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THE SIX ELEMENTS STORY No20






THE SIX ELEMENTS STORY






No20




                                          著 水望月 飛翔




「おお、ユーリス王子よ。よう戻られた。」
王は、王子をうれしそうに抱きしめ、じっと王子を見つめると、「王子よ。よう乗り越えたの。
なんと立派な晴れがましい姿じゃ。」と、ユーリス王子を眩しそうに見つめたのだった。

 そんなうれしそうな父王の顔を見て、王子もまたうれしく思ったのだったが、一歩王から離れると
その場で父に跪き、こう言ったのだった。

「父上。ただいま戻りました。これからは、もっとわたくしが父上をお助けして参りますので、
どうぞ、わたくしを正しい道にお導きください。」と王に告げるユーリス王子。それを聞いて、
嬉しそうにうなずく父王。

 そんな二人のやり取りに、周りにいた城の者達は、「ユーリス王子に栄光あれ。大地の領土に未来あれ。」
と、一人また一人と、次々に歓声を挙げたのだった。
そうして、大地の「祈りの寺院」の鐘が、今度は晴れやかに、王子の成人の儀式の成功を高らかに
鳴らしはじめると、大地の領土の人々は、その喜びを伝え聞き、一人、また一人と大地の城に向かって、
祝福の祈りを捧げたのだった。

 そんな大地の人々が喜ぶ中、ようやくこの大地の領土の空にも、それまで日の光を遮っていた
悲しみの薄雲が少しずつ消えていき、天からの祝福の光が、幾重にもさし込んできたのであった。

 それは、大地の王妃がこの地を去ってからこの方、ようやくこの領土にも、晴れやかな喜びが
戻って来た、瞬間でもあったのだった。

 しばらくてユーリス王子と大地の王が共に、喜びに満ちた姿を城の外に現すと、
城外に集まっていた大地の民達は次々とその場に跪き、王と王子に祝福の言葉を捧げたのだった。
 それは、どの顔にも喜びが満ち溢れ、次代を継ぐ若き王子に、大地の領土の新たなる未来と喜びを
共に見るのであった。

 そして、そんな歓喜の民達の中、周りと違う一つの集団の姿が。

それまで、多くの民達から、祝福を受けていたユーリス王子であったが、まだ大分離れた所から、
その集団の気配を感じとると、先程までの成人の儀式をやり遂げた大人びた表情とは打って変わって、
まだ16歳の一人の少年の、満面の笑顔の姿に戻っていったのだった。

「ジイン・・・。ジイン・クイード。」
ユーリス王子は大きな声でそう叫ぶと、その集団の中にいる人物めがけて、素早く駆け寄って
いったのだった。

「ユーリス王子・・・。なんたる素晴らしきお姿。」
王子に名を呼ばれたその者は、跪いていたその場から立ち上がると、二、三歩王子の方に進んで、
駆け寄ってきた王子の身体をしっかりと、その大きな身体で受け止め、抱きしめたのだった。

 二人はしばし、しっかりと抱き合い、お互いの顔をうれしそうに見つめ、この喜びの時を一緒に
噛みしめたのだった。

 そして、そんな二人の目に確かに光るものが。

そんな二人の背後から、懐かしく温かい声が聞こえてきたのであった。
「次なる平安の時代を築きし若き大地の王子。ユーリス・マレンスタイン王子。成人の儀式を無事に終え、
この様に立派になられたお姿に、祝福の言葉をお掛けできる事は何たる幸せ。このめでたき日の喜びを、
偉大なる大地の王と、大地の領土の方々に、「聖なる騎士団」を代表して、お祝い申し上げまする。」

 緑の領土出身、「聖なる騎士団」の長老、ゼンス・ショーインがゆっくりと、そこに居合わせた人々に
そう言うと、大地の人々の喜びと誇りもまた、大きく膨らんでいったのだった。

 そして、ゼンスが自身の持つ杖を高く上げ、そこから大きく地面に「ドン。」と打ち付けると、
大地の領土の精霊たちが、そこかしこから姿を現し、今までに見た事の無い新しい種類の花々や
植物の種をふり撒いて、この地の領土を継ぎし若き王子に祝福をしたのだった。

 宙を舞うその花々や種たちに、次は空の領土出身の「聖なる騎士団」の長老、ロードス・クレオリスが
自身の鏡で天上の光を誘導し、天からの祝福を注ぐと、まだ固い蕾のものが次々と満開に花開き、
まだ固い種だったものも、次々と初々しい若い芽を成長させていったのだった。

「新しき時代を創りし大地の王子。ユーリス・マレンスタイン王子。この晴れがましき立派なお姿を早々に
拝見出来ようとは、何たる喜び。王子の意志の強さ、正しさは、きっと天上の父もお喜びと存じまする。
大地の王、ならびに大地の皆様、どうぞ天界からの祝福をお受け下され。」と、祝福を届けるロードス。
 
 その光景を見届けると今度は、水の領土出身の「聖なる騎士団」の長老、ユラン・アユターも
自身の竪琴をつま弾いて、喜びと未来への希望の詩を届けると、満開の花びらが次々と違う色の
変化を見せ、その花の香りに誘われるように、様々な種類のめずらしい美しい鳥や蝶たちが集まり、
まるで祝福を届ける様に優雅に飛び回ったのだった。
「馥郁(ふくいく)たる喜びをもたらしたもう、大地の王子。ユーリス・マレンスタイン王子。王子のお心の強は、
この大地の領土の誇りでありましょう。この喜びの時にお目にかかれたるは何たる幸せ。
どうぞ、生きとし生ける物の祝福を皆様に。」ユランはゆっくりと、周りの大地の民達にも祝福したのだった。
 
 そんな三人からの祝福に、何処からともなく華やいだ暖かい風が吹き始め、大地の領土の人々は、
久しぶりに声を挙げて、この時を大いに楽しんだのだった。

 そんな群衆の歓喜の中、先程から共に喜びを分かち合っていたユーリス王子とジイン・クイードで
あったが、少しするとジインは大地の王の元に歩み寄り、王の元に跪いてこう言ったのだった。

「広き平和なる領土を守りし、偉大なる大地の王。ご子息ユーリス王子のこの素晴らしき成人の日に、
またお目に掛かれたるは何たる幸せ。お二人の輝かしいお姿に、今日ほどこの大地の領土に
生まれたる事を誇らしく思えた事はありませぬ。偉大なる大地の父。今日の日のこの慶び、
誠におめでとうございまする。」ジイン・クイードが歓喜を胸にそう告げたのだった。

 大地の王はこの祝いの言葉に対し、「我らが大地の領土の誇り、「聖なる騎士」となりし、
ジイン・クイードよ。今日のこの喜びの日にそなたにまた会えるとは、何たる幸せ。
幼き頃より我が息子、ユーリスを良く守り、また良き理解者としてずっと傍についていてくれた。
あれの母の不幸の後は、そなたの兄の様な働きぶりに、我らはなんと心強かった事か。
また、そんなそなたが成人の儀式を乗り越えて、聖なる神器「悲しみを断ち切りし剣」を出現させて、
我ら父子の悲しみを随分と和らげてもくれた。「聖なる騎士団」に入ってからは、何年振りかのう。
よう、この祝いの日に戻ってきてくれた。そなたの立派な姿を見る事が出来て、なんとうれしい事か。
ほんに、よう来てくれた。今日は一緒に王子の成人の儀式の成功を祝ってくれ。」

 この大地の領土から初めて、「聖なる騎士団」となった、ジイン・クイードを自身の息子を見る様な
温かい、父なる慈愛の目で、大地の王は見つめ、こう言ったのだった。

 そして、そんな二人の前に静かに現れた二人の姿。
 
 一人は空の領土出身、ジインよりも前に「聖なる騎士団」に入り、己の舌に
サファイアを宿し、「真実の言葉」を持ちし者。イズール・キョーク。
そしてもう一人、水の領土出身でイズール・キョークの次に「聖なる騎士団」に入り、己の両手に
アクアマリンをちりばめて、「聖なる癒しの手」を持ちし者。リューレン・クボーの二人であった。

 そんな二人の先陣を切って大地の王に挨拶をしたのは、空の若き騎士、イズール・キョーク。
イズールは、聖なる神器「闇を払いし槍」を持って優美に踊るように槍さばきを披露すると、
そのまま滑るように王の前に赴き、すべらかに流れる風の様な声で、祝福を伝えたのだった。

「豊かなる大地を収めし慈愛なる大地の王。ご子息、ユーリス王子におかれましては、
誠に健やかなるご成長。強く素晴らしき意志を感じたる本日の成人の儀式のご成功。
この大地の領土にもたらされし慶びを、深く祝福申し上げまする。」穏やかに響くその声の、
何と美しく心地よい事か。
 安らぎをもたらすような淡い黄色を漂わす、ふっくらと豊かな羽を持ち、プラチナブロンドの
長く美しい髪を優雅に風になびかせて、月桂樹を思わせる葉の飾りに縁取られた「崇高なる意思」の
シルバーに輝く細工が彼の誠実さを、頭上で表しているイズール・キョークの祝いの言葉に、
大地の王はうれしく答えたのだった。

「「真実の言葉」を宿す者。空の領土の誇りであろう、「聖なる騎士団」のイズール・キョークよ。
また一段と立派になられたその様子。かの深き智徳のロードス・クレオリス殿も、さぞや
そなたを誇りに思うておる事であろう。また、「真実の言葉」を宿すそなたに我が王子をその様に
讃えられたるは、なんたる喜び。今日は本当に佳き日である。そなたの祝辞、感謝いたす。」
と、大地の王は、若き空の騎士に深く礼を述べたのであった。

 続いて、清涼なるグリーンとブルーの美しい色彩を放つ、滑らかでしなやかな肢体を持つ、
リューレン・クボーが、蜻蛉の羽の様な美しいヒレを漂わせ、その優美なる長い両手をかかげながら、
聖なる神器「清流の流れの如き鞭」をしなやかに舞わせて、大地の王に祝福を告げたのだった。

「馥郁たる大地を守りし父なる大地の王。この地、この空、この民達の、今日は何たる歓喜を
見つけられたる事。真の大地の領土のこの素晴らしき姿を拝見できる事、誠にうれしく存じます。
また、ユーリス王子のなんとご立派なるお姿。わたくしの微々たる癒しの力が、今日ほどこの大地の
領土にいらぬ事を感じた事はございませぬ。何たる佳き日。誠におめでとう存じまする。」

そう続けて、水の領土の若き騎士の誠実な祝辞を受けると、大地の王も少し気分が高揚したのか、
少し目を潤ませてこう言ったのだった。
「清らかなる水の領土の誇りであろう、「聖なる騎士団」のリューレン・クボーよ。このような慶びに
満ちたる日なれど、やはりそなたの「聖なる癒しの手」をその様に振り動かされては、
年重ねし私の目から何やらいらぬものが顔を出してきそうじゃ。今日のこの日ははっきりと、
鮮明にこの大地の領土を眺めたいのだ。今しばらくはそなたの癒しの力は控えてくれぬか。」

大地の王のこの言葉に、リューレン・クボーは少し慌てた様に、「いいえ、そのような。大地の王。
わたくしは一切癒しの力など使ってはおりませぬ。」と長い両手を懸命に振りこう言うと、
周りにいた人々は一斉に笑ったのだった。

 そうあれから、新たなる若き正しき力を持った者達が、「聖なる騎士団」に加わり、この惑星の
平和を守っていたのだった。
 この若き、空の領土、水の領土、大地の領土の者達それぞれがまた、胸に秘めたる決意を
もっていたのであった。
 
 そんな三人と、大地の王とのやり取りを少し離れた所で見ていた「聖なる騎士団」の三長老もまた、
この喜びをかみしめ、優しい眼差しでうれしく見つめていたのだった。

 そしてそんな中、ロードス・クレオリスは密かに自身の「天上の光を宿す鏡」を大地の民達から
祝福を受けて、晴れやかに笑みを湛えているユーリス王子の誇らしい姿に、そっと向けるのであった。

「リティシア姫。今日のユーリス王子のなんと素晴らしきお姿。この立派なるお姿を姫にお届けせねば。」
ロードスはそう心に思うと、静かに目を閉じて自身の右眼に宿りしサファイアに、そっと呼びかけたのだった。

「我が右目に宿りしサファイアよ。この大地の領土より、我らが故郷、空の領土への道しるべを
我の脳裏に甦らせよ。そして、我が捉えしユーリス王子のお姿を、そのまま空の領土の
「聖なる山」クラスカス山の頂へと届けるのじゃ。」そう自身のサファイアに呼びかけると、
ロードスの脳裏に大地の領土から空の領土へ一直線につなぐ道が記されると、空の浮島の
第六の島にあるクラスカス山の頂が姿を現し、そのままロードスが持つ鏡から、ユーリス王子を
映した姿が一筋の光となって、素早く飛び立っていったのだった。

その一瞬の気配を感じた者は、ただ一人。

ジイン・クイードは一瞬かすかに、「なんだろう?」とその光の残像を追ったのであった、がしかし、
大した事もないだろうと、すぐさまこの歓喜の輪の中に意識を戻したのだった。  
 
この時ばかりは、ジイン・クイードその人も、この時の気配がよもや自身の運命を大きく飲み込んで
いこうとは、想像する事も出来なかったであろう。



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by maarenca | 2014-08-20 12:19 | ファンタジー小説