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THE SIX ELEMENTS STORY  No4






THE SIX ELEMENTS STORY




No4





                                          著 水望月 飛翔




「いかがされたのです?ロードス殿。そのような怖いお顔をされては、ユーリス王子が
おこまりではありませぬか。」優美なヒレを漂わせて、間に入ったのは最後の一人、
水の民のユラン・アユター。

「聖なる龍のうろこからなる竪琴」をつま弾きながらユランは、ロードスに声をかけると、
優しくユーリス王子にほほ笑んだのだった。

「雄大なる領土を収めし大地の王のご子息、ユーリス・マレンスタイン王子。
また随分とご立派にご成長されました事、ここにお喜び申し上げまする。」
ユランは美しい旋律を一つ奏でると、のど元に宿るアクアマリンの石の力を使って、
癒しの波動を乗せた言葉を王子に送ったのだった。

そして、長い腕を広げ、陽炎の羽の様な美しいヒレを震わせて、王子に頭を下げたのだった。

そう、彼らこそは「聖なる騎士団の三賢者」と呼ばれし者達なのであった。

彼らはそれぞれ、16歳の成人の儀式のおり、自身の石との一体化に成功したと同時に、
この惑星で唯一「聖なる神器」を出現させた者。
 そして、長い時間をかけ各領土の間に生まれた、人を寄せ付けぬ森「迷いの森」を見事通り抜け、
出会った者達なのでであった。

 その後、この三人は永きにわたる隔絶と差別、無理解、違いを乗り越え、
今再び互いの領土の結びつきを願い、各領土への旅を始めた。
また、それと同時に最大なる壁の「迷いの森」の探求に乗り出したのだった。

しかし、何千年という永い隔絶にいた各領土。
最初の頃は、それぞれの領土の民達から理解を得るまでには、多くの苦労があった事だろう。
壮大な夢を胸に抱いた少年だった彼らは、今は長老と呼ばれる年齢になっていたのだった。
そして、多くの困難を乗り越え、やがては全ての領土の王族、民達から
「聖なる騎士団の三賢者」と言われるまでの尊敬と、信頼を勝ち得た者達なのであった。

 さて、ユーリス王子だが、先ほどユランの癒しの旋律を聞いたためか、
この二日間の緊張から解き放たれると、みるみる少年の顔に戻り、悲しみの涙を流したのだった。

「賢者様。母上が・・・、母上が・・・。」しゃくりあげ言葉が続かぬ王子。
いつも屈託のない明るい笑顔の王子の身に、いったい何があったのか?

何事か今までにない動揺を、王子から受け取った三人は、無言でうなづき合うと、
王子を中心に少し離れて三角形を作り、それぞれその場に立ったのだった。

 王子の右前に立ったゼンス・ショーインが「生命の息吹をもたらす杖」を大きく振りかざし,
勢いよく地面に下ろすと、呪文を唱えてその地の精霊を呼び出した。

 そして王子の左前にはユラン・アユターが「聖なる龍のうろこからなる竪琴」をつま弾きながら、
夢へのいざないの旋律を奏でたのだった。

 そして王子の後ろに立ったロードス・クレオリスは「天上の光を宿す鏡」を
天上に向けると、天からの光を集めて、その光を王子の背中に送ったのだった。

 ユランの旋律に夢見心地になった王子は、静かに夢の中に沈んでいくと、
先ほどゼンスに呼び出された大地の精霊が、王子の身体を受け止めて、ゆっくり
とその場に寝かせたのだった。

 そしてゼンスの言葉にうなづきながら、精霊は一旦王子の額の奥にすっと消えると、
過去の記憶を手に持ちながら再び現れ、今度はロードスの鏡の中へと消えていった。
 すると、鏡の中から光が射し、三人の中央で次第に、ある光景が映し出されてきたのだった。

それは二日前、大地の王と王子が西の端の村々へ向かった日へと遡る・・・。

 王妃はその日、王子の好物の木の実と、ある薬草を摘もうと一人、この東の森へとやってきたのだった。
王妃の森への感謝を讃える美しい歌声に、まだ春早い冷たい日差しが一気に華やぐと、
その辺り一帯の生命ある者たちが、うっとりと王妃の美しい歌声に耳を傾け、
それぞれに明るくなった日差しを楽しんでいたのだった。
 

 しかし、その時。

 急に空の領土との境にある、「迷いの森」の方角から、「ドンッ。」と大きな衝撃が遠くに聞こえたのだった。
それからしばらくすると、得体のしれない黒い物体が、低い地鳴りと共に地を這いながら、
ものすごいスピードで王妃めがけて迫り来たのであった。

 「きゃあ~。」得も言われぬ恐怖をまといながら、動きが取れぬ程のスピードで、
猛然と迫りくる黒い物体。
王妃は恐怖を覚え悲鳴を上げたのだったが、なんとその黒い物体は、王妃の口をめがけて
突進してきたのだった。
 
 そして、王妃の口から侵入すると、一気に王妃の体内に広がっていったのだった。
するとその謎の物体は、すぐさま王妃の身体の感覚をすべて奪うと、ただ重苦しく冷たい恐怖で、
王妃の身体を支配していったのだった。
 王妃は、今までに味わった事の無い恐怖に慄きつつも、この黒い物体が何なのか、
自身の石に尋ねようと、そっと王妃のトパーズが宿る左手に右手を伸ばそうとした。

 その時、王妃の体内を支配していた物体が、今度は素早く王妃の思考にまで侵入すると、
すぐに王妃の意識を奪ってしまったのであった。
そうして、王妃は意識を失い、気絶した。

 すると謎の物体は、意識の無い王妃の身体を宙に浮かせると、そのまま大地の王の城まで
運んだのだった。

 そして、王の広間に着くと、謎の物体は王妃の身体からはい出そうとしたのだった。

 先ほどまで意識を失っていた王妃が目を覚ますと、王の広間にいる自分に驚いたのだった。
しかし王妃は瞬時に何かを理解したのか、この謎の物体を、自ら自身の体内に戻そうと、封印の呪文を唱えた。
 そして王妃は、王妃の身体の中に封印すると、誰も近づいてこれない様に、
自身の周りに火を放ったのであった。

 すぐさま炎は大きくなり、轟々と叫びくるう炎となって、王妃の身体にも容赦なく迫ってきたのだった。
しかし王妃は、自身に襲い来る熱い炎をよけようともせず、燃えさかる炎の中にいながらも、
ただ一心に封印の呪文を唱え続けたのだった。

 それからどれほどの呪文を唱え続けたのだろう・・・。

もし一瞬でも気を許したら、忽ち全てを支配されてしまったであろう・・・。
王妃はこれ以上、誰かが犠牲にならぬよう、そしてこの領土を守ろうと、ただ必死で
謎の物体と一人、闘っていたのであった。

 そして、意識も気力も尽きかけた頃、ようやくそこへ、大地の王と王子が城へ戻って来たのだった・・・。

 熱い炎の向こうで、王妃に呼び掛ける大地の王。
しかし、その声に王妃の返答はなく、呪文を唱える為に、必死で最後の気力を振り絞る王妃の姿・・・。 
 最後に王妃は、王に何か話しかけようとした。
しかしここで、白い靄が現れて事の次第に見入っていた三人の前から、王妃の姿をゆっくりと
消していったのだった。

 そして、次に鏡に映ったのは、静寂の月夜に照らされながら、質素な馬車に乗せられて
「月嘆きの塔」に向かう王妃のさびしい姿なのであった。
 王妃はこの時も、謎の物体を外に出さないように、必死で呪文を繰り返していたのだった。
しかし、王妃の体内に封印された謎の物体が、封じ込められてからずっと、王妃の体内を
炎で焼き尽くしていた事など、誰も知る由もなかったのだった。

 王妃は馬車に乗せられ、懐かしい大地の城を後にしながら、心の中では必死に王子と王に
語り掛けていたのであった・・・。

「王子・・・、愛しいユーリス王子、もう私の言葉をあなたに届ける力は、私には残っていないようです。
ユーリス。
だけど、これだけは忘れないで。心の底からあなたの幸せを私はただ願っています・・・。
大地の王よ・・、あなた。もう私はあなたと話すことも、きっと出来ないでしょう。
あなたと共に生きたことを私は決して忘れません。どうか・・、いつまでもお元気で。
ユーリス・・。あなた・・・。」

 そうしてしばらくすると、映し出されていた場面が、すうっと消えたのであった。





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by maarenca | 2014-06-25 13:43 | ファンタジー小説