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THE SIX ELEMENTS STORY No5






THE SIX ELEMENTS STORY




No5


                                                          著 水望月 飛翔


 三人は言葉を失った。
「まさかこのような事が、この大地の領土で起こっていようとは。これは、もしや「迷いの森」での
攻撃が原因なのか?」ロードスは顔をこわばらせた。
「ロードス殿。そのように決めつけてはなりませぬ。」ユランがそう言うと、ゼンスも神妙な面持ちで
ロードスに近づいたのだった。

「空の領土の誇り、気高き賢者ロードス・クレオリス殿。今大事な事は、そのような詮索ではござらぬ。
今は一刻も早く大地の王妃の元へ行き、お助けする事じゃろう?」問いかけとは裏腹に、
ゼンスは有無をも言わさぬ強い視線を、ロードスに向けたのだった。
 
まっすぐに見つめるゼンスにロードスは、今は時間を使う事を避けるため、うなづいた。
「分りました。今はその事に集中いたしましょう。」そう言うと、三人はこれからの段取りを話し合ったのだった。

 しばらくして目をさまし、ゆっくりと身体を起こすユーリス王子。
そして、三賢者の姿を不思議そうに見つめている王子の元に、三人は歩み寄ると、
静かに膝まづいたのだった。

 「良いですかな王子。我らはすぐにも大地の王に、非常に大事な話をせねばなりませぬ。
これは、一刻も時間を無駄にはできぬ事。どうぞ我らと共にすぐに大地の城にお戻りくださいませ。
もちろん、その鳥は城に着いてからすぐに傷の手当をいたしましょう。」
心の動揺を王子に悟られないよう、ゆっくりと落ち着いた調子でゼンスが言うと、
王子は神妙な面持ちでうなずき、三賢者と連れ立って、王の城へと急いだのだった。

「この三人だったら、きっと何とかしてくれるに違いない。」
幼き王子がそう思ったのは、胸に抱く傷ついた鳥の事であろうか。
それとも、傷つき追放された優しい母の事であったろうか。

大地の城へと向かう間、誰も言葉を発っしなかった。
ただ、優しい風だけが吹き抜けていったのだった・・・。


 やがて四人は大地の城に着くと、王の広間に通され、大地の王が現れるのを待ったのだった。
そしてその間ロードスは、傷を負った鳥を王子から受け取ると、痛めた羽を治療する傍ら、
他の誰にも気づかれぬよう、そっとその鳥に話しかけたのだった。

「どうかご心配なされませぬよう・・。わたくしが必ずや、空の領土へお連れいたしますゆえ。
今しばらくは、この大地の城で傷をお治しくだされ。」静かにテレパシーで話しかけるロードス。
その鳥は不安にずっと震えていたのだったが、ロードスのその言葉に「キューン」と一声鳴くと、
ようやく安心したのか首をうずめ、身体を丸くしたのだった。

 それから王子はその鳥を受け取ると、ロードスから薬草のあげ方を教わり、
その鳥を連れ王子の部屋へと引き上げたのだった。
そして、王子のベッドに鳥をそっと置き薬草を塗った後、その鳥の背を優しくなでていると、
その鳥はやがて眼を閉じて、すやすやと眠ったのだった。

「大丈夫だよ。僕がついているからね。ロードス様は食べ物を絶対あげてはいけないって言うけれど、
なんでだろう?おなかすかないかな?」そう言うと、心配そうに見つめたのだった。
「でも、いろんな事を知っているロードス様の言葉だから、きっと何か理由があるんだよね。
僕が傍にいるから、なにも心配いらないよ。」そう言いながら鳥の身体に顔を近づけると、
鳥の小さな寝息と温もりに安心したのか、王子もいつの間にか、夢の中へと入っていったのであった。


 一方、こちらは王の広間・・・。
沈んだ表情で身体を重たそうに引きずりながら、大地の王が広間に現れると
「聖なる騎士団」の三賢者は、うやうやしく礼をして跪いた。

 そして、長老ゼンスが静かにこう切り出したのだった。
「豊穣なる大地を収めし偉大なる王よ。ご尊顔を賜り恐悦至極に存じまする。」
そして、一呼吸置くと、「さて、先程東の森で王子にお会いしました。
そして、大地の領土で起こったこの2、3日の出来事を、この大地の森の精霊より見聞きをいたしました。
王妃におかれましては悲しき出来事、何とも言葉になりませぬ。」  
こう言うとゼンスは少し顔をゆがませて、一旦言葉を飲み込んだのだった。

 しかし、顔をあげると王に続けてこう言ったのだった。
「しかるに我らこの3人で、何とも王妃様をお助けいたしたく、こうしてはせ参じた次第でございます。
どうか何卒、今すぐ我らを王妃の元にお遣わしくだされ。大地の王。」
そう言うと、いつもの落ち着いた物言いとは違う、深刻な表情を見せたゼンスなのであった。

 先ほどまでは、ぼんやりと力なく玉座に着いて、意識の遠くで聞いていた大地の王であったのだったが、
「慈愛の賢者」と呼ばれし長老ゼンスの真摯な呼びかけに、王の虚ろな目にはゆっくりと、
希望の光が戻って来たのであった。

 「なんと、そなた達で我が王妃を救ってくれるというのか。」
王が両手に力を入れて、玉座の手すりをつかみながら、身体を前の方に乗り出すと、
ユランが静かに王にこう言ったのだった。
「お待ちください。雄大なる平原を収めし大地の王よ。残念ながら今は、我々が完全に
王妃を救えるとは言えませぬ。しかし、我らの持っている力が少しでも、大地の王妃様のお役に
立つのであらば、何としてもお助けしたい。」

ユランが言い終わるやいなや、ロードスは残りの言葉を奪うように、こう言ったのだった。
「永きにわたりこの大地を収めし寛大なる大地の王。何卒、何卒すぐに我らを王妃様の元に
お遣わしくだされ。」

 ロードスは内心焦っていたのだった。
しかし明らかにいつもの冷静な物言いとは違う、空の領土出身のロードスの言葉を、
この時王は何の疑いもなく、希望を持って聞いたのだった。
 そんな大地の王の心は震え、次第に王の目に涙が溢れてきたのであった。
ゆっくりと玉座を降りる大地の王。   

 少し震える声で三人にこう声をかけた。
「「聖なる騎士団」の三賢者、ゼンス・ショーイン殿、ユラン・アユター殿、そしてロードス・クレオリス殿。
お三方の申し出、何ともありがたい。どうか、どうか我が王妃を救っていただきたい。」
そう言うと王は、すぐ城の衛兵を呼び、三人を王妃のいる「月嘆きの塔」に案内させたのであった。

 そうして、それからすぐに三人を乗せた馬車は、王妃のいる「月嘆きの塔」へと出発したのだった。
 
 その塔に向かう馬車の中で、ずっと三人は押し黙り、それぞれの「聖なる神器」と自身の石に
強く語りかけていた。
未知なる謎の物体。 

 それはたとえ、「聖なる騎士団」の力をもってしても、この問題を解決するには容易なことではない事を、
それぞれが胸に感じていたのであろう。


 王妃が追放されて送られた「月嘆きの塔」とは何か・・・?
それは、ずっと長い間、誰にも使われず、誰にも思い返されることのない、
過去に封印された塔なのであった。

 かつて遠い昔、何代も前に気のふれてしまった王妃を、閉じ込めるのに使われた古い塔。
そこへ幽閉された王妃の夜な夜なすすり泣く声が、夜空に響き渡ったため、
 それからその塔は「月嘆きの塔」と呼ばれるようになったのだった。

 そして、その気のふれた王妃が静かに塔の中で息を引き取ってからは、誰も近づく者はおらず、
今では昼なお暗く、陰鬱な影を落としていたのであった。







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by maarenca | 2014-06-28 15:09 | ファンタジー小説