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THE SIX ELEMENTS STORY No22









THE SIX ELEMENTS STORY



No22




                                       著 水望月 飛翔




 天上からの光に照らされる中を、色とりどりの美しい花々が咲き乱れながら空中を漂い、
その合間を宙に舞うまだ固い種から次々と、まるで生き物の様に動くつるが自由に伸びていき、
その間を踊るように美しい鳥や蝶が飛び回るのだった。

 大勢の笑いあう人々の姿。
そして、その中で黄金色のマントを来た若者が被っていたフードを取って、こちらに振り向いて。

 周りの人々の祝福の言葉に笑顔で答える姿に、祝いの言葉をかけたのだったが。
どうしても私に気づいてくれない。王子。どうして私に気づいてくれないの?
手を伸ばして近づこうとするけれど、どうしても王子の傍にたどり着けない。
「王子。~リス王子・・。」その問いかけと同時にリティシア姫は、やがて姫のベッドの上で
目を覚ましたのだった。

 天上に向かってのばした腕は掴む物もなく、そっと腕を下ろすと、姫は心細そうに
ぼんやりしながら天上を見つめたのだった。

姫の心には自分を見つけてくれない、一抹の悲しさが心に残っていた。(ユーリス王子・・・。)
 しかし姫は、ユーリス王子の成人の儀式の成功を思い出すと、(ああ、ユーリス王子は
無事に成人の儀式を終えられたのね。よかった。でもどうして、私に気づいてくれなかったのかしら?)
と一人、あれこれを想いを巡らせたのだった。

 そうして、ふとベッドのわきに視線を向けると、兄であるカサレス王子が目を閉じて、
腕を組んで座が目に入ってきた。

 その姿を見ながらリティシア姫は、(何故、兄様が私の部屋にいるのかしら?)
と、ぼんやりと考えていたのだったが、しばらくして、クラスカス山へ一人で行ったことを、
ようやく思い出したのだった。

(どうしましょう。)
リティシア姫は、夢の中と現実の違いを思い出し、気まずい思いで胸に手を置き、
兄を見つめたのだった。
 するとカサレス王子は目を開け、姫の顔を見るとにっこりとほほ笑んで、こう言ったのだった。

「おやっ?どうしてそんな顔をしているのかな?リティシア。何か悪い夢でも見たのかい?」
少し含みを入れながら微笑み、リティシア姫にこう言うと、王子は椅子から立ち上がり、
美しく長い巻き毛をはらうと、その伸びやかな身体を思い切り伸ばしたのだった。

 それからふと思い出した様に姫の方に向き直ると、王子は姫にこう言ったのだった。
「リティシア。君には夢遊病の気があるとは思っていたけど、どうやら私もそうだったらしい。
クラスカス山の頂上から、君を抱いてここまで連れてきた夢を見たのだが、どうも腕が重いな。
まるで言う事を聞かない重たい生き物を抱えた様に、なんだか腕が痛いよ。」

 そう言いながら、腕をさすっていると、リティシア姫は王子に向かって、「兄様ひどい。
私はそんなに重くないわ。」と叫んだのだった。

 その後姫はハッとして、バツが悪そうに下を向いて押し黙ったのだった。
こうして二人の静かな沈黙の中、カサレス王子はゆっくりと姫のベッドに腰を降ろすと、
姫の手を取りこう言ったのだった。

「リティシア。確かに君はそんなに重くないよ。だけど、君のとった行動はどうだろう。
父上や母上にとって、君のとった行動はそんなに軽いものなのだろうか?」
 そう優しく静かに語りかける王子の問いに、リティシア姫はうつむいて、しばらくしてから
兄の顔を覗き込むと、こう言ったのだった。

「兄様、ごめんなさい。また兄様に迷惑をかけてしまったわ。私、こんなことをして、ごめんなさい。」
そこまで言うと一息つき、そして静かにこの優しい兄に向けてこう言ったのだった。

「でも兄様、また助けてくれてありがとう。」やっとの事でそう言うと、姫は恥ずかしそうに下を向きながら、
小さく兄にそう言ったのだった。

 そんなリティシア姫に、やれやれといった表情をしながらも、優しく姫の頬に手を添えると
カサレス王子は、「今夜はもう遅い。もう眠りなさい。」と言って、姫を横にならせたのだった。

 そして、左手で姫の部屋に飾ってある花から、一枚花びらを抜き取ると、優しく握って、
手の隙間からそっと息を吹きかけたのだった。

 それから静かに握った手を開くと、淡いブルーの花びらが同じ色の羽の美しい小鳥となり、
優しく子守唄を歌いながら、姫の頭上を飛び回り、淡く穏やかな夢の世界へと、
いざなっていったのだった。
 リティシア姫はそんな小鳥の心地よい歌声に導かれるように、すぐにスーッと穏やかに眠りに着くと、
それを見届けた王子は、静かに姫の部屋を後にしたのだった。


(リティシア。今は私に何も話してくれないんだね。それでもいい。私は君の事をずっと見守っているよ。)
カサレス王子は一人、胸の内でそう呟いたのだった。そして、自身の部屋に戻ろうとした時、
父であるタリオス王とすれ違ったのだった。王は、外の気配を纏っているカサレス王子に、
厳しい目を向けるとこう言ったのだった。

「カサレス王子よ。このような時分に何をしておるのだ?何やら城のものではない空気を
纏っておるようだが。この空の領土を継ぎしそなたが、何をこそこそと動いておるのだ。」
そう言うと、思い出したようにこう続けたのだった。

「おおそうじゃ。大地の王子が今日の成人の儀式で、己の額にしかと石を宿したそうじゃ。
何か良い贈り物を考えねばならぬの。さてそれより、そなたはその左手からもっと上位に石を
移す策でも見つけたのか?それとも少しはましな力が使える様にでもなったのであろうかの。」
と冷たく突き放す様に王子に言ったのだった。

 そのような冷たい言葉を父王から受けながらも、カサレス王子はにっこりとほほ笑むと
王に向かって、「はい、父上。今宵の父上にはこの様なものがよろしいかと。」そう言うと王子は、
廊下に飾ってあった銀の飾り皿を、石の宿った左手でそっと撫でると、皿に施された妖精の
レリーフが飛び出して、タリオス王の目の前で楽しそうに踊りだしたのだった。

 それを見た王は怒ったような顔を見せ、「もうよい。その様なくだらぬものなど、私には必要ない。」
と短く言うと、さっと王子に背を向けて足早に去っていったのだった。

 そんな王の冷たい声に、楽しそうに踊っていた妖精は元気をなくし、悲しそうな顔を
王子に見せたのだった。
 するとカサレス王子は、そんな妖精に申し訳なさそうな顔を向けると、
「ごめんね。王はきっと疲れていたのだろう。君の踊りはとっても素敵だったよ。」
と言って、左手で優しく妖精を撫で、元の飾り皿の上に戻したのだった。

 そうして、窓の外に浮かぶ美しく冷たく輝く銀入りの月を眺めながら、カサレス王子は一人、
何を思っていたのであろうか。

 その頃タリオス王は、自身の部屋に戻ると、王の椅子にどっかりと疲れた様に座り、
一人物思いにふけったのであった。

「やれやれ、次を継がねばならぬ空の領土の王子が、手の位置などという低い場所に石を収め、
なおかつ、あのようなくだらぬ事にしか力を使えぬとは。  しかも、いつもあの様に腑抜けたように
笑う王子に、果たしてこの空の領土を守る事が出来るのであろうか?」と、呟いたのだった。

 父であるタリオス王は、崇高なる志の高き王であり、常に空の領土の事を思っていたのだった。
故に、いつも何かを思いつめているような、張り詰めた面持ちでもあったのだった。
そんな王の心に呼応するようにまた、空の領土は少しずつ寒さが増し、張りつめた空気は
崇高な美しさを漂わせていたのだった。

 もちろん、空の領土の民達からは、この責任感の強い偉大なる王に、絶大な
る信頼を贈られていたのであったが、カサレス王子は、父王が心から楽しそうにして寛いでいる
姿を見た事が無く、幼い頃よりずっと、そんな父王にいつか笑ってもらいたいと、思う様になったのであった。

 美しく整然と整っている空の領土。

しかし、すべてが美しく無駄なく整っているからこそ、また少しの笑いもない息苦しさをカサレス王子
は幼き頃より、ひとり感じ取っていたのだった。

さて、「聖なる騎士団」が結成されてから何十年か経ち、ようやくこの頃になって、それぞれの領土の
交流が少しずつもたらされる様になり、互いの王位につく者への成人の儀式の成功を祝って
、心づくしの品が「聖なる騎士団」の手により、渡される様になったのだった。

 故に、何処の領土の王子や姫が、身体のどの位置にどのような力を宿したのかも伝えられ、
それぞれが少しずつ心に思うところがあったのであろう。

 特に、太古の昔より自身の先達たちの志の高さを、誇りに思っていた空の領土の王達は、
常々更なる自身の高みを宗としていたのであった。
 そんな中、今の王の元に生まれしカサレス王子の優しさの、真の素晴らしさを、残念ながら今はまだ、
この父王には理解してもらえなかったのであった。

 それでもカサレス王子は、笑いを忘れた父王に、いつかは安心して笑ってもらいたいと、
強く心に思っていたのだったが。

 そんな優しい兄が大好きなリティシア姫は、まだ小さい頃から知らず知らずの内に、
ふと感じる兄の悲しみを和らげようと、この優しき兄の手を取ると、石に向かって「きれいね。きれいね。」
と優しく撫でるのであった。
 そんな幼いながらも、優しい気遣いを見せる愛らしい妹姫に、いつもカサレス王子は、
救われる思いを抱き、そしてそんな妹姫の喜ぶ顔を見たくて、いろいろなものを変身させては、
喜ばせていたのだった。

「そんな幼かったリティシアも、今では私に何か秘密を持ち、もう成人の儀式を迎える年までになったとは。」

自身の部屋に戻った王子は、窓にもたれながらまだ幼かった頃の姫を思い出し、一人懐かしんでいたのであった。

 そう、姫のこれからの行く末を、きっと誰よりも強く案じながら。


 昨日のユーリス王子の成人の儀式より、一夜明けた大地の王の城の中庭で、何やら一人、
踊る様な優美な動きで、剣を操る者の姿あり。
                                
きらめく朝日に照らしだされて、静かに祈りを込めて動くそのさまは、風に
吹かれたるつる草のごとく、あちらこちらに反転する剣が、まるで他の生き物の様に、
自在なる動きを見せていたのであった。
 剣の動きが一つ変わるごとに、その切っ先からは鮮やかな光の波動が生まれだし、
四方八方に散らばっていったのだった。
「朝早くから何ともうるさいのう。」そう言いながら、「聖なる騎士団」の長老ゼンスが、
杖を突きながら中庭にやってきたのだった。

「ゼンス様、これはすみませぬ。しかし、私は音を立てたつもりはないのですが?」
ゼンスの突然の登場に、先程まで自身の剣を用いて、「悲断の舞」を舞っていたジインであったが、
すぐさまその場に跪き、ゼンスにそう言ったのだった。

と、そこへもう一人、「何を申しておる。そなたのその抑え切れぬ大きな波動を、我らが解らぬとでも
思うておいでか。」と言いながら、長老ロードスも姿を現すと、「本当に。まだまだ力のコントロールが
出来ておりませぬな。これは後ほどみっちりと、また特訓をせねば。」と、長老ユランも続けて
こう言ったのだった。

 そんな三長老の言葉にジインは、「そんな。今日は勘弁してください。やっと久し振りに、
この大地の領土に戻ってこられたのですから。」と、困った顔をして言うジインなのであった。

 しかしそこへまた、「いやいや、少し長老方にお手合わせをしていただいた方が、
少しは余分な波動も落ち着きを取り戻す事でしょう。この大地の領土に入る前からずっと、
そわそわと浮足立って、とても君の傍に居られたものではなかったのだから。」と、
笑いながら空の若き騎士、イズール・キョークが言うと、水の若き騎士、リューレン・クボーも
その後を引き取って、「そうそう、あなたの波動の荒さに、私の肌も悲鳴を上げていたのですよ。
まさか私は、自分自身に自身の「癒しの手」の力を使うとは思ってもみませんでしたよ。」
と、両手をかかげながらそう言ったのだった。

「参ったな。皆様、そんなに俺をいじめないで下さいよ。」と、剣を担いで困ったように
言うジインなのであった。
 そんな一同の、穏やかに笑いあう姿を、ユーリス王子は二階の窓から、身を乗り出して
眺めていたのだった。

「ジイン、よかった。「聖なる騎士団」の皆と仲良くやっているのだな。彼にはもう、
新しい仲間が出来たのだな。」と、ホッとした反面、また少し取り残されたような寂しい感情もある事を、
ユーリス王子は残念ながら、認めざるを得なかったのであった。

 そんな事を、一人思っていたユーリス王子の姿を見つけると、ジインはうれしそうに手を振りながら、
「よお、ユーリス。身体の調子はどうだい?」と、つい二人だけの時の調子で王子に声をかけたのだった。

 しかし、それを聞いた「聖なる騎士団」の皆は驚いて、すぐさま厳しい注意を受けるジインなのであった。

「大地の領土の誇りであろう、「聖なる騎士団」のジイン・クイードよ。どうやらまた、私の教えを特別に
受けたいようですな。」と神妙な面持ちで、ロードス・クレオリスに言われるジインに、
ユーリス王子をはじめ、どっと笑いが起こる一同なのであった。

 こうして、穏やかな温かい風を受けて、ユーリス王子は懐かしい友との再会をうれしく思ったのだった。



空の領土 カサレス王子                                   イラスト 佳嶋 
a0073000_11103029.jpg


 (キャラクター著作権は水望月飛翔が保有しているため、無断使用、転載は堅くお断りいたします。)

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by maarenca | 2014-08-27 11:17 | ファンタジー小説