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THE SIX ELEMENTS STORY No19






THE SIX ELEMENTS STORY





No19




                                          著 水望月 飛翔

 王の広間に残りしは、巨大な姿の光の発光体のみ。
その光の中で、いよいよ王子と石との問答が、始まろうとしていたのだった。

 白く輝く光の発光体の中で、王子は先程襲った強い光線に目がくらみ、少し身体をふらつかせて
いたのだったが、恐々目を開けると、その発光体の内部をゆっくりと眺めまわしたのだった。
 その内部のさまは、まるで真珠か白蝶貝の輝く小さな粒が、小刻みに振動しながら、
しかし、外部からの侵入は一切拒むかの様に、強い意志を持って成り立っていたのだった。

 そして、その空間の中央、王子の目線の先に、王子のトパーズが輝きを放ちながら、
静かに浮遊し、存在していたのだった。

 静かに対峙する両者。
トパーズはやがて両者の沈黙を破り、王子に向かってこう言ったのだった。
「なんじ、我が眠りを遮り、我の主を名乗る者であろうか?さて、なんじの望む、我がかなえし力を
今一度、我に申してみよ。」

そうゆっくりと、トパーズの声が王子の頭の中に直接響き渡ったのだった。
 王子は驚き、思わず辺りを見回したのだったが、すぐに自身を落ち着かせようと、
自身の内部に意識を集め、トパーズからの王子への問いをもう一度、頭の中でなぞらえたのだった。

 それから一呼吸すると、ゆっくりとかみしめる様に、自身のトパーズに向かって、こう言ったのだった。
「我の手の中に生まれし、我がトパーズよ。我の願いをいま一度申す。我がそなたに望みし願いは、
「愛する者を守りし力」である。」

 王子の意を決した言葉を聞いて、トパーズは再度王子に問うたのだった。
「「愛する者を守りし力」とな。それはいったいどの様なものじゃ?我に申してみよ。」
このトパーズの問いに王子は、「愛する者を守りし力」とは、真にどの様なものなのかを考えたのだった。

(そうか。石が納得できるように説明をしなければならないのだな。
愛する者を守りし力。ただその言葉をなぞらえるだけではいけないのだな。愛する者を守りし力とは・・・。)

ユーリス王子は真の答えを見つけようと、自身の意識に集中したのだった。
 そう、成人の儀式を終えた者は、絶対に自身と石とのやり取りを他の者に話してはいけないのだった。
                 
 それは、どんな領土の者もどんな身分の者も一切が等しく、石を自身の身に宿す過程を知らされず、
前知識などなくただ自身の石と対面し、一人でやり遂げる事が、この惑星の習わしなのであった。
 
 王子は考えた。真に「愛する者を守りし力」とはどういう事なのかを。

「僕は力が欲しいのだろうか?力とは何なのだろうか?闇に対抗する力なのか。
闇を潰す力の事なのか?いや、その様な力では普段は平和の内にある我が領土の民達や、
傷つき、いまは遠く炎の洞窟に居る母上を迎えに行くことの足しになど何にもならない。
何ものかをねじ伏せる力や、何ものかを倒す力が欲しいわけじゃない。僕が真に欲しい力とは。」

 そう考えをめぐらし始めるとユーリス王子は、もっと心の内部の奥深くまで、自身の意識を
降ろしていったのであった。

 それから王子は、また心の中で自身に問いかけた。
「真に欲しい力。それは、心の内が常に穏やかで泰然とした姿を保ち、周りの人達が少しの
不安も持たない様、堂々としたさまを表す事。
そう、何事が起ころうとも、真に輝く心の強さを持つ事こそが、我が領内のすべてのものを平和に導く力。
心の正しさを示す強さこそが我が本当の願い。」

 こうしてユーリス王子が自身の心の中で真の意味を導き出した瞬間、トパーズは自身の
エネルギーを放出するかの様に、一気に光り輝きだしたのだった。

 王子は驚き、その光を眩しそうにしながらも、トパーズをじっと見つめていると、トパーズは
ユーリス王子に、向かってこう言ったのだった。

「次に大地の領土を収めたもうユーリス王子よ。そなたの真意、よう解った。そなたの導き出した
答えの正しさ故に我の力は今、解放された。我はそなたの力となろう。しかし、この目覚めし力を、
そなたの身体に宿す覚悟は出来ておろうか?この力をそなたが収める事はできようか?」

 トパーズは静かに、ユーリス王子にこう問うたのだった。
ユーリス王子は、トパーズからの問いかけに、これからトパーズを自身の額に宿す為、
いま一度自身を奮い立たせる様に、覚悟を持ってこう言ったのだった。

「我はすでに覚悟せし者。いかなる苦痛が待っていようとも、大地の王子に生まれし覚悟を持って、
今ここで宣言いたす。稀なるパワーを持ちし我がトパーズよ。その力を持って我の額の内に収まりたまえ。さあ。」
 王子はそう言うと、静かに両手を広げ、両の目を閉じたのだった。
その覚悟を見て取ったトパーズは、「あい解った。」と短く言うと、スーッと王子の額に近づいて
いったのだった。

 王子は目を閉じているにも関わらず、トパーズが近づくごとに強い光の眩しさと、トパーズの
エネルギーが放つ熱さに、一瞬恐怖を感じたのだった。
 しかしすぐさま王子は、未知なる苦痛を自らが怖れを抱いては、石宿しなど出来ぬと、
自身に言い聞かせたのだった。
それからトパーズは王子の額のすぐ手前まで来ると、少しずつ回転を始めたのだった。
やがて、回転をしているのかさえわからない程のスピードに達すると、ユーリス王子の額に
少しずつ進んでいったのだった。

「うっ、わあ~。」
何というエネルギーであろうか。
トパーズの放出する力と熱が王子の額に伝わってくると、思わず王子は苦痛の声をあげたのだった。
トパーズの勢いに身体が押され、少し後ろに押されたのだったが、王子はトパーズを受け止めようと、
痛みに耐えながら自ら身体を前に倒すように、額を前に突き出したのだった。

 こうして、この両者のぶつかり合いにより、さらにトパーズは王子の額の中へと、進んでいったのだった。
王子はまさに自身の額を割られる様な、あまりの激しい痛みに、自身の頭を振りほどきたい衝動に
駆られながらも、トパーズが無事に額に収まる様、じっと苦痛を耐えるのだった。

 いったい、どれほどの時間が経ったのであろう。
王子が残り少ない最後の気力を振り絞っていると、王子の頭の中で、トパーズの声が響いたのだった。

「王子よ。ユーリス王子よ。我の声がそなたに聞こえるであろうか?これから我の力をそなたの血の
道筋に送る。我の熱き鼓動をしかと己のものにするがよい。」トパーズはそう言うと、王子の額を
通る全ての血管から、じわじわと熱いトパーズのエネルギーを王子の全身の隅々まで伝わらせたのだった。

 それは、まるで電流でも流された様な、痺れを伴う感覚であったろうか。
王子はその鋭い感覚が、全ての手の先まで、足のつま先まで、到達するのを必死でこらえて
いたのであった。


これが、王族の元に生まれし者の務め。
これが、美しい輝きの石を持つという事の・・・。

 やがて、痺れの回る王子の頭の中で、トパーズの声が、ようやく一体となる儀式の終わりを
告げたのだった。

「この大地の領土を収めるものとなるであろう。ユーリス・マレンスタイン王子よ。よう我のエネルギーを
受け止めたもうた。いま、まさに我らは一体となり申した。我が力をそなたの助けに使うがよい。」

 そうトパーズの声が王子の頭の中でこだますると、ユーリス王子はやっと苦痛から解放された安堵に、
そのまま深い眠りに落ちていったのだった。

 王子が見ている夢の中の世界では、白い靄が静かに立ち込め、しっとりと王子の全身を包み込んでいた。
王子の髪や頬をなでる優しい風の感触に、王子がしばらく身を預けていると、なにやら遠くの方から、
かすかな声が聞こえてきたのだった。

 最初は何と言っているのか、聞き取れずにいたのだったが、そのうち、「・・~リス。ユーリス王子。」と、
優しい、懐かしい様な声が聞こえてきたのだった。
 その声が、いったい誰の声なのか、はっきりと解らないのだが、しかし、心の中には、何とも
懐かしい感情が溢れてきたのだった。

 そして王子がその声の方を見ると、次第に何やら宙に浮く薄布がゆらゆらと漂う姿が見え、
何者かがその中にいるような気配はあるのだが、しかし、その薄布の中は、見えそうで見えない
もどかしさを、静かに称えていたのであった。
そして、ユーリス王子が重たい身体を引きずって、その薄布に手を伸ばそうとした瞬間、
額に収まった王子のトパーズが王子に話しかけてきたのであった。

「ユーリス王子よ。目覚めの時が参りました。どうぞ、ご自身の意識をお戻しください。」と、
儀式の前の物言いとはまったく違った、完全に王子に付き従うかの様な声で王子にこう告げたのだった。

 それからしばらくして、王子がゆっくりと目を開ける周りを見回すと、王子の身体は光の発光体の中で
仰向けに横たわり、柔らかく宙に浮いていたのだった。
 王子はその姿勢のまま、額のトパーズに頭の中でそっと話しかけた。
「我が額に収まりしトパーズよ。もう、一体となる儀式は終わったのだな?私はこれからそなたに、
この様に話しかけることができるのだな?」

ユーリス王子はまだ慣れないため、少し不安に思いながら自身のトパーズにそう聞いたのだった。
 その少し気弱そうな王子の問いかけに、トパーズは少し笑いながら、こう言ったのだった。
「はい、いかにも、ユーリス王子。わたくしはもう、王子にいかなる苦痛もおこしは致しませぬ。
いいえ、これからは、どの様な苦痛からもあなた様をお守りいたしましょう。どうぞ、わたくしが、
常に喜びを持ってあなた様をお助けできますよう、堂々と、正しく美しいお姿をお示しくださいませ。」
トパーズがそう言うと、王子を取り囲んでいた発光体がゆっくりと、溶ける様に消え、ユーリス王子は
王の広間の中央に、一人姿を現したのだった。
                                
 ユーリス王子は王の広間をゆっくり眺めまわすと、まるで何年もの長い時を留守にしていたかの様な、
懐かしさと安堵感を味わい噛みしめたのだった。

 そしてそれから、ゆっくりと大きな声で、自身の帰還を宣言したのであった。

「平安なる大地の領土を継ぎし者。我ユーリス・マレンスタイン。ただいま王の広間に戻りました。」

 その堂々たる若々しい宣言の声に、王をはじめ、城の者達は歓喜の声を挙げながら、続々と
王の広間に入ってきたのだった。





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by maarenca | 2014-08-16 12:43 | ファンタジー小説