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THE SIX ELEMENTS STORY No16





THE SIX ELEMENTS STORY




No16



                                      著 水望月 飛翔
 
 

 こうして、炎の領土が抱えている問題を初めて、ゼンスとユランは知ったのであった。
それからしばしの沈黙の後、ゼンスは王にこう言ったのだった。
「偉大なる力を持ちし炎の王よ。我らはこの領土の問題も知らずに、また厄介な事をあなた様に、
お願いしたとは。誠に申し訳ありませぬ。何と申してよいのやら。」珍しく言葉に詰まるゼンス。
しかし、炎の王にとって、彼らが初めてこの炎の領土を訪れてから、彼らの数々の厚意により、
この炎の領土の民達が、良き方に変化を見せている事に、ずっと感謝をしており、自身が何か報いたいと、
常々思っていたのであった。

 そして、王は今この時も、この年老いた騎士の力に何とかなりたいと、ただそう思っていたのだった。
それから少し沈黙が続いた後、炎の王はようやく意を決したようにこう言ったのだった。 
「あい解った。そなた達の申し出受ける事といたそう。」王は、ゼンスに向かってこう言ったのだった。

そこへ先ほどの執政官が、慌てた様に王に詰め寄ったのだった。
「お待ち下さい、我らが王。そのような、この先何が起こるやも知れぬことを、
軽々しくお引き受けなさってはなりませぬ。それに、今までどのような者かも知れぬ大地の者を、
我らが大事の「タンカークの洞窟」に住まわすなどとは、どうしても合点がいきませぬ。
お叱りはこの身に甘んじて受けましょう。しかし、この領土に少しの不安を許すことはわたくしには、
何があってもできぬ事。それに、王よ。貴方様の御身になにかあったらわたくしは、
先代の王に顔向けができませぬ。どうか、今一度お考えをお改めくださいませ。」
そう必死になって王に進言したのであった。

 王は、我が身に新たなる負担を感じて、あえて進言をしたであろう、この執政官を、
じっと見つめてこう言ったのであった。
「幼いころより、我を見守ってくれたそなたなればこその進言、感謝いたす。しかしのう、サルディア。
ここに横たわりし大地の王妃は、我と似てはいないであろうか?我が身を盾に、自身の領土を守りし者を、
このまま放っておいてよいものだろうか?すでにかの地で、この様な不穏な事が起こったのだ。
いつ何時この炎の領土にも、このような事が起こるやも知れぬ。もしその時、わしがこのように
傷ついたとき、他の領土の者が助けてくれなんだら、そなたはどう思うだろう?
この大地の王妃をわしと思ってはくれまいか?どうだろう、サルディア。」
ルーフェン王のこの静かな物言いに、王の広間に居合わせた城の者は、皆、押し黙ったのだった。

 王の語り掛けに、サルディア・ドゥール執政官は顔に苦渋の色を見せたものの、
王に向かってこう言ったのだった。
「我らが誇り、ルーフェン王。あなた様のお考えようわかり申した。大地の人々がどのような方か
わかりませぬが、我らもこのお方をお守りいたしましょう。」サルディア執政官がそう言うと、
周りの者達も次々に王に向かって大きい声で答えたのだった。

 そして、サルディア執政官はひとり、胸の中でまた新たなる決意を思っていたのだった。
(幼き頃より、ずっとお側でお仕えしていたルーフェン王。あなた様に何か起こった時には必ず、
このサルディアが我が身を捨ててでも、あなた様をお守りいたしまする。)

 そんなやり取りを、じっと見ていたゼンスとユランは、この炎の人々に深く感謝し、
またずっと長きに渡り、この炎の領土に起こっていた問題を知らずに、この地の人々を
軽く見ていたことを恥じ入り、そして、王と人々の絆の深さを感じ入ったのだった。

 それから、炎の王が玉座を立つと、大きな声で城の者にこう告げたのだった。
「さあ、大地の王妃を我が元に連れてまいれ。今から聖なる炎で大地の王妃が身にまといし傷と、
大地の者の気配を焼き払う。その後に、炎の洞窟「タンカークの洞窟」に王妃を連れてまいるがよい。」
炎の王がそう言い渡すと、城の護衛達が、王妃を寝かせた長椅子を慎重に王の足元に置いたのだった。

 それからルーフェン王は、大地の王妃をじっと見ると、両腕を肩の高さで大きく広げ、周りの者に
もっとその場を離れる様に、合図をしたのだった。
 「聖なる騎士団」のゼンスとユランをはじめ、城の者達が静かに後ずさりをして、王と王妃から
離れた所に着いたのを見届けると、王は目を閉じ、大きく広げた両手を「パンッ。」と大きく打ち合わせ、
そのまま合掌をした格好で、右手に宿したルビーに、呪文を唱え始めたのだった。

 大抵他の領土の王達は、それぞれ自身の身体に我が石を宿すとき、多くは胸から上に石を置く。
しかし、歴代の炎の王達は城の下でうごめく溶岩を制御し、封印の力を注ぐため、必ず左右
どちらかの手の内に石を収めたのだった。

 されどそれを知らぬ他の領土の者達は、王たる者の手の内の石宿しを、ずっと冷やかに
見ていたのであった。
 そうそれは、先の空の領土の王子、カサレス王子に対する空の王や城の執政達の、
冷やかな態度にも現れていたのだった。
 しかし、そんな他の領土の者達の、意識を知ってか知らずか、炎の領土の民は、
我が身を領土の平和に捧げたる歴代からの王に対し、深い感謝と共に、「王の為なら何物をもいとわず。」
という熱き決意を、一人一人が持っていたのであった。

 そんな炎の王の手の内の力を、初めて見るゼンスとユランは内心、これから始まるこの行為により、
更なる苦痛を、この大地の王妃に課してしまうのではないかと、少し心配をしていたのであった。

 しかしそんな二人の心配をよそに、炎の王は呪文を唱え終えると、今度は口の中で舌をコロコロと
転がしながら、次第に高く低く歌うような呪文の旋律を発し、ピッタリ合わせた両の手を少しずつ
膨らませると、その隙間から自身に宿した石に歌い聞かせたのだった。

 するとやがて、そのコロコロと鳴らす楽しく優しい旋律に導かれるように、王の右手の石から、
スーッと赤い色の霧の様な精霊が姿を現したのだった。

 その精霊とは、炎の領土の守り神。「紅き包容の女神」であった。

女神は王の石から抜け出すと、大きくゆっくりと回転をしながら城の天上高くまで上昇し、
ゆらゆらと漂いながらその場に留まったのだった。

 そうして、その高い場所からゆっくりと炎の王を見つめると、しばらくして静かにこう言ったのだった。
「久し振りだのう。炎の王よ。さて、少し挨拶をしようかのう。」そう言うと女神は、先程まで
大きく広間を浮遊していた自身の姿を瞬時に、細く鋭い切っ先へと変え、物凄いスピードで
王の右手に宿る石をめがけて、素早く通り抜けたのだった。

「うっ。」熱くするどい痛みに、思わず短い声をあげた王を見返した後、王に向かってこの紅の女神は、
「フン。」と鼻で笑うと、冷く見下した様な表情でこう言ったのだった。

「その程度で声をあげるとは大した事もないのう。さて、炎の王よ。何故わらわを呼びだしたのじゃ?
わらわを呼んだという事は、三度の内の一つ。そなたの望みを叶えるため、という事でよいのかのう?」

「スー。スーッ。」と、その身を空中に翻しながら、少し挑発するような笑みを含ませて、
炎の王にこう問いかけたのだった。
 そんな女神の問いかけに、王は痛みのために先程まで抑えていた手をほどくと、まっすぐに、
この不遜な女神を見つめ、こう宣言したのだった。

「我が熱き領土の女神「紅き包容の女神」よ。我、今ここで願う。我が第一の願いを。」
と、はっきりと女神に向かって言うと、そんな王の声に、女神はちらっと横目で王を見て、
そっけないようにこう言ったのだった。

「ほう。これはまた威勢のいいこと。ルーフェン・オスモール王よ。して、そなたの願いは何ぞ?」
 先程まで、まるで小ばかにしていた様な笑みを捨て、炎の王をじっと見据えてそう問う女神に、
炎の王は続けてこう言ったのだった。

「太古の昔より長きにわたり、我ら領土を守りし女神よ。今ここに横たわるは遥か大地の領土より
参った大地の王妃である。かの者の傷をそなたが女神の力で、一寸の痛みもなく治していただきたい。
かの者は自身の領土を守りし為、この様な酷い傷を負いし者。さあ、いかがか?
一分の痛みも負わせず身体の内外を治していただきたく。それが、第一の我が願いである。」

 そう堂々と言い切る炎の王に対して、王の宣言を聞き終わると、女神は「フフン。」と鼻で笑い、
くるりと身を一回転させると、スーッと炎の王の元に行き、王の身体をその真紅の炎で包みながら
こう言ったのだった。

「ほう。一分の痛みもなく、とはな。しかもこの者、大地の王妃とな?他の領土の者を治せとは、
それは何と強欲な。我の力はこの炎の領土など、一瞬にして灰と焼き尽くす程の強大なる力。
その膨大な力を使わずに、小賢しい炎を我に使わせるとは、何とつまらぬ願いじゃ。
つまらぬ者はつまらぬ願いをするものよのう。して、その代償たるやいかに?」

 鋭いい視線を向ける女神の問いかけに、王はゆっくりと息を吸うと、大きく広間中に響き渡るように、
こう言ったのだった。
「我が左足を代償に。」
炎の王は、声高らかにこう言い放ったのだった。

 先程から静かに、女神とルーフェン王の問答を聞いていた、ゼンスとユランであったのだったが、
その王の最後の言葉を聞いて驚き、二人顔を見合すとすぐさま、王と女神の間に割って入ったのだった。

「お待ちくだされ。しばしお待ちくだされ。」
ゼンスが杖を大きく振りながら両者の間に割って入ると、両手を広げてこう言ったのだった。




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by maarenca | 2014-08-06 12:31 | ファンタジー小説