美しい歌声を響かせ始めたのだった。

 すると、その歌声が優雅な噴水の流れの様な姿となり、ロードスが放った光を内側から支え、
その守りに着いたのだった。

 こうして一行を守る光の陣が出来上がると、「さあ、行きましょう。」と、空の若き騎士、
イズールがジインに向かって声をかけたのだった。

 そして、一番前には長老ゼンスが灯りの先導となり、次に長老ロードスと長老ユランが立ち、
後方に若き騎士のイズールとリューレンが守り、その真ん中に大地の騎士ジインを促したのだった。

 ジインは、こうして皆に守られる様にしているしかない自身を歯がゆく思ったのだったが、
今の自分には残念ながら皆の力になる事も出来ずに、そのまま皆に従ったのだった。

 やがてロードスが出現させた光に守られながら、一行は「迷いの森」を進んでいったのだった。

 彼らを守る光の周りを、「ヒューン。ヒューン。」と音を立てながら、不気味な風が何度もすり抜けて
いったのだった。ジインはなるべく不気味な気配のする方を見ないように、まっすぐ前だけを見つめ
歩を進めた。しかし、そのうねる様な音を従えた何者か達が、姿を見せずにずっと一向につきまとい、
「迷いの森の」の闇が一層暗くなり始めると徐々に、「ドン。」と彼らの光に体当たりを始めたのだった。

 そして、「聖なる騎士団」を守る光への攻撃の数が、次第に多くなり、やがては雨の様に間断なく
襲いかかり始めると、そのつど彼らを守る光の輪が大きく歪み始めたのだった。

 次第に強くなってくる闇の攻撃に対し、長老ユランの歌う歌声になぞらえる様に、イズールも
「真実の言葉」が宿る石の力を歌声に乗せ、一行を守る光に力を添え、リューレンもまた、
「癒しの手」の力で皆の精神統一を助けていたのだった。

 こうして、それぞれが自分の力を発揮しながら、「迷いの森」を進む中、ジインは己が何も
出来ていない事のいらだちと、その反面、皆を守っている光を突き破ろうと向かってくる闇に、
自身の怯えの心を感じて、己の剣を力を入れて抱いたのだった。

 すると、ジインの心の乱れの波動に剣が呼応したのか、突然狂った生き物の様に、
激しくその身を揺さぶり始めたのだった。

 そんな己の剣にジインは驚いて、「どうしたんだよ。暴れないでくれよ。」と、必死になって
その荒れ狂う剣を抑え込もうとしたのだった。

 しかし、自身の冷静さを欠いている主の言う事など、剣に届くはずはなく、制御不能となった剣は、
やがて、収められていたさやから抜き出ようとしたのだった。

 そんなジインの剣の気配を感じて、振り返った長老ロードスは、鋭い視線を送ると、
素早くジインの剣に向かって、「なんじ、己の意志を思い出すがよい。」と諭すように言ったのだった。

しかし我を忘れた剣はその後も暴れ続け、ジインの手のうちから逃げ出そうとしたのだった。
するとロードスは素早く「戒めの軛」の呪文を唱えると、天上の兵士を鏡から出現させたのだった。

 ロードスから呼び出された天上の兵士たちは、自身の衣の長い袖を伸ばし、次々とジインの剣に
巻きつき、その激しい動きを抑えたのだった。
 しかしそれと同時に、先程まで一行を守っていた光の力が弱まったのだった。

 すると、それまで光の中を伺っていた闇達が、その一瞬の隙を突いて「聖なる騎士団」の元に近づくと、
徐々にその闇の勢力を拡大し始めたのだった。

 そして、四方八方に闇を大きく拡大させると、次の瞬間、一気にその秘めたる牙をむき出しにして、
容赦なく一行に襲い掛かり、防御の光を突き破ったのだった。

 長老ゼンスはそんな闇の攻撃に対して、杖を大きく振ると、「光の精霊」を呼び出して、
闇の攻撃を躱す盾へと変身させて防御し、長老ユランは竪琴から急ぎ龍を呼び出すと、
闇への反撃に出たのであった。

 イズールは石の宿った舌を丸めて「ヒューッ。」と長く口笛を吹くと、空の高いところから
白く半透明な一羽のオオワシを呼び寄せたのだった。

 そしてオオワシは「闇をはらいし槍」の切っ先に止まると、イズールが流れるような動きで、
一突き二突きするごとに、大きく羽を広げては、光の波動を放ち、闇を次々と振り払ったのだった。    

 リューレンは石の力を散りばめた両手で、印を作ると青く光る細長い身体の、泉の使いである
蛇を出現させると、自由になめらかに動く「清流の流れの如き鞭」に沿わせて、襲いかかってくる闇を
鋭い牙でくわえては、遠くに追い払う様に応戦したのだった。

 こうして、各々が自身の武器を出現させて、輪郭のはっきりしない、しかし容赦の無い闇の攻撃を、
必死でうち払っていたのだった。

 そんな彼らの交戦を、恐怖で固まった身体で、じっと見つめるジイン。
しかし次の瞬間、必死で闇と闘っている彼らの間をすり抜けて、闇の一撃がジインに狙いを定め、
物凄いスピードで向かって来たのだった。

 それまでジインの剣を抑えていた天上の兵士の一人が、闇の気配に気がついて、自身の袖を
振り払うと、そのままジインの前に立ちはだかったのだった。

 ジインは、恐怖のあまり身体が動けずにいたのだったが、その兵士の後ろ姿に一瞬、
ユーリス王子が「ジイン。」と大きく叫ぶ姿が現れた様に見えたのだった。

 しかし次の瞬間、ジインを守ろうとした天上の兵士の身体が、闇からの攻撃をもろに受けると、
一瞬で砂の様に崩れ落ちたのだった。

 そして、崩れ落ちる兵士の背中と共に、ユーリス王子の心配そうな残像も、もろく崩れていったのだった。

 ジインはその残像を、ただ力なく見送ったのであった。
そして固く目を瞑ると、心の中でこう呟いたのだった。
(ユーリス。ユーリス・・・。)

 そうして、肩で大きく息をすると、ジインは次第に自身への不甲斐なさに対する怒りが、
こみ上げてきたのであった。

(俺は、こんな事で怯える為に「聖なる神器」を出現させた訳ではない。こんなところで、
一体俺は何をやっているんだ。)

そう心の中で言葉を履くと、ジインはカッと目を見開いて、「見ていてくれ。ユーリス。」
そうひとり呟くと、ようやく我に返ったかのように、怯えの見えた瞳に勇気の力が戻ってきたのであった。

 それからスッと石を宿した右腕に左手を添えると、勢いよく「行くぞ。」と声をかけ、
ロードスが出現させた天上の兵士たちが動きを抑えている、自身の剣に改めて力をいれたのだった。

 すると、今度はジインの強い波動により、天上の兵士たちがはじかれる様に次々と
剣から手を放していったのだった。

 そうして剣は、己の主の手中に収まると、息を吹き返した様に、闇の中を進み
切り裂いていったのであった。

 そんなジインの力強い動きに、一同は驚き目を見張ったのだった。
「私が出現させた、天上からの兵士を振りほどくとは。」

 ロードスは驚きを持ってジインの姿を追ったのだったが、ジインの反撃の前に闇の攻撃が
少し弱まりを見せ始めると、すかさずロードスが天上の兵士を鏡に戻し、「防御の光」を
再び出現させて、一同はこの光の中へと素早く入ったのだった。

 そして各々がまた先程の様に、闇からの守りの陣を敷き直したのだった。
「まだ安心してはならぬ。陣を整えて、一気にこの闇をぬけるのじゃ。」そう一同に声をかけるゼンス。

 ジインは両手で剣を思い切り強く握ったまま、肩で荒く息をしながらも、少しずつ自身の
意識を己の剣に集中させていったのだった。

 そして、そんなジインの心がゆっくりと、収まりを見せ始めた時だった。

ジインの右腕に宿った石が光りだすと、剣もまたそれに呼応するように輝き始めたのだった。
 それを見たゼンスはジインに向かって、「よしよし。若き大地の騎士よ。そのまま己の剣に
呼びかけるがよい。己の剣を信じるのじゃ。そなたの剣がそなたの力を見せてくれるであろうて。」
と、優しく言ったのだった。

 ゼンスのそんな言葉にジインは目を閉じて、己の剣に心の中で語りかけたのだった。

「剣よ。「聖なる神器」の俺の剣よ。どうか俺の声に応えてくれ。俺は皆の力になりたいんだ。
皆が自身の力を如何なく発揮できるように、俺はその手助けをしたいんだ。どうしたらいい?
悲しみを断ち切りし俺の剣よ。」

 ジインは己の剣に向かって、一心に語り掛けたのだった。
すると、そんな主の真剣な声に、剣は先程の様に荒れ狂った動きとは違い、今度はすべらかに
踊る様な動きをジインの手の内で見せたのだった。

 そして、ジインはそのまま力を入れずに、剣の動きをなぞらえるように身を預け、
優雅な舞を舞うような動きを見せたのだった。
 
 そんな剣と主が一体となった動きから、しばらくすると少しずつ穏やかな波動が広がり、
周りの者の心に、勇気と安らぎの力を伝わらせていったのだった。

「おお、これは何とも心地よい温かな力ですな。」とユランが言うと、ゼンスも「ほんにそうじゃな。
この様な後押しがあれば、これからはもっと楽に「迷いの森」を行き来できるじゃろうて。
力で抑えるのではない。もっと闇の声を聞き、もっと闇の解明をする事が出来るじゃろう。」
と、うれしそうに言うと、それを聞いたロードスも若き二人も、静かに頷いたのだった。

 しかし、そんなうれしい言葉もジインの耳には届いていなかったのだった。
ただひたすらに一心に剣と一体となる為、己の剣に集中しているジインなのであった。






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by maarenca | 2014-09-06 09:40 | ファンタジー小説