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THE SIX ELEMENTS STORY No15





THE SIX ELEMENTS STORY




No15




                                         著 水望月 飛翔


 そんな歴代の王達の、連綿と続く自己犠牲の元からなるこの領土の安定に、炎の民達は
深く感謝をしており、だからこそ、外からの見知らぬ気配が、王の精神の安定を少しでも損ねる事を、
ひどく嫌い警戒していたのであった。

 そして、城の外に出られない王に対して、自分たちは元気で暮らしているという事を
知らせたい気持ちと、王を励ましたいという気持ちの表れとして、何をするにも声高く、
大きな動きとなっていったのやもしれぬ。

 しかし時として、王の制御の力より、溶岩の力の方が勝るのか、はたまた、民達の王を思う気持ちが
暴走してなのか、時々の不安定な空の光景として、現われたのだった。
 だが、このような「炎の領土」の現状は一切他の民族には明かされてはおらず、
「聖なる騎士団」の長老達ですら知らなかったのだった。
 故に、未だにロードスをはじめ空の民達は、この「炎の領土」の真の意志を知るすべは
なかったのであった。

 では、何故炎の領土の者は、一切説明をしなかったのであろうか。
それは、彼らのプライド。と言うよりは、他の領土の者に自身の領土の秘密を、
知られることを恐れての事では無かっただろうか。
 きっと、自身で生んだ恐怖心と猜疑心からくるものであろう。

だからこそ、「炎の領土」の者達が、単に浅はかで落ち着きの無い民達ではない事を、
ここに、読者の皆さんには理解していただきたいのである。

 彼らもまた、この惑星の美しき魂の持ち主であるという事を。

 しかしこの様な領土の特性が、これから後、この王家の中で悲しい分裂を起こそうとは、
この時、誰が予測できたであろうか。

 さて、王の城の城門をくぐった一行の馬車は、今までよりも一段と熱い地表の熱風に
気押されながら、ようやく王の城の前に到着し、ゼンスとユランは炎の王への謁見を願い出たのだった。
 しかし、王の広間に通されるまでは、王を守る護衛長をはじめ、学者達や執政官たちに、
何度も大地の王妃の事を説明しなければならなかったのであった。

 そして長い時間をようしてから、ようやく王への謁見が許されたのであった。

 大地の王妃を長椅子に寝かせて、王の広間に入った三人の元に現れたのは、
今を収めし炎の王、ルーフェン・オスモール王。

 ルーフェン王は全身バネの様な鋼の身体を持ち、褐色の滑らかな肌には色とりどりの鳥の羽と、
王の躍動を表すように、身体に付けたいくつもの鈴の音が王の登場を高らかに知らしめたのだった。
 そのしなやかな手足には民達から送られた王を守るまじないの入った腕輪や足輪の装飾が
幾重にも重ねられていたのだった。

 そして、王の右手には地上のどの赤よりも紅きルビーの石が「ゆるぎなき意志」の力を宿し、
その手のうちに収まっていたのであった。
 
「聖なる騎士のゼンス殿、ユラン殿。よう参られた。この度は変わった客人が一緒のご様子だが、
して、この炎の我らにどのような用件で参られたのであろうか?」
黒い瞳で、まっすぐに見つめながら、ルーフェン王は二人に声をかけた。

 そして王は長椅子に横たわる大地の王妃の姿を、じっと見ながらゆっくりと玉座に座ると、
「聖なる騎士団」からの説明を待ったのだった。

 ゼンスとユランは王の元に進むと跪き、ゼンスはうやうやしく、こう述べたのだった。
「底知れぬ力を宿す領土を収めし炎の王、ルーフェン・オスモール王。この度は、
我らの入城をお許し下さり、誠にありがとう存じまする。さて、この長椅子に横たわるお方は、
遥か大地の領土の王妃様にて、このか弱き御身一つで、かの領土を守りし御仁に存じまする。
 しかし、ごらんのとおり、王妃の身もまた、このように酷く傷つき、もうかの大地の領土では生きる事は
出来ぬ御身になり申しました。「迷いの森」よりの謎の物体の侵入により、王妃の身体の内外が
この様に焼き尽くされ、もはやこの炎の領土、「タンカークの洞窟」の炎の元でしか、
お体を休める事ができませぬ。どうか、何卒こちらの元に、大地の王妃をお留めいただくことは、
出来ませぬでしょうか。」
 
 この後も「聖なる騎士団」の長老ゼンスから、大地の王妃に起こった事の説明を、
じっと静かに聞いていたルーフェン王だったが、その間ずっと長椅子に横たわり、
衰弱しきった大地の王妃の、激しく崩れた容貌を、視線もそらさずじっと凝視していたのだった。

 そして、ようやくゼンスとユランの説明が終わると、じっと目を閉じて、一人深く自身の心界へと
入っていったのだった。

「なるほどのう。目の前に横たわりしこの大地の王妃もまた、我を含む我らが歴代の王と同じく、
我が城、我が民、我が領土を守ろうとしたが故のあの姿。
さて、他の属性の者を我が領内にずっと留める事は、この後いったいいかなることになるのだろうか?
それは、わからぬ。しかし、かの者は我が身一つで耐えし者。そのような者を放っておいていいものか。」

 熱き心の持ち主、炎の領土を守りしルーフェン王にとって、この見知らぬ領土の王妃を、
ただ全く知らない存在として、簡単に片づける事は出来なかったのだった。

 そうして王が一人、心のうちで問答をはじめてから、どの位経ったのだろうか。
その時不意に、執政の者が王に声をかけたのだった。

「我らが誇り、炎の王。今すぐ、ご自身の意識に立ち返られよ。城の地殻で異変が起こっておりまする。」
慌てた声で、王に叫んだのであった。
 そう、炎の王が少しの間、自身の心のうちに意識を集中させるや否や、城の地下では溶岩の動きが
大きくなり、城が大きく揺れ始めたのであった。

 そして、それと同時に炎の領土の空が、「ギューン」と音を立てながら、何かわからぬ強い力を
受けたかの様に、ねじ曲がったように萎縮し始め、ひずんだ色に変化し始めると、王の広間に居た者達は、
この城の変動に怯え、あたふたと騒ぎだしたのだった。

 この執政の突然の声により、炎の王は直ちに意識を地上に取戻すと、窓の外から空の変化を確認して、
すぐさま広間の中央に立ち、目を瞑りながら呪文を唱えたのだった。
 そしてしばらくすると、かっと目を見開き、大きく広げた両手を「パンッ」と力強く合わすと、
右手に宿した己のルビーにこう話しかけたのだった。

「我に宿りし、熱き血潮のルビーよ。今すぐ己の務めを果したまえ。我そなたに命ずる。
今すぐこの地を正常に戻したまえ。」そう言いながら、ルビーの宿る右手を地面の方に向け、
王の全身の力を地面に注いだのだった。

 すると、王の右手から紅い強力な光が放出され、地面へ向かって行くと、少しずつ、
先程までの溶岩の勢いが収まりを見せ始め、炎の城もまた落ち着きを取り戻し始めたのだった

 そしてまた、王の広間は落ち着きを取り戻したのだった。
すると、目の前で起きた初めて見る光景に、「聖なる騎士団」の二人は、驚いて王にこう聞いたのだった。
「恐れながら、偉大なる炎の王。これはいったい何が起こったのでしょうや?」ゼンスの問いかけに、
王の傍に居た先ほどの執政が、声を荒げてすかさずこう言ったのだった。

「「聖なる騎士団」のゼンス殿。たとえあなた様の様に尊敬を集めるお方であろうとも、
この炎の領土の秘密を知る権利などは無い。ただちに控えなさるがよい。」語気を荒げた物言いに、
たとえ他の領土より気が荒い炎の者としても、ずっとゼンスやユランを含む「聖なる騎士団」に対して、
この様な荒々しい物言いをしなかった王の執政が、普段は見せた事のない激しい言い方をした事に、
ゼンスとユランはまた、不思議に思ったのだった。

 怪訝な顔をする二人を前に、炎の王は執政を抑える様に手で遮り、落ち着かせるように
こう言ったのだった。「まあよい。そのようにこの地の秘密をそなたが暴露する事もなかろうて。」

 少し笑いながら執政の方に顔を向けて言うと、先程の執政は、ハッとして、自身の言った言葉に
慌てた様に、困った顔をしたのであった。

 そして少しの沈黙の後、ようやく炎の王はゆっくりと口を開いたのだった。
「「聖なる騎士団」のゼンス殿、並びユラン殿。今そなた達が目にした事は、永く我が領土が抱えし事。
この城の地下にある溶岩の動きは、ほかとは違い、相当の力を有するもの。この動きを抑える為、
我ら歴代の王の務めとして代々ずっと、この溶岩の力を常に封じ込めねばならぬ宿命なのである。
しかし、少しでも我が意志を他に削がれたる時は、先ほどの様に、すぐさまこの領土に変化が現れるのだ。
だからこそ、我ら炎の王に着きたる者は、常にこの城にてこの領土を守らねばならぬ。
この城が先に出来たのか、溶岩の勢いを封じるために城が出来たのか、わしには解らぬが、
この様にわしは、ただこの城の囚われ人に過ぎないのだ。」

王がこのように言うと、先程の執政官をはじめ城の者達は、寂しそうに王を見つめ、うつむいたのだった。






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by maarenca | 2014-08-02 14:28 | ファンタジー小説