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THE SIX ELEMENTS STORY No23









THE SIXELEMENTS STORY




No23



                                      著 水望月 飛翔




 それからユーリス王子は、ジイン・クイードが「聖なる騎士団」に入ってから、各地を巡った話を
いろいろ聞いたのだった。

 しかしその前に、若き空の領土の騎士、イズール・キョークが、緑の領土の森で大地の領土からの
今までに感じた事のない波動に出会った時の事まで、遡らなければならないだろう。

 緑の領土の森には、「アンドゥールの森」という、一際太古からなる植物たちが生い茂る
古い聖なる森が存在していたのであった。
 そしてこの時も「聖なる騎士団」の一行は、ちょうどこの森の神秘を探っていたところで
あったのだった。
 そう、この森の空気は、他のどの場所とも全く異なり、重さも存在も感じない空気の中にあって、
何やら息づいているような・・、しかし、まだそれが何なのかは、一切解らない不思議を宿している
森なのであった。

「聖なる騎士団」の者達は、各々がそれぞれの力を使ってこの森の不思議を探っており、
そしてそれらの行為により、森の解明と同時に、また自身の能力を向上させるという、
大事な機会でもあったのだった。

 空の若き騎士「真実の言葉を宿す者」イズール・キョークは、両の掌を上に向け、
目を閉じながら一心に精神を集中し、この「アンドゥールの森」からの真実を自身の舌の上に
乗せようと試みていたのだった。

 そうそれはずっと昔、気の遠くなるような太古の時代から、この森に住む精霊達の、
かすかな息遣いをひとつ残らず聞き逃すまいと、じっと身体じゅうの神経を研ぎすませながら、
色々な方角に身体を向けていたのだった。

 そしてふと、身体の向きを大地の領土の方に向きなおした時の事であった。
突然イズールの額の奥の方に、何か電気でも送られたような痺れが伝わると、自身の身体が
一切の自由を奪われ、程なくしてイズールは己の意思ではない言葉を発したのであった。

「「聖なる騎士団」の一同よ。これより、我の真実の言葉を聞くがよい。我はこの森に住む
太古よりの精霊なり。今しがたこの緑の領土よりさらに東の方角、遥か大地の領土にて、
新たなる「聖なる神器」が現れたもうた。かの者は、己の右腕にトパーズを宿し、
「悲しみを断ち切りし剣」を出現せし者。しかしかの者、制御の力が未だ不安定にもかかわらず、
無理にその力を使おうとしており、このままではいつその力が暴発するやも知れぬ。
一刻も早く、かの者の元に集い、その者を正しき方へと導きたまえ。」と、広く大きく森じゅうに
その声を響き渡らせたのであった。

 イズールは硬直した身体と、自分でも何処から発しているかも解らぬ強い意志の支配に驚きつつも、
この神秘な力にしばし身を預けたのだった。

 そして、「アンドゥールの森」のなかを響き渡るその声を聞き、方々に散らばって探索をしていた
「聖なる騎士団」の一同は、すぐにイズールの元に集まると、新たなる仲間の出現を喜んだのだった。

 その中でも特に長老ゼンスは、大地の領土での初めての騎士の出現をたいそう喜んだのだった。
「おお、そうであるか。大地の領土にのう。また新たなる正しき力が誕生したとは、なんとうれしい事じゃ。
そうか、「悲しみを断ち切りし剣」とはのう。王妃様の出来事を思っての事であろうが、これで少しは
大地の領土の悲しみも和らげばよいのう。」と、うれしそうに言ったのだった。

 しかし、隣にいたロードスが自身の鏡からジインの荒々しい気配を読み取ると、少したしなめる様に、
ゼンスに向かってこう言ったのだった。
「しかし、ゼンス殿。かの者は未だ力のコントロールが出来ていないにも関わらず、強引に術を
発動させようとしておりまする。まずは一刻も早くこの者の元に我等が赴き、この者の力が
正しく発動できる様に導きませんといけませぬ。」と告げたのだった。

 そして、ロードスのすぐ隣に居たユランも、目を閉じながら自身の竪琴を鳴らし、
その響きの中からジインの落ち着かぬ波動を感じ取ると、少し苦笑いしながらこう言ったのだった。

「おやおや、この者は相当慌てておる様ですな。何とも荒々しく。しかし、穏やかな
る大地の領土の民にしては、如何したのでしょう?この様な乱れた波動を、今まで大地の民から
感じたことはありませぬ。これは早急にその者に会った方がよろしいでしょう。」と、こうゼンスに
進言したのだった。

 ゼンスは二人の進言に、静かにうなづきながら一同をゆっくり見回すと、「仕方あるまい。
次の訪問を予定していた水の領土はまたとして、すぐに大地の領土へ出発せねばなるまい。」
と言ったのだった。 

 この言葉を聞いて、若き水の騎士、リューレン・クボーは少しがっかりしながら自分に言い聞かせる様に、
こう言ったのだった。

「「聖なる騎士団」に入ってからは、初めての水の領土の帰還でしたが、仕方ありませんね。
我らが新しき仲間を迎えに行かねば。」と、少し寂しそうに肩をすくめて言ったのだった。

 その言葉を聞いてゼンスは、「すまぬのう。リューレン・クボーよ。わしもそなたの立派になった姿を
、水の領土の皆様にお見せしたかったのだが。しかし、そなたの故郷に行く前にまた他の領土を
巡っていけば、今よりも増々そなたが成長を遂げた立派な姿を、方々にお見せ出来ようて。」
と言って、元気づける様にウインクをして見せたのだった。

 その言葉に一同は頷くと、「聖なる騎士団」の一行は、これより大地の領土へと向かったのだった。

 その日は、少し冷たい風が一日中吹いていた日であった。
そんな風の吹くなか、大地の領土の西の森で、一人ジインは何度も剣をふりまわしては、
術を発動させようとしていたのだった。しかし、気ばかりが焦る精神の元では、石の力は
発動する訳などなく、若者らしい性急さをもって、イライラと周りの草を、その剣で切り散らかして
いたのであった。

 そんな時、ふとジインが森の奥から近づいてくる人影の気配に気づき、それまでの荒々しい
動きを少し止めて、その気配の方向に視線を向けたのだった。  
 そして、動きを止めてじっとそちらの方を見ていると、何やら人影が近づいて来たかと思うと同時に、
木陰からジインにこう話しかけてきたのであった。

「なんとも。ここは確か、穏やかなる大地の領土と思うて来たのじゃが、さては我々はどこぞの
荒々しい新天地へ迷い込んだのかのう?」と、穏やかに笑いながら長老ゼンスが第一声をかけたのだった。

 それに続けながら長老ロードスが次に口を開くと、「そなたの剣はその様な使い方をするものでは
ありますまい。我らが新しき仲間の素晴らしき剣を、どうか我らに見せては下さらぬだろうか?」
と、ジインに向かってこう言ったのだった。

「我らの新しき仲間?」
ロードスのその言葉を聞くと、ジインはハッとしてその場に跪き、バツが悪そうにこう聞いたのだった。
「「聖なる騎士団」の皆様。お久しゅうございます。せっかくこうして皆様とまたお目に掛かれましたのに、
この様な情けない姿をお見せして、申し訳ありませぬ。しかし、私の持つこの剣は、本当に皆様と同じく
「聖なる神器」なのでしょうか?こうして何の力も発動させる事が出来無い私には、この剣を持つ資格など
無いのではないでしょうか?」

 最後は苦しそうに、顔を歪めながらそう言うジインなのであった。
そんなジインの方に歩み寄り、そっと彼の前で跪くと、長老ユランは彼の肩に手を置きながら、
静かにこう言ったのだった。

「その様な言葉は「聖なる騎士団」になりし者には似つかわしくありませぬぞ。
さあ、その輝かしい剣をどうぞ我等に見せてくださりませぬか?」
そう優しくジインに言うと、ゆっくりとジインから剣を受け取り、ゼンスとロードスの元に見せたのだった。

 そんな光景を、心配そうに覗き見るジインと目があったイズールは、穏やかなほほ笑みを湛えながら、
「きっと心配ないですよ。」とジインに告げたのだった。

 しかしジインは、心配に思っている自分の心を見透かされて、バツが悪そうに下を向いたのだった。
一方、ジインの剣を調べていた長老達は、目を合わせながら頷くと、ゆっくりと、ゼンスが大事そうに
両手で剣をかかげ持ちながら、ジインに向かってこう宣言をしたのだった。

「この豊穣なる大地の領土に、新たなる「聖なる神器」を誕生せしたる若者よ。この剣、いかにも
「聖なる神器」である事間違いなし。」

それから一呼吸置き、優しい笑顔をジインに向けると、覗き込むようにジインの方を見ながら
温かい慈愛の声で、「我らが仲間に入りし意志は、持っているであろうかのう?ジイン・クイードよ。」
と、聞いたのだった。

 そんなゼンスの言葉を聞いてジインは、とまどいながらゼンスを見つめると「「聖なる騎士団」を
創りし偉大なる長老ゼンス様。本当に私は皆様の仲間に入れる資格があるのでしょうか?」
と、思い詰めた様に聞いたのだった。

 そんなジインの自信の無い言葉を聞くと、ゼンスは一言、「そなたに入る意志があらば、
それが唯一の資格であろう。」と言い諭したのだった。

 続けてロードスもジインに歩み寄ると、「焦らずともよい。若き大地の騎士よ。そなたの
強き意志の表れは、我らもしかと受け取っておる。」と告げたのだった。
そしてユランも、「あなたを生んだ大地の領土を誇りを胸に、これからは我らと共に歩んでまいりましょう。」
と言ったのだった。
 先程から一人、黙って見ていたリューレン・クボーが、微笑みを湛えながら「ようこそ、
大地の領土からの新たなる正しき力。」と言うと、ゆっくりとジインに手を差し出したのだった。

 こうして、彼らの温かい歓迎の言葉を聞いたジインは、リューレンに手を引かれて
ゆっくりと立ち上がると、ようやくその顔に笑顔を登らせたのだった。

 そして、新たなる仲間を加えた「聖なる騎士団」の一行は、共に大地の城へと向かい、
大地の王の元にはせ参じたのであった。

 一行が大地の王の城に着くと、長老ゼンスがジイン・クイードを新たに「聖なる騎士団」として迎え入れ、
これより先は、他の領土へと一緒に連れだす許可を、大地の王に請うたのだった。

 王は、この大地の領土からなる初めての「聖なる騎士団」の誕生を大層うれしく誇りに思い、
これを快く許したのだった。

「おお、そうか。なんと素晴らしい。ジインよ。そなたはほんに我等の誇り。どうか。この大地の領土の
誇りを持って、この惑星の為に平和の一員となるよう努めてくれ。」と嬉しそうに、ジインに
こう言ったのだった。
 ジインは、この大地の王妃に起こった悲しい事件より、ずっと王の顔の上に何者をも
ぬぐう事の出来ない、くらい影がある事に、長い間ずっと心の痛みを持っており、このうれしい知らせに、
久しぶりにのぼる王の温かい笑顔を見て、自身もまた安堵の表情をのぼらせたのだった。



 



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by maarenca | 2014-08-30 13:59 | ファンタジー小説