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THE SIX ELEMENTS STORY No17




THE SIX ELEMENTS STORY





No17




                                        著 水望月 飛翔



「偉大なる力を従わせし美しき女神よ。どうか、どうかおまちくだされ。」
そこまで言うと、大きく肩で息をしながら、ゼンスは続けてこう言ったのだった。
「気高き女神よ。我らの少しばかりの貢物を献上いたしまする故、何卒、なにとぞ王への代償は
お取下げいただきたい。」
 こうして、杖を振りかざしながら、必死に願い出るゼンスと、その横で一緒に願いを込めた顔つきで、
じっと女神を見つめるユランなのであった。

 しかし、この突然の見知らぬ侵入者に、視線を向けた女神は、再び大きくその身を広げ広間の
天井を占領すると、高い位置から二人をじっと、静かに見つめたのだった。

 そうしてしばらくの間、一言も発せず、じっと二人を見ていた女神だったが、それからしばらくすると
女神は、王に向かってこう聞いたのだった。

「この者達はいったい何者じゃ?何故炎の領土の者でない者が、我が領土に踏み入っておるのじゃ?」
そんな女神の問いかけに、ルーフェン王はゼンスとユランの方をゆっくり見ると、信頼を湛えた笑みを向け、
二人に頷いたのだった。

 そしてまた、女神の方に向き直り、一歩前に進み出て、女神にこう言ったのだった。

「我らが領土の栄光なる守り神。彼ら二人は「聖なる騎士」と呼ばれし者。
杖を持ちし御仁は遥か、「緑の領土」出身のゼンス・ショーイン殿。彼の持ちたる聖なる神器
「生命の息吹をもたらす杖」は、過去、現在、未来の精霊を呼び出し、彼らの力を導く杖。
そして彼ほど、慈愛深き智徳を持つ者はおらぬ程の徳高き御仁。
そして「聖なる龍の鱗からなる竪琴」を持つ、ユラン・アユター殿は、遥か「水の領土」より
参られし比類なき賢者。かの者のつま弾く音色と歌声は、この地上の全てのものを癒し、
安らぎへと導くもの。 このお二人の温かき広きお心により、何度我が民達は良き方向へと
導かれましたことか。我が信頼を預けしこれらの友に、どうか、わが聖なる女神のご信頼を。」

 王の広間に響き渡る、炎の王の堂々とした物言いに、かの女神も「ほう・・。」と聞き入っていたのだったが、
しかし、女神の口から出た言葉は、その身に合わない何とも冷たい言葉であったのだった。

「今を守りし炎の王よ。そのように他の領土の者に頼るとは、初めて聞くわ。なるほどのう。
弱き力の者は、他の領土の者の力まで頼るとはのう。」

 そんな、言葉を吐き捨てる様に言う女神に対し、ユランは己の竪琴をつま弾きながら、歌うような旋律で、
この非情な女神にこう言ったのだった。

「紅き衣の優美なる女神。炎の王は我ら「聖なる騎士団」の入領を寛大なるお心でお許しくだされた、
心優しきお方。なれど、そのお心は決して弱きものではありませぬ。自身の領土の守り神。
その地の女神を呼び寄せしお力は、他の領土の王でも、そう容易くは出来ぬ事。残念ながら、
偉大なる今の「水の領土」の王でさえ、水の領土の守り神、「清廉なる流れの女神」を呼び寄せる事は
出来ませぬ。それをこの地、炎の領土では代々の王が呼び寄せられているのでございましょうや?
もしそうであらば、これは誠に素晴らしき事。どうかご自身の領土の王の素晴らしき力をお喜びいただいて
、どうか、どうか、王への代償はお取下げいただきたい。美しき女神よ。」

そう言い終わると、ユランは深々と跪いたのだった。

 そんなユランの言葉を引き取って、ゼンスも続けてこう言ったのだった。
「誇り高き偉大なる紅の女神よ。我らが緑の領土も右に同じく、常に代々すべての王が我が領土の守り神。
「悠久たる慈愛の女神」を呼び寄せる力を持っているわけではありませぬ。このような慶ばしき事、
深く敬服いたしまする。どうか、この連綿と続きし過去よりのお慶びをこの場にて、祝いをさせていただきい。」
と、そう言うとセンスは、杖を一振りしてから床に一度、「ドン。」と打ち付けると、過去からの精霊を
呼び出して、歴代の王の姿を呼び出させると、彼らと今の王の偉大なる力を、晴れやかに
讃えさせたのだった。
 
 そうして、過去からの精霊がその小さな手を「パン。」と叩く度に、歴代の王が次々と広間に
現れたのだった。その場に居合わせた城の者達は皆、懐かしむように歓声を上げて喜んだのだった。

 そして、過去の精霊がその王達の中に今の王を引き入れて、次にまた「パン。」と、
その小さな手で一つ手を叩くと、今度は精霊が二人に分裂したのだった。
 それからその精霊は、王達の周りを飛び回りながら、一つ、またひとつ手を叩き、
精霊の数を増やしていったのだった。

 そうして、沢山の小さな精霊たちが歴代の炎の王達の周りにそろうと、天上の高いところまで
飛んでいき、今度はその身を震わせ始めたのだった。
 すると、その精霊たちの身体から、金銀の輝く光が溢れだし、それが歴代の王達の頭上に振りまかれ、
祝福をしたのだった。
 その光景を見にした女神は、小さな声で自身に問う様に言ったのだった。

「これは、いにしえから伝わる「祝福の光」。これがなぜ?」
その声を聞いたゼンスは、女神にこう言ったのだった。

「悠久なる時を司りし、美しき女神よ。これは、永くこの地に埋まっておりました物。この長きにわたる、
偉大なる王達のお力を聞きしこの領土の地より、

 長きにわたって積もって出来ました「祝福の光」を過去よりの精霊が取り出しただけの事。
これだけの素晴らしき光が、この地に宿り、それをこの目で見ました事は、我らもまた、
大変光栄に存じまする。」ゼンスがそう言うと、ゼンスとユランは、この紅の女神に深々と頭を下げ、
敬意を表したのだった。

 こうして、この輝かしい光景を目にした、サルディア執政官をはじめ城の者達は、
ある者は涙を流し、ある者は声を高らかに、それぞれが大いに喜びを噛みしめだった。

 そして、歴代の王達に混じり、自身の頭上にも「祝福の光」を注がれた、ルーフェン王はしっかりと
胸に熱いものを感じていたのだった。

「報われている。我ら歴代の王が成し遂げてきた事が、ちゃんとこの地に伝わっていようとは。
こんなにうれしいことはない。」

 そう一人思いながら、ふと少し先に視線を向けると、そこに懐かしく慈しむように王を見つめる、
一人の王の視線とぶつかったのだった。

「父上。」
そう、それはだいぶ前にすでに亡くなっていた、先代の炎の王の姿であった。
そのルーフェン王の呼びかけに、懐かしそうに微笑み頷く父王の姿。

 そして、ルーフェン王が懐かしい父王に一歩近づこうとした時だった。
「祝福の光」も終わりを告げると、歴代の王達も一人、また一人と静かに姿を消していったのだった。

父王は、もう一度ルーフェン王に頷くと、そのまま静かに消え入り、ルーフェン王の伸ばした指は、
ただ空を切るだけであったのだった。

「父上・・・。」一人残ったルーフェン王は、名残惜しそうにその場に佇み、歴代の王達の残像を
見送ったのだった。
 そうして、大勢いた精霊達も、先程とは逆に「パン。」と一人が手を打つごとに一人ずつ、
その姿が消えていき、やがて最後の一人に戻ると、スーッとゼンスの元により、ゼンスからの礼を受けると、
くるっとその身を回転させて消えていったのだった。
 
 先程からの光景をじっと見つめていた女神であったが、炎の王の両目を見据えると、
ゆっくりと王の周りをまわり、次にゼンスとユランの周りをゆっくりと回った後、静かにまた天上の
高い位置へと戻ったのだった。

 そして、ゆらゆらと漂いながら、女神は三人にこう告げたのだった。

「あい解った。今回はこの珍しき侵入者の面白い余興により、先程の王への代償は
取り下げる事といたそう。しかしのう、我の力は計り知れぬ程のもの。その力を微細に留めたるは
勝手がいかぬ。そなたらの力が少しでも、我の役に立てばよいのだがのう。」

 そう言うと、横目で三人をちらっと見るやいなや、この紅の女神は先程まで纏っていた、
鮮やかな真紅の炎を徐々に弱めると、触れれば消えてしまいそうな程、可憐な薄紅色の炎に姿を変えて、
大地の王妃をそっと包み込んだのだった。

 そうして、柔らかく温かな炎で王妃の身体を少しずつ、全身の傷を直しながら、炎の民達と同様の
褐色の肌へと変容させていったのだった。

 その間、炎の王は自身の石を宿す右手の平を女神の方に向け、呪文を唱えながら、
時々パチッと爆ぜる女神の炎をずっと、吸い続けたのだった。
 そしてゼンスは、現在の精霊を呼び出すと、杖を我が前に持っていき、微動だにせず呪文を唱え続け、
現在の精霊を眠りについている王妃の夢の中に入り込ませ、楽しい夢を届けさせたのだった。

 そしてユランは、自身の竪琴を鳴らしながら、その癒しの歌声で、女神の炎を落ち着かせる様に
優しくなで続けたのだった。

 なんと素晴らしきこの光景・・・。

 先程の、歴代の王に対しこの地から送られた、「祝福の光」の光景共々、代々続きし我らが王達の、
力の偉大さを目の辺りにして、今まで以上に誇らしく、またうれしく見守る執政官や護衛兵たちで
あっただろう。
 我らが王達を讃えられたうれしさと、今目にしている、「紅き包容の女神」の力と、
「聖なる騎士団」の力と共に、我が炎の王の協力している光景に、きっとあまりの熱き気持ちが
湧き上がったのだろう。

 一人の護衛兵が、思わず雄たけびをあげると、たちまち広間に居並ぶ者達が、
次から次へと声をあげ、今目の前で行われている光景を、城の外へと、民達の元へと届けとするように、
次第に大きなうねりとなって、炎の領土を覆い尽くしていったのだった。





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by maarenca | 2014-08-09 12:05 | ファンタジー小説